男男 葉鍵板最燃男トーナメント!! round2!! 男男
「あのね…悪いけど、僕は飼わないよ」
「…アパート?」
「いや、一戸建てだけど」
「…なら問題ない」
…短絡的すぎやしないかい?
「僕はそんなに動物好きなわけでもないし、今までペットを飼ったこともない。
さらに言えば、これから飼うつもりもない」
少々冷たいとも思ったが、こういうことははっきりさせておいた方がいい。
彼女はそれ以上食い下がってくる様子もなく、黙っている。
…諦めてくれたかな?
「…ぐしゅぐしゅ」
…えっ!? な、泣いてる!?
「…猫さん…可哀想…」
…お、落ち着け、落ち着くんだ久瀬!! 一時の感情に流されて行動すれば、必ず後悔するんだぞ!!
「……」
…ぐわあっ!! 涙をためて、上目遣いでこっちを見るのはやめろぉっ!!
「…にゃあ」
…猫ぉっ!! そんな絶妙のタイミングで鳴き声を上げるんじゃなーーーい!!
あははーっ、久瀬さんの負けですよーっ。
どこからか、そんな声が聞こえた…ような気がした。
「ほら…もう泣かないで」
「…ぐしゅぐしゅ」
仔猫の面倒を見る約束をしたが、彼女は一向に泣き止まない。
いったん涙がこぼれだすと、なかなか止まらないらしかった。
僕は彼女にハンカチを渡す。
せわしなく涙を拭う仕草に、苦笑する。
彼女の意外な一面を知ることができて、少し得をした気分だった。
「…久瀬」
別れ際、まだ少し赤い目をこすりながら彼女が言った。
「…ありがとう」
「どういたしまして」
懐に入れた仔猫がまた、にゃあ、と鳴いた。
僕の上着にくるまれて、目を細めている。
「…あったかそう」
心底愛おしげに彼女が微笑んだ。
その表情に、動悸がした。
…ああ、彼女はこんな笑顔ができるのか…
花の咲くような、という形容が相応しい笑顔だった。
「…それじゃ」
彼女は僕の動揺に気付かないまま踵を返し、自分の家路に就く。
遠ざかってゆく傘を、僕は長い間見送った。
「…こらっ!! そんなところで爪を研ぐんじゃない!!」
家に連れて帰り、食事を与えると、仔猫は信じられない程元気になった。
「よ、よせ!! そこはトイレじゃない!!」
…そう、僕の手に負えない程に。
後日、生徒会で書記を務める後輩に引き取ってもらうまで、仔猫は甚大な被害を出したのだった。