葉鍵板 最萌トーナメント!!一回戦 round26!!
小道を吹き抜ける風が心地よい。
冷たくもなく、暖かくもなく。
静かに流れる時間と風。
いつもと同じように通る帰り道。
小川のせせらぎ。木々のざわめき。
昨日と同じ。しかしどこか違う今日の景色。
茜と浩平はゆっくりと帰り道の光景を楽しんでいた。
永遠の世界からの帰還。
それは、お互いが望んだからこそ叶った奇跡。
本当の幸せに気付いたから、再び出会えた二人。
そして会えなかった時間を取り戻すかのように、二人は共に歩んでいる。
それは、まるで時が止まったかのような、静かな日々。
かつて永遠を望み、そして拒絶した少年と、永遠が終わる事を望んで待ち続けた少女。
共にあることに幸せを見いだした二人だった。
幸せな時間はいつまでも続いて欲しい。
他愛のない、心からの願い。
「いつまでも、こうしていたいな……」
ふっと呟く声も風に流される。
「俺は、ずっと茜と一緒に居たい」
そこにある想いは、本物。
しかし、その想いは永遠を望む気持ち。
これからの時間を共有したいという願い。
心からの本当の想いは、永遠を望んでいる。
それは、かつて忌避したはずの永遠。
「……浩平。そんな事を言わないで下さい」
「……茜?」
「私は……嫌です」
「茜?」
茜の口調に驚いたように浩平は振り向く。
普段と同じ声なのに、普段とは違う声。
絡み合う2つの感情。
茜はその視線を静かに受け止めた。
「私は、嫌です。ずっと、だなんて嫌です」
繰り返し口から出てくる言葉。
静かに風に乗って、それは浩平の耳に届く。
「……それは、どういうことだ?」
驚き。困惑。悲しみ。怒り。
浩平に浮かぶ様々な表情。
茜はその全てを、目を逸らさずに見た。