葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 round42!!
544 :
エコーズにて:
奇しくも二人の脳裏に、同じ光景がよぎる。
数日前、一つの試合が行われた。
伝説に残るであろう名勝負を繰り広げ、ほんの僅か、本当にほんの
僅かだけ力及ばずに敗れ去った……その名は、森川由綺。
紙一重よりも小さな差で彼女を下したのは……姫川琴音。
去りゆく者の背に投げかけられた万雷の拍手が、全てを語っていた。
「あれはホンマ凄かった。今思い出しても震えが来るわ」
「全くね。結果として負けたけど、あの子が本当に愛されてる事が
よく分かって……正直、羨ましかったわ」
理奈がコーヒーを取って口に運ぶ。ほのかな香りが店内に流れた。
「由綺は、今も私を追ってくる。今も私を目標にしている。だから
私は、それを裏切るわけに行かないのよ」
「進藤ヒカルを前にした塔矢アキラのようなもんか?」
意外に智子は漫画好きだったりした。
「そんな所ね。でもそれは保科さん、あなたも似たようなもんでしょ」
「……ま、な」
複雑な笑みを浮かべて智子は頬をかく。
「あの時、森川さんに勝ったのはうちん所の後輩や。面識がほとんど
無いとは言え、あそこまでやられちゃ先輩として恥ずかしい姿を見せる
訳にいかんやろ」
「男塾一号生を前にした二号生筆頭の心境かしら?」
実は理奈もロビーや楽屋に転がってる漫画を全部読んでたりした。
「……あんたもなかなかやるな」
「そっちもね」
顔を見合わせてくすくす笑う二人。