葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 round31!!
丘を出ようとしたとき、後ろに何かの気配を感じた。
「・・・・・狐か」
狐は2匹、じゃれ合うように雪の上を転がっていた。
楽しそうだった。あの頃の真琴と俺を見ているようだった。
少し近づく。すると狐は一匹の方はこちらに気づいたのか、
逃げ出してしまった。しかしもう片方は逃げない。
こちらをまっすぐ見つめている。
「悪かったな、友達逃げちまったぞ。」
俺はさらに近づき、その狐を抱き上げる。
昔の真琴もこれと同じだったのか、と思うとおかしな気分になる。
「・・・・おまえ、真琴のこと知らないか?」
その狐は不思議そうにこちらを見つめている。
「知るわけないよな。・・・・本当にあいつの存在は一瞬の煌き、
ってやつだったんだもんなぁ。」
俺はさらに言葉を続ける
「本当に、うるさいやつだったよ。あいつは。・・・おまえは静かな奴だなぁ。」
狐は黙って、見つめつづけている。
「きっと、こっちでもうるさいやつで評判だったんだろうな・・・・。
でもドジだから、笑って周りも許してくれるんだろうな。あいつは
笑うことは得意だからな。」
日は夕暮れの赤を示し出している。
「・・・・だから・・・・今もどこかにいる気がするんだよな・・・・」
ぴろがいなくなった日のように、ひょい、と顔をだして、
「ごめん、ちょっと道にまよっててさー」
って。そんな気がいつもしていた。
夜中に物音がすれば、真琴だといつも思ってしまう。
「馬鹿だよな・・・俺はよ・・・」
狐は何も言ってくれない。
狐を何度かなでる。ぎゅっと抱きしめて、その狐の体温を感じる。