葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 round41!!
私はやっと分かった。
私を、「緒方理奈」じゃない私を、一人の人間として見てくれている人が
いてくれるってことが、どんなに幸せなのかということに。
他愛ない世間話も嬉しかった。今にして思えば下らない兄弟喧嘩にもつき
合ってくれたのが嬉しかった。一人の友人として、私に力を貸してくれよう
としてくれたことが嬉しかった。私を、何も飾らない私を、応援してくれた
ことが嬉しかった。
そして、そういう人がそばに居てくれることが、かけがえのない幸せ、と
いうことが分かったことが嬉しかった…。
だから、私は冬弥君のそばにいたい。
たとえ、それが今までの努力をふいにすることになっても。本当の友人を
裏切ることになっても。
だって、それすらできないなら、私、何のために生きてるのか分からない!。
私、逃げているのかな…。常にトップを目指すことに疲れているのかも…。
そうかも知れない。でも、それ以上に大事な、必要なものを私は見つけた
から。そして、それが今の私には求めることができないものだから。そんな
ことが叶わぬ望みだってことは、誰よりもよく知っているから…。みんなの
「緒方理奈」は一人のためだけには存在できないってことを知っているから。
私だって、できるなら今のままでいたい。どこまでやれるのか分からない
けど、これが私が選んで、手に入れたものだから。でも、分かっているの。
私を照らすライトは、人をどれだけ傷つけるかということを。
だから、私はアイドルをやめる。アイドルをやめて彼とともに生きていく。
そのことには何のためらいもない。あるはずがない。
…そう決めたんだから…。
「分かった。これで本当に俺から離れていくんだな。」
「そうね。今までありがとう。本当に感謝しているわ。」
「ふん。まぁ、お前の人生、どうするも好きにするがいいさ。」
「言われなくても分かっているわ。それじゃ、また会見の時に…。」
(頑張れよ、理奈…。)
正直、これからのことを思うと少しだけ不安になる。
私は何もできない。今までやってきたことも、きっとこれからの生活には
何の役にも立たないと思う。まるで暗闇に足を踏み入れるよう…。
でも、気がついたから。冬弥君のいるところが、私が安らぐことのできる
たった一つの場所。かけがえのない場所だって気がついたから。
私は彼が必要だと気がついたから…。
だから、そう。あなたとは離れない。それが自分で決めたことだから。
〜 おしまい 〜