葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 Round47!!

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 トルゥゥゥゥゥ――

 電話の音。朝方は忙しくて出れる事は少ない。
 それにもう玄関まで来ている。靴も履いた。
 これで無視しても道徳観念とやらはどうにでもなるだろう。

「はい、小坂です」

 それでも電話のコールに出たのは気紛れだった。

『由起子さん? 俺だよ。浩平……』
 切羽詰った声の甥に少し落ち着くように促した。
 時間は8時を回ったところだ。今日はいつもよりかなり遅い。
『あ、そう……クラスメートが空き地で倒れていて』
 私は一言一言、丁寧に浩平の言葉を聞いた。
 焦ってるのなら受け手は冷静に。これでも伊達に長生きはしていない。
「分かったわ」
 説明を聞き終わると私は家を飛び出した。
『茜が――!』
 浩平のあんな声を聞くのは初めてだった。
 少しうれしく思う。
「不謹慎ね、まったく」
 私は車のエンジンをかけて甥の顔を見ることを楽しみにしながら、
 雨の街にスカイラインを走らせた。

 雲も、風も、今日は重く冷たい。
81:01/11/25 01:53 ID:rwxF23jP
「あら?」
 空き地に行く道を走らせていく途中、浩平を見かける。
 雨の中で、ずぶ濡れになりながら、それでも女の子を雨風から守るように抱いている。
「……随分な入れ込みようね」
 ウインカーを出して、歩道の横に付ける。
「浩平」
「……由起子さん」
「早く乗りなさい」
「うん……でも、濡れてるけど……」
「馬鹿ね。あなたの為じゃないでしょう?」
「そっか……」
 私は冷たくあしらう。
 こうしないと……距離を開けておかないと、この子はひどく辛そうにするから。
 世話になってるからとでも思っているのだろう。
(それとも……みさおちゃんの……)
 続きを思うことはしないで、私はふたりを乗せた車のアクセルを吹かした。

「部屋から出なさい」
「え?」
 素っ頓狂な顔をする浩平に私は苦笑した。
「心配なのは分かるけど、茜ちゃんの着替えをさせないとね。
 それとも、浩平がやってくれるのかしら?」
「……出てくよ」
 一瞬、顔を紅くさせて、浩平は部屋から出て行った。
82:01/11/25 01:55 ID:rwxF23jP
「あらあら、まあまあ」
 最近の子は、なかなか発育がよく出来ている。
 私もそれなりだけど、完成しちゃってるし、この子は将来楽しみだわ。
「…………」
 それとなく胸をつついてみる。
「あっ……」
 ぴくんとした反応を女の子は見せてくれた。
「感度も良好ね――って、私はなにやってるのかしら?」
 少し自己嫌悪。
 下着も脱がせて自分の買い置きしていた新しいものに履き替えさせる。
 ブラのほうはちょっと大きめ。
「……勝ったわ」
 と、高校生の子に勝ち誇る私はいつからこんなにお茶目に?
 やめよう。悪い癖だわ。浩平も私に似てきたし。
「…………」
 しかし不思議だった。ぐしょ濡れとはこのことだろう。
 こんな雨の日に? それとも雨の日だからこそ?
 ――詳しいことは分からない。
「でも、きっと」
 この子には、大切なことで、浩平にとっても、それは大切で、
 私との関わり合いは、ほんの偶然。
「出番なし、か」
 少しだけ疎外感を味わいながらも私は浩平を呼び寄せる。
 言っておかなくちゃならない。
「私は仕事に出かけるけど、襲ちゃだめよ」
 まだ、大切なことはあるのだから、それを乗り越える日まで、ね。