葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 Round47!!
あった、あった、小説2巻。以下ほぼ全文丸写し。
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「えーと、あなた……里村茜さん?」
商店街を歩いているときに、茜の前で車が停まり、誰かに声をかけられた。
ベリーショートに近いショートへアに、かっちりとしたスーツを着た女性だ。
「……あの、すみません。どなたでした?」
30代半ばくらいに見えるその女性に全く心当たりがなかった。
その女性はあはは、と軽く笑った。
「よく考えればあなたは寝てたのよね。ごめんなさい。私、小坂由起子です。
あなたが倒れた時にちょっとお世話したのだけど」
「……あっ、あなたが。その節はいろいろお世話をかけました」
言われてみるとくっきりとした眼や、顎のラインに浩平の面影がある。
「忙しくなければそのへんでお茶しない?」
「……はい」
誘われるままに浩平につながる人の車に乗った。
幹線道路に出て少し行ったところに、洒落た感じのティールームがある。
その前に由起子の車は停まった。
店にふたりで入り、窓際の、景色のいい場所に座って、ゆっくりメニューを決める。
「あれからお礼に伺おうとは思っていたんですが、結局ご無沙汰してしまって」
「いいのよ。具合の悪い時に、そんな気を回そうなんてしなくて」
そう言った時に、由起子の表情が曇った。
「……あの」
「ああ、ごめんなさいね。昔死んだ姪もね、そうやってこらえちゃう子だった。
助からない病気で手術して、それでも弱音を吐かない子だった。遠くに住んでたけど、
私が喪主をしたのよ」
(略)
丁寧に入れられ甘やかに香る紅茶と手の込んだケーキがふたりの前に置かれる。
由紀子は一口紅茶を含んだ。
「茜さん、高校3年生だったっけ。みさおも……生きていれば高校2年になっていたのね
……全然想像がつかないんだけど」
(略)
おいしいケーキを食べ、由起子との話は何となく世間話に流れた。
別れ際、名刺を渡される。
「よかったらまた、ケーキでも食べに行きましょ。本当はお菓子を作るのって
好きなんだけど、仕事が忙しくてね、どうしてもお店のケーキに頼っちゃうせいで
詳しくなっちゃったのよ」
「……はい」
自宅まで送ってもらい、由起子の車を見送ったまま立ち尽くす。
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そして茜は浩平の行った「向こう側」について考える、という場面です。