葉鍵板 最萌トーナメント!!一回戦 round26!!
「……浩平は、まだ永遠を望んでいるのですか?」
「え?」
「いつか訪れるかもしれない別離を恐れて、そんな永遠を望むのですか?」
「……茜」
「私は……嫌です」
静かに見つめる茜の目。そこに宿る感情の色。
「私は、消えていった人を待つのは……嫌です」
「茜……そんな意味で言った訳じゃない」
「……それに浩平は、まだ考え違いをしています」
「え?」
「浩平は、ずっと居たいと言ってくれました。でも、それじゃ駄目なんです」
「……」
「今一緒に居る。この限りある時間を共に居る。そう考えて欲しいです」
「……」
「今一瞬の時間。そして明日から続いていく時間を……私は一緒に歩いていきたいです」
「……どう違うんだ?」
茜は瞼を閉じた。
そこに映るのは出会った頃の浩平。そして今の浩平。
同じ人なのに、同じ姿なのに。
そこに映る浩平は、確かに同じじゃない。
「今日と明日は違う日です。そこには今とは違う何かがあるはずです」
「それは『同じ』じゃないんです。永遠は、変わらないから永遠なんです」
「私は、移りゆくその時間を見ていきたいんです。……浩平と一緒に」
風に乗った言葉と想いは何処に通じているのだろう?
運び去られた言葉が届く、その先は?
「……茜」
ゆっくりと目を開ける。
「そうだな。俺が悪かった」
そこにあったのは、優しく微笑んでいる浩平。
「俺は茜と一緒に居たい。これからも、ずっと」
「……はい」
「そして同じ時間、同じ空の下で、茜と一緒に居る」
「……はい」
「でも……」
「でも、それは茜も一緒に歩いてくれるから。これから一緒に居てくれるから」
「そして、一緒に時間を刻み続けるから」
「望むんじゃないんだ。そうしていくんだ。そうなんだよな、茜」
「……その通りです」
言葉は風に乗って、そして辿り着く。
その先はどこに繋がっているのかは判らなくても、想いは届く。
茜の目に微かに涙がにじむ。
誰も気付かなくても、それでも気付く人はいる。
それは、これからも一緒に歩いていく人だから。
限りある時間の中で、一緒に過ごしていく人だから。
望むだけではなく、それを創りあげていく人だから。
うん、と大きく頷くと、浩平は悪戯っぽく笑った。
それは全てを理解した目。
そして変わりない平凡な日常をいつまでも覚えておくための儀式。
新たにした誓いを守り抜くための、浩平なりのおまじない。
「確かに、いつも同じじゃつまらないよな」
「……はい」
「だったら、その髪型を変えさせてくれないか」
「嫌です」
「いつもと違う茜が見たい」
「それとこれとは、話が違います」
「同じじゃつまらないだろ?」
「自分で髪を伸ばして、編んで下さい」
「……俺が三つ編み? 頑張れば出来るのか?」
「……そんな浩平、嫌です」
「そうだよなぁ。俺だって嫌だ」