葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 round42!!

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542エコーズにて
 日の暮れた「エコーズ」。静かな音楽が流れる中、誰もいない
カウンターで髭のマスターがコーヒーカップを磨いている。
 今日も今日とて客の少ない喫茶店。
 その片隅のテーブルで、二人は向き合っていた。

「そろそろ佳境やね」
 そうつぶやいて、智子はほとんどカフェオレと化したコーヒーを
口に運んだ。彼女はその醸し出すイメージに似合わず苦い物が大の
苦手なのだが、それを知る者は意外に少ない。
「そうね……どうなってるかしら」
 対照的に、理奈の目の前に置かれたコーヒーはブラック。こちらは
いかにもイメージ通りであった。
「何や、あまり興味あらへんみたいやな」
「そういう訳じゃないわよ。ただね……」
 そう呟いて、理奈は窓に目を向けた。外はもう暗い。遠くに思いを
馳せるような、物憂げな表情がガラスに写っていた。
「…………」
「……緒方さん。あんたが考えてる事、だいたい分かるわ」
「え?」
「あんたの相手は確かにうちや……けど、あんたが本当に戦ってる
相手は違う場所にいる。そうやろ?」
 かちゃん、と智子のコーヒーカップがソーサーに降ろされる。
「……お見通し、ね」
「そんな遠い目をしとれば普通ピンと来るやろ」