葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 round28!!

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610Aqua ◆Aqua/C.E
いつもと同じ、たった数分間の下校の時間。
一緒に帰る、というにはあまりにも短い時間。

「先輩には、夢ってあるのか?」
でも、その中で交わされる言葉はいくつもの想いが混じっている。

「うーん、そうだね。いろいろあるよ」
「例えば?」
「紅葉狩りに行って、帰りに夕日を眺めるとか」
「気持ちいいだろうな」
「雪山に行ってかまくら作るとか」
「楽しそうだろうな」
「海に行ってスイカ割りするとか」
「スイカは俺も好きだな……って、先輩が言うと、全部食べ物を連想するのは何故だろうな?」
「うわ、ひどいよ」
「天ぷらに焼き芋。きりたんぽに雑煮。スイカにかき氷。……先輩の大食いがうつったかな?」
「そんなに食いしん坊じゃないよ〜。浩平君、ちょっと意地悪だよ〜」

ぷい、と拗ねたように横を向くみさき。
その顔は、怒っているようで、笑っているようで。
そして悲しそうで。

「冗談だよ、先輩」
「……でもね……やっぱり夢なんだよ」

ぽつりと呟くと、浩平の方に向き直った。
611Aqua ◆Aqua/C.E :01/11/08 16:35 ID:Xsh3v57w
「そうか……。だったら、いつか俺が連れていってやるよ」
「うん、そうだね。浩平君なら、そう言ってくれると思ってたよ」

でも、そこに浮かぶのは優しい微笑み。

「それにね……」

何かを探すようにゆっくりと宙をさまようみさきの手が、浩平の頬に触れる。
「それに、夢は叶えるためにあると思うんだよ」

そっと、優しく。
指から伝わる浩平の温度を慈しむように。
ゆっくりと、頬を撫でる。
「せ、先輩!?」

そのまま、ゆっくりと撫でていた手がゆっくりと下がる。

「だから、頑張ってみる事にしたんだよ」
「先輩?」
「出来ることは、やらないと駄目だよね」

浩平の手に触れる。

「それでね。浩平君にお願いしてもいいかな?」
「……何を?」

そのまま、そっとその手を握りしめる。
静かに流れる、時と風。
ふれ合う手から流れ込む、静かな想いと決意。