葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 round28!!
いつもと同じ、たった数分間の下校の時間。
一緒に帰る、というにはあまりにも短い時間。
「先輩には、夢ってあるのか?」
でも、その中で交わされる言葉はいくつもの想いが混じっている。
「うーん、そうだね。いろいろあるよ」
「例えば?」
「紅葉狩りに行って、帰りに夕日を眺めるとか」
「気持ちいいだろうな」
「雪山に行ってかまくら作るとか」
「楽しそうだろうな」
「海に行ってスイカ割りするとか」
「スイカは俺も好きだな……って、先輩が言うと、全部食べ物を連想するのは何故だろうな?」
「うわ、ひどいよ」
「天ぷらに焼き芋。きりたんぽに雑煮。スイカにかき氷。……先輩の大食いがうつったかな?」
「そんなに食いしん坊じゃないよ〜。浩平君、ちょっと意地悪だよ〜」
ぷい、と拗ねたように横を向くみさき。
その顔は、怒っているようで、笑っているようで。
そして悲しそうで。
「冗談だよ、先輩」
「……でもね……やっぱり夢なんだよ」
ぽつりと呟くと、浩平の方に向き直った。
「そうか……。だったら、いつか俺が連れていってやるよ」
「うん、そうだね。浩平君なら、そう言ってくれると思ってたよ」
でも、そこに浮かぶのは優しい微笑み。
「それにね……」
何かを探すようにゆっくりと宙をさまようみさきの手が、浩平の頬に触れる。
「それに、夢は叶えるためにあると思うんだよ」
そっと、優しく。
指から伝わる浩平の温度を慈しむように。
ゆっくりと、頬を撫でる。
「せ、先輩!?」
そのまま、ゆっくりと撫でていた手がゆっくりと下がる。
「だから、頑張ってみる事にしたんだよ」
「先輩?」
「出来ることは、やらないと駄目だよね」
浩平の手に触れる。
「それでね。浩平君にお願いしてもいいかな?」
「……何を?」
そのまま、そっとその手を握りしめる。
静かに流れる、時と風。
ふれ合う手から流れ込む、静かな想いと決意。