葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 round41!!
入場の予定時刻まであと数十分。
飾り気のない控え室の椅子に腰掛けて、理奈はその時を待っていた。
多くのファンを魅了して止まない瞳が、いらだたしげに揺れている。
アイドルがメイクをするのは肌の表面に限らない。
この控え室に漂う不機嫌の匂いを感じ取れるのは、
彼女を最もよく知る人間ぐらいのものだろう。
皮肉なことに、いらだちは外でもないその相手に向けられたものだった。
(もう…兄さんは何を考えてるのよ…)
その気になれば時間ぐらい作れるはずなのに、控え室に顔を出そうともしない。
プロデューサーとして何かと忙しいとは言っても、同じ会場内に居るのだから…。
会場のチェックなんかより先に、出演者のチェックをしたっていいはずではないか。
(まして、私はあの人の…)
いらいらと爪を噛みかけて、慌てて親指を口から離す。
ちょっと前までは、ベタベタくっつき過ぎでうるさいぐらいだったのに…。
思いつきで行動しては人を振り回すくせに、側に居て欲しい時には現れない。
つき合いの長い自分はもう慣れているけれど、
あんなのに仕事を仕切られるのでは由綺が可哀想だ。
ついこの間までは、どんなに忙しくても必ず顔を見に来てくれた。
でも、仕事のスケールが大きくなればなるほど、自分と兄の役割は遠くなってしまう。
プロデューサーと歌手。二つの接点はどんどんシャープに削られてゆく。
いままでは、二人でがんばって、二人で成功するのが楽しかった。
でも、いまは…。