葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 round28!!

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613Aqua ◆Aqua/C.E
「……うん、ありがとう。これで大丈夫だよ」
「?」
浩平の顔に浮かぶ、たくさんの疑問符。
それが見えているかのように、くすくすと笑うみさき。
くるりと翻すと、いつものように歩き出す。

「今日の先輩、なにか変だぞ」
「そんな事ないよ。私は私だよ」
「やっぱり変だ」
「ひどい事言うね、浩平君」
「うーむ、やっぱり何かいつもと違う……と、着いたな」

学校の目の前にあるみさきの家。
二人だけの時間は、いつも短い。

「それじゃ、また明日な」
「そうだね。またね、浩平君」

短いからこそ、かけがえのない時間。
別れを告げるように手を振ると、ゆっくりと歩き出す浩平。
答えるように手を振るみさき。
それはいつもの光景。

「それに、一番の夢は絶対叶えたいからね……」
浩平の耳に微かに届く、みさきの声。
「え?」
614Aqua ◆Aqua/C.E :01/11/08 16:36 ID:Xsh3v57w
振り向いた時、みさきの姿は扉の向こうに消えるところだった。
「……やっぱり、今日の先輩はいつもと違ってたな……」
首を傾げても、答えは出てこない。
みさきの体温を感じたその手は、まだ温かかった。


窓を開けると、そこから風が吹き込んできた。
優しくみさきの身体を包み込み、そして流れていく。

「……好きになった人の姿は、この目で見たいんだよ……」
「……それに、浩平君と一緒に見てみたい景色があるんだよ……」
「だから、私ね……手術なんて怖くないよ……」

胸の中で呟いたはずの言葉。
口に出すことの無かった言葉が、風に乗って消えていく。

「浩平君に分けてもらったからね。頑張れるよ、私」

その風は、夕陽に向かって吹いていた。
みさきが好きな、真っ赤な夕陽に向かって。
想いを乗せた風は、静かに流れていった。