葉鍵聖戦 Last Period

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1名無しさんだよもん
……聖戦があったこと覚えていますか?
……ずっとずっと貴方にとって大切なものでいられましたか?
……私たちは最後まで頑張れましたか?

あの冬から始まった、もうひとつの世界。
今、物語は終焉に向かって収束していこうとしています。

たくさんの戦いがありました。
幾多の犠牲もありました。
でも、私たちはこの戦いの行く末を見守り続けました。

大勢の人たちの意志が交錯してきた街……。
この街に訪れてくれた幾人もの人たち……。

出会えて良かった。
みんなと頑張って来れて本当に良かった。
誰が欠けたとしても、きっと、ここまで来れなかったと思うから。

そのことに、誇りを持とう。

そして……。
もう、ゴールしてもいいよね……?

私たちの戦いの軌跡は>>2-10にあります。
2名無しさんだよもん:01/10/14 11:11 ID:YwynMg5b
前スレおよび過去ログ等は下記の通りです。
約束事は下記のスレ参照です。

初代スレ:「邪悪な葉鍵キャラの日記」
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/973/973607248.html

二代目スレ:「葉鍵聖戦」
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/975/975572864.html

三代目スレ:「葉鍵聖戦 2nd Period」
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/982/982520510.html

四代目スレ:「葉鍵聖戦 3nd Period」
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/989/989180708.html

五代目スレ:「葉鍵聖戦 4nd Period」
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/996/996496655.html

前スレ:「葉鍵聖戦 5th Period」
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/998/998136841.html

過去ログ保管サイト
http://members.tripod.co.jp/bou_ichikakite/

葉鍵聖戦な掲示板(現在、葉鍵聖戦のSSを公開中です)
http://green.jbbs.net/sports/310/xiantou.html
3名無しさんだよもん:01/10/14 11:12 ID:cxSqp0UE
どぱーん
4名無しさんだよもん:01/10/14 11:13 ID:YwynMg5b
とうとうラストになりました。最後までゆっくりでもいいいから歩いていきましょう。
5名無しさんだよもん:01/10/14 11:22 ID:HJBNPnTx
がおー
6EPILOGUE@ARIA:01/10/14 11:32 ID:YwynMg5b
 雪が降っていた。
 重く曇った空から、真っ白な雪がひらひらと舞い降りていた。
 冷たく済んだ空気に、湿った木のベンチ。
 いつから僕はここで待っていたのか?
「……どうしたの?」
 声がして振り向く。そこに立っていたのは、ひとりの少女。
 名前も顔も知ってる。僕たちは幼馴染だった。
「見て、できた」
 女の子が嬉しそうに見せるのは、帽子を被った雪ダルマ。
「うまくできたね」
「うん、うまくできた」
 十分、満足したようだった。
「もうすぐ日が暮れるね……」
 雪空を仰いで、寂しそうに目を細める。
「そうだね……」
「やっぱり、君はここから旅立つの?」
「うん。わたしのお母さんはここには、もういないから」
 女の子は、この冬に転校する。
「寂しくなるね……」
「うん、寂しくなる……」
 僕は真っ直ぐに前を見据えた。
「会いに行くよ、きっと」
「ほんとう?」
「うん、絶対に会いに行く。約束だ」
「うん、約束……」
 僕らは小指を絡め合う。
「どこに行ったらいい?」
「……わたしは、海の見える町がいいな」
「君の名前のように?」
「うん、私の名前のような浜辺がいい」
7EPILOGUE@ARIA:01/10/14 11:33 ID:YwynMg5b
 夕焼け色の街並みでふと、女の子が誰かに、トンとぶつかる。
「……わ」
 ぶつかったのは年上の女の人。
 どうしてか、涙目だった。
「……ごめんなさい。いたかった?」
 女の子のほうが女の人に謝っていた。
 それくらい、女の人はいたたまれない顔をしていたから。
「ううん、謝るのはわたしのほう。ごめんね、痛かったかな?」
「わたしは、大丈夫だよ」
「そう、良かった」
 でも、すぐに笑顔で女の子の頭を撫でていた。
「……ね、君たちは幸せかな?」
 突然、女の人が訊いてくる。
 返す言葉はもちろん、ひとつだった。
「うん、幸せだよ」
 女の子が言うのを、僕はすぐ隣で頷く。
 それを見て、女の人はとても嬉しそうに僕らを見つめた。
「うん、お姉ちゃんも幸せだよ」
 手を振って女の人がどこかに去っていく。
 僕は手を振り返す。
 彼女には、過酷な日々を。
 そして僕らには、始まりを。
 下ろした手を固く握る。
「じゃ、行こうか」
 彼女が先に立って待っていた。
「うん」
「この先に待つもの……無限の終わりを目指して……」
 ただ、一度、僕は振り返り呟いていた。
 その言葉は凍てつく風に流され、消えていく。
「さようなら」
8名無しさんだよもん:01/10/14 11:35 ID:YwynMg5b
スレの容量合わせの回しはあまり必要ではないかも知れないだよもん。
9名無しさんだよもん:01/10/14 11:36 ID:YwynMg5b
でも、見栄えという意味で2レスほど回してみるだよもん。
10上月澪@涙:01/10/14 11:48 ID:YwynMg5b
 澪がこの手紙を見ているということは、私はもうこの世にはいないんでしょうね。
 ……何から言ったらいいのかしら? そうですね、ネットワークについての不備は認めましょう。
 情報は上辺だけのものですから、やはりそれ自体に触れてみないと分からないものですよ。
 正しいと思っていたことは、実はそうでないこともあります。
 いえ、ほんと……何を誤魔化した言い方をしてるのからしらね、私は。
 私、椎名繭はどうしようもなく弱い人間だったんです。
 ……嘘をついていました。そう、私は澪たちを騙していたんです。
 言い訳はありません。でも謝罪もしません。私にはそれだけが全てでしたから。
 私は自分で正しいと思ったことを、しました。後悔はありません。
 ただ、澪にだけは……私のあんな姿を見せたくはなかった。
 貴女が物の怪の丘より遠くの場所にいるのは私の単なる我侭なんです。
 私のこの手紙を読んでいるということは、全てが終わった後なんでしょう?
 許してね、澪。この計画は全て私の我侭で始まって終わりに向かって辿りいくだけなんです。
 私の死≠ニいう形でこの物語は幕を閉じるはずですから。
 もう澪はいいんです。これ以上の危険を冒さないでください。
 最後に私の……我侭です。生きてください、澪。
 椎名繭は、上月澪のことを、何よりも大切な人だと思っています。
 永遠が在ろうが無かろうがそれだけは変わりません。
 澪は幼い頃からずっと私を……私の心を助けてくれてました。
 貴女が笑いかけてくれることが、私にとってどれほど救いになったことか計り知れません。
 今度は私の番ですよ。ありがとう……そして、さようなら。
 決して、澪の笑顔が曇らないように、いつまでも私は祈っています。

 親愛なる友へ。椎名繭より。
11名無しさんだよもん:01/10/14 11:49 ID:YwynMg5b
回しだよもん。
12名無しさんだよもん:01/10/14 11:49 ID:YwynMg5b
相撲取りじゃないだよもん。
13七瀬留美@涙U(1/2):01/10/14 11:57 ID:YwynMg5b
「……貴方のこと忘れます。
 名前も、顔も、声も、温もりも、思い出も……すべて忘れます」
 茜の涙が頬を伝っていく。
 胸が張り裂けそうになりながら矛先を彼に向けている。
 何をしようとしているのか分からないわけがない。
「さようなら、本当に……本当に、大好きだった人……」
 茜が駆け出した。
 あたしたちが全てを投げ打ってでも助けたいと思ったあの人に。
 だから、だろうか……。
 あたしの行動はとても自然だったように思えた。
「……茜さん」
 ふらりと幽霊のようにあたしは茜の前に立っていた。
「……七瀬さん?」
 不可解だったのだろうか。
 茜の眼が動揺しているようにあたしは見えた。
「……そこを退いてください」
「退く? 退けって言ったの?」
 笑う。笑わせてくれる。退く意味を知って彼女は言っているのか。
「……駄目よ」
 そう。駄目だ。退くわけには行かない。
「折原は……」
 あたしは浩平のことを……。
「――殺らせないっ!」
 ずっとずっと好きだったから……。
「……七瀬、留美?」
 茜の手から力が抜けていくのが見えた。
「ちょっと……何やってんのよ!」
 誰かの声が響く。ほんと誰の声だったろう。
14七瀬留美@涙U(2/2):01/10/14 11:59 ID:YwynMg5b
「七瀬留美! それがあんたの愛ってわけ? ばっかじゃない!?」
「……笑っていいよ」
 ぽつりとあたしは言っていた。
「あたしは……折原のこと好きだから」
 答えは決まった。
「それだけだから……」
 好きな人……。
 心から好きだといえる人……。
「……どうやったら折原は正気に戻るの?」
 答えは返らない。
「……どうしてこれが折原の意思じゃないって言えるの?」
 返事もまた返らない。
「仕方ないよ……好きで好きで……ただ好きで……」
 視界が霞んでいた。
 目尻がどうしようもなく熱い。
「もう、二度と……失いたくないんだから……」
 あたしも答えが出せただけ。
 どうやったって折原と争うなんてできないだけ。
 ちらりと川名さんの方を見る。
 彼女の瞳は呆然と虚ろに世界を見ていた。
 三者三様の選択――
 あたしは折原に付いて、茜は敵対して、川名さんは成り行きを見守っている。
 どれもが違うけど、それは同じ愛の形≠ナはないだろうか。
「仕方……ないんだよ……」
 茜が折原を討とうとするならそれは止めるしかない。
 だって、きっと辛くなるから。
 本当に茜が折原のこと好きならそんなことさせたくないから。
 そう思ったからこそ、あたしにはこうするしか……。
「あたしは……もう失いたくない、よ?」
 誰だって。折原も。友達も。繭の二の舞には誰もさせたくない。
15名無しさんだよもん:01/10/14 12:00 ID:YwynMg5b
では回すだよもん。
16名無しさんだよもん:01/10/14 12:01 ID:YwynMg5b
dat落ちには気を付けましょうだよもん。
17名無しさんだよもん:01/10/14 15:08 ID:juxjFhVW
おお、復活おめでたう。
当方、読者に回って久しいですが、ぜひとも頑張ってくだされ。
18名無しさんだよもん:01/10/15 08:36 ID:cj828L4N
保存sage。
19名無しさんだよもん:01/10/15 10:05 ID:hjeP/VAp
や、やっと復活、感無量です……
急いで過去ログ見直さなければ(w
聖戦外伝の方も、すぐに書き終えます(←自爆
20長岡志保@日常の中で:01/10/15 10:29 ID:hjeP/VAp
カッと頭に血が上った。
七瀬留美。彼女の選んだ選択は、あたしたちに敵対するものだった。
「それじゃあ何、あんた、それで自分は幸せなわけ!?」
その問いに、彼女はさびしげな笑みを浮かべる。
ぞくり、と背中に悪寒が走った。
それは、すべてを受け入れ、それでもなお折原浩平を愛する、という笑みだった。
それもまた、愛の形。
「認めない!!」
あたしは叫んでいた。そう、認めない。認められるはずない。
傷つけあい、苦しみあい、それでいて、何ももたらさない。
そんな愛、あたしは認めない。
……自分の心の奥底で、何かが蠢いている。
「相手に尽くして尽くして、それで用がなかったらポイ捨てされるのよ、そこの、椎名繭のように!!」
ものみの丘に横たわる、小さな身体を指差し、あたしはなおも言葉を紡ぐ。
それをみて、微かに留美の表情が強張る。だが、それでも留美はゆっくりと首を振った。
「でも……繭は、幸せそうだったよ。浩平と一緒にいられて」
「………!!」
ぎり、と食いしばった歯が、嫌な音を立てる。そのあたしの肩を、誰かが抑えた。
「もうよせ、志保。あいつはあいつの道を選んだ。なら、俺たちに言える筋合いじゃない」
「離してよ!!」
あたしは無理やりにヒロの手を振り払った。
「なんでよ、なんで、なんで……どいつもこいつも、自分の事粗末にして!!」
涙がこぼれる。悔しかった。どうしようもなく、悔しかった。
何もできない自分が、何も変えられない自分が、どうしようもなく悔しかった。
会ったのは、ほんの少しの時間でしかなかったけど、あたしは留美に好意を抱いていたんだ。
「そんなに自分を犠牲にしてまで、好きな男に尽くしたいわけ!?」
「それを、君が言う資格はないよ」
凍りつくような声が、あたしを遮った。
21長岡志保@日常の中で:01/10/15 10:48 ID:hjeP/VAp
声の主は、折原浩平だった。
「ど……どういう意味よ!」
「そのままの意味さ。君もまた、その藤田浩之のために、随分自分を犠牲にしてきたじゃないか」
ヒロの顔が強張った。その視線が、迷うようにあたしに向かう。
「じょ…冗談言わないでよ! これはあたしが望んで……」
それ以上、あたしは何も言えなかった。気づいてしまったから。
あたしと留美の選んだ選択は、同じだったんだ。
あたしは浩之を。留美は浩平を。
脳裏を、綾香を失い、廃人同然となっていたヒロの姿が浮かぶ。
(……綾香)
その名前が、あたしの心を切り刻む。あたしは綾香じゃない。綾香じゃないのに。
(……なぁに、浩之?)
あたしはその名前に返事をする。
「君は、彼のことが好きだった。だから、彼の為に、偽りのペルソナをかぶり、
彼のそばにいることを望んだんだろ? 幸い、彼は記憶を取り戻し、君の元に来てくれたけどね」
優しげな彼の声が、あたしの心を見透かすように、ささやき声に変わる。
「でも、それは君に対するただの同情でしかなかったんじゃないか?」
全身が、小刻みに震えていた。それは、いつもあたしの心の中にあった疑問だった。
「違うっ!!」
ヒロが叩き付けるように叫ぶ。
「そうか? 本当に胸を張ってそう言えるのか?
じゃあお前は、今は来栖川綾香の事を愛していないのか?」
今度こそ、ヒロは言葉を失った。唇を噛み、鋭く見据えていた視線を外す。
自然と、あたしの顔に笑みが浮かんでいた。壊れたような、どうでもいい笑みが。
わかってた。でも、認めたくなかった。
あたしは、ただのピエロでしかないって事を。
22藤田浩之@弾劾:01/10/15 11:14 ID:hjeP/VAp
何でだ。
志保が、笑みを浮かべていた。それも、普段のこいつからは想像もできないような、
暗い、虚ろな笑み。ぽっかりをあいた穴を連想させるような、そんな表情を見ていたくなくて
俺は志保から目をそらした。浩平の目が、声が、鋭く俺を貫く。
「お前は何を望んでいるんだ、藤田浩之? 愛するものを失った。だから?
その代わりを手に入れたら、もう満足なのか? もう昔の女の事は、どうでもいいのか」
違う。俺は、確かに綾香のことを愛している。今でも。
でも、志保の事も確かに愛してるんだ。
「そうか? 彼女が綾香に似ていたから。だから」
「うるせえっ!!」
俺は激情のままに叫ぶ。だが、折原の声は、まるで断罪の剣のように、俺の耳に届いた。
「だから、お前は志保を、綾香の代わりでしか愛していない」
「違う、違う違う違う違う、俺は、俺はそんなゲス野郎じゃねぇっ!」
「違わないな。だったら何故、お前は綾香と志保を間違えたんだ?」
「………!!」
俺の横で、志保がびくり、と身体を震わせる。
「お前は、ただ綾香の代わりが欲しかっただけなんだよ。誰でも良かったんだ。
綾香、と呼べば来てくれる女なら。ひととき、心を癒す糧となるなら」
志保は、何も言わなかった。ただ唇を噛み、俯いたまま肩を震わせている。
「…何で…何で何もいわねーんだよ、志保。お前らしくないじゃねーか!
いつもなら、俺を思い切り怒鳴りつけて、大声でわめいたり責めたりしねーのかよ!」
「……して欲しいの、ヒロ……? そうよね、責められた方が、気は楽だもんね」
「な……」
「知っていたのさ、彼女も。お前が本当に愛している人間が、誰なのかを。お前と俺と、どこが違う?
同じだ。お前も自分の為に、自分を愛してくれる者を、踏みにじってるんだ」
俺は、何も言えなかった。全身から、闘気が抜けていく。頭の中に、折原の声だけが響いていた。
脳に、白いもやがかかる。それは俺の意識を埋め尽くし、消し去っていった。
23名無しさんだよもん:01/10/15 11:16 ID:hjeP/VAp
てなところで回し。
24名無しさんだよもん:01/10/15 11:18 ID:hjeP/VAp
コマーシャルはいります。回し。
25名無しさんだよもん:01/10/15 11:21 ID:hjeP/VAp
回し不要ですか?
26折原浩平@HAPPY?:01/10/15 19:56 ID:nTGKlPeK
「……だからって勘違いはするなよ。
 誰が悪いわけでもない……これは、欠陥品をつくった神のせいだ」
 彼、折原浩平は口を開いた。滑るように言葉が吐き出されていく。
 諦めであろう。視線は冷たく前を見つめる。瞳には誰も映さないというのに。
「……悲しみは、どうしようもない。人はいつか死ぬんだ。留めることは出来ない」
 永遠は求められたから存在しようとした。罪の始まりはそこからだった。
「……終わらせよう。誰でもない……俺のために、この世界を終わらせてくれ……」
「死にたいなら、てめーがひとりで勝手に死ねやっ!」
 炎のゆらめきが迸って彼を襲う。保科智子と河島はるかの姿が見えた。
 だが炎は届かない。永遠が彼を包み込んでいる。
「……記憶だよ」
 何事も無かったように、遠い眼差しで彼は語った。
「……月は、悲しい思い出に押し潰された。地球も時期、そうなる……」
 頭上には巨大な満月があった。視線の先はそれ――
「……いや、本当はもう地球は支え切れないくらいの悲しみで一杯なんだ」
 語る言葉は少ない。途切れてしまうのは悲しいから。
「人は、思い出だけでは生きていけない。
 いつでも悲しみが側にあるから、思い出が無くては生きていけない」
 ただ、残された記憶を上回るほどの悲哀があったなら、何に縋ればいいのだろうか。
「……人は、星の記憶まで喰い潰してしまうんだ。永遠は、それなんだ」
 彼は、手を上げた。
「……水の星に終わらない夢を見させてやろう」
「――勝手な言い草!」
 保科智子の炎が彼に向かって飛んでいく。
「……星の記憶に幸せを。人の死した思い出を。悲しい夢は二度と生ませはしない」
「智子――!」
 河島はるかの悲鳴があった。尻尾に貫かれた無残な姿が残された。
「折原浩平……あんただけは、許さないから!!」
 どこからか、声。また戦いの予感……。
27折原浩平@HAPPY?:01/10/15 19:58 ID:nTGKlPeK
>25
 二三回でいいかと思うだよもん。
28名無しさんだよもん:01/10/15 19:59 ID:nTGKlPeK
くっきー失礼だよもん。
29長岡志保@弾劾/2:01/10/16 12:51 ID:HKuWTOzu
ゆっくりと、ヒロの体が倒れ伏した。どさ、と音を立てあたしの足元の横たわった。
「ヒ……ロ……?」
かちかち、とおかしな音が聞こえる。
鳴っているのは、あたしの歯の音だった。
身体が、全身が、震えに包まれている。ヒロの虚ろに開いた瞳には、何も映ってはいない。
足から、力が抜け落ちた。どさ、とヒロの横に膝をつく。
「なんで……どうして?」
眉を寄せ、辛そうに見ていた留美が、顔をそむけた。
わかんない。わかんないわよ、ヒロ。どうしてあたしを置いて行っちゃうのよ?
ずっと一緒に居て、あたしの事守ってくれるって言ったじゃない。
握り締めた手のひらに爪が突き刺さり、鈍い痛みと共に、血が滴り落ちた。
「智子――!」
悲痛な叫びが、あたしの鼓膜を打った。聞いた名前だった。
でも、それもどうでも良かった。失われたヒロの心は、どこに行ってしまったのだろう?
ただその事だけが、頭の中をぐるぐると回る。
「―――――――」
「えっ……?」
ふと、誰かに名前を呼ばれたような気がして、あたしは顔を上げた。
でも、それは錯覚だろう。皆、“みちる”と戦うので手一杯のはずだから。
「―――――――」
また聞こえた。でも、言葉じゃない。それは、ただの意思だけが伝わってきたような感覚だった。
「誰よ…?」
ぼんやりとあたしは周囲を見回す。だが、そこには何もない。
ただ、頭の中にやり方だけが残っていた。次第に意識がはっきりしていく。
そうだ、こんな所で、不抜けてる場合じゃない。
もし間違った道を進もうというのなら、横っ面引っぱたいてでも連れ戻す。
留美に言った言葉に、嘘はないんだ。
30裏葉@弾劾/2:01/10/16 13:21 ID:HKuWTOzu
閃光が、ものみの丘を貫いた。
七瀬様が、目を見開く。だが、驚愕は彼女だけのものではなかった。
「お母様……?」
そこにいたのは、わたくしの母、九尾・沢渡真琴ではなかった。
九尾より生まれ、千年を母と共に過ごし、今目覚めたもう一人の沢渡真琴。
「折原浩平……あんただけは、許さないから!!」
毅然としたまなざしで、『真琴』が地を蹴った。目指すは、折原浩平。
だがその前に、“みちる”が割ってはいる。
「どけえぇぇぇぇぇぇええっ!!!」
『真琴』の尾が旋回し、“みちる”の九本の尾と激突した。
凄まじい衝撃音と共に、溢れたエネルギーが空へと吹き上がる。
四精の尾・次元の尾・魂凪の尾・慈悲の尾・断罪の尾・魔水の尾・光月の尾
そして、無限の尾と真実の尾。九本の尾と尾がぶつかり合った。
“負”により増大された“みちる”の尾の力と、『真琴』の尾の力は互角だった。
だが、“みちる”にはまだ翼人の翼がある。
翼がはためき、眩く輝く剣が、『真琴』を断ち切ろうと動いた。
しかし、その翼を受け止めた尾があった。一際強く輝く、見たこともない尾。
十番目の、存在しないはずの狐の尾だった。
ただ一本で、その尾は翼人の全ての力を受け止めている。
まだだ。“みちる”が力比べをしながら、小さく呪文を口ずさむ。
「――空を諌める鎖は解き放たれたし。星に心あるなら翼人$_奈の名をもって応えられたし。
天は光。大地は気。海は命。育まれた記憶は我にあり。星の意思はここにあり――」
「天之御劔か!?」
横で成り行きを見守っていた柳也様が、はっと目を見開いた。
「いけない、このままでは防御もできずに直撃するぞ!!」
“みちる”の前に光り輝く剣が現れる。
31裏葉@弾劾/2:01/10/16 13:36 ID:HKuWTOzu
だが、それが発射される瞬間、膨大な炎と霊光が両者を退かせた。
「あちちちっ!!」
『真琴』が髪に燃え移った炎に、悲鳴を上げる。
「はぁ、はぁ、はぁ……どうや、長瀬流炎殺拳最終奥義<メギド・ブレイク>は…」
「援護にしては、少し乱暴でしたね」
「やかましいわい。あんたこそ、“影”とはいえ、私を助けるとは、どういう風の吹き回しや」
「いえ。治療できる者が他に居なさそうでしたので。迷惑でしたか?」
穏やかに微笑む秋子さんに、智子さんは眉根を寄せて、顔をそむけた。頬が少し赤い。
「智子さん、まだいけますか」
彼女にしか聞こえないように、小さな声で秋子さんが囁く。
「誰にいっとるん。まだまだこれからや」
「じゃあ、河島さんと一緒に、少し長岡さんをフォローしてあげてください」
「長岡を?」
ちらり、と秋子さんが彼女のほうに視線をやった。
「藤田さんの心に潜るようです」
「マインドダイヴか!?出来るのか…?下手すれば、そのまま帰ってこれへんで」
「今は、彼女を信じるしかありません」
「………了承や」
にや、と笑って、智子さんはぱっと走り出していた。
32名無しさんだよもん:01/10/16 13:36 ID:HKuWTOzu
まわしますよ〜
33名無しさんだよもん:01/10/16 13:38 ID:HKuWTOzu
回転
34名無しさんだよもん:01/10/16 14:04 ID:mz9Sxlxb
まだ回します。
35名無しさんだよもん:01/10/16 14:09 ID:mz9Sxlxb
こんなものでしょうか。ではage
36名無しさんだよもん:01/10/16 22:51 ID:PVuPngfg
保存sage!
37名無しさんだよもん:01/10/17 10:11 ID:XEXH3FOT
メンテsage
38雛山理緒@眠り姫:01/10/17 13:56 ID:Wp0Z9hqe
「誰かいませんかー?」
 理緒は病院内を歩き回っていた。
 もうすぐここは放棄されるので残っている人がいないかの最終チェックだった。
 実は危ういところで、久瀬という人を置き去りにするところだったらしい。
「うん、もう大丈夫だよねっ!」
 理緒はひとりで安堵の息をつき大げさに胸を張った。
 やはりひとりきりの病院は寂しいし怖い。
「……え?」
 が、戻ろうと踵を返したところで、目に入ったのは古びた病室だった。
 404号室。ネームプレートのところには、誰の名前もなかった。
「……あれ? どうしてこんなところに……?」
 理緒の記憶では、ここに病室は無いはずだった。
 ちょっと考えてから、恐る恐る理緒はドアを開いてみた。
「……風?」
 窓が開いたままになっている。部屋にはぽつんとベッドが一つだけ。
 でも、誰の気配もそこには無かった。
「…………」
 ひととおり視線を巡らせてから、理緒は部屋のドアを閉じた。
 誰もいなかったのだから、当然だった。
「さあ、次の階も見て回らないと」
 ヘンな違和感もあったが、理緒は立ち去っていく。
 その部屋にある羽に気づかないで、ベッドの温もりも気にしないで。
「……ボクのこと、忘れてください」
 希望はどこに眠っていたのか。見つけることが出来たのか。
 答えは、少女の中に。
 ――今も眠っている。
39名無しさんだよもん:01/10/17 14:01 ID:Wp0Z9hqe
回しだよもん。
40名無しさんだよもん:01/10/17 14:03 ID:Wp0Z9hqe
もう一回だよもん。
41スフィー@ペンタグラム(1/4):01/10/17 16:09 ID:Wp0Z9hqe
「お前らの命、俺に……預けてはくれねーか?」
 聖たちの視線を受けて妙に馬鹿笑いしたい気分になった。
(……俺もとうとう焼が回ったな……)
 何を口走っているのか分からないわけでもないのに、口だけは動いた。
「簡単に言うぞ。物の怪の丘は最悪の事態に陥った」
 俺は集まってる奴らに説明してやった。
 どれだけ丘が負で満ちているのか。どんなに永遠は世界を恨んでいるのか。
 翼神獣のことも話した。九尾より強力な存在があることを。
「ただ、俺にも秘策がないわけじゃない。つまり……邪法だよ」
 グエンディーナでも禁忌とされている魔法を使う。
 簡単なことだ。能力者の力を巻き上げて魔方陣の力を強固なものにする。
 術者はもちろん他の能力者の命の危険は免れない邪法。
「姉貴! 何言ってんのか分かってんのか!」
「言われなくても分かってる。他に方法が見つからなかっただけだ」
 努めて冷静に言う。別の策があるなら言ってみろと裏には込めたが皮肉にしかならない。
「ちっ、勝手にしろ!」
「……すまねーな、リアン」
 いやリアンは俺を攻めてくれるだけマシだった。
 他の奴らはどうだろう? もうすぐ避難が出来るという矢先でのこれだ。
 志気は完全に削がれている。大体、俺だって怪しいもんだろう。
 他人のために命を懸けるなんてポリシーに反してる。一銭の儲けも無いのだ。
(だがな……)
 ここで知らない振りしてる方が絶対信条≠ノ反することになる。
 あいつらはまだ戦っているんだ。
(後は任せたなんて、出来るかよ!)
 たとえひとりの協力者だって出なくても俺はやる。
 俺だけでもやってやる。
「そうすることが、俺のやりたいことだからだ!」
 自分が、自分であるために……。
42霧島佳乃@ペンタグラム(2/4):01/10/17 16:11 ID:Wp0Z9hqe
 スフィーさんの話は難しいことだらけでよく分からなかった。
 ただ、あたしでも理解できたのは、それをしないと今まで頑張ってきた意味がなくなるんじゃないかってこと。
 命を懸けることは、そんな簡単なことではないと思う。
 誰かに流されて受け答えできるものじゃないし、誰かに言われたからでも駄目なんだと思う。
「……いいよ」
 でも、あたしはそう答えていた。
 スフィーさんの話は難しくてよく分からなかったけど、あたしにでも出来ることがある。
 今やらないと、きっと後悔してしまう。
「あたし、やるよ」
「佳乃……」
 お姉ちゃんがあたしを見る。
(……もしかして怒られるのかな?)
 そこであたしはくすっと笑ってしまった。
 どうしてだろう? よく分からないや。
「……佳乃、大人になったな」
 お姉ちゃんが優しく微笑んでくれた。
 ちょっと複雑そう。笑ってるのに泣いているように見えたから。
「うん、もう魔法は使えないけど、夢に見れないけど……」
 あたしは、もっともっと笑っていたかった。
 こんな悲しい戦いの中だったから。
「あたしは、あたしでいたいから……」
 みんなの視線があたしに集まっていた。
 ちょっと恥ずかしいかも……。
「あい、分かった。私も協力しよう。スフィー、私の命……確かにお主に預けるぞ」
「だ、駄目だよ、お姉ちゃんまで! 死ぬかも知れないんだよぉ!」
「馬鹿者! それはこっちの科白だろうが!」
「あたしは、馬鹿でいいんだよ。だから、お姉ちゃんは駄目なのぉ!」
「……ほんとに馬鹿だな。お前は私の妹なのだろう? お前の姉も馬鹿ということだ」
「お姉ちゃん……」
 我慢していたはずなのに、結局、あたしは泣いてしまった。
43柏木千鶴@ペンタグラム(3/4):01/10/17 16:16 ID:Wp0Z9hqe
(……強いわね、あの子……)
 私は強くはないと素直に認めることにした。
 今も耕一さんを連れて逃げ出せるならと思っている。
(……もう充分に頑張ってきたじゃない……)
 訳の分からない戦いにいつの間にか巻き込まれて傷ついて初音を失って……。
 まだ、耕一さんは知らないし、楓も梓も知らないし、抱えているのは私ひとりだけだし……。
(私は耐えられないのよ……そんなことは二度と……)
 逃げ出したい。遠いところに行ってしまいたい。
「……あたしもいいぜ」
「梓!」
 私は驚いて梓の肩をきつく掴んでいた。
「――私は許しませんよ!」
「いいぜ。いやそのつもりだよ……」
 梓は言う。決して揺らがない瞳で私を見つめていた。
「耕一のこと……楓のこと……そして、初音のこと……頼んだぜ、千鶴姉」
「……そ、そんな」
 どうしてこの子はこんなにも笑顔でいられるんだろう。
 私の笑みとはまったく異なってる。
「……梓」
 言葉が続かなかった。
 ――私にはこの子のように誇れるだろうか?
 戦いを捨てて、仲間を見捨てて、どこかに逃げてしまって――
 胸を張って言える? 耕一さんのこと好きだって。
「……叔父様に笑われてしまうわね」
「……千鶴姉?」
「分かったわ。私もこのままでは終われない。協力するわ」
「ばっ、馬鹿を言うんじゃねえ! じゃあ、耕一と楓の面倒は誰が見るんだよ」
「この戦いに生き残って、二人で見ればいいじゃない」
 私は笑った。梓の今の顔ったら可笑しい。ほんと、可笑しい……。
 涙が出るくらい笑ってしまう……。
44石原麗子@ペンタグラム(4/4):01/10/17 16:22 ID:Wp0Z9hqe
「どうせ、皆も協力するつもりでしょう?」
 私は愉快に皆の顔を見回した。
 蝉丸。月代。夕霧。他にも祐介君や瑞穂さんに香奈子さんと言った面々があった。
「物好きの集まりよねー」
 サラさんにメイフェアさんもそうなのだろう。
「これは私も腰を据えてやらないと駄目みたいね、馬鹿ばっかりだし」
 岡田さんに冬弥君も嬉しそうに頷いている。
「あーあ、これで俺も逃げられねってわけかよ。ついてねー」
 リアンさんがぼやいている。決して満更ではない笑みを浮かべて。
「私もかよ。ついてないのはこっちの方だ」
 長谷部さんも笑っていた。ここでやめるくらいなら初めから訪れていない。
 北の街のもうひとつの名前は奇跡の街なのだから。
「ばかやろうどもが……」
 スフィーが踵を返した。皆に背を向けている。
 きっと見られたくないものが頬を伝っているのだろう。
「なんやなんや泣いてんのか!」
 車が止まってそこから関西弁の女の人が降りて来た。
「誰や! こんな子供泣かしたんは! 出て来んかい! しばいたる!」
「……子供じゃねーよ」
 神尾晴子、牧村南、橘敬介、坂下好恵さんらが首を揃えている。
「……まったく最悪のタイミングよ、貴方たち」
 私が言うと、素頓狂な表情をしてくれる。
 でも確かな予感があった。彼女らもきっと手伝ってくれるって。
「命を懸ける戦いに参加してみない?」
 冗談めいた口調で私は言う。
「ええで。観鈴のためになるんやったらいくらでも命くらい懸けたるわ」
 にっと彼女が笑う。どうやら私の勘は外れてないようだった。
「よろしく晴子さん、私の名前は……」
 まだまだ世の中って捨てたものじゃないみたい。
45名無しさんだよもん:01/10/17 16:24 ID:Wp0Z9hqe
今のBGMはAIRnessだよもん。
46名無しさんだよもん:01/10/17 16:26 ID:Wp0Z9hqe
すっごくいいもん。筆も感じよく進むだよもん。
47名無しさんだよもん:01/10/17 23:05 ID:USphD4Yf
BGMとは!
案外思いつかないものです……イイナ!!
物語りも急展開、BGMでも流して逝きましょう。
48名無しさんだよもん:01/10/18 14:04 ID:ClxU+fsJ
保存sage!
49みちる@ブレインパニック!:01/10/18 20:38 ID:o5DzoD70
「へぇ……」
 体に纏わり付いた炎を見てみちるは薄く笑った。
「結構、やるのね……」
 保科智子を見て逡巡した後、真琴へと視線を戻す。
「でもね、決定的に差があること……気づいてないのかしら?」
「なによ! あなたなんかに真琴は負けないんだからねっ」
「……幼すぎですよ、貴女では、ね」
 颯爽とみちるの九尾が紅色に揺らめいた。
「椎名繭の頭脳……」
「――――!?」
 真琴は得体の知れない恐怖を感じて後ずさりしてしまう。
「見せてあげる、格が違う――ではなく、次元そのものが違うってことを!」
 みちるの眼が妖しく輝いた。美しい指先が前方を指す。
「――あ、あそこに肉まんが落ちてるっ!」
「え? どこどこっ!?」
 バコン!
「あぅーっ、痛いじゃない! 何すんのよ!」
「あっ! 真琴の後ろに――」
「う、後ろに……なによ?」
「――オレンジ色のジャムが!?」
「う、うそー!」
 ドカン!
「……嘘に決まってるでしょう?」
「あうーっ、痛いいたい!」
 真琴は顔を尻尾で弾かれて塞ぎ込んでしまう。
「まあ、私の演技力を持ってすればこれくらいは容易いものです」
 自信満々に言い切るみちるを見て、皆は思った。
(……椎名繭の頭脳って一体……?)
 みちるに突っ込めるつわものは、そこに居なかった。
50名無しさんだよもん:01/10/18 20:40 ID:o5DzoD70
ときどき無性にボケたくなるだよもん!
51名無しさんだよもん:01/10/18 20:41 ID:o5DzoD70
こればかりは性分なので仕方ないだよもん!
52名無しさんだよもん:01/10/19 09:19 ID:cAAWRN21
保存sage!
53名無しさんだよもん:01/10/19 16:03 ID:WI8NS8JK
ようやく外伝終了です〜
これでようやく、本線に全力投球できます…はい。
54名無しさんだよもん:01/10/19 22:53 ID:/iVW+XfN
>53
お疲れだよもん。ついでにメンテだよもん。
55名無しさんだよもん:01/10/19 22:54 ID:/iVW+XfN
今日は書ききれなかったので明日にするだよもん。お休みだよもん。
56名無しさんだよもん:01/10/20 00:49 ID:sF16vvAy
頭脳と言いつつ使用してるのは演技力
57名無しさんだよもん:01/10/20 14:59 ID:RxmgK7uc
メンテメンテ。
58名無しさんだよもん:01/10/20 18:26 ID:LXgF2Xrm
sageときますか。
59名無しさんだよもん:01/10/20 23:58 ID:aMxnCUx2
保存。
60名無しさんだよもん:01/10/21 03:05 ID:mLWIyoVz
みちるはゴットハンドの能力は使えないのかだよもん?
61名無しさんだよもん:01/10/21 08:34 ID:jN0n6Ip8
>60
使えるはずだよもん。
62名無しさんだよもん:01/10/21 17:33 ID:ETGyWHNV
眠たいだよもん。今日の夜か明日の朝には書き込みしたいだよもん。
63水瀬秋子@霊夢(1/5):01/10/21 23:32 ID:5U1Lgzw1
「……お母さん?」
「ええ、そう。今日から私が貴方のお母さんよ」
 過ぎた日の思い出が脳裏に甦る。私はその科白を長い生涯で二度だけ口に出した。
 ひとりは雪の少女。もうひとりは月の少女。二人とも大切な私の子供。
「今は、もう遠い昔のことになるのかしら……?」
 私は首を傾げてみた。次に笑う。枯れ果てたはずのものが今は胸に中にあるから。
 空を見上げてみる。月だ。どこまで紅い月が頭上で縁を描く。
「月の宮の巫女なんて……嘘ですよ」
 未来永劫に続く闇の中に月は存在していた。
 月に記憶はない。だが月に意味を求めたものがいるのは確かだろう。
「……悲しい記憶は、どこから来たのでしょう?」
 吐く息は白く乱れていく。雪はやまない。これは心の象徴ではないか。
 疑問を持つこと。始まりがそれなら、終わりはどこにあるのか。
「……私に伏龍と言わしめたあの子なら、知っているのかもしれないわね」
 私はあの子の顔を思い浮かべてみた。瞼の裏に映ったのは年に見合わない表情をするただの女の子だった。
 険しく。凛々しく。尊く。
「……それに、儚くて、脆い硝子のような……」
 星の記憶を見たあの子は唯一、私と同じ痛みを知っているのだろう。
 始めは足。次は背中。在りもしない痛みを感じるようになる。
「そして……記憶を失っていく。大切な人のことさえ思い出せなくなる」
 代償だ。星の記憶を垣間見た報いだろうか。
「人の身で、悲しみは受け入れられない」
 邪眼とは神眼の意をもつ。全てを見通す眼と言えば聞こえはいいだろうけど、
 実のところは盗み見がいいところだった。
「長くは無かった……そうなんでしょう、椎名繭。……私と同じように、ね」
 力はただ悪戯に私を蝕んだ。星に触れる力はとてつもない。
 病んでいたのは私に他ならない。
「お母さん……お母さん……お母さん……」
 聞こえる。あの子の声が。小さく震える弱々しい声が。
 私の愛しい子供、あゆの泣き声が。
64水瀬秋子@霊夢(2/5):01/10/21 23:37 ID:5U1Lgzw1
「もう、千年も前のことじゃない……」
 いかほどの歳月だったのだろう。あの子を探してどれくらいの冬が過ぎたのだろう。
 私のために奇跡を起こしてくれたあの子は今何処に?
 溜息だけが漏れる無限の回廊の中で、また雪の季節が訪れていた。
「……名雪、と名付けましょう」
 始めは戯れだった。いや寂しさに負けただけだろうか。擬似的な反魂の術を用いてしまった。
 高野の術が病気に優れないで斯様なことに真価を発揮するのは、創始者である私の不徳の致すところなのだろう。
 罪はいずれ術者である自分に還るとも知らないで。
 時間が過ぎ去っていく――
「……痛いいたい……お母さん、痛いよう……苦しいよう……」
 所詮は、不完全な術だったのだ。名雪は、成長という時の中で苦しみ始めた。
 幼い頃なら私の命を注ぎ込めば何とか生命の維持は出来た――が、今はまったくもって徒労でしかない。
 名雪が成長するたびに、必要な力は増していく。そして、人は日々いつも、成長していく。
「――名雪!?」
 そのことに気づいたのは、もう手遅れの時期であった。
 人には命を創れない。出来損ない生命は草臥れて死にいくだけだった。
 絶望は、そこで私を襲って来たのだ。
 途方に暮れていた。私の命が日々、削られていく。それはいい。
 だけど、私が居なくては名雪の力の源が無くなってしまう。
 目的が変わってきていた。私は自分のことより名雪のことを考えるようになっていたのだ。
「…………」
 私は決断した。他にもひとつだけ方法がある。
「誰かの命を犠牲にして……」
 最悪な決断だけが残されていた。しかし、選択の余地もなかった。
 全ては名雪のために。私の大切な子供のために。
 今更だ、と私は自分に嘘をついた。邪術士と恐れられた自分なのだ、と。
「…………名雪が泣いてる」
 暗くなるのを待ってから私は街に飛び出した。
 ――獲物を求めて。
65水瀬秋子@霊夢(3/5):01/10/21 23:38 ID:5U1Lgzw1
 牙が動いた。牙とは術者の術のことを指す。私は結界を張った。
 網だ。蜘蛛の巣だ。捕らえる。名雪の年に近い年齢の子を探して生命を搾り出してやる。
 それでも足りなければ、いくらでも狩ってやる。罪の意識は、名雪の笑顔を拭い去ってくれる。
 私の心は負≠ノ染まり始めていた。反転。今までとは違うこの負≠ヘ無限の闇だ。
「――構うものですかっ!」
 私は一軒の家に忍び込んで子供を捜した。結界が張ってあるので誰も私には気づかない。
 暗い部屋。眠った子供。幼い寝顔。それは何よりも得がたい宝石のようで。
 ――手が振り下ろされた。
「…………」
 どれほどの時が流れたのか知るよしもない。いくら時が流れても私はピクリとも動けなかった。
 すやすやと寝息を立てる子供の前で呆然と立ちつくす。
「ごめんなさい、名雪」
 膝を、付いていた。気が付くと泣いていた。自分の凶行か。それとも名雪の結末を察してか。
 もしかすると、生命の尊さに気づいてか。どちらにしろ、私はそれまでだった。
「……名雪と一緒に、居よう」
 最期まで名雪を看とって、共に朽ち果てよう。
 それで、終わろう。私の生を。そう、私が決意したときだった。
「……良かったわ。貴女と戦うことになってたらと思うと、ぞっとしないわ」
「……だれ?」
 気を張る必要はもうない。私は前に進むことを決めたのだから。誰に恥じることはなかった。
「誰と問われて名乗るのも恥ずかしいものね。でも、私は貴女のこと知ってる。じゃあ、名乗るべきなのよね」
「…………?」
「いえ、ごめんなさい。気にしないで。説法みたいなものよ。あれ? ちょっと違うかも。まあ、いいか。
 では改めて……初めまして水瀬秋子さん、私は高野の大僧正、小坂由起子です」
「……高野?」
 懐かしい土地の名前を聞いて、私は驚かないでもない。
 ただ、私を狙うものが多いのも、また事実。油断大敵であることは……。
「よろしく、秋子」
 あることは間違いないはずなのに、私は不思議と安堵感を覚えていた。
66水瀬秋子@霊夢(4/5):01/10/21 23:42 ID:5U1Lgzw1
 時が流れていた。
 今までの想いが嘘のように晴れていた。
「負の影響は、邪術士の貴女も例外ではないのよ」
「そうね……認めるわ」
 あの時から始まった約束は私と名雪に希望を与えてくれた。
「秋子には悪いと思っているわ。でも事は急を要するのよ。あの子たちのために私が終わらない夢≠終わらせたい」
 唯一、友と呼べた人、小坂由起子。
 彼女はもう居ないけど、私に残してくれたたくさんの思い出と、託された約束はまだ胸の中にあった。
 所詮、『輪廻転生回転丹<枝伝>』は時間稼ぎにしかならないのだから、永遠を求めるしかない。
 星の記憶に、名雪の存在を確たるものにして、書き込んでしまおう。
 永遠はありえない事情こそが望まれた世界。望まれたなら永遠はそこにあろうとする。
「どうしたの、祐一?」
「大きなオデンダネだろう? 今日の晩飯だ」
「うーん、これって食べらるのかなー?」
「あら、大きなオデンダネを買ってきたのね、祐一さん」
「……いえ、すみません。冗談です」
 しかし、いつからだろう。この時が永遠であって欲しいと願ったのは。
 名雪が居て、祐一さんが居て、真琴が居て、私たちは誰にも恥じることのない家族であって。
「うぐぅ、祐一君のいじわる〜」
 そして、あの子と出会った奇跡の街で。
 私は確かに安らぎを感じていた。それを言葉にするなら幸せ≠ニいうことだろう。
 二度と出会えないと思っていた月の少女。
 私に人間らしさを思い出させてくれた雪の少女。
 家族の素晴らしさを教えてくれた狐の少女。
「祐一さん、あゆちゃん、今日はとても特別な日ですよ」
 私が笑うと応えてくれる。側に居ると笑顔を見せてくれる。
「丁度、千年ですよ。あなたたちにとっても」
 あゆの誕生日。私とあゆが家族になった日。大きく月が新円を描いていた。
「そうね、今は何のことか分からなくてもいいわ。でも、これだけは知っておいて欲しい」
 北の街の、もうひとつの呼び名を。
67水瀬秋子@霊夢(5/5):01/10/21 23:48 ID:5U1Lgzw1
「ふふっ、苦戦しているようですね、真琴」
 私はみちると真琴の間にふわっと空から舞い降りた。
「……秋子さん?」
「ええ。元気そうでなによりね」
 あの時と変わらない家族としての笑みを浮かべて私はそこにいた。
 月の狂気に打ち勝つ力。心のもっとも深いところにある。
 ――ちりーん。
 鈴の音が鳴り響く。ずっと真琴が持っていた約束の音色。
「お互い苦労しどうしでしたね。月の狂気……ここまで来れば見事、という他ないでしょう」
 物腰柔らかに祐一さんを見つめる。彼もまた、今は月のとりこ。
「しかし、それまでですよ。私の家族をこれ以上、傷付けさせはしませんっ」
「……秋子さん!」
 涙ぐんで駆け寄ってくる真琴を私はそっと抱き締める。彼女もまた私の大切な家族ほひとりなのだ。
「それと、影というか……なんとうか、まあ、いいわ。由紀子も、いいわね?」
「……ええ、ようやく約束を果たせるわね」
 水瀬秋子の姿をした影が私に向かって穏やかに笑ってみせた。
『相互供給型連動式秘術<比翼>』そういうことだ。
 私は影を取り込んで、あのときから封印していた忌まわしき力を開放させる。
「――邪眼!」
 瞳に似せた紋様が額に浮かび上がる。
 邪眼とは、誰よりも先に永遠を見ることになった痕のことだ。
「永遠は、何も貴方だけの専売特許ではありませんよ」
「ふん、おもしろい」
 祐一さんの姿をした『MOON.』は嘲笑した。
 戦いはこれから。
「私の本当の力を見せて上げます」
終わらない夢≠ここで終わらせる為に。
 約束を果たす為に。
「さあ、終わらせましょうか……未来は輝いています」
 サード・アイが解き放たれた。
68名無しさんだよもん:01/10/21 23:49 ID:5U1Lgzw1
外伝っぽく仕上げられたならいいなと思って書いただよもん。
69名無しさんだよもん:01/10/21 23:51 ID:5U1Lgzw1
では落ちるだよもん。
70吉井ユカリ@夕暮れ(1/4):01/10/22 02:43 ID:kiOB+lxQ
 時計を見ると既に19時を廻っていた。
 私はひたすらペンションの入り口で待っていた。
 彼の地の方角に通じる道を……。
 しかし……予定の時間はとっくに過ぎていた。
 私は苛立ちながらぽつりと誰に言うわけでもなく呟いた。

「……スフィーさん……何をしているの?」

 いくら夏に近い時期とはいえ、太陽はすっかり西の方角の山々へと姿を隠している。
 段取りでは18時までに彼の地にいる怪我人を連れたトラックが2台来るとなっていた。
 その後でスフィーさんらもここに避難してくる……はずだった。

 だが、約束の時間から1時間――トラックはおろか人すらこない。
 聞こえるのは虫の音だけ。
 彼女らの身に何もなければ……いいのだけど……。

 一旦ペンションの中に引き上げようかと思った時、遠くから車のエンジン音が聞こえて
きた。慌ててその音のする方角に顔を向ける。

 音がしたのは彼の地とは正反対の方角だ。
 じっとその方向に目を凝らしていると、1台の白いワンボックスカーがこちらに近づ
いてくるのが見えた。遠くに見える山道をゆっくりと走っていたが、数分もしないうち
にその車はペンションの前で停車した。
 そしてその運転席から顔を覗かせたのは……。

「やあ、お久しぶり。ちょっと言ってた時間より早く着いちゃったけどね」
 眼鏡をかけた桃色の髪の、私のかつての師は笑顔を見せていた。
71吉井ユカリ@夕暮れ(2/4):01/10/22 02:45 ID:kiOB+lxQ
 清水さんは運転してきた車を駐車場に停めると車から飛び降りた。
 それと同じく助手席のドアも開き、中から一人の女の人が出てくる。
 先ほど、清水さんから掛かって来た電話の内容から、対策本部の杜若さんと認識するの
にそんなに時間を要しなかった。

「さすがに長旅は疲れるね〜」
 清水さんは大きく伸びをすると懐に手を突っ込んだ。煙草のソフトパックを取り出すと
そのまま1本を口にくわえて火をつけていた。
「クールのキングサイズですか。吸い応えがあるのですか?」
「もちろん。一遍吸ってみたらどう?」
「いいえ、今はいいです。持ち合わせはありますし……」
「そっか、杜若はたしかマルボロを吸ってたんだよね」
 その言葉の通り、杜若さんが懐から取り出したのは緑のマルボロのソフトパックだった。
「マルボロか……」
 清水さんはそう呟くと遠い目をした。
「何か気になることでも?」
「いや、なんでもないよ」
 清水さんは何事もなかったかのような顔に戻り、のんびりと煙草をふかしていた……。

 ――って、おい!!
 私は思わず怒鳴ってしまった。
「ちょっと! スフィーさんらの事は気にならないのですか!?」
72吉井ユカリ@夕暮れ(3/4):01/10/22 02:46 ID:kiOB+lxQ
 一瞬、二人はその場に固まって私を見た。
 だが、すぐに平静を取り戻したらしく、手にしていた煙草を口にくわえる。
「スフィーの事だね……」
 清水さんは口にくわえていた煙草をシガレットケースにしまい込んだ。
「彼女からは少し前に連絡があったよ。
 なんでも避難は取りやめて、邪法を施す準備をしてるって。なんでも能力者全員を巻き
込んだ禁断の技を使うという事だけどね」
 あくまで冷静なまま……いや、さながら他人事であるかのように話し出す。
 昔からの親友に対しそんな態度を取る清水さんの話を聞いていて、私は怒りを覚えた。
「それだけ? まるでスフィーさんの事なんか知ったことじゃないような言い方ですね?」

「……のう、吉井」
 途端に清水さんの口調が変わった。先程まで浮かべていたのんびりとした表情はすでに
なく、じっと私をにらみ付けていた。
 どうやら……"マジで"キレてしまったみたい……?
 私は自分の発言に対して思い切り後悔した。
 あたふたしている私を前に清水さんはゆっくりと口を開く。
「……随分、乱暴な論理やのう……。何をどう考えたらスフィーの事なんか知った事じゃ
ないって結論に至るのかのう……」
 ガラの悪い関西弁で呟く。目はいまだに私を睨み付けたままだった。
「……まあ冷静な振りをしていたわしもわしやがな。
おのれもわしも焦ってるから無理はないがな……」
 彼女はそう呟くと普段どおりの穏やかな顔つきに戻った。幼さがにじみ出ているその顔
から先程のガラの悪いやり取りが想像できないぐらいに。
73吉井ユカリ@夕暮れ(4/4):01/10/22 02:47 ID:kiOB+lxQ
「実を言うとなつきもスフィーの事は思い切り不安なんだ。彼女曰く、かなり危険な賭け
になるって言ってた。でもね……」
「でも?」
 私の問いかけに清水さんは思いつめた面持ちで空を見上げて話してくれた。
「今、スフィーらが彼の地を鎮めなければ誰がやるのかな……。
 そして、鎮める為に命を散らした人たちの想いを誰が継ぐのかな……?」
 私ははっとした。
 そのために彼女らはあえてリスクの高い大博打に挑んでいるんだ。
 そう――岡田だって立ち向かっているんだ。
 それに比べて私は……。

 次に私が言うセリフは自ずと決まってしまった。
「私……私も彼の地に……行きます」
「その言葉を待ってたよ。ただ……」
 清水さんが顔をほころばせて、さらに何かを言いかけたときだった。

 ――!!
 急にペンションの方から何か異様な雰囲気が漂い始めた。
 時間の流れがすごくゆっくりしたもの――いや、まるで時間が止まってしまったかのよ
うな感覚だった。
「これって……」
 杜若さんは何が起こったのか把握できないらしく、私と同様にただ戸惑っていた。

「おい……これって……あの時と同じ……」
 清水さんは即座にペンションの中に駆け込んでいった。
 私も杜若さんもそれを見て我に返った。すぐに後を追う。
74名無しさんだよもん:01/10/22 02:50 ID:kiOB+lxQ
彼の地の外での出来事で恐縮ですが書かせてもらいます。
75名無しさんだよもん:01/10/22 02:51 ID:kiOB+lxQ
あと外伝のほうも書きたくなってきたり。
76名無しさんだよもん:01/10/22 12:57 ID:JhcA1TVu
最萌トーナメントで、裏葉が負けちゃって悲しいだよもん。
でもそれにもめげずに続きを書くだよもん。
77里村茜@慟哭:01/10/22 15:02 ID:JhcA1TVu
それは、古き日の思い出。
それは、戻らぬ日の囁き。

「浩平……あなたのことが……ずっと、ずっと好きでした」

声にならない呟きは、風に飲まれ、宙を舞う。
あの日。私と七瀬さんとで、反魂の術を使った時から。
私の中の時は、止まっていたのでしょう。
私の視線は、今もなお眠りつづける美汐を、視界の端に捉えていた。
共に高野山で修行を続け、親友と呼べる関係になっていた、天野美汐。
彼女を止める事が、私の元々の目的だった。
……そのはずだった。
その為に、この槍を手にしたのに。

なんという残酷な運命が、私を取り囲んでいるのだろう。
愛する人のために、その身をささげること。
美汐の心を守るために、当の美汐を殺さなければならないこと。
そして……

「どいて……どいて下さい………お願いします」
私は七瀬さんに警告……いえ、懇願しました。
七瀬さんもまた、私と共に高野山ですごした、大切な人。
「だめだよ……これ以上茜に、辛い思いはさせられないから」
……きっと、今の私は、ありとあらゆる表情をしているのでしょう。
怒り、憎悪、悲しみ、絶望、歓喜……そして、狂気も。
七瀬さんを倒し、浩平を殺す。
何故、このような選択を、私は選ばなければいけないのでしょう……

愛する者をこの手にかける……それが、この私に架せられた罰なのでしょうか。
ずっと、ずっと逃げ続けていた、この私の……
78里村茜@慟哭:01/10/22 15:24 ID:JhcA1TVu
術士としての私は、人を殺したところから始まった。
相手は、狂気に堕ちた法術士。そして、私の幼馴染、司。
襲い掛かってきた法術士を、私は内に秘めていた力でもって、消し去っていた。
幼い子供だった私は、力を制御する術も持たず、司をも巻き込み、詩子にも心に深い傷を与えてしまった。
それから、私はその地を離れ、高野山で修行をすることになる。
この忌まわしい力を、少しでも制御できるように。

でも本当は、詩子のそばに居たくなかっただけなのかも知れない。
あの化け物を見るような瞳で、見られたくなかったからなのかもしれない。


反魂の術を使った時も、そうだった。
あれ以後、私は一層修行にのめり込むようになった。
もっと私に力があれば。もっと私が制御できれば。

でも本当は、考えたくなかったからなのだろう。
浩平が誰を愛しているか。浩平の心がどこに行ってしまったのか。

「逃げ続けてきた私には、いつも、過酷な選択ばかりが突き付けられて来ました」
私はふと、沢渡真琴の事、美汐の事を思い出す。
そう、彼女たちもまた、過酷な選択を強いられてきたのだ。
もう二度と逃げない。あの日、そう誓ったのだ。だから……
「七瀬さん……力を失ったあなたでは、私には敵いません。でも……
それでも敵対するというのなら………」
張り裂けそうな心を、意志の力だけで、心の深い深い闇の中に沈める。
「あなたも、殺す事になります」
79里村茜@慟哭:01/10/22 15:48 ID:JhcA1TVu
『物の怪の槍』が、手の中で震えるような音をたてる。
「……茜……」
七瀬さんの辛そうな顔を見ていたくなくて、私は全力で丘を蹴った。
力を失ったとはいえ、七瀬さんは、元ツインテールであり、九尾の右腕である。
私は槍の石突を、七瀬さんのみぞおちに滑り込ませた。
(お願い、これで終わって!!)
だが私の祈りも虚しく、七瀬さんは素手で槍の柄を掴んでいた。
「っく!?」
恐らく、妖狐であった頃の力の欠片を、精一杯燃やしているのだろう。
繭の持つパンドラの箱に力を吸い込まれた時から、彼女は人間として生きると、そう言っていた。
けれど、彼女の術士としての力は、私には遠く及ばない。
唯一私と、槍に対抗できる力……それは、かつて九尾に次ぐと言われていた、
最強の“双尾”七瀬留美の力を使うしかないのだ。
とはいえ……
「無駄です!!」
私は即座に法術の衝撃を放つ。とっさに飛びのいた七瀬さんに、私はさらに追いすがる。
「呪・硬・縛・聖……護法峰陣!」
五紡星の光が七瀬さんを包み込んだ。彼女の顔が、はっと驚愕に染まる。
「力の源たるツインテールを失ったあなたでは、私の術に抗する力はありません」
呪縛が彼女を、光の中に閉じ込める。高野山に幾重にも紡がれて来た、呪詛封じの小規模版である。
小規模とはいえ、今の私の力なら、かつて翼人を捕らえていた結界に匹敵する呪縛になっているだろう。
「……私は、戦います。例え心が引き裂かれ、愛する者をこの手にかけても」
「……強いね、茜……でも……」
結界が、砕け散った。
「やっぱりできないよ……茜に、浩平を殺させる事なんか」
80里村茜@慟哭:01/10/22 16:06 ID:JhcA1TVu
失ったはずのツインテールが、再生していた。
「ま……まさか………?」
背筋に悪寒が走り、私は息を飲んだ。
「ごめん…騙すつもりはなかったんだけど、“箱”が開放された時、あたしの力も戻ってたんだ」
そう言って、自嘲気味な笑みを浮かべる。
「これってやっぱり、浩平の掌の上で、踊らされてるって事なのかな?」
閉じられた瞳から、雫が流れ落ちる。七瀬さんは震える手で、自らの体を抱きしめた。
「ごめん…茜。でもあたしは、こんなやり方しかできないから……」
その言葉の響きには、悲痛なものが混じっている。
けれど、私はどうする事もできず、その場に立ち尽くしているしかなかった。
「“双尾”の真の力……人化した時から、二度と使うまいと思っていた力を…使う」
次に開かれた七瀬さんの瞳は、獣のように瞳孔が縦に裂け、金色の輝きを放っていた。
「乙女らしくない力……でも、もういい。浩平を守れるなら。茜を止められるなら」

「『斬尾』」

この世の、どんな剣よりも鋭い刃が、私に襲い掛かった。とっさに受け止めた槍ごと、私は跳ね飛ばされる。
「!?」
私の体が、軽々と宙に舞った。だが何とか体勢を立て直すと、地面に降り立つ。
そして、私は目を見張った。
七瀬さんの腰の後ろから、金色に輝く尾が七本、ゆらゆらと揺らめいていた。
「七瀬さん……」
私は、震える声で彼女の名を呼ぶ。
「……………茜」
淡々とした口調で、七瀬さんも私の名を呼んでくる。でも、それは問題じゃない。私が言いたいのは……
「パンツが……ずり落ちてますよ……尾のせいで」
「…………あーーーーっ、だから乙女らしくないのよぉぉぉぉおっ!」
真っ赤になりながらパンツをずりあげる彼女は、少し可愛かった。
81里村茜@パンツの穴:01/10/22 16:37 ID:JhcA1TVu
まだ少し見えていたが、それ以上言うのは酷なので、私は黙っていた。
なんとなく気になった私は、真琴の方に視線をやる。が、残念ながら、よくわからない。
とはいえ、尻尾暦の長い九尾が、そのようなへまをやるとは思えなかったが。
ひょっとしたら、ノ−パンなのだろうか?
それとも……いや、考えるのはよそう。今は、七瀬さんをどうにかしなければならない。
「とっ、とにかく…茜、折原を殺させる事はできないわ」
「……はい」
七瀬さんは、強い決意を秘めた目で、私を見つめている。
この意思を覆す事は……もう、誰にも出来ないのだろうか?
互いに無言のまま、再び死闘が始まった。
繰り出される七本の尾は、全てが鋭い刃であった。
私は実際、七瀬さんが妖狐の真の力を解放したところを、見た事がない。
とはいえ、九尾や翼人、それに邪術士ほどの力はない事は明白だ。今はまだ、私の方が、力は上のはず。
「……高野式炎呪法奥義…『連珠』!」
私の周囲に、数百の炎の塊が浮かび上がる。その全てが、意志をもったように七瀬さんに襲い掛かった。
だが、彼女は尾を使い、その全てを叩き落していく。
その一瞬の隙を突いて、私は炎の塊を突き抜け、七瀬さんの懐に飛び込んだ。
「!!」
「いきます……九龍閃衝!」
物の怪の槍による、神速の九段の刺突。石突ではあるものの、この速度なら、十分なダメージを与えられる。
だが、その甘い考えは、次の瞬間にはもろくも崩れ去った。
槍の石突が、七瀬さんの体をすり抜ける。……残像だった。
瞬間、気配すら消失し、私は彼女を見失う。そしてそれは、戦いの場において、死を意味する。
「斬尾……“白雷”」
死の言葉だけが、耳に届く。そして、その名の通り、白い閃光が、目の間にあった。
82里村茜@死闘:01/10/22 17:03 ID:JhcA1TVu
耳障りな甲高い音が、響き渡った。
反応すら許さない速度の、斬尾による突きを払ったのは、刀を手にした男の人だった。
「…っ……手がしびれた……」
手を振り、顔をしかめる彼の横に、長森さん……いえ、彼女に憑依した、裏葉さんがたたずんでいた。
「大丈夫ですか、柳也さま?」
「ああ……大丈夫だ」
「茜さん、あなたもお怪我はありませんか?」
「え…あ、はい。平気です」
なんとなくその雰囲気に飲まれながら、私はこくこくと首を振る。
「茜さま、微力ながら、私たちもご協力いたします」
「いつまでも指をくわえて、見ている訳にもいかぬからな」
柳也さんが、刀を七瀬さんにむけ、目を細めた。
もっとも、二人の乱入にも、彼女は何も言わず、黙ったままだ。その尾が……動いた。
「……来ます!」
「…雪凪」
音はおろか、殺気すら感じさせない刃が、凄まじい疾さで薙ぎ払われた。
だが、初めてその尾を目の当たりにする私とは違い、柳也さんと裏葉さんは、彼女の力をよく知っていた。
柳也さんは、刀を水平に保つと、弾かれるように斜めに突き立てた。
そこに、影すら見えない七瀬さんの斬尾が、受け止められる。
その鋭い音に、私はようやく我に返った。
「御協力は感謝します……ですが、これは私のけじめです。私にやらせてはいただけないでしょうか」
「いえ……あなたでは、七瀬さまを倒す事は出来ません」
その言葉に、私はかっと頭に血が上った。だが、裏葉さんは、にっこりと微笑むと、
「何故なら、あなたはとても優しいから」
穏やかな口調に、私は言葉を失った。裏葉さんは、長森さんの顔で、七瀬さんに目をやる。
「七瀬さまには、私も大変お世話になっております。ですから、これはあなただけの問題ではありません。それに…」
彼女の微笑は、かつて、長森さんが浮かべていたものと、同じように見えた。
「一人ではなく、三人なら……七瀬さまを殺すことなく、止めることも出来るはずですから」
83名無しさんだよもん:01/10/22 17:05 ID:JhcA1TVu
回し。パンツが…ずり落ちてるだよもん。
84名無しさんだよもん:01/10/22 17:06 ID:JhcA1TVu
それはそれとして、回し。
85名無しさんだよもん:01/10/23 01:36 ID:q317kqpx
メンテ!
86名無しさんだよもん:01/10/23 10:25 ID:YYQ+Ow/X
メンテsage
87名無しさんだよもん:01/10/23 18:08 ID:DfddllRw
さらにメンテ!
88折原浩平@邂逅:01/10/23 20:48 ID:U6f/P1eV
 探していたものは何だったのだろう。
 ただ闇雲に走っても手に入れられないものだったのかも知れない。
「……みさおっ!」
 今は居ない妹の名前を彼は口に出していた。
「みさおっ! みさおっ! みさおっ! みさおっ!」
 吐き出せば少しは気が紛れるように、悲しみが少しは薄れるように、
 彼は妹の名前を連呼し続けた。が、もちろん胸の中にあるざわめきは止むことはない。
「ちくしょう! 母さんはどこに居るんだよ!」
 舌打ちすると血が跳ねた。歯軋りを通り越して口の中を切っていたようだ。
「――ちくしょうっ!」
 大きく叫んだ先に、ひときわ巨大な建物が見えた。
 目的の場所。人里離れた陸の孤島にそれ≠ヘ待っていた。
『FARGO』と世間では呼ばれている宗教団体の総本山だった。
 すべてから逃げ出した人たちが集う場所。悲しみから背を向けた母親もまた同じなのだろう。
 現実から眼を逸らすこと――
「…………母さん」
 気が付くと目の前のに無機質な扉が現れていた。
 何の疑いも持たなかった。その扉の先に求めていたものがあるのだと信じて疑わなかった。
 いや、『裁きの門』を開けることが、彼には出来ていたのだ。
「……月?」
 扉の向こうには月があった。紅い月が大きく存在していた。
 何かがおかしいと感じたときには、すでに月の光は彼を照らし出していた。
『……泣いてるの?』
 女の子の声が聞こえた。左手に火傷のような痛みが疾った。
『A-02』という文字を象っている。
「……永遠の盟約?」
 彼は呟いた。目の前にいる少女の姿は誰かに似ていた。
「……似てる? 誰に? いったい誰に?」
 答えは返らない。
 ただ、そこから物語は終わりに向かって始まっていたのだ。
89名無しさんだよもん:01/10/23 20:49 ID:U6f/P1eV
回すだよもん。
90名無しさんだよもん:01/10/23 20:51 ID:U6f/P1eV
これですべての伏線は張り終わったはずだよもん。
91名無しさんだよもん:01/10/24 10:32 ID:6yy6zmvy
メンテ〜
世間じゃ、どこもトーナメントでいっぱいだよもん…あうあう。
92名無しさんだよもん:01/10/24 16:04 ID:2vHfPCb8
メンテ。
93藤井冬弥@戦士の帰還:01/10/24 17:05 ID:2vHfPCb8
「もうちょっとなんとかなりませんかっ!」
「無理だって、この足場じゃあ!」
 ハンドルを握り締めた手を大きく旋回させると車体も同じように膨らんだ。
「きゃあ! このトラックには重病人だって乗ってるんですよっ」
「分かってるよ。でも、俺は持ってないんだよっ!」
「え? もしかして冬弥さん……無免許?」
「大型のトラックを運転する機会なんていっぱしの学生にあるわけないだろう!」
「ひゃあーっ!」
 助手席で雛山さんは頭を抱え出した。俺もそうしたい気分だったのは言うまでもない。
「くそったれ!」
 見渡す限り瓦礫の山。前方にはビルの残骸があったので俺は乱暴にハンドルを切らざるを得なかった。
 また隣から悲鳴が上がったが今度は気にしない。
「……これも大切な役割だ」
 そう自分に言い聞かせるが納得できなかった。
 スフィーさんの術には普通の人間は必要なかったのだろう。
「……無能なんだろう?」
 つまり足手まといになるってことだった。
 能力者でも死に至る可能性が在るのだから仕方ない。
「仕方ないんだよ……!」
「……冬弥さん」
 雛山さんが今にも風に消されそうな声を出した。
「……信じましょうよ。せめてそれくらいは……できないと、ほんと……足手まといですよ」」
「あ……そうか、そうだったよな」
 俺はそんなにも情けない顔をしてたのだろうか。まったく御笑いだった。
 辛いのは苦しいのは俺だけじゃないってこと……忘れるなんて。
「信じるよ。あいつらはきっと、帰ってくるって」
「はいっ!」
 怪我人を乗せたトラックのハンドルはどこまでも重い。それは命の重さだった。
 アクセルを噴かして、俺は北の街に別れを告げた。
「……じゃあ、またな」
94名無しさんだよもん:01/10/24 17:06 ID:2vHfPCb8
回し。
95名無しさんだよもん:01/10/24 17:07 ID:2vHfPCb8
どすこいだよもん。
96折原浩平@終夢(1/2):01/10/24 18:29 ID:2vHfPCb8
「邪術士……」
 俺は苦笑を浮かべて彼女の力を見ることにした。
「星の記憶を見た、最初の人間か……魔性の女、水瀬秋子ってところかい?」
「好き放題言ってくれるわね……」
「いや、褒めてるんだよ。パンドラはお前って事だろう?」
「……開いていたのよ。誤解はしないで欲しいわ」
「信じるかどうかは、俺の自由さ」
「そう……だったら、私も好きにやらせてもらうわよ、祐一さん?」
「俺を見て相沢だと言うのかい?」
「……違うの?」
 俺のことが眼中にないってことはないだろう。
 祐一は確かにここにいる。が、それは理論上でしかない。
「いや、あってるよ」
 駆け引きかどうかは知らないが乗ってやる。
「認めるのね、終わりよ……」
「どういうことかな?」
「折原浩平は、初めから居なかったってことじゃない?」
「終わらない夢だよ、それこそ」
「だから、終わらせるのよ」
「そうか……確かに理屈だな。が、具体的にはどうしてくれる? この俺、折原浩平を?」
「死滅させましょう」
 あくまで冷徹に言い放つ。どこまでも強く。邪術士と呼ばれる由縁か、これも。
「星の記憶、永遠は……俺の専売特許ではないと言ったな?」
「ええ」
「しかし、同じ土俵に上がっただけだよ、それは」
「ふふっ、貴方を滅ぼせる力を私が持ったって理解しても良いのかしら、それって」
「理屈だよ、すべては。でも、永遠は――俺なんだよ」
「強がるのは止しなさい」
 子供に言い聞かせるように秋子は言った。
97折原浩平@終夢(2/2):01/10/24 18:30 ID:2vHfPCb8
「高野の大僧正も馬鹿ばかりではないのよ」
 余裕か、それとも怖れか、どちらにしろ御喋りが過ぎてはいるのだが。
「ほう、どういうことだい?」
 俺の優位は揺るがない。付き合ってやるのも良いだろう。
「月の霊法ですか。歴代の大僧正が受け継いでいった力≠ヘ貴方のものにはならなかった」
「……そこを付くか?」
「気づいたものがいるのよ。その子は高野自体が何か、大きな渦の中にあることを……知ってしまった」
「小坂由起子。彼女は……確かにとても惜しいことをしたよ」
「……やはり、貴方が縛っていたのね?」
「知りたいのは、それかい? 高野は千年前から俺≠フ力を養っていたんだよ。月とあることで」
 秋子の顔が強張った。俺を睨みつけてやがる。
「まさか千年前の戦いも?」
「いや、それは考えすぎだな……悲しいすれ違いだよ、あれは」
「……では、どうして貴方は?」
「どうして、俺がいるのかなんて聞くなよ。そんなことに意味はないだろう?」
「負を生み出したのは、貴方でしょう?」
 馬鹿を言う。
「狂気に侵されるものは望んでそうしていたんだよ」
「そんなことありません!」
 誰だってある不満。傲慢。我侭。依存。勝手。嫉妬。罪悪。
「いや違わないなっ! お前らだってそうだろう?」
「――ぐぅ! 人の弱音に付けこんだものが言う科白ではありませんっ!」
 猜疑心を煽ってやれば誰だってそうなる可能性を秘めている。そこに例外はない――
「世界はいつか終わる。今、終わらせる。違いはなんだ?」
「私はまだ死ねませんっ!」
「待ち人かい? 分かってる。大人しく殺されろ……なんて言わねーよ。足掻いてみろ。それだけだ……」
終わらない夢≠ヘここに生まれる。永遠は降り立つ。俺の夢はここで尽きる。
 償いはまだ出来ていない。悲しみは生まれてはならない。
「――壊せ、みちる!」
 すべてを破壊した後には何も生まれない。そこに永遠。夢≠ヘ終わらない。
98名無しさんだよもん:01/10/24 18:31 ID:2vHfPCb8
リープじゃないもん。
99名無しさんだよもん:01/10/24 18:31 ID:2vHfPCb8
終りだよもん。
100九尾@頭の上から:01/10/25 10:13 ID:CFbFyuTk
“みちる”が地を駆ける。広がった翼が、九本の尾が、主に敵対するものを滅ぼすべく、
力を解放した。天が、地が、凄まじい力に揺さぶられる。
「『真琴』よ、力を」
とっさに身構えた水瀬秋子の前に、どこまでも暗い、漆黒の尾がそそり立つ。
「真琴!?」
「難しく考えるでないわ、水瀬秋子よ」
驚いた顔をした秋子の前に立つ真琴…私は、真琴の頭の上から、秋子の顔を覗き込んだ。
「要は、奴は我等、生きとし生けるもの総ての敵。主義主張など、人の理屈よ」
「まさか……九尾?」
目を丸くした秋子が、私を凝視する。むむ、居心地が悪い。
「あなた、いつの間にピロになったのですか?」
「非常手段だ。いくら力を得たとはいえ、幼き娘では分が悪い」
自らの体は、全てわが娘、『真琴』に譲り渡したとはいえ、私自身が消えてしまったわけではない。
今までも幾度か、この猫の体を借り、『真琴』に助力してきた。
「どうでもいいですけど、ピロはオスですよ?」
「ええい、手違いだというに。秋子よ、人は理屈をこね、ややこしく考えすぎるから、
悩み、苦しみ、憎み、負などにとらわれるのだ。狂人は、狂人の理屈でしか物事を計らぬ。
奴は敵だ。今は滅ぼすことのみを考えるがいい」
はたして、秋子は苦笑した。
「人間は、そう簡単に割り切る事などできませんよ。あなたのようには」
「あぅ〜っ、また難しい話してる〜」
私の下で、『真琴』が上目遣いに私を見た。私はそれを慰めるように、手でぽんぽん、
と『真琴』の鼻の頭を叩いてやった。
「しかし、あなたと共闘できるのは、この上もなく頼もしいですよ」
「それはこちらの台詞だ。まずは……“みちる”を叩く!」
「了承」
いつものあの言葉が、これほど頼もしく響いた事はなかった。
101九尾@頭の上から:01/10/25 10:47 ID:CFbFyuTk
「狂人か……狂気と正気の境は、どこにあるというんだ?」
『真琴』は右、秋子は左から、一気に“みちる”に駆け寄る。
「知れた事……狂気の証明は、その者の成した事柄による」
秋子の手から、幾重にも織り込まれた、光の網が広がる。
とっさに翼でそれを打ち払おうとした“みちる”だったが、邪術士の網がその程度で破られるわけはない。
「成した事柄? 世界を終わらせる、それを狂気と呼ぶのなら、この不幸にみちた世界を存続させる事が、正気だというのか?苦しみ、喘ぎ、のたうっているこの世界を?」
「それが要らぬ世話だというのだ」
『真琴』が、“次元の尾”をかかげる。次の瞬間、空間を越え、尾から巨大な岩隗が降り注いだ。
大気を押しのけて現れた岩が、突風を巻き起こしながら“みちる”に迫る。
「メテオー!」
だが岩の塊は、同じく掲げられた“みちる”の次元の尾によって吸収される。
「あぅぅぅっ…」
「私は、お前ほどこの世界に愛着が無い訳ではない。絶望の中にあればこそ、希望はより輝くものだ」
「そして、希望が存在するがゆえに、絶望は一層その暗さを増す……」
“みちる”がとうとう網を引きちぎり、同時に翼を振るわせた。
舞い散る羽が、次の瞬間、無数の天之御劔となり、『真琴』と秋子に放たれる。
「…『翼もて有るはいずこにその瞳を向けしや』」
秋子の術唄が、数十本はある、天之御劔の構成要素を分解し、無力化した。
例えどのような術であろうとも、そのプログラムを解析し、分析できれば、根源から中和することもできる。
「『真琴』、“終極の雫”だ!」
“四精の尾”が、“魔水の尾”に重なる。四精の尾の真価は、他の尾との組み合わせによって発揮されるのだ。
凄まじい閃光が、“みちる”を飲み込む。“終極の雫”は、四精の尾を反物質化させ、相手に叩き付ける技だ。
“魔水の尾”の亜空間でもって制御しなければ、星そのものを砕きかねない、禁断の技である。
だが、“みちる”はそれすらも耐えしのいだ。
“光月の尾”で反物質を押し返し、翼でもってその身を包み、守っている。
「……厄介なことだ」
我知らず、私は舌打ちをしていた。
102名無しさんだよもん:01/10/25 10:49 ID:CFbFyuTk
回る
103名無しさんだよもん:01/10/25 10:52 ID:CFbFyuTk
ピロがオスな事、直前まで忘れてましたよ…とほほ
104名無しさんだよもん:01/10/25 18:08 ID:iNIFv+6q
保存sage!
105名無しさんだよもん:01/10/25 18:13 ID:8HGMwQq8
106tっっっt:01/10/25 18:20 ID:Jc46lHLm
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......
107水瀬秋子@邪夢:01/10/25 23:11 ID:sfcKte3a
「終りだよ」
 折原浩平は鉄面皮で私たちに宣言した。
翼神獣≠ンちる。確かに凄まじい力を秘めてはいる。
 彼の自信の程もよく分かる。が、実際のところがどうだろうか。
「なかなかどうして、意外と戦えるものね」
「……手加減してますから」
 呆気ない答えを彼女は返してくれたが事実かどうかは判断できない。
「私を一度とは言え、圧倒したゴッドハンドに、宿敵であった九尾¢渡真琴の能力、
 付け加えて翼人$_奈ですからね……世界を終わらせることも容易でしょう、それならば」
「……本気で来い、そういうことですか?」
 みちるはにっこりと微笑んだ。幼いものが見せる無邪気さはそこにない。
 頭を振って私は続けた。
「ただし――忘れてはならないのが伏龍≠フ知性と知識ですよ」
 今度は彼女は何も応えなかった。ただ視線は鋭くなったような気がするが。
「何を……企んでいるのですか?」
「滅ぼすことを」
 はぐらかされるのは仕方ないか。手段を訊いて目的が返ったところで驚くこともない。
 しかし企んでいることに間違いはないようだった。
「真琴……サポートしなさい」
「あ、うん。わかった」
 祐一さんを正気に戻す方法を私はひとつだけ知っていた。
 折原浩平を絶望≠ウせること――
 希望をもって彼が現出したのなら絶望をもって回帰させることもまた可能だろう。
 今、彼にとっての希望は翼神獣≠ノ他ならない。
「……来る? 殺されに?」
 私の力を彼女は優に超えている。真琴と力を合わせても不足していた。
「……死ぬのは」
 ただ唯一、彼女を滅ぼす力があるとしたら、邪眼の力――
「――貴女の方です!」
 刹那でいい。隙を見せたならそこに力を叩き込む。
108名無しさんだよもん:01/10/25 23:12 ID:sfcKte3a
ごめんだよもん。
109名無しさんだよもん:01/10/25 23:13 ID:sfcKte3a
>104で間違ってageてしまっただよもん。
110国埼往人@開夢(1/2):01/10/25 23:16 ID:sfcKte3a
「…………」
 俺の瞳は本当に前を向いているのだろうか。
 闇しか見えない。俺には何も見えない。光がない。
 つまり救いがないということだった。
「……遠野?」
 返事はいつまでたっても返ることはなかった。
 ――何が出来た?
 ――何をしたか?
 ただ、絶望していただけだった。
「……遠野?」
 また呼びかけてしまう。ああ、そうだ。ずっとこうしていようか。
 いつかは俺の声に目覚めてくれるんじゃないかと。待ってみようじゃないか。
「……遠野?」
 ずっとずっと永遠にこうしていよう。辛すぎる現実から目を逸らしてしまおう。
 いつか、呼びかけに応えてくれるはずだから。
「……遠野?」
 白く視界が霞んでいた。何度こうしていたのだろう。気が遠くなっていく。
 戦いはもう終わったのだろうか。いやすでに星は滅んでしまったのではないか。
「……遠野?」
 また呼びかける。そうだ。ずっとこうしていてやろう。美凪が寂しくないように側にいてやろう。
 希望だ。いつか目覚めると信じた俺の希望だから。
「……国崎さん」
 ああ、ほらこうやって、いつかは笑ってくれるんだ。
「そうだろう、美凪?」
 だが、何故だろう。美凪は笑ってくれない。どうしてだ。怒っているのか?
『……永遠はあるよ』
『……ここにあるよ」
 俺の永遠はそれじゃなかったのか? どうして笑ってくれないんだ?
「……ゆき……さん……ゆきと……さん……往人さん……」
 どうして、どうして……泣いているんだ、あの馬鹿は……。
111神尾観鈴@開夢(2/2):01/10/25 23:18 ID:sfcKte3a
「往人さん。しっかりしてよ!」
 わたしは茫然自失の往人さんを見つけて身体を揺すっていた。
 どこまでも続く道。空の少女。旅路の終わり。夢の終着に待っていたもの。
「……翼?」
 往人さんが眼を開けた。わたしは思わず抱きついていた。
「良かった。良かった……もう二度と、眼を開けてくれないって思っちゃたよ」
「観鈴……お前、どうしたんだ、その翼?」
 わたしの背中から生えている純白の羽を指差して往人さんは言った。
「にははっ、気が付いたらあったの」
「気が付いたらって……お前、もっと普通はびっくりするもんだろう」
「うーん、難しいことはよく分からないけど……」
 胸に手を当てて、わたしは言う。自分でもほんと無意識にやっていた。
「もうひとりのわたしがここにいる……そんな気がするの」
「神奈……」
「うん? どうしたの往人さん?」
「いや、なんでもない」
 往人さんはそっぽを向いてしまった。でも嬉しい。
「にはは、いつもの往人さんだ」
「なんだよ、そりゃあ」
「往人さんが笑ってるから、わたしも笑えるの。にははっ」
「お前は笑いすぎだ」
「いいの。わたしは最期まで笑っていたい。
 ずっとずっと笑顔でいられるような星であったら良いなって思うよ。
 それだったら、きっと幸せだと思う。
 往人さんも幸せ、わたしも幸せ、星の記憶も幸せ。観鈴ちんナイスアイディア!」
「……馬鹿だよな、お前は」
 途端に、往人さんは寂しそうな顔をした。側で眠っている女の人の頬を擦っている。
「こいつも、幸せになれるかな……?」
「うん、往人さんが笑ってくれてたら、きっと幸せ。わたしも幸せになれる」
 そう言うと、往人さんは……笑ってくれた。 
112名無しさんだよもん:01/10/25 23:20 ID:sfcKte3a
最萌に投票したときにsageを消したの忘れてただよもん。
113名無しさんだよもん:01/10/25 23:21 ID:sfcKte3a
本当にごめんなさいだよもん。
114天野美汐@重夢:01/10/25 23:23 ID:sfcKte3a
 夢の終わりに待つもの。私の夢はもう終わってしまったのだろうか。
 それとも幾多の夢の中に埋もれてしまったのだろうか。答えは分からない。
「……折原浩平」
 いつでも月はそこにあった。どんな時にでも地球を見守るように存在していた。
 しかし月は何も語らない。
「……貴方はどうして自分を貶めるのですか?」
 月は母の意を持つアニマ。彼は求めていたのだろうか。
 それとも、やはり私と同じなのか。
「嫉妬……してるの? 私みたいに……」
 千年の時を悲しみ続けていた。哀は膨らんでいった。
 それが負に繋がった。
「……祐一さんが月宮さんのことを思っていたから」
 忌まわしい輪廻の輪から開放されて私たちの凍った時は動き出した。
 もう過ちは繰り返さない――はずだったのに。
「でも、私が愚かだったから……」
 負を脱却できない自分の弱さが生まれてしまった。
 高野での思い出。翼人との邂逅。
「弱かったから……」
 いつの間にか負は私の心を飲み込んでいたのだ。
 月にいいように操られていた。いや心の奥底にある願望だったのかも知れない。
『まあ、いいんじゃない?』
 誰かが語りかけてくる。深層意識の中で在るのはもうひとりのわたし≠セった。
 DOPEL――
『認めたんなら少しはマシになりなさいよ。また繰り返す気なの?』
「……夢はいつか終わるんですよね? 忘れていました」
『人は日々成長するものよ。頑張りなさい、貴女はわたし≠ネんだからね』
 夢が終わりを告げるなら、また新しい夢を見ればいい。
「ありがとう」
 気が付くことが始まりなら私の夢はここで終わり。
 目を覚まして、立ち上がる。
115名無しさんだよもん:01/10/25 23:25 ID:sfcKte3a
投票は名雪に清き一票だっただよもん。
116名無しさんだよもん:01/10/25 23:26 ID:sfcKte3a
初めての投票だったけど名雪の吉野家コピペも気に入ってもらえたようでよかっただよもん。
117霧島佳乃@魔夢:01/10/25 23:30 ID:sfcKte3a
「五芒線上に交わるところ拾の星! 御柱をもって輝き奉る!」
 スフ―さんの呪文が風に乗って轟く。
 あたしはお姉ちゃんと背中を合わせて力を集中させていた。
 体は不思議に光り始めている。
 二人一組になって五芒星の線が重なるところに個々の結界を張っているのだ。
「輝きは力なり! 星は光なり! 陣を描く円は紅の奇跡なり!」
 次に聞こえるのはリアンさんの呪文だった。
 彼女らは術者となって五芒星の中心でただひたすら呪文を唱え続けていた。
「天以外に天はなし! 命柱のもとに届けたり!」
「式以外に式はなし! 陣柱のもとに届けたり!」
 力が抜けていく。空に飛ばされそうなほど体が地面から離れていく。
 浮遊感。あたしの体から光が迸って柱となり天を貫く。
「命これ! 願いの代償なり!」
「魂これ! 願いの代償なり!」
 全部で十を数える光の柱が空の果てまで届いていた。
 いよいよ意識が遠くなっていく。これは能力者の力というより命そのものを糧にしてるのだろう。
『神以外に神はなし! 人以外に人はなし! これ天上唯一の理なり!』
 二人の声が重なっていく。
『これ天上唯一の理なり! 唯一の真理なり! 願いなり!』
 駄目だ。最後までもたないかも知れない。命が吸われていくようだった。
『叶えたり!』
 邪法。あたしはその意味をようやく理解した。
 術者の命を代償に願いを叶える法。この場合は力だろうか。力が不足なら命まで取られてしまうのか。
「……くっ!」
 お姉ちゃんが何とも言えない苦痛の吐息を吐き出した。
「うそっ!」
 あたしは眼を疑った。お姉ちゃんの腹部から血が出ていた。
 そんな身体でこの術に付き合えるわけがない。あの戦いでお姉ちゃんはすでに傷ついていたのだ。
「――――!?」
 そのとき結界が反転していた。
118名無しさんだよもん:01/10/25 23:31 ID:sfcKte3a
密かに萌えキャラの由起子さんをどうにかして勝たせたいだよもん。
119名無しさんだよもん:01/10/25 23:32 ID:sfcKte3a
雑談失礼それではだよもん。
……暗い。どこまでも暗い世界が広がっている。
閉ざされてしまったヒロの心を救うために、あたしはマインドダイヴを試みていた。
自らヒロの心の中に入り、本当の『ヒロ』を探し出す……
けど、ヒロの心の中は、思っていた以上に暗く、澱んでいた。それがあたしを惑わせる。
「ヒロ!!」
何度目になるかわからない叫びも、闇の中に沈み、すべて同じ結果をたどっている。
「……どこにいんのよ……馬鹿……」
その時、ふと光が見えたような気がして、あたしは顔を向けた。
鈍い、けれどこの闇の中にあっては、何よりも眩しく感じる光。
あたしは自然と、その光に歩み寄っていた。
近くによってみて、それがようやく巨大な扉であることに気づいた。古めかしい、両開きの扉だ。
その隙間から、微かに光が漏れていたのだ。
あたしは、いちかばちか、その中に飛び込んだ。

「……にはは……」
おかしな笑い声が、まず耳に入った。
いつのまにか倒れていたらしい体を起こし、あたしは周りを見回す。
「……って、どこよ、ここは」
どこにでもありそうな学校のそば、あたしは堤防の上に倒れていたようだ。
潮の香りが、鼻をくすぐる。
「にははは…」
またあの笑い声だ。すぐそばで、あたしと同じくらいの年の女の子と、目つきの悪い男が座っていた。
「……あれ、お客さんだ」
少女が振り返り、あたしを見る。その澄んだ瞳に見つめられて、あたしは思わず目をそらす。
その視線が、少女の横で座り込んでいた男の目と合う。
「……って、何であんたがここにいんのよ? 国崎…往人だっけ」
「それはこっちのセリフだ」
むすっとしたしゃべりが、誰かさんを思い浮かべさせる。
「にはは、二人とも喧嘩しちゃだめだよ」
少女の背中に翼があるのに気づいて、あたしは目を見開いた。
「あんた……」
「わたしは神尾観鈴だよ。ここは、往人さんの心の中」
「へ?」
あたしは慌てて周りを見回した。どこかの田舎の町らしいが、ここが往人の心の中……ってマジ!?
「だーーっ、なんでヒロの心に入ったはずなのに、あんたの心にいんのよ!!」
「にはは、わたしが往人さんの心にアクセスしてたから、混線しちゃったのかもね」
「………」
思わず頭を抱えたあたしの前で、往人は立ち上がった。
「………ありがとな、観鈴」
「にははっ、どういたしまして」
観鈴の背中の翼が、ゆらゆらと揺れる。
「いつまでもくよくよしてられねぇよな……なぁ、観鈴……この戦いが終わったら、
もう一度、おまえの家に遊びに行ってもいいか?」
観鈴は少し驚いたような顔になってから、すぐに満面の笑みを浮かべた。
「うんっ、いつでも遊びにきていいよ」
往人の姿が、ぼやけ、そして消えていく。それと同時に、世界も薄闇の中に沈んでいった。
そしてそこには、あたしと観鈴だけが残された。
「長岡さん、だったよね? 多分あなたがここに来ちゃったのって、偶然じゃないと思う」
観鈴は、不思議な笑みを浮かべて、翼をはためかせた。
「わたしも長岡さんも、他の人を好きになった人を、好きになっちゃったから……
藤田さんは、あっちの方にいるよ。わたしも応援してるから……にはは」
そうして、天使は去っていった。
122名無しさんだよもん:01/10/26 14:40 ID:w3R766cu
遅くなったけど回し
123名無しさんだよもん:01/10/26 14:42 ID:w3R766cu
最近やたら忙しくて鬱だよもん。回しも満足に出来ない位。
124名無しさんだよもん:01/10/26 14:44 ID:w3R766cu
今気づいたけど、うっかり#入れちゃってただよもん。
125名無しさんだよもん:01/10/27 00:37 ID:4hRvajAU
メンテsage。
126名無しさんだよもん:01/10/27 15:21 ID:85ezu4Fe
メンテ。
127名無しさんだよもん:01/10/27 18:28 ID:MLtBE8pj
またメンテ。
128名無しさんだよもん:01/10/28 01:20 ID:+KFbj82k
誰も居ないか。
129名無しさんだよもん:01/10/28 15:20 ID:fFvBzK6J
メンテ。
130水瀬秋子@最強VS最凶(1/2):01/10/28 16:18 ID:fFvBzK6J
「絶対に負けないんだからっ!」
 真琴の力が一本の尾に収束していく。
 九尾から十尾に変化していた尾は『真琴の尾』のもとに統一されたのだ。
 真実に代わる司る尾≠ニいうことか。今は真琴自身が最強の妖狐であるのだから。
 それは、大きく黄金色に光り輝く。
「やあーっ!」
 みちるに向かって尾が疾った。
「――こんなもの!」
 風が轟音と共に鼓膜を突いた。
 羽が現れる。12枚の翼が一斉に羽ばたいた。
「効かない!?」
 真琴は驚愕した。何とみちるは素手で十尾の力が篭もった尾を止めている。
 紅いオーラがみちるの全身を覆っていた。
「負の力、甘く見ないでください!」
「――真琴、危ない!」
 私は組んだいた印を素早く意味のある形に施した。
「霊術<破神剣>」
ゴッドスレイヤー≠フ意をもつ紅の剣をもって標的目掛けて振り下ろした。
 私の切り札のひとつでもある。これに斬れないものはない。
 それを――
「天之御劔よ!」
 みちるの『断罪の尾』が剣となって私の剣と交差する。
 力負けしたのは、私の方だった。
翼人の力≠ニ九尾の力≠セけに足し合わせたなら屈するしかない。
 みちるが口を歪めた。
 ――笑っている。
「その、程度?」
 そして、背筋に冷たいものが疾った。
(……強すぎる……)
 私と真琴の二人ではみちるの隙は作れそうになかった。
131水瀬秋子@最強VS最凶(2/2):01/10/28 16:21 ID:fFvBzK6J
「やはり、邪眼しか打つ手はないわね……」
 ただ、私の今の霊力を邪眼に換算すると使えるのは三回だけだった。
 無駄撃ちは出来ない。決定的なチャンスが必要不可欠だった。
(真琴だけでは、無理ね……あの獣には)
 どうしても抑えに私か、それと同等の力がサポートに必要だった。
 ちらっと里村さんの方を見る。苦戦だろうか。力的には彼女が勝っているのにも関わらず。
「用意周到ね、彼も」
 七瀬さん相手では、彼女も全力で戦うわけには行かない。
 計算し尽くしてそうしているなら賞賛ものだ。
「邪眼ですか……分かりませんね、本当にそんなものが私に効くと思ってますか?」
 軽い挑発だ。気にすることはない。
「貴女にとっての希望は、それですか。なるほど、面白そうです」
 そう言うと、彼女は構えを解いた。
「どうぞ。隙だらけでしょう?」
 邪眼を使えということか。誘いには違いない。だが――
「今度、私を甘く見たのは……貴女の方みたいですね」
 チャンスには違いない。
 ありったけの力≠もって私は邪眼≠開放した。
 額の紋様が光を放つ。
「――邪眼!」
 辺りは闇で包まれた。この空間を星の記憶で埋め尽くす。
 闇の中で発行する光は遠くの星、銀河。地球創生の記憶がここにある。
「私の力、邪眼とは……星の記憶を視るだけでなく、記憶の再現をもできる力のことですよ!」
 地球はどのようにして生まれたか。隕石がぶつかり合って形を作った。
 今、それを再現しようと力≠ヘ働く。
「メテオ!」
 みちるに巨大な隕石が凄まじい轟音を立てながら衝突する。
「――うそっ?」
 みちるの眼は夢見るかのように瞬いていた。
132名無しさんだよもん:01/10/28 16:23 ID:fFvBzK6J
みちる倒しちゃいそうだよもん。
133名無しさんだよもん:01/10/28 16:23 ID:fFvBzK6J
どうしようだよもん。
134里村茜@夢砕ける(1/3):01/10/28 17:28 ID:fFvBzK6J
「――え?」
 光の粒子が淡雪のように零れていた。
 閉じられた空間。邪術士と翼神獣の立っていた場所は闇に満ちている。
 発せられた衝撃波の渦があまりにも凄まじかったせいで、記憶は現世まで届いたのだろう。
「……みちる?」
 留美さんや裏葉さん、柳也さんまでもがそこに注視している。
 もちろん、彼も……そうだった。
「…………」
 私の耳元に悪魔が囁く。やるなら今だ、と。
 動く。始めは緩やかに。次に、素早く。彼と目が合う。気づいたなら風よりも早く。
「――茜!」
 留美さんも気づく。しかし、遅かった。
「……申し訳ありません」
 留美さんの気持ちは心に響くほど、嬉しい。
 でも、これは誰かがやらなければいけないこと。
 誰かが、傷を心に傷を負うこと。
「後で、私のこと……」
 殺して、と言いかけて、私は槍を彼に突きつけていた。
「――茜、止めて!」
「折原浩平、覚悟――!」
 声が重なる。
「茜ちゃん、後ろ!」
 みさきさんの声までも。
「――――!」
 途端に、殺気。圧倒的なほど、それは強い。
「――させません!」
「――翼神獣?」
 紅い髪が眼に入った。いや血の色か。半身が血でべとついてる。
 もう半身は、無い。左手と左足、ぼろきれのような翼と尻尾だけで、彼女は動いていた。
135里村茜@夢砕ける(2/3):01/10/28 17:29 ID:fFvBzK6J
「これが、獣――!」
 咄嗟に体を反転させてみちるの尻尾をかわしていた。
 みさきさんの声が無かったら危ないところだった。
「……みさきさん?」
 ふと思い当たって彼女の方に眼をやった。
 私の心配は余所に、悠然とみさきさんは丘の上に立っていた。
「茜ちゃん、余所見はしないで! 次は右から来るよ!」
「――はいっ!」
 私は槍を右に疾らせた。肉を切る感触が手に残る。
「なっ! 未来視なんて!?」
 みちるの驚愕。私も自分から切られるように槍に飛び込んできたみちるに驚きを隠せなかった。
「てやっ!」
 さらに私は槍を振るった。
「くっ!」
 さすがにかわされるが――すでに虫の息。
「やれる!」
最凶≠フはずのみちるが今はこんなにも弱々しく。
 秋子さんと真琴の力の賜物だった。私は一気に勝負をつけようとする。が――
「……調子に乗りすぎたな、みちる」
 ぞっと背中が凍り付いた。
「マスター……」
「次に、無様なところを見せたら……俺が殺す」
「……はい」
 折原浩平。彼の言葉にみちるは神妙に頷いた。
「……本気で行きます」
 紅いオーラが周囲を包み込み始める。負の力が彼女の体を元あるとおり形成していく。
「まさか、ここから回復するなんて!」
「……でも、待つ義理なんて無いでしょう?」
 私の後ろから、秋子さんと真琴が顔を覗かせていた。
136里村茜@夢砕ける(3/3):01/10/28 17:31 ID:fFvBzK6J
「――邪眼!」
 みちるの周囲に闇の霧が出来て刹那、彼女の姿が消える。
 そして次の瞬間には、回復に向かっていた体がよりいっそうひどく破壊されていた。
 何が起こったのか私では知る由もない。
「はあ、はあ……」
「大丈夫ですか、秋子さん?」
「いえ、もう年ですかね、私も……ちょっと疲れたみたいです」
「いいよ、秋子さんは休んでて」
 真琴の尾が翼神獣を貫く。みちるの尻尾はもう半分も残されていなかった。
「みさきさん、そこどいてよ!」
「駄目だよ、留美ちゃん」
 どこからか怒声。みさきさんと留美さんが向かい合っていた。
「退かない」
「分かってるの、みさきさん? 折原が死んじゃうんだよ! 殺されるんだよ!」
「浩平君は死なせない」
「じゃあ、そこどいてよ! お願いだからどいてよ!」
「退けない!」
「みさきさん! 力ずくで行くからね!」
 留美さん、泣いている。
「絶対に退かない!」
 みさきさんも、泣いている。
 二人とも……どうしようもない現実に、打ちのめされていた。
 だからこそ、私がこの手で終わらせたい。
「……強くありなさい」
「……え?」
「由紀子さんの言葉だよ……」
「そんなの、そんなの……あたしには分からないよ!」
 留美さんは地面に膝を付いて、裏葉さんが寄り添っていって、胸の中で、彼女は慟哭した。
 今も終わらない、夢の中で……。
137名無しさんだよもん:01/10/28 17:31 ID:fFvBzK6J
さて、どうなるだよもん。
138名無しさんだよもん:01/10/28 17:33 ID:fFvBzK6J
そろそろ終わりそうだよもん。
139スフィー@偽りの優しさ:01/10/29 00:51 ID:Itv8/xDv
「やった!!」
歓喜の声が、魔法陣の上に響く。
ものみの丘を映し出す水鏡では、最強のはずの“みちる”は、今にも虫の息であった。
「お姉ちゃん!」
佳乃が、膝をついた聖の元に走る。その足元には、血溜まりができていた。
「だ、いじょうぶだ…佳乃、少し力を使いすぎで…回復にまわす余裕が…」
「お姉ちゃん!!」
「大丈夫、気を失っただけだ。おい馬鹿姉、ちょっくらこっち来て……おい?」
ゆさゆさ、と肩を揺さぶられて、俺はようやく正気に戻る。と同時に……
「全員結界の中に入れ!! 魔法陣を強化しろ!!」
俺は声の限りに叫んだ。ほとんど裏返った声に、全員がぎょっとこちらを向く。
「おい、どうしたんだよ……」
「いいから結界に力を送れ!! 早くしろ、侵食されるぞっ!!!」
俺のあまりの剣幕に、目を白黒しながらも、リアンは言われた通りに力を送り込む。
結界が………持つか!?
俺は自分の馬鹿さ加減に歯軋りしながら、必死で『力』を……藤田浩之から得た、次元修正力を魔法陣に注ぎ込んだ。
「スフィー……何が………!?」
麗子が目を見開いた。
空が、世界が、血の色に染まり、次の瞬間………俺たちは、消し飛ばされた。


「………くぁぁぁあああああああっ!!!!!」
無意識のうちに握り締めていた手のひらから、血が滴っていた。
だが、その痛みが、なんとか俺を現実世界に繋ぎ止めていた。
なんとか首を回してあたりを見ると、俺以外は全員、気を失い、倒れ伏している。
だが何とか、消滅は免れた……ようだ。
崩れ落ちそうな脱力感に耐えながら、俺は水鏡を見上げる。
…………絶望は、まだ終わってはいない。
140名無しさんだよもん:01/10/29 00:55 ID:Itv8/xDv
すいません、また上げちゃいました。
寝ぼけてるみたいですね…
141保科智子@偽りの優しさ:01/10/29 01:25 ID:Itv8/xDv
何が起こったのか、私にはまったくわからなかった。
みちるを倒した……そう、確かに思った。現に、水瀬秋子の邪眼……その力により、みちるは限りないほど破壊されていた。
邪眼は、凄まじい力でもってみちるを消し去り、今、勝負は着いた…はずだった。
「……まったく、しょうがないな、繭は」
……折原浩平
にじみ出るような笑顔で、彼はみちるを蹴った。………え!?
「なんでっ!? 倒したはずなのに!!」
真琴が、悲鳴のような声を上げる。そう、欠片ほどしか残っていなかったみちるが、完全に再生していた。
「………うかつ、でしたね………その手がまだ残っていましたか……」
無理をして笑みを浮かべた秋子が、がく、とひざをついた。次の瞬間、彼女の口元から鮮血の花が開く。
「秋子さんっ!?」
大量に吐血した彼女に、真琴が駆け寄る。その頭の上の猫が、いまいましげに折原浩平を睨みつけた。
「な……なにが、起こったの?」
呆然と呟く里村さんに答えるように、猫が苦しげな声を出した。
「うかつにも……忘れておった。相沢祐一の“力”を」
「ま、さ、か………」
そう、と折原浩平は、地面に倒れていたみちるを引き起こし、小さく笑みを浮かべた。
「……次元修正能力」
ぽつり、と私の横で、はるかが囁く。その顔色は、蒼白だった。
「悪いけど、次元を書き換えさせてもらった。みちるが“壊れていない”世界に」
世界のバランスが崩れ、崩壊しかねない時、次元にはその歪みを修復しようとする力が働く。
次元修復の力は、死者を甦らせ、世界を書き換える。けど、ここまでの圧倒的な力は……
「次元修正能力とは…言うなれば、ゴムの反作用のようなものです……引き伸ばされたゴムが戻ろうとするかのように…
歪められた次元も、元に戻ろうとします…その膨大な戻ろうとする力が、藤田さんと祐一さんに宿っていました。
ですが、その力は、本人が使う限り、必ず制御されていました……なぜなら」
「なぜなら、幾度となく歪められ続けた次元を、無理に修正しようとすればどうなるか? ゴムは耐え切れず、ぱちんと切れる」
彼は世間話でもしているかのように、くすくすと笑みを浮かべた。
142保科智子@偽りの優しさ:01/10/29 01:54 ID:Itv8/xDv
あたしは、祐一……浩平の言ってる事は、ほとんどわからなかった。
ただ、あたしの腕の中で、苦しげに息をする秋子さんがただ心配だった。
口元からしたたる血を拭おうともせず、秋子さんは言葉を紡ぐ。
「そう…幾度となく伸ばしたり縮めたりすれば、その部分に負荷がかかり、弱く、脆くなってしまう。
だからこそ、次元修正能力といえど、何でも出来るわけではありません……もっとも、次元が崩壊する事を気にしなければ…」
そこでまた激しく秋子さんは咳き込んだ。あたしが思わず泣きそうになっているのをみて、秋子さんは大丈夫、と小さく笑う。
「うかつでした……この私に“邪眼”を使わせるタイミングを計っていたのですね」
「ああ。“邪眼”を俺に使われたら、さすがに俺は消滅してただろうな……相沢祐一ごと。
だが、完全消滅さえしなければ、次元修正能力で肉体を再生できる。
みちるなら、消滅してしまわないと思っていたよ。絶好の盾だった。
俺の次元修正能力に干渉できるのは、九尾の“無限の尾”か、あんたの“邪眼”だけだからな。
そこのマイナスの能力者程度の力では、永遠の力と合わせた修正能力には勝てないだろう。
そして、“真琴”では無限の尾を制御できず、邪眼は打ち尽くした。俺の、勝ちだ。
それとも、最後の一発にかけるか?あんたの、命を全て費やして放つ、最後の一撃を?」
秋子さんが……今までずっと、優しい笑みを浮かべていた秋子さんが、初めて悔しげに唇を噛んだ。
「……打つ手、無しなのか?」
刀を持った人…柳也が、押し殺したような声でうめいた。
あたしは、得意そうな笑みを浮かべた祐一の顔をした、折原浩平を睨みつけた。
悔しい。祐一の力が悪用され、祐一の顔で、知らない誰かが笑っている。
「あんたなんか……」
再び十本に戻っていた尾が、ぞわり、と波打つ。頭の上で、ピロが暴れるのがわかった。
「真琴! 一人では自殺行為だ!」
「でも……! あんただけは、許せないっ!!」
あたしは走った。勝ち目なんかない。希望も消えてしまった。
でも、あたしは絶望なんかしない。祐一が助けを求めてる限り、戦い続ける。だって……
「絶対、絶対に負けないっっ!!」
美汐……あたしに、力を貸して………
143名無しさんだよもん:01/10/29 01:55 ID:Itv8/xDv
回します…
144名無しさんだよもん:01/10/29 01:56 ID:Itv8/xDv
もう少し続きます。
145名無しさんだよもん:01/10/29 02:51 ID:aWTm2BuC
いよいよクライマックスですか。頑張って下ちい。
146名無しさんだよもん:01/10/29 10:42 ID:36j3UfUs
142は真琴だよもん……ごめん、寝ぼけてたよもん。
147里村茜@刹那:01/10/29 14:47 ID:36j3UfUs
私は、槍を手に走り出していた。
止まれない……いえ、止まることは許されない。

「茜!!」

悲鳴のような絶叫が、後ろから追いかけてくる。留美さんの泣き顔を頭から振り払い、私は浩平に駆け寄った。
轟音が響き渡った。視界の端に、みちるに吹き飛ばされた真琴の姿が映る。
だがすぐさま起き上がり、みちるに再び勝ち目のない特攻を繰り返す。
私は浩平に視線を戻した。彼は笑っていた。
みちるを真琴が引き付けてくれている間、この隙にかけるしかない。
生半可な攻撃では、次元修正能力を使われてしまう。やるならば、一撃必殺。

「さようなら……折原……浩平」

持てる力全てを槍に込め、私は浩平に槍を突き出した。
148国崎往人@刹那:01/10/29 14:56 ID:36j3UfUs
ぼろきれのように引き裂かれたみちるから、俺は目をそらした。
水瀬秋子の邪眼は、翼神獣ですら粉砕するのか。

「美凪………」

俺は知らず知らずのうちに、また美凪の姿を探し求めていた。そんな自分に、嫌気が走る。
だが、折原浩平の体が光ったと思った瞬間、みちるの身体は再生し、元に戻っていた。
次元修正能力……なのだろう。これでまた、全ては振り出しに…いや、それ以上に悪くなった。
水瀬秋子は、もう邪眼を使えないだろう。そして、真琴一人ではみちるには勝てない。

「俺は……どうすりゃいいんだ、観鈴………教えてくれ…」

無意識のうちに伸ばした手が、ズボンの後ろポケットに触れる。
それは、遥か古代から受け継がれてきた、古ぼけた人形であった。
149スフィー@刹那:01/10/29 15:05 ID:36j3UfUs
「くそっ、たれが……」

搾り出すような声は、なんとか形になった。
あの時。折原浩平の次元修正能力の余波は、この町全体を包み込んでいた。
それほどまでに、凄まじい規模の力だった。
当然だ、翼神獣を再生させるのに、どれほどの力を必要とするのか、見当もつかない。
丘では、とっさに秋子が邪眼を使い、次元の修復作用に抗したから、全員が無事だったようだが。
こっちではこの次元から弾き飛ばされないよう、耐えるだけで精一杯だった。
それほど、奴の使った力は大きく、また世界を破壊しかねない使い方だった。
俺はさらに縮んだ身体を懸命に起こし、再び呪文を唱え始める。
ここまで来て、やめることはできねぇ。例え独りでも、術は完成させる。

「世界と心中かよ……いっちゃん俺らしくねぇ死にざまだな……」

震える声を最後に、俺は全ての力を魔方陣に流し込み始めた。
150沢渡真琴@刹那:01/10/29 15:23 ID:36j3UfUs
全身に走った痛みは、これまでの比じゃなかった。

「あぅっ……くぅ…」

みちるは、もう決して隙を見せない。今までの遊び半分じゃない。完全に本気だ。
尾は、ただ振り回すだけではたいした力を発揮しない。
力こそあったものの、あたしはお母さんのようには、尾を自在に操れなかった。
無限の尾も、真実の尾も、あたし自身である“真琴の尾”も満足に使えていない。
でも、まだ負けたわけじゃない。あたしが負けと思わない限り、あたしは負けじゃない。

「もう止せ、真琴!! このままでは……」
「不思議だよね……死にたくないのに……痛い思いしたくないのに…」

折原浩平…こいつだけは許せない。怒りが、恐怖を塗り潰していく。
秋子さんも、祐一も、名雪も、あゆも、みんなみんな大好きだよ……

「真琴っ!!!!!」

ごめんなさい、お母さん……みんな好きだから、守りたいから、あたしはもう一度この力を使う。
かつて、美汐と祐一を殺した……全ての元凶“無限の尾”を。
151水瀬秋子@刹那:01/10/29 15:43 ID:36j3UfUs
最凶とうたわれた邪術士も、不甲斐ないものです。
あの瞬間、折原浩平の次元修正能力…それを阻止するべく、私は邪眼を使いました。
もしあの時、邪眼を使わなければ、私や真琴はともかく、全員この次元から弾き飛ばされてしまったでしょう。
ですが……

「負を捨て、母となったがゆえに、弱点もまた生まれる……ですか」

私は口元の血をぬぐい、苦笑しました。あの瞬間、彼の次元修正能力全てを押し返し、
完全に消滅させることは可能でした。…そう、折原浩平と…祐一さんの存在ごと。
ですがその時脳裏に浮かんだのは、他でもない、娘たちの顔でした。
祐一さんが来ると、嬉しそうに話していた名雪。
自分を犠牲にし、彼の前から消えようとしたあゆ。
そして、誰よりも彼に懐いていた子狐…真琴。
私の邪眼は打ち消され、次の瞬間、全ての余波をまともにこの身に受けてしまったのです。
祐一さんを殺せないのではなく……娘たちの悲しむ顔を見たくなかったゆえのミス。

「真琴……あなたを死なせるわけにはいきません……」

私は、ギシギシいう身体を無理やり起こし、走り出しました。今一度、邪眼を使うべく、その隙を探して。
もう容易には邪眼を受けてはくれないでしょう。けれど、諦める事は、娘たちへの冒涜です。

「名雪、あゆ、真琴、そしてもう一人の私の娘……」

頭上に覆い被さるように赤く輝く月の下、私はどこかで娘の声を聞いたような気がしていました。
152名無しさんだよもん:01/10/29 15:45 ID:36j3UfUs
そして回し。
153名無しさんだよもん:01/10/29 15:48 ID:36j3UfUs
中回し。
154長岡志保@彷徨う想い:01/10/29 16:07 ID:36j3UfUs
観鈴に言われた通り、あたしは闇の中をとぼとぼと歩いていく。
しばらくして、ぽんぽん、と妙な音が聞こえてきた。
よくよく目を凝らしてみると、そこには幾重にも重ねた着物を着た女の子が、お手玉をしていた。
背格好からして、あたしよりも少し年下くらいで、着物は紫式部とか清少納言とかが着ていそうな
十二単とでもいうような、豪奢な着物であった。
さっきからしているお手玉は、あまり上手くはないようで、しきりに足元に落としては拾っている。
「………うまくいかないものじゃな」
溜息と共に呟くと、彼女はあたしの方に振り向いた。
「このような所で何をしている?」
「何って……あたしはヒロの心を捜してるんだけど」
幼さに似合わない仰々しいしゃべり方で、あたしは思わず素直に答えてしまった。
すると彼女は、大げさに肩をすくめると、呆れたように首を振った。
「やれやれ、このような所を捜していては、未来永劫、見つける事は叶わぬぞ」
「な……なんでそんなこといえんのよ!? 大体、あんた何様のつもり……」
言いかけて、あたしははたと彼女の正体に気付いた。
「あんた……神奈ね。最後の翼人にして、高野山に封じられていた呪源その人」
「呪源とは……また嫌な呼び名じゃのう。まぁよい。余とてあまり長居はしておれぬ身なのじゃ。
美汐の事、裏葉の事、九尾の事、それに観鈴の事と、余にはしなければならぬ事が山積みなのだ。
しかし、ここで会ったのも何かの縁。ここは一つ、助力をしてやろう」
神奈は相変わらず偉そうに、大きく頷いた。あたしは反発したくなるのを堪えて、大人しく彼女の言う事を聞く事にした。
なんだかんだ言っても、記憶と永遠は翼人の領域である。素人のあたしよりも、彼女の方がよく知っているのは間違い無い。
そのすらりとした指が、闇を突き刺し、いきなり人が一人通れるほどの穴が空く。
「さあ行け。ここから奴のところに進める」
「あ、ありがと……ところでここって、いったいどこなの?」
あたしがそう言うと、神奈は口元を手で押さえ、やれやれと首を振る。
「この闇は、お前の心の中じゃよ。他人の心を覗いたつもりが、自分の心を見ている。よくあることじゃ」
「なっ!? ば、ば、馬鹿な事言わないでよ! なんでこんな闇があたしの心なのよ!?」
155長岡志保@彷徨う想い:01/10/29 16:36 ID:36j3UfUs
激昂したあたしに、神奈は哀れむような視線を送る。
「人の心には、必ず闇がある。どれほどの聖人であろうと、関係はない」
神奈は肩をすくめると、お手玉を手に、背を向けた。
だがふと思い出したように、首だけこちらに向ける。
「ひとつ言っておく。藤田浩之は、別に折原浩平によって封じられている訳ではない。
単に、自責の念によって自ら引き篭もっているだけじゃ。
藤田浩之をどう思っているかは知らぬが、ゆめゆめ愚かな選択は成さぬようにな」
勝手なことだけ言うと、神奈はさっさときびすを返した。
あたしはしばらく彼女の背中を睨み付けていたが、ため息ひとつついて、彼女の空けた穴を凝視する。
向こうは白い光に包まれ、様子をうかがうことはできない。
あたしは意を決すると、思い切って開いた穴に飛び込んだ。

落下の感覚が、背筋を駆け上る。無数の光が、闇が、あたしのそばを駆け抜けていく。
あたしは思わず、ぎゅっと目をつぶった。
……しばらくして気が付くと、あたしはヒロの家の前に立っていた。
「……また、心の中の風景ってやつね……でも、ヒロの心の中ってのは確かみたいね」
見慣れた街角、見慣れた風景。間違いない。これは、あたしたちの通っていた高校のある街だ。
「………どこにいるのかしらね、ヒロの馬鹿は」
家の中にいない事を確認してから、あたしは見慣れた高校に足を向ける。
この道を、ヒロとあかりと雅史は、ずっと通ってきたんだ。あたしの知らない道を。
そのあかり達も、もういない。あたしだけが生き残ってる。
あたしだけが惨めに生き残り、泥棒猫よろしく、ヒロを追っかけている。
「……あかり……みんな……」
ぎり、と歯を食いしばって、涙がこぼれるのを耐える。こんなところでめそめそしてる場合じゃない。
あたしには、やらなきゃいけない事があるんだ。
「待ってなさいよ……ヒロ……絶対、連れて帰るからね!」
156名無しさんだよもん:01/10/29 16:40 ID:36j3UfUs
回しで終わり。
157名無しさんだよもん:01/10/29 16:53 ID:36j3UfUs
続きで回し。
158名無しさんだよもん:01/10/30 01:40 ID:pVcfGz50
メンテ。
159名無しさんだよもん:01/10/30 12:29 ID:N0xejTfd
メーンーテー
160川名みさき@伝心(1/3):01/10/30 20:17 ID:dtzeMz2O
「留美ちゃんは強いね」
 応えてくれるだろうか。わたしの想い、伝わるだろうか。
 今、留美ちゃんは悲しんでるから、弱いわたしであったとしても、助けになりたい。
「わたしは、駄目だったよ。どちらを選ぶことも出来なかった」
「……川名さま」
 裏葉さんがそっとわたしの方を見て、少し寂しそうに頷いてくれる。
 今だけは、任せて欲しい。わたしは留美ちゃんを、抱き締めた。
「色々なことあったよね」
「…………」
「途方も無い計画だったよ。辛かったし、苦しかった」
「…………」
「でも、良かったと思える。そんな時の中でも、楽しかったと思えるよ」
「…………」
「みんなと一緒だったから」
 強張っていた留美ちゃんの瞳が僅かに揺れた。
「澪ちゃんに繭ちゃん、留美ちゃんや茜ちゃん、それに瑞佳ちゃん」
「…………」
「そして何よりも、雪ちゃん。わたしは、みんながいたから、頑張ってこれたんだ」
「……繭は」
 留美ちゃんの肩がぴくりと跳ね上がる。
「繭は、あたしたちのこと、友達じゃないって……」
 わたしは、にこっり微笑んで、留美ちゃんの頬を打った。
「……みさきさん?」
「それ、本気にしてる、もしかして?」
「……え?」
 留美ちゃんの瞳は困惑に揺れていた。
「だって……」
「だって、なに? わたしは、繭ちゃんと友達だよ。いつまでも」
 嘘じゃない。わたしの、本気。本気の想い、だから。
 留美ちゃんにも、きっと……伝わる。
161川名みさき@伝心(2/3):01/10/30 20:20 ID:dtzeMz2O
「仲良しだよね、わたしたちって」
 唐突だったかもしれない。しかし口も止まらない。
「ひとつの共通の目的があったから、そういう人も居るかもしれない」
「…………」
「でも、そんなの寂しすぎるよ。旅の終わりは、笑顔で締めくくって欲しいから」
「……無理だよ、そんなの」
 ぽろぽろと留美ちゃんは涙を流し始めていた。
「もう、笑えないよ。あたし」
「じゃあ、ちょっと休もうよ。また、笑えるよ。いつだって」
「…………」
「留美ちゃんには、笑顔が似合ってる」
「……だって、だって、折原が死んじゃったら笑えない。もう、絶対に笑えないから」
「死なないよ、浩平君は」
 わたしはいっそう強く留美ちゃんを抱き締めていた。
「繭ちゃんは、願ってた。だったら、そうなるよ。誰も、これ以上は死なせない」
「……そんなの」
「信じて、信じること、信じようよ」
「誰を、信じたらいいの? 神様にでも祈るの?」
「わたしは、留美ちゃんを信じてる」
「…………」
「みんなのこと、信じてる。今までやってきたことに自信をもってる。
 信じて、留美ちゃん。今の想いを、真っ直ぐに」
「馬鹿ね、ほんと」
「いいんだよ。馬鹿にならないとヘンな打算とかしちゃうから」
「……倒せるの、折原を?」
 真剣な眼差し。もちろん答えは決まっていた。
「討てるよ、『MOON.』は」
「もう一回……頑張ってみようかな」
「うん、いくらでも」
 人ってやり直せること出来ると思うから。
162川名みさき@伝心(3/3):01/10/30 20:22 ID:dtzeMz2O
「……よし」
 留美ちゃんはパンパンと両手で頬を挟み打っていた。
 気合を入れてるのだろう。彼女らしいやり方にわたしはちょっと苦笑する。
「乙女……じゃないかな、こういうのって?」
 照れ笑いを浮かべる留美ちゃん。
「留美ちゃんは、乙女だよ。好きな人のために、命を懸けれるんだから」
「みさきさんも、でしょう?」
「うん、それに茜ちゃんも、きっと」
 お互いに眼を向ける。前に。
「みちる……まずは、あれから倒さないと駄目みたいね」
「うん、茜ちゃんのサポートもしないと」
「分かった。何の因果か妖狐の力も戻ったことだし」
「これも、繭ちゃんの思惑のうち……だったりしたらいいよね」
「そうだね……」
「七瀬さま」
 わたしたちのところに裏葉さんが歩み寄っていた。
「心配掛けたかな?」
「いえ、裏葉は嬉しゅう存じます」
「ありがとう、裏葉」
 千年の絆、子供っぽい留美ちゃんはどこへやら。
 大人の女性のように、振舞う。どちらも同じ留美ちゃん。
「裏葉さん、お互いこれが最後の戦いだよ」
 ぼそっと耳打ちする。
「……知っていたのですか?」
「わたしも長くは無いから……そういうことだよ」
「はい、そうですね」
 別に未来視≠ヘ絶対のものではなく可能性のビジョンに過ぎない。
 心眼は分析に優れ、視野の拡大を元とする。
「なにボソボソ喋ってるの? 行くよ」
 わたしと裏葉さんは、顔を見合わせて、笑顔を贈りあった。
163名無しさんだよもん:01/10/30 20:24 ID:dtzeMz2O
さて、もうすぐ葉鍵聖戦も終わりです。
164名無しさんだよもん:01/10/30 20:24 ID:dtzeMz2O
心に描くエンディングは様々のようです。
165名無しさんだよもん:01/10/30 20:25 ID:dtzeMz2O
私は私の永遠を描こうと思います。
166名無しさんだよもん:01/10/30 20:27 ID:dtzeMz2O
それが皆さんが望まれた永遠だと信じて紡ぎたいと思います。
167名無しさんだよもん:01/10/30 20:31 ID:dtzeMz2O
他の書き手さんの皆様共々に。
168名無しさんだよもん:01/10/30 20:32 ID:dtzeMz2O
ラストスパート頑張っていきましょう。
169名無しさんだよもん:01/10/30 20:33 ID:dtzeMz2O
名無しさんで逝こう。敬具。
170名無しさんだよもん:01/10/31 10:43 ID:RlqvgOIh
メンテ。
171藤田浩之@夢:01/10/31 15:17 ID:LNcCVw7H
いつから日常は変わっていたのだろう。
どこから非日常が世界を支配していたのだろう。
なんて事のない、平和で、退屈で、それでもかけがえのない大切な時。
それが、いつから失われていたのか、俺にはわからなかった。

「浩之ちゃ〜ん、朝だよ〜」
寝ぼけた耳に届く、幼馴染の声。俺はしぶしぶ体を起こしながら、カーテンを開けた。
眩しい朝の光に目を細めながら、俺はあかりに声をかける。
いつものように、歩き慣れた道を学校に向かって歩いていく。
「おはよう、浩之」
「よっ、雅史」
「おはよう、雅史ちゃん」
もう一人の幼馴染の雅史は、いつものように屈託のない笑みを浮かべて、俺の横に並ぶ。
三人で、学校にたどり着く間、たわいもないおしゃべりを楽しむ。
幸せな日々。
「おはよう、藤田君」
「おはよ、いいんちょ。今日も早いな」
「藤田君は、もう少し早く来てほしいわ」
口調こそ刺があったが、その目は優しい。俺は笑いながら、それは無理だ、と言っておく。
「Hi!ヒロユキ!」
「藤田先輩!!」
「………藤田さん」
「浩之さん!!」
「藤田先輩……」
「藤田君……」
それは、かけがえの無い日常。
そして、二度と戻ってくる事の無い世界。“永遠”に失われた時間………
172藤田浩之@夢・2:01/10/31 15:35 ID:LNcCVw7H
「………浩之?」
目を開けると、そこには、綾香の悪戯っぽい笑顔があった。
膝枕の上で、いつのまにか眠ってしまっていたらしい。
「あ…綾香……」
「ふふ、どうしたのよ、浩之。狐に抓まれたような顔しちゃってさ」
「いや……夢、見てた。すげぇ、辛い夢……」
そういって、俺は顔をしかめた。口の中に広がる、苦いものを飲み下す。
さらさらと風が吹き、俺たちの間を通り過ぎていった。
「やな夢ね……大丈夫、もう目が覚めたんだから、夢の中の辛い事なんて、忘れちゃいなさい」
「ああ……そうだな」
俺は苦笑して、綾香の顔を下から見上げた。例の悪戯っぽい笑顔が、俺を見下ろしている。
くすくすと笑う綾香の身体を感じながら、俺は静かにまどろんでいた。
なんて事は無いひととき。それの持つ重み。幸せな日常。それが、俺が望んだものだ。
「全部夢だ……辛い事も悲しい事もない……な、綾香」
「それでいいの……ヒロ」
ぎくり、と俺は身を強張らせ、身体を起こす。
俺と綾香の少し前に、一人の女が立っていた。
栗色の、長い髪をした女だった。そいつが、悲しげな瞳で、俺達を見ている。
「………誰だ?」
見覚えのある顔だが、どうしても名前が思い出せない。その様子に、そいつは唇を噛んだ。
「きっと……ここにいるって思った」
「誰だ……誰なんだ、おまえは?」
俺の疑問に、その女は、声のない、神経質な笑いを浮かべた。
「そっか、都合の悪いことは、全部忘れちゃったってわけ、ヒロ。大したもんね」
一瞬、俺はその女が泣いているような気がした。だが、その目にも、頬にも、涙の跡はない。
ただの……気のせいだったのだろうか?
173藤田浩之@夢・3:01/10/31 15:49 ID:LNcCVw7H
「幸せな夢……幸せな世界。居心地のいい夢に包まれて、後は知らん振りってわけ?」
「なにを…言ってるんだ?」
俺が疑問を問いただすより前に、綾香が挑戦的な声をあげた。
「誰だか知らないけど、恋人たちの邪魔をするのは、あんまり趣味がいいとはいえないわよ?」
「………」
どうしても名前を思い出せない女は、俺から目をそらした。
その瞳が、俺の上の綾香と重なる。
「………わかってるわよ……ヒロが、まだあんたの事好きだって事ぐらい」
「あら、あたし達の事、知ってるの?」
「ええ……嫌ってくらい」
「じゃ、そっとしといてくれない?恋人たちの語らいを邪魔するほど、無粋なことってないでしょ?」
「………」
綾香の言葉に、その女は身体を震わせる。やがて、その顔に自嘲の笑みが広がった。
「…………やっぱ………だめね、あたし」
ざあぁぁぁぁぁぁ………、と風が、俺達の間を吹きぬける。
その女の、綾香ほどもある長い髪が、大きくはためいた。
「結局あたしも、えらっそうな事言っといて、自分の番になったら、何もできないじゃない…
これじゃあ、留美や繭にあわす顔がないわね……」
繭……留美……心の奥底で、何かがその名前に反応する。
聞いた事もない名前なのに。
「来栖川……綾香……あたしは、あんたに勝てないの?」
「当たり前じゃない。あたしを誰だと思ってんの?」
「そっか………そうよね」
彼女の笑みに、絶望の色が濃く染み出していく。急に風が冷たくなったような気がして、俺は身震いした。
そんな俺の身体を、綾香の手が優しく抱きとめる。
「所詮……あたしじゃ、だめなんだ……あたしじゃ、ヒロの心を埋めてあげられない。ヒロの心には、あんたがいる。
ヒロがあたしを抱いてくれたのだって、結局あたしを好きなんじゃなくて、あたしの中のあんたを見てるから………」
その両目から、冷たいものが溢れ、頬を濡らしていく。
174藤田浩之@夢・4:01/10/31 16:35 ID:LNcCVw7H
「それでも良かった……ヒロが傍にいてくれるなら……
代わりでもかまわない…愛してくれなくてもかまわない……
ただ、優しくされるのだけは耐えられない!」
今まで無表情を保っていた彼女の顔に、初めて人間らしい表情が浮かんだ。
首を振り、ぱっと涙の粒が、輝きながらあたりに飛び散る。
「あんたは! なんっにもわかってない! 何も考えずにほいほい人に優しくして!
たくさんの人に希望をちらつかせて…錯覚させるのよ!!
女にとって、好きな人から愛してもないのに、優しくされる事が、どれだけ残酷なことかわかってる!?
それなのに……この、馬鹿、あほ、スケベ、変態、ロリ、ペド、いい加減、根性なし、節操なしの…
大馬鹿ヒロっっっ!!!!!!!」
すごい剣幕で、その女は叫んだ。そのあまりの声量に、俺も綾香も、思わず目を丸くする。
ぉぉぉぉ、と声の残滓の響きが消え去り、そいつはぜぇぜぇ、と荒く息をついた。
しばらく肩を上下させていたそいつは、やがて大きくため息をつくと、涙をぬぐった。
そして、にやり、と笑みを浮かべ、肩をすくめる。
「ふーーーっ、言いたい事言ったら、すっきりしたわ。じゃあね、ヒロ」
「って、ちょっと待たんかいっ!!」
いきなりきびすを返し、帰ろうとしたそいつに向かって、俺は思わず絶叫していた。
呼び止められて、そいつが怪訝そうに振り返る。
俺はずんずんと肩を怒らせ、そいつの前に立ちはだかった。
「な、なによぉ」
「なによじゃねぇ、志保っ! 何だ今のは! 散々言いたい放題言いやがって、誰がいい加減で根性なしだっ!」
「ってそこにツッこむわけ!? ロリでペドは? 節操なしは?」
「…………」
思わず目をそらす俺に、志保がじっとりとした視線を送ってくる。
「………って、あたしの名前、思い出したの!?」
志保がはっとしたように、俺の顔を覗き込んだ。
175藤田浩之@夢・5:01/10/31 17:04 ID:LNcCVw7H
俺は志保から目をそらし、ぶっきらぼうに言い捨てた。
「お前みたいな騒がしい奴、忘れるわけねーだろ」
「あのねー……ったく……ほんと、馬鹿なんだから……」
「お前ほどじゃねーよ……志保」
俺は志保の頭をぽんぽん、と叩くと、ため息をついた。
「………わりぃな、綾香……どうも、行かなきゃいけねーみたいだ」
「はいはい……わかったわよ」
俺の後ろで、綾香が苦笑し、肩をすくめる気配が伝わってくる。
「それじゃあ、この続きは当分お預けね」
「ああ……」
「ちょっと待ちなさいよ!言ったでしょ、優しさだけなら……」
志保が何か言おうとするのを、俺は無理やり抱き寄せた。
「ちょ、ちょっとヒロ……」
「……悪かった、志保。お前がそんな風に思ってるなんて、考えもしなかった」
「………」
「確かに、俺は綾香を愛してる」
その言葉に、志保が身体を固くする。
「……けど、お前の事も、愛してる。これも、間違いねーよ」
「……ヒロ、あんたジゴロでも始めたら………?」
くぐもった声で、それでも志保は生意気な口を利く。
「お前がいなかったら、俺は狂気の淵から抜け出せなかった。
この街で、力に目覚める事も無く、のたれ死んでいた。でも、それだけじゃない」
「………」
「お前と綾香は違う……全然な。お前は口やかましいし、独り善がりだし、いい加減で生意気で大馬鹿で」
「あのねー」
「けど、そんな欠点ばっかりのお前を全部まとめて、胸を張って愛してるって言えるぜ」
志保は何も言わずに、俺の胸に顔を埋めたまま、背中に回した腕に力をこめる。
176藤田浩之@夢・6:01/10/31 17:14 ID:LNcCVw7H
そうだ。折原浩平との決着を付けなければ、死んでも死に切れねぇ。
俺は、俺の答えを見つけた。今ならわかる。
折原浩平が、すべてを捨ててまで求めたものが。あいつが、本当にほしかったものが。
俺は志保の肩を抱きながら、そっと歩き出す。その俺の背に、綾香の声が掛けられた。
「浩之!!」
「……綾香」
俺は振りかえらなかった。そこに、未来は無い。正面を向く事が、希望への道だ。
「浩之、あたしじゃなく、志保を選んだからには、中途半端は許さないわよ?」
「………ああ、わかってるって」
「本当かしらねぇ?ま、いいわ。志保、今回はあんたに勝ちを譲ってあげるわ。
けど、次はそうはいかないわよ。せいぜい女を磨く事ね」
志保は、泣き笑いの表情で振りかえった。
「それはこっちのセリフよ!!」
「……じゃ、浩之……頑張ってきなさい。応援、してるから」
「サンキュウ、綾香……いくぜ、志保!」
「わかってるわよ!!」
迷いは、もう無い。
俺は、俺が信じた道を行くだけだ。

折原浩平……お前を待ってくれてる奴がいる。
お前に尽くし、お前を慕ってくれている奴がいる。
それでもお前は、世界に絶望が満ちていると言えるのか?
哀れな人形を操り、世界を無に返そうというのか?
なら、俺が目覚めさせてやる………俺が、教えてやる!
七瀬留美…川名みさき…長森瑞佳…里村茜……そして、椎名繭。
あいつらを泣かせるわけには、いかねーからな!!
177名無しさんだよもん:01/10/31 17:15 ID:LNcCVw7H
まーわーしー。くさい話ですいません。
178名無しさんだよもん:01/10/31 17:21 ID:LNcCVw7H
回し…浩之×志保なんて、特別天然記念物並だよな…特に企画もので。
179名無しさんだよもん:01/10/31 17:23 ID:LNcCVw7H
回し。明日は葉鍵人口が、一点に集中しそうですな…楓vs留美。
自分は七尾の留美が好きなんですが…雑談スマソ。
180名無しさんで逝こう:01/11/01 01:41 ID:DO30vVGV
あー、なんか困ってます。
次に私が書き込むと、聖戦が終わってしまうんですけど、よろしいのでしょうか?
まだ他の書き手さん、やり足らないことありそうですし、書き込む踏ん切りがつきません。
清水なつきの書き手さんは、もちろんでしょうし、ほんと困ってます。
ED任せてくれるでしょうか? ご意見待っています。
とりあえず、今日は寝ることにします。果報は寝て待て。おやすみなさい。
181某一書き手:01/11/01 03:46 ID:dQWEFaRR
僕自身はもうちょいつづけてもいいのではと思っております。ただ、EDを迎えるのも悪くはないかと。
ただし、それで本当に聖戦が終わるかというとちょっと……って感じです。
(ひょっとしたらそこから続くのでは……と思ってみたり)
ただ、ED自体はよろしくお願いしますね。
182名無しさんだよもん:01/11/01 10:54 ID:p21E4TH+
EDの迎え方にもよると思いますけど…どうでしょう?
一応、現場にいるキャラ全員のフォローの形によれば、それでも構いませんが…
誰も死んで欲しくないというのは、虫が良すぎますか?(笑
183名無しさんで逝こう:01/11/01 11:47 ID:roZCrD00
ご意見ありがとうございます。

>181 某一書き手さん
もう少し続けたいというのは確かにあります。が、終わらせ方を考えてみたところ、
話をよりよく終わらせようとしたら、今が尤も良い時期なんだとの判断(独断)でした。
このままづるづる行くと、どうしても盛り上がりに欠けてしまう、だれてしまう、ような気がしてなりません。
多分に私の主観だし、我侭なんでしょうけど、いつか『物語』が終わるものなら、終わらせるのも、
ひとつの『物語』に対しての思いやりで、また始まりだと思っています。やはり私の我侭かもしれませんが。

>182 名無しさんだよもんさん
現場に居るキャラクターに関しての全てのフォローはもちろんですし、
誰も死なないで欲しい、というのは、今までの私のカキコを見ると信じられないでしょうが、
何とかなりますよ。私がむやみやたらに殺そうとしてきたのも、まあ、ひとつの伏線だったんですから。
星の記憶に幸せを≠`IRでも主題になった、これをテーマにしてるんで、
最後には納得のいくエンディングを用意するつもりです。捉え方は人それぞれかもしれませんが(笑。

では、>70-73の話(某一書き手さんかな?)の続きが終わった聖戦のEDを書かせてもらいます。
聖戦に訪れてくれた皆さんに幸せな物語の思い出を。敬具。
184名無しさんで逝こう:01/11/01 11:52 ID:roZCrD00
訂正
>続きが終わったら$ケ戦のEDを書かせてもらいます。
 ――でした。聖戦のエンディングはきちんと推敲して書くので心配は(あまり)いりません。
 いや、頑張ります。うん、本当に。
185名無しさんだよもん:01/11/02 01:43 ID:uPj6qDev
メンテ。
186名無しさんだよもん:01/11/02 15:06 ID:eQo48Cwm
メンテしてみる。
187名無しさんだよもん:01/11/02 20:07 ID:qDPoxQ6S
またメンテ。
188名無しさんだよもん:01/11/03 11:00 ID:BZwDel49
メンテ。
189名無しさんだよもん:01/11/04 10:28 ID:tMZ2jM0j
もしかして>70-73の話を書かれた方はもういないのかな?
それともリレー小説だし、後は任せてくれるということかな?
もし、そうなら不肖ながら、私が続きを書かせていただきますがどうでしょう?
190名無しさんだよもん:01/11/04 19:19 ID:RvT21Iu4
ん、なんか寂しいな……じゃあ、書いちゃいます。
191名無しさんだよもん:01/11/04 19:22 ID:RvT21Iu4
あ、でも夜まで待ってみます。差し出がましい真似でスマソ。
192名無しさんだよもん:01/11/05 12:00 ID:N2dVsZXg
メンテ。
193名無しさんだよもん:01/11/05 12:26 ID:aJSfTdVB
>70―73をかつて書いた者です。
諸事情により遅れておりますが、ネタの方は大半完成しております。
ただ、時間が取れないのが辛い所だと……。
早ければ本日の夜明けあたりにUPしますので待ってくださいませんか?
194名無しさんだよもん:01/11/05 13:17 ID:OMdspDxk
はい。了解です。
195名無しさんだよもん:01/11/06 01:26 ID:xLp/aMgH
メンテ。
196193:01/11/06 06:50 ID:hvVqhqF/
どうもお待たせいたしました。
ネタが上がりましたので、早速書き込ませていただきます。
 中に入るとユンナもこの異様な雰囲気に気づいたのか、すっかり焦りきった表情で
清水さんの後を追って階段を駆け上がっていた。発生源は2階のようだ。
「なつき! 永遠が……」
「分かっとる!!」
 清水さんは怒鳴りながらも確実にその目的地へと足を近づけていた。
 付いていきながらも、私はユンナの口から出た言葉が妙に引っかかった。

 永遠――?
 発生しているのは彼の地だけじゃないの?

「誰が暴発させたか大体想像は付いてるけど……」
 清水さんは2階のある部屋の前で足を止めた。
 息を整えながらじっとそのドアを睨み付けている。
「ユンナ……彼氏の容態はどうだった?」
「彼氏……そんな人いた……?」
 不可解な会話だった。この部屋にいる人に彼氏なんていたっけ……?
 そもそもここに運び込まれたのは、一人だけ……。

「ユンナ……それに吉井も……。
 思い切り永遠に毒されっちまったみたいやのう。
 よく思い出してみいや……って時間がないか」

 永遠に毒された――?
 私がその言葉に気になっている間にも、清水さんはそのドアに手を掛けていた。
 ――高瀬さんが収容されている部屋の。

「お前らはここで待っとれ。絶対に入るなよ」
 清水さんはそのように言い残すと、部屋に足を踏み入れていった。
 そしてドアがゆっくりと閉じられていった――。
 残された私とユンナと杜若さん……そしてこの様子を察知して駆けつけてきた
天沢さんと巳間さんの5人はじっとドアの前に佇みながら、彼女が出てくるのを
待つしかなかった。
 ドアの向こうからは物音一つしなかった。聞こえるのは私たちの呼吸だけ。
「一体……どうなっているの……?」
 天沢さんが困惑しきった様子でふと呟いた。彼女にはどうやら今の原状が分か
っていないように思えた。
 かといって、そういう私も一体中で何が起こっているのかを具体的に説明せよ
と尋ねられても、恐らくできないだろう。
 私はじっと時間がたつのを待つしかなかった。

「……ドアの向こうは永遠の空間が拡がっていると思う……」
 ユンナがいきなり誰に言うののでもなく、ぼそりと呟いた。
「どういう事なの、それ? さっきから言ってることがよく分からないよ」
 私が訊きなおすとユンナはびっくりしたかのような顔をしたがすぐに続けた。
「恐らくだとは思うけど……瑞希ちゃんが和樹君を永遠に引きずり込もうとして
いるのじゃないかな……」
「ちょっと、高瀬さんって永遠にアクセスする力を使えるの?」
 ここで一呼吸の沈黙が入った。
 その後、私の問いかけにユンナが答えた。
「多分。その可能性は非常に高いわね」
「考えてみてよ。知っている限りで永遠を操れる人間は数人いたよね。
『永遠の管理人』こと氷上シュンにみさおちゃん……あと志保さんも使えるように
なったと言われてるわね。
 そして、なつきに椎名繭……考えてみたらこの面子にはある共通点があるのよ」
 そういわれても私にはよく分からなかった。
 生まれも経歴も各人バラバラだし……強いて言うなら清水さんと椎名さんがかつて
高野で修行していたということぐらいしか共通点がないはず……。

「それって……全員"一度死を経験した事がある"って事?」
 口にしたのは巳間さんだった。
「といっても、全員の経歴をしっているわけじゃないから言い切れないけど……」
 自身なさげにキョロキョロし出す巳間さんにユンナは言った。
「それ……ていうか、それ以外には考えられないのよ。
 氷上君は病死しているし、みさおちゃんは今更言うまでもないよね? なつきから
聞いているか、わたしが話したしね」
「ええ」
「あと、志保ちゃんもセリオに腹を打ち抜かれて死亡しているし、椎名は一度永遠と
交わる際に一度死んだって聞いたことがあるの。
 それに……なつきも一度仮死状態になったって前に彼女が言ってた。
 なんでも永遠の管理人になる前に車に轢かれてしまったみたいだし」
「でも、それだけで全員が一度死んだって言い切れるの? 論理があまりにも乱暴だけど」
 天沢さんが当然とも言える疑問を口にする。私もそのことが引っかかっていたのだ。
「確かに普通の人間がそれを聞いてもピンと来ないと思うわ。
 ただ、死者の管理をしている天界の人間だと死んだか否かははっきりと分かるの。
 いわんも何もわたしがそうなのだから……。
 念のために天界に問い合わせたら、そのことは間違いないという返事が返ってきたわ」
 忘れていた。ユンナは天使だったことを。
「てことは、瑞希が永遠を操る力を使えそうなのは十分うなずけるわね。
 だって彼女一度、造った人間に殺されそうになったって言ってたのを、ものみの丘に
いた頃に聞いたことがある」
 巳間さんがそう呟いたときだった。

 ……ガチャリ。

 目の前のドアのノブがゆっくりと回ったかと思うと、ドアが開いた。
 中から出てきたのは……。
「……やあ、お待たせ。ちょい時間掛けてしまってごめんね。もう大丈夫だから」
 そこにいたのは疲れきった表情を見せながらも、元気に微笑む清水さんがいた。
 相当苦戦したのか、汗をびっしょりとかいていた。上着を肩に掛けて、ピンクのブラウ
スを捲り上げていた。そして彼女の左手は高瀬さんの手を引いている。
 高瀬さんもまたすっかり疲れきった顔だった。パジャマ姿のままだったが、傷の方はす
っかり癒えたらしく、松葉杖なんかがなくとも余裕で歩けるようだった。清水さんが強引
に治療したのだろうか。

「ちょっと火貸してくれる?」
 清水さんは微笑みながら煙草を口にくわえていた。ユンナが慌ててポケットからライター
を取り出して着火する。
「ふ〜。やっぱこんな時の後は一服するのに限るね」
 口調も普段どおりのものに変わっている。先程までの焦りはなくなっているかのように
思えた。むしろ余裕だといった感じだった。
 対照的に高瀬さんは自分がどんな状態にあるのかすらわからなく戸惑っているといった
具合だった。果たして、カレを"永遠"に自分のものにしようとしたのかは分からないが。
「あ、あたし……」
 高瀬さんがおずおずと言いかけたとき、清水さんは煙草のソフトパックを彼女の前に突
きだした。
「とにかく1本吸いなよ。落ち着けるから」
「そ、そんな……」
「20いってないからって? 気にしなくていいよ。大学生なんかザラに吸ってるって」
 あのー……そんな問題じゃないと思うのですけど……。
 今までに何が起こったのか……正直まったく理解できなかった。
 言われるがままに車に乗り込んだけど、この先どうなるのかすら分からない。
 ただ、はっきりしているのはあたしを作った浩平って人に会いに行くという事……。
 先程、和樹を助け出してくれた眼鏡を掛けた女の子がそう言ってくれた。

 少し前……あたしはなんとなく嫌な気配を感じて目を覚ました。
 気になって和樹が眠っている場所を見ると……和樹が起き上がっていた。
 あたしは思わず声を掛けたけど……和樹は見向きもしなかった。
 ――どうして?
 あたしは必死になって叫んだけど……それでも和樹はこっちを振り向くどころか、
あたしからどんどん離れていってしまう……。

 その時、和樹の目の前に小さな女の子が立っていた。
 白いワンピースを着た見覚えのない女の子。
 じっと微笑ながら立っていた。
 そしてその女の子に向かって和樹はふらふらとしながらも歩いていった。

 あたしは思わず立ち上がろうとしたけど……動けなかった。
 その場からまったく動くことが出来なかった。
 じっとその場にうずくまりながら、和樹が去っていくのをただ見るだけしかできない。
 そんなのは嫌だった。
 でも、どうすることも出来なかった。
「ちょい、ごめん!!」
 いきなり後ろから別の女の子らしき声がしたかと、乱暴に突き飛ばされた。
 打った額をさすりながら、顔を上げると和樹の横に別の女の子が立っていた。
 桃色の髪の小柄な女の子だった。

 ワンピースの女の子はいきなりの訪問者に一瞬びっくりしたような素振りを見せた。
 でも、すぐにもとのにこやかな顔つきに戻り、微笑みながら口を開いた。

「あなたもお兄ちゃんに会いに行くの? 連れて行ってあげるよ」
 女の子の誘いに桃色の髪の女の子はふらふらと近づいていって、そして……。

 ――!!
 目の前ではとんでもないことが起こった。
 ワンピースの女の子が後ろに倒れていったのが見えた。
 その前には拳を振り上げた桃色の髪の女の子。
 誰が見ても殴り飛ばしたのは明らかだった。

「……なめとんか」
 桃色の髪の女の子は可愛らしい声とは対照的なガラの悪い口調で呟いた。
 ワンピースの女の子の顔には先程までの微笑みはなく、じっと桃色の髪の女の子を
恨めしそうににらみ付けていた……そして、すぐに姿を消していった。
 その桃色の髪の女の子はあたしの方を見た。
「もう大丈夫だからね」
「……ふ〜ん、そう思ってたの」
 先程ユンナが口にした推論を清水さんに話すと、彼女は短くなった煙草を灰皿でもみ消
しながら聞いていたが、やがて口を開く。
「でも肝心な所で外れているよ。
 瑞希さんが永遠を操れるのを見抜いたのは見事だけど、彼女は和樹さんを永遠に連れて
いこうとはしていなかったよ。むしろその逆で"和樹さんが永遠に連れて行かれようとして
いたのを引き止めていた"んだよ」
「それって、どういう事?」
「もうぐずぐずしていられないから簡単に話すね。
 和樹さんを永遠に連れて行こうとしたのは"永遠の少女"って存在だったんだよ。
 そいつは永遠の世界をこの世に浸透させようとしているんだよ。
 そのためには一人でも多く、永遠の世界に人間を一人でも多く引きずり込まなければい
けないんだね」
「ちょっと……何故永遠がこの世を侵食する必要があるの? それに永遠の少女って存在
が何なのかも分からないよ」
「ていうか、"永遠の少女"が永遠に人間を引きずり込むのに躍起になっているといった方
が正しいかな。理由としては一人だからさびしいっていう所かな」
「そんな単純な理由で?」
「うん。もともと永遠ってのは記憶の上に成り立っている世界ってのは知っているよね。
 じゃあ、永遠の世界に関わりたくなったり、行きたくなったりするのはどういう時に
起こるのか……早い話が自分自身がさびしく感じたときになるんだね。
 "さびしいから今あえない人に会いたくてたまらない"って感じだね」
 なつきはここまで話すと、さらに煙草を口にくわえて火をつけた。
 いい加減煙草はやめたいんだけど……やめられないんだよね。
 まあ、それはともかく話も強引に進めちゃっているからみんなは取り残されたって感じ
だから唖然としちゃってる。でも、詳しく説明するとそれこそ朝までかかりそうだから、
勘弁してね。
 とにかく、さすがに時間がなかったので話を一旦ここで切って、今から彼の地へ乗り込
むってことを言った。
 吉井はもちろん乗ってきた。岡田の事が気になるんからだという。
 それに瑞希さんも乗り込みたいって言ってきた。
 なんでも彼女を作った人に決着を着けたいという。これ以上他の人に自分のような悲し
い目に遭わせたくないために。
 そう――浩平お兄ちゃんの暴走を止めるために。

「んで、あとあんたたちはどうするの?」
 なつきは念のために晴香さんと郁未さんにも問い掛けておいた。
「もちろん行くわよ。由衣の事が気になるし」
 郁未さんは当然といった顔だった。
「でも、力のほうは回復したの? あたしなら大丈夫だけど」
 そんな彼女に突っ込む晴香さん。でも、なつきが見た限り彼女も体が回復していないと
思うけど……。
「うるさいわね。大体回復したからいけるわよ。それよりあんたは体がまだ回復しきって
ないんだから、それを心配したら?」
「あんたこそ心配よ」
 その後、二人は言い合いになってしまったが、このままにしてもきりがないので半ば強引
に車に押し込めた。晴香さんの傷については法術である程度は回復させておいた。
 そして、慌しく彼の地へと出発した……。
206名無しさんだよもん:01/11/06 07:26 ID:wy0Rh8gW
さてと回しますか……。
207名無しさんだよもん:01/11/06 07:27 ID:wy0Rh8gW
遅くなって申し訳ないですが……。
208名無しさんだよもん:01/11/06 07:28 ID:wy0Rh8gW
ここで訂正を少し。
209名無しさんだよもん:01/11/06 07:30 ID:wy0Rh8gW
その1 202のカキコのタイトルですが正しくは「高瀬瑞希@かつてあの時の再現(6/9)」
210名無しさんだよもん:01/11/06 07:31 ID:wy0Rh8gW
その2 205のカキコのタイトルの番号ですが正しくは(9/9)です……。
211名無しさんだよもん:01/11/06 07:34 ID:qEjbJ8i8
間違いだらけでスマソ……。
212名無しさんだよもん:01/11/06 07:35 ID:qEjbJ8i8
しかも連続投稿制限に引っかかってしまうし……。
213名無しさんだよもん:01/11/06 07:36 ID:qEjbJ8i8
でもネタはまだありますが……。
214名無しさんだよもん:01/11/06 07:37 ID:qEjbJ8i8
ここで少し間を置いてから書きますのでお願いいたします。
215名無しさんだよもん:01/11/06 07:38 ID:qEjbJ8i8
書き終わったら回線切ってプリンターケーブルで逝きますか……。
216清水なつき@彼の地への到達(1/9):01/11/06 09:20 ID:qEjbJ8i8
 ――いいかげんにせえよ……。

 なつきはひたすら車を彼の地へと飛ばしていた。
 今までの状況からみて、最悪の場合は……。

 ここでふと、浩平お兄ちゃんの事を考えた。
 思えば、あの時高野で浩平お兄ちゃんと瑞佳さんが消えてしまったときに気づくべき
だった。そう、答えはすでに示されていたのに気付けなかったんだ……。
 ここにくるまでに引っかかっていたことが一つ。

『なぜ長森瑞佳は折原浩平の後を追うようにして消えてしまったのか?』

 今まで誰も(椎名でさえも)この疑問に至らなかった事自体不思議と思えるんだけど、
でもこの答えが正しければそれも無理はないと思えるんだよね。
 大体のところ答えは想像できていた。
 以前、秘密裏に入手した"長森瑞佳の死亡診断書"である程度その説は有力になるように
思えたけど、今ひとつ想像の域を脱する程ではなかったよ。
 でもようやく、瑞希さんを永遠から引きずり出したとき――。
 そう――まさしく浩平お兄ちゃんが消えたときとまったく同じ状況が起こった時――。
 和樹さんを永遠に連れて行こうとする少女。
 その少女はこう名乗った――"みずか"だと。
 やっとその答えに確証が持てた。

『長森瑞佳の意識が折原浩平を永遠に引きずり込んだ』

 でもそれだけでは答えにはならない。
 あえて付け加えるならこんな感じだろうね。

『正と負の二つに分裂した長森瑞佳の意識が、同じく二つに分裂した折原浩平の意識を永遠へ連れていった』
217清水なつき@彼の地への到達(2/9):01/11/06 09:21 ID:qEjbJ8i8
 永遠に懸命に誘い込もうとする女の子。
 九尾の娘に憑依された少女。

 次元修正能力者に憑依して全てを滅ぼそうとする少年。
 そして……霧島さんの妹が死にかけたときに出会った"おりはらこうへい"という男の子。
(ちなみに最後の事実は霧島さんとの電話で実際に聞かされた)

 この2人について……いずれも行動がバラバラなんだよ。
 両者とも永遠の能力がを持っている(と考えられる)とはいえ、行動がちぐはぐなもの
になってしまってる。
 考えられるのは精神が正と負の二つに分裂した……それだったら妙に納得がいく。
 ただ、問題なのは"みずか"とは違う方の"長森瑞佳"はどこへ行ってしまったかという事。
 裏葉さんに現在は憑依されているとはいえ、精神が果たしてそこにあるかは分からない。

 とにかく分かっているにせよ分からないにせよ彼の地に行くしかない。
 今は"みちる"を何とか抑えないとね。
 方法は大体考えてある。浩平お兄ちゃんが次元修正能力を使ったとしても修復不可能に
してみせるよ。
 だって……"遠野みちる"に罪はないから……。
218清水なつき@彼の地への到達(3/9):01/11/06 09:22 ID:qEjbJ8i8
 山を抜けて彼の地へと続く平原に差し掛かろうとしたとき、一台のトラックがこちらの
方に向かってきているのが目に入った。
「あれ、雛山さんじゃない?」
 後部座席にいた吉井がふと呟いたので、車をとめて運転席から出て大きく手を振る。
 トラックの方も慌てて急ブレーキを踏んだようで、悲鳴をあげながら止まる。

 運転席には20代ぐらいの青年、助手席には特徴のある髪型の少女が座っていた。
 吉井が言うには助手席にいるのが雛山さんだという事だけど。
 なんでも今彼の地からの怪我人を運んでいるという。
 ただその際に興味深い話を聞いた。
 病院を見回っていたときに妙な病室に入ったという。もっとも誰もいなかったが……。

 ともかく、雛山さんと運転席にいた藤井さんにペンションまでの道のりを教えて、まず
はそこに運んでくれという事を言っておいたよ。
 あとついでに藤井さんに特別に言っておくことがあった。
 内容は藤井さんとかつて付き合っていたあの人の事……。
 そっと藤井さんに耳打ちをした。彼は信じられないといった顔でなつきを見た。
 当然だろうとは思うけど。
 詳しく話してくれとせがまれたけどさすがに時間がない。彼の地の騒動が終わったら、
じっくり話をしよう。
 なつきは藤井さんらに礼を言うとそのまま車に乗り込み彼の地へと車を走らせた。
219清水なつき@彼の地への到達(5/9):01/11/06 09:23 ID:qEjbJ8i8
 ちらっと助手席に座っている瑞希さんの足元に置かれている鞄を見た。
 中にはクメールの地から持ち出してきた"仏像"が一体。
 だが、今は訳あってちょっとした偽装を施してある。
 一見するとウサギのぬいぐるみにしかそれは見えない。
 しかもしゃべるぬいぐるみときている。
 通称は……これ以上は以下略ということで……。

 やがて目の前に異様な空間が現れた。
 上空には黒い雲が立ち込めて、さらに瘴気を外へと吐き出している。
 今は夏だというのにそこだけが取り残されたかのように冬になっていた。
 まぎれもなく彼の地だった。

「覚悟はいいね?」
 なつきが車内の面子に声を掛けると、彼女らは何も言わずに頷いた。
 それを確認するとそのままアクセルを踏み出した。
 ついに車は彼の地へと突入した……。
220清水なつき@彼の地への到達(5/9):01/11/06 09:25 ID:qEjbJ8i8
 ――次元修正能力……。
 まったく厄介なシロモノだね。
 彼の地に漂う余波がそれを物語っている。
 風は吹きすさび、雪はさらに激しく降ってくる……外の世界は夏だというのに。

 やがて車はかつてスフィーらがねぐらにしていた病院にたどり着いた。
 ここには誰もいない……と雛山さんは言っていたが、今ひとつ気になることがある。
 病院名をチェックした。
 ――間違いない。聞いた情報が確かなら恐らくここに……。
 なつきと吉井でこの病院を探索することにした。

 ……少しして後。
 くまなく探してみたけれど、やはり誰もいなかった。
 雛山さんの言ったことは気のせいだったかな……なんて考えも頭によぎったけれど
今ひとつ納得がいかない。どうも気に掛かる。
 ――まるで自らの存在を否定したがるような心がこの病院にある気がする……。

「やっぱりここには誰もいないみたいね……」
 吉井も同じ事を思ったのかそう呟きかけた時だった。

 ……ボクの事忘れて……。

 空耳だろうか……声がした。
 再度あたりを見回すがやはり気配はない。だが……念のために神経を集中させる。

 ――!!
 本当に微かだが……誰かがいる気配がするよ。
 あまりにも微弱すぎるから、普通の人だったら見落としてしまう所だろうけど。
221吉井ユカリ@彼の地への到達(6/9):01/11/06 09:26 ID:qEjbJ8i8
「吉井、こっちだよ!!」
 清水さんはいきなりそう叫ぶと階段を駆け上がった。
 何かを見つけたのだろうか。私には何のことだかさっぱり分からないけど……。

 たどり着いたのは4階。
 清水さんは真剣なまなざしでそのフロアにある病室を1つ1つ隅から隅まで確認する。
 501号室、502号室、503号室、505号室……
 さすがに病院とあって4の数字のつく部屋は存在していない。
 まさか、"504号室"を探そうなんて考えていないでしょうね……。

「その通りだよ」
 思ったことが口に出てしまったらしい。清水さんはすこし微笑んでそう答えた。
 ちょっと……そんな事している内にも丘ではヤバい事になってるって……。
「そんなの百も承知だよ。ただ、ここに相沢祐一の目を覚まさせる鍵が眠っていると思う
んだけどね。しっかりと確認しておきたいんだ」
 また思ったことが口に出てしまった。困ったものね。
222吉井ユカリ@彼の地への到達(7/9):01/11/06 09:28 ID:m39yIK2w
 結局、4階をくまなく探したもののお目当てのものは見つからなかった。
 もちろん人っ子一人いない。
 だが、清水さんはそれでも納得がいかないようで再度病室を来たのとは逆の方向から
調べ始めた。
 ……506号室、505号室、404号室、503号室……って、404号室!?

 私ははっとした。来たときにはこんな部屋はなかった。
 その部屋はドアが閉ざされていた。ネームプレートはかかっていない。
 清水さんはそれを見つけるとにやっと笑い、そしてドアを勢いよく蹴り飛ばした。
 ドアは大きな音を立てて乱暴に開く。
 ……ちょっと、そこまで乱暴にやらなくても。
「開かないと思ったんでね。面倒くさいから思い切りやっちゃった」
 清水さんはてへっと笑うと病室の中に入っていった。てへっはないでしょうに……。

 古ぼけたその病室の窓は開いていた。中にはベッドが一つ置かれていた。
 だが誰の気配もない……ように思えたが……。

 ――ボクの事忘れてください……。

 小さな女の子らしき声。私にも確かに聞こえた。
「……聞こえたな……」
 清水さんが押し殺した声で尋ねてくる。私は何も言わずただ頷いた。
 そして彼女はベッドの方に向き直りそして……。
223吉井ユカリ@彼の地への到達(8/9):01/11/06 09:31 ID:KuCQxJJi
「……なめとんかい、お前は!!」
 ドスの聞かせた罵声をベッドに向けて浴びせ、掛かっていた毛布を勢いよく剥ぎ取る。
 すると……!!

「うぐぅ……」
 ベッドの上には小学生か中学生ぐらいの小さな女の子が一人、怯えた目で清水さんを
じっと見ていた。今にも泣き出しそうな感じだ。
 だが、普通の女の子と違う所が一つ……彼女には羽が生えていた。
 それだけで驚きを隠せないものだけど……心は普通の人間と同じようだ。
 やっぱ、初対面の子にドスを効かせた関西弁はヤバいっしょ……。
 傍から見ればどう考えても恐喝をしているようにしか思えない。
 だが、清水さんはそんなことにはお構いなくいきなり本題を切り出す。
 表情はいつのまにか普段どおりの穏やかなものに戻っている。

「とにかくね。逃げている場合じゃないんだよ。
 相沢さんのことだけど……どうするつもりなの?」
「ゆ、祐一君が……でも、ボクなんかどうでもいいって思っているから……」
 その女の子はあきらめているかのように言い放つ。
「それって本人に訊いてみたの?」
 清水さんの問いかけにその女の子は首を振った。
「だったら分からないじゃない。実際訊いてみようよ」
「そう……?」
 その女の子は戸惑いながら清水さんをじっと見ていた。
 そのやり取りを見てようやく清水さんが何をしようとしているのかその意図がつかめた。

 ――相沢祐一……。
 次元修正能力をもつその少年の意識をどうにかして蘇らそうとしているのだろう。
 聞いた話だと、彼は現在、折原浩平とかいう男の意識に体を乗っ取られているという。
 なるほど……そういう事だったのね。
224吉井ユカリ@彼の地への到達(9/9):01/11/06 09:33 ID:KuCQxJJi
「とにかく、行くの? 行かないの? どっち?」
 清水さんの問いかけにその女の子は決めかねているようだった。
 しばらく沈黙が続く。
 数分ぐらいたって後、その女の子は口を開いた……。

「……ボク……行くよ……」
 か細い声だったがたしかにそれは彼女の意思を明確に伝えるものだった。
 その女の子の目にある種の希望が浮かんだように感じたのは私だけだろうか……。
「OK。じゃあ早速って行きたいところだけど、歩けるかな?」
 見た限り彼女は長い間床に伏せていたらしく、足の力も弱っている感じだった。
「良かったら運んであげるけど」
「……うん」
 女の子は小さく頷いた。
 すぐに清水さんが上半身を、私が足を支える形で彼女を病室から運び出す。
 すると出た途端にその病室は消えてしまった。どういう事……?

 病院の外に横付けしてある車に戻ると、女の子を最後部の座席に寝かせた。
 そして車はゆっくりと病院を後にする。
「とにかくスフィーの所へ行ってから……丘に乗り込むよ」
 清水さんはそう言うと、それ以上何も言わずハンドルを握ってじっと前を見ていた。
 車はひたすら雪深い街の道を突き進んでいった……。
225名無しさんだよもん:01/11/06 09:35 ID:KuCQxJJi
では回します。
226名無しさんだよもん:01/11/06 09:36 ID:KuCQxJJi
前回トチったにもかかわらずまた訂正です。
227名無しさんだよもん:01/11/06 09:38 ID:KuCQxJJi
219のタイトルについた数字正しくは(4/9)です。
228名無しさんだよもん:01/11/06 09:39 ID:KuCQxJJi
進歩がないです……。
229名無しさんだよもん:01/11/06 09:40 ID:KuCQxJJi
遅れてしまった上でこれです……。
230名無しさんだよもん:01/11/06 09:45 ID:Q8oKDco8
一応これで当方のネタは終了です。
231名無しさんだよもん:01/11/06 09:47 ID:Q8oKDco8
しかしまた2重カキコ制限に掛かりました……宇津陀。
232名無しさんだよもん:01/11/06 09:49 ID:Q8oKDco8
では後は他の書き手の皆様にお任せするとします。
233名無しさんだよもん:01/11/06 09:51 ID:Q8neupiW
では聖戦が終結するのを待ちつつ……
234名無しさんだよもん:01/11/06 09:53 ID:Q8neupiW
前述の通り回線切ってプリンターケーブルで逝ってきます。
235名無しさんだよもん:01/11/06 11:41 ID:VjXjCeXz
無茶を聞いていただき有難う御座いました。
確かにバトン受け取りました。話の整合性を図って今日の夕方頃には何とかEDを迎えられると思います。
少し長い話になってしまいますが、もう暫くお付き合いください。
236名無しさんだよもん:01/11/06 12:36 ID:VjXjCeXz
えーと、連続カキコに引っ掛かるのが目に見えているので先に、話の整合をしないで済む部分をコピーします。
どうか、ご了承ください。
237里村茜@葉鍵聖戦(1/10):01/11/06 12:54 ID:VjXjCeXz
 ――振れた。折原浩平に向かって槍を振り下ろせた。
 留美さんの言った通りだった。これは悲しいことでしかなかった。
 好きだと言える人。心から好きだと言える人。
 過ちはもう繰り返さないって誓ったはずなのに私はこの槍を振り下ろしている。
「……最後の最後で手が鈍ったな」
 浩平を包み込んでいる青い光は私の刃をそれより先に通さなかった。
「『物の怪の槍』ここまで追いかけてくるのは見事だが、使い手を誤ったようだな」
 微笑を浮かべている。それは私の知っている浩平の笑みではなかった。
 本当に、どこで見誤ってしまったのか。まだ、月に支配されているのだろうか。
「……この世界が嫌い?」
 揺らめく瞳は、そんなにも滑稽だったのか彼は更に口を歪めて嘲笑う。
「とうとう狂ったか」
「……この日常は貴方にとって意味の無いものなんですか?」
「ああ、嫌いだよ。ここは意味のない世界だ」
 だから永遠を求めたのか。嫌いな世界は潰してしまいたいだけなのか。
 意味のない事象なんて世界にはない。どうして、それを忘れてしまったのだろう。
「……居ないからですか?」
「無いからだよ。何も無いんだこの世界には」
「……私は幸せでした。退屈で代わり映えしない穏やかな日常が好きだった」
「そりゃ良かったな」
 浩平の手が私の喉もとに届こうとしている。
「……どうして、今ごろになって、気づくんでしょうね」
 あの時と同じ。司を失ったときと同じような悲しみが私に再び襲い掛かってきた。
「…………」
 いや、あの時と同じでもないか。だって、あの時よりも――
 涙が止まらないもの……。
「浩平……私は、貴方のことが好きです」
 手を動かす。槍が貫く。いや私の首が折られる方が先だろうか。
 どちらにしろ、これで終わる。
「……終わらして、お願い」
238里村茜@葉鍵聖戦(2/10):01/11/06 12:57 ID:VjXjCeXz
「――約束、忘れちゃったの!?」
 みさきさんの声が沈みいく意識の中で聞こえてきた。
 それと体に浮遊感が生まれていた。
「大丈夫、茜?」
「留美さん……どうして?」
 抱き上げられるように留美さんの手の中で私は風の息吹を感じていた。
「まだ、終われない。折原を救うためには」
「……え?」
「忘れたの、約束のこと?」
「約束……」
 いつかこの戦いが終わったら、皆でクリスマスパーティをしようって約束をしていた。
 どうして、今更、そんなことを思い出してしまうのか? どうしようもならないのに。
「七瀬もそちらに付くのか?」
「あのね、折原……付く付かないの問題じゃないのよ」
 留美さんは神妙な顔つきで浩平に告げていた。
「失望だな。まあいい。お前もみちるに殺されろ」
「本性は『MOON.』……そうでしょう? 折原でもない相沢でもない貴方は」
「だからって、どうする? 俺はどうやっても俺なんだよ」
「そうだね、どうやっても浩平君なんだよね、貴方は。だから苦悩するんだよ」
 みさきさんは眼を閉じていた。それなのに全てを見透かしていた。
 外界から視界を閉ざすのが心眼の極意≠ネのだろうか。
 秋子さんの力の増大が『比翼』の相互供給なら『月の霊法』をもった今の彼女にとってもそれはプラスになる。
「でも、絶望はしないよ。強く在ること、私はそうなることを望んでいるの」
 今、みさきさんの姿に深山さんの面影が見えたような気がする。
 私は正気を失って来ているのだと胸中で思った。
「強く在りたいなら、みちるを倒してみろ。出来なければ死ぬだけだ」
「わたしが求めているのは、心の強さだよ」
 私にも持つことが出来るのだろうか。心を強く在ろうと出来るのだろうか。
「そうだよね、茜ちゃん」
 ただ、皆がそう言ってくれるなら、幻想だとしても、私は強くなれる気がした。
239里村茜@葉鍵聖戦(3/10):01/11/06 12:59 ID:VjXjCeXz
「どちらでもいいさ。みちるに勝てなければ腐って死ぬだけだ」
 無傷のみちるに傷ついた私では勝負にはならない。秋子さんもそうだろう。
 頼みの綱は真琴だった。彼女の力さえ完全になれば滅ぼせる術はある。
「……と、普通なら思うところでしょうけど」
 そんなことすでに彼に見透かされている。私たちとしてはその裏を斯かなくてはいけない。
伏龍≠ニ称された私たちのブレインの頭脳を出し抜く方法。
 私なんかでは思いつかない。繭さんに匹敵するほどの戦術を編み出せるのは誰?
「茜ちゃん……」
 みさきさんが私の肩をぽんぽんと叩いた。
「心配無用だよ。どんな策があったとしてもたったひとつの偶然には叶わない」
「……奇跡でも起これば勝てるということですか?」
 多少、楽観的だがみさきさんらしくていい。だったら私も自分の出来ることをするだけだった。
「物の怪の槍よ、私に力を貸してください」
 槍がきぃんと鳴った。――いける。少年はまだ諦めてない。私は槍を強く掴んでいた。
「サポートは私と裏葉ちゃんがするよ。留美ちゃんと茜ちゃんは両翼から攻め込んで。それから――」
「……あぅーっ」
 みさきさんと眼が合うと真琴は低くうめいた。人見知りするらしい。
「あとは、真琴ちゃん次第だよ。頑張れる?」
「…………」
 真琴は少し俯いてから顔をしっかりと上げた。意思のこもった強い瞳になっている。
「やる!」
「うん。わたしも全力でサポートさせてもらうよ」
 私は頷いて、みんなも頷いてくれて、やれることを精一杯にやるだけだった。
 本当に終わる、ということは、すべてを諦めてしまった時だけなのだ。
 ――絶望はしない。
 希望がそこにあることを信じる。
「お喋りはそこまでだ」
 浩平は低い声で冷徹に告げていた。それはもう本当の浩平じゃない。
『MOON.』だった。
 次の瞬間、私たちはみちるに向かって駆けていた。
240里村茜@葉鍵聖戦(4/10):01/11/06 12:59 ID:VjXjCeXz
「…………」
 左翼には留美さんが回り込んでいる。私はその反対から攻め込んでいた。
 みちるは依然として動かない。彼女が見ているのは、真琴でしかない。
 私たちのことは眼中にないのだろう。もちろん舐められているのは好都合だった。
「槍術°纉ェ龍閃!」
「妖術#酎M雷光!」
 留美さんの雷はみちるの翼に弾かれて、私の槍はみちるの九尾に絡め捕られてしまう。
 もはや私たちの力はみちるには通じない。単なる足止めに過ぎない。
「でも、それで充分です!」
 私の目に真琴の駆け込んでくる姿が在った。
 正直すぎる。が、私にはそれだけではないことが分かっていた。
 何かやってくれそうな予感。どきどきと胸が鼓動する。
「紅よ!」
 みちるの手から赤い閃光が疾った。真琴は跳んだ。自然とみちるは眼を上げた。
 狙っていたかどうかなんて分からない。それこそ偶然だったのか。もしくは奇跡だったのか。
「天之御劔よ!」
 その声はみちるのものではなかった。
 物の怪の丘に衝撃が迸った。真っ白な閃光がみちるを斬りつける。
「――美汐!?」
「ごめんなさい、茜……心配かけたようですね」
「……馬鹿。そんなことないです」
 高野での友、天野美汐。
 負に染まった彼女のことを私は辛い思いで見ていたが、今はこんなにも強く笑っている。
「……ありがとう、茜」
「はい……」
 不器用な同士なので話はこれで良かった。察するに私と似ているのだ美汐は。
 惹かれあったのは、そういうところの以心伝心が分かり合えるから。
(いえ、違いますね……)
 私は心の中で訂正した。
 友達になるのに理由なんて要らないのだ、と。
241里村茜@葉鍵聖戦(5/10):01/11/06 13:00 ID:VjXjCeXz
「真尾$_々の黄昏よ!」
 花が開くように十本の尾が螺旋を描いた。みちるはさっきの御剣で体制を崩している。
「今、力を放て! 無限へと!」
 これは真琴の声から出てはいたが実際には違う。九尾の咆哮だった。
 十尾が重なる。すべての力が無限の尾に込めている。
「闇よ!」
 みちるも負けじと咆哮した。紅の力が翼に宿って烏のように真っ黒な羽を開いた。
 闇の光。神々しい。獣の中の獣。翼神獣。闇が揺らめいた。
「紅光りて闇に染まりし星の記憶よ! 災厄の原点滅ぼしたまへ!」
 みちるの声は呪文となりて、星の記憶に呼びかけた。
 そう、今のみちるは翼人の記憶を受け継いで、星の代行者となっている。
「命を滅ぼすことは、幸せなんかじゃない!」
 本来なら星はみちるの味方をするのだろう。だが――今は違った。
「星の記憶は笑顔じゃないと駄目なんだからっ!
 みちるとは異なる光の翼が広がった。みちるの闇をすべて払おうとしている。
<TIPE−1>神尾観鈴。まさかこれほどの威力をもつとは。
 本当の幸せとは、今まさしく彼女の中にある。
「……力が消えた?」
 呆然とみちるは呟いて、すぐに標的を真琴から彼女へと移す。
「無限の尾よ!」
 星の恩恵とは関係ない力をみちるは観鈴にぶつけようとする。
 ――でも、遅い。
「ブラックホール!」
 みちるを飲み込もうと黒い穴が開かれた。恐ろしいほどの重圧がかかる。
 しかし、真琴の『魔水の尾』と『光月の尾』が空間を制御していた。十尾を極めるとはそういうこと。
 どうして彼女は、十本の尾を司ることが出来たのか? その疑問は――
「……真琴、頑張ってください」
 美汐の体が光を放っていた。高野の禁術『比翼』。お互いを信頼しあった仲でしかできない術だ。
 力のすべてを真琴に与えようとしている。まさに命をかけた攻防だった。
242里村茜@葉鍵聖戦(6/10):01/11/06 13:02 ID:VjXjCeXz
「ぐおぉぉぉぉ!」
 獣が吼えた。諌められた翼人の力は使えなくても九尾とゴッドハンドの力は残っている。
「――うそっ!」
 真琴が悲鳴を上げた。これが翼神獣の底力か? 不動の術をもろともしない。
 みちるの力が回復してなかったら、もう勝敗は決まっていたのに。
「秘剣@エ牙」
 圧倒的な封縛空間に突っ込んでいったのは柳也さんだった。
 むろん蛮勇だ。妖刀・村雨をもってしても太刀打ち出来ない、と誰もが思った。
 その時――
「見せてやるぜ! 俺の奇跡を!」
 声は柳也さんのすぐ後方から聞こえた。柳也さんが刀を手放して藤田浩之がそれを受け取る。
 そして次元を斬り裂く――
「次元斬・改!」
 村雨が斬ったのはみちるではなく次元、浩平が矯正したはずの過去への絆だった。
 みちるの姿が本来在るべき姿に戻っていく。とは言っても、こうした修正は何度もすると時空間の統制が利かなくなる。
 それは秋子さんが命懸けで統制したので証明済みだった――が、それも――
「――――!」
 河島さんが人では聞き取れないカオスワーズを唱えていた。
 プラスとマイナス、二人の均衡。どちらが欠けても完全とはいえない力がここにはあった。
「この程度で――」
 腕が千切れ、羽が毟られて、尾は腐敗して、それでもみちるは崩壊しない。
 負は自分自身が痛めつけられるほど、増大していく。
 そうだった。みちるは負の化身。憎悪が高まれば高まるほど力は漲っていくのだ。
「死よ!」
 みちるの体から波動が疾った。負が直接、意思をもって私たちの体を溶かそうとする。
 これがゴッドハンドの史上最悪の力だった。人は誰でも負を胸に抱いている。これを防ぐ手立てはない。
『みんなをやらせはしないの!』
 しかし私は見た。みさきさんも留美さんも同じ胸中だった。こんな時にだって私たちは喜び合える。
 心優しきゴッドハンド、上月澪がそこにいるから。
「……澪、お帰りなさい」
243里村茜@葉鍵聖戦(7/10):01/11/06 13:03 ID:VjXjCeXz
 紅に染まった霧が散っていく。
 ゴッドハンドとしての澪の力があれば、みちるのゴッドハンドの力を打ち消すことが出来るようだ。
 これで勝敗は決した。もうみちるには何も残されていない。
「…………っ!」
 みちるは数歩ほど後ろに下がった。足は無い。髪の毛をそのように使っているだけだ。
 それに浩平の次元修正能力で再び復活することも無い。本当に終わりだ。
「…………」
 みちるが周囲を見回していた。
 今、彼女はどのような想いでいるのだろう?
最凶≠フ力を欲しいままにしていた翼神獣≠ンちるにしては無様だった。
 しかし物の怪の丘にこれだけのメンバーが揃ったのだ。
 私たちの想いがみちるを上回った。それだけのことだろう。何も難しいことは無い。
「……なるほど、十尾≠ノ邪眼=c…それに物の怪の槍≠ニ星の記憶をもつ少女≠ノ負を正に転じた少女=c…」
 ゆっくりと一言一言、みちるは冷静に分析していく。
「それに加えてプラスとマイナスの力≠ニ偽りのゴッドハンドの力≠ナすか……」
 後に残ったのは、溜息だった。
「どうやら、翼神獣≠フ力だけでは荷が勝ちすぎていたようですね……」
 みちるもそのことを認めている。だが、それが逆に不気味だった。
 そう、みちるはまだ、笑っている。この絶望の中で、笑顔で居れてる。
 私は思い出す。繭さんが死んだ時のことを――
「……同じ?」
 背中にぞくっと冷たいものが疾った。駆け抜ける予感。
(繭さんと同じ? じゃあ、まだ終わってないって言うこと?)
 ちょっと考えれば分かることだった。私は決定的な何かを見過ごしていると自覚した。
 みちるの瞳は絶望していない。まだ何か、隠し玉を持っている。
「――早く、みちるを!」
 私が槍を持って駆け出すより、みちるが笑う方が早かった。
「今度も、私の勝ちですよ。里村さん」
 みちるは弱々しく、最後に残った『断罪の尾』を、自分の心臓目掛けて刺し込んでいた。
244里村茜@葉鍵聖戦(8/10):01/11/06 13:04 ID:VjXjCeXz
「…………!」
 私たちは度肝を抜かれてその光景を見ていた。
 すべての罪を断ち切るための御剣『断罪の尾』を胸に受けてみちるは何を思うのか。
 罪は死では償えない。何故にそのことを理解しない?
「……馬鹿ですよ、ほんと」
「哀れむのですか? この翼神獣≠? 馬鹿は貴女の方ですね」
「馬鹿、だからこそなのよ。みちる」
「ふっ、邪術士が何を言うんですか? これが私の切り札なんです」
 そう言って、みちるは胸元から小さな箱を取り出した。
『パンドラの箱』だった。もちろん、『断罪の尾』に貫かれて粉々になっている。
 それで、みちるの何が変わるというのか。そうだ、何も変わっていない。
「私は、また同じ過ちを繰り返すだけなんですね……」
 繭さんが死んだあの時と同じ、何も出来ないまま絶望に襲われる。
 いくら敵になったとは言え、私たちは友達だったのに。それなのに。少女は笑って死んでいった。
「――どうしてなんですか!?」
「――どうしてなのよ!?」
 また、同じ。あの時と同じように長岡さんが泣きながら怒っていた。
 狂気の翼神獣を抱きしめる。
「長岡さん……」
 彼女に抱かれて不思議そうにみちるは言った。
「馬鹿な人ですね、貴女方は。言ったでしょう? 私の為したことで貴女方は終焉を迎えるんです」
「これから先、何が起こったとしても、貴女はいない……事実は、それだけだよ」
 みさきさんは困ったように、みちるに告げていた。
 眼を閉じながらも彼女は笑っていない。多分、怒っているのだと思う。
「心眼≠フ使い手なれば説得力がありますね……」
「わたしには、未来なんて見えないよ」
「……でしょうね。今、私が死ぬのを静観しているのが真実ですから」
 みさきさんは胸に手を当てた。苦しそうに息を吐き出して、じっとみちるのことを見つめる。
 みちるは、それに対して沈黙で応えた。
 暫く視線が交錯して、瞬間が凍り付くと、みちるは複雑そうに眼を背けた。
245里村茜@葉鍵聖戦(9/10):01/11/06 13:06 ID:VjXjCeXz
「丈夫な体ですね、我ながら」
 みちるは自らの紅く染まった手を見つめて、嘆息した。
「死ぬときくらいは、もっとあっさりとしていたいものですが……まあ、楽には死ねないと思っていましたがね」
「……どうしてそういうこと言うかなぁ」
 神尾さんが涙を浮かべながら、めっと子供を叱るようにみちるを見つめていた。
「最期には幸せな記憶を……」
「ふん、無理ですね。生まれてから数瞬しか稼動していないこの獣では」
「あなたは、みちるでもあるのよ」
「それは、それを言うのは、私を理解していない証拠なんですよ」
「そうかしら?」
 秋子さんが優しく微笑んで、みちるの頬に手を当てた。
 そして、くすっと笑う。
「あるわよ、あなたの心の中に」
「…………」
 みちるは、ありません、と悲しそうに唇を動かした。
「……そんなことないですよ」
「え?」
 私は思わずぎょっとした。今の声は間違いなく彼女のもの。
 眼を向ける。その声の持ち主を探して。そして居た。確かに存在していた。
「……うそ。どうして……どうして、美凪が……」
「みちるが泣かなくてもいいようにです」
 気が動転しながらも長岡さんは、みちるの体を抱きしめるのを遠野さんに譲っていた。
 私はそこではっとする。神尾さんも気づいたのか、私と同じ視線を辿る。
「……往人さん?」
人形遣い″総驩攝l。私は納得する。彼の資質は死霊遣い<lクロマンサーにまで上がっていたのだ。
 惨酷なはずの死霊遣い≠熏。の彼に掛かれば、慈愛の魔法となってしまう。
「美凪……美凪……みちるは……」
「……いいんですよ。わたしはみちるのことが好きだから……本当に大好きだから……」
 天国までも、一緒に時を、手をつないで、過ごすため――
「ごめんね、美凪…………ううん、違うよね。ありがとう、美凪……」
246里村茜@葉鍵聖戦(10/10):01/11/06 13:07 ID:VjXjCeXz
 光が弾けた。
 みちるの魂と美凪さんの魂の欠片は天へと昇っていった。
 最期には、幸せな笑顔をみちるは浮かべていた。
 他愛ない一瞬の幸せだったけど、それだけで救われる思いもあるのだから。
「いや、面白い見世物だった」
 どこからか拍手。乾いた手の平がぶつかり合う音が場違いに響いていた。
 そこに厭らしい笑みを浮かべていたのは、『MOON.』。
 折原浩平と相沢祐一を取り込んだもの。
「さて、前座も終わったことだし、本番と行こうか?」
「……言うことは、それだけですか?」
 私たちは皆一様に、侮蔑の視線を彼に投げかけた。
「ああ、面白かったぜ。てめーらの命を馬鹿みたいに投げ出してるんだからな」
「あらそうですか。祐一さんも悪趣味ですね」
 今にも飛び出してしまいそうな私たちを諌めて秋子さんは言う。
「しかし、そろそろ本当の祐一さんに起きて貰わないと、駄目なんですよ」
「――却下だ」
「そうですか。御寝坊なのは名雪だけで充分なんだけど」
「分かってねーな、お前らは」
 浩平が嘲る。この期に及んでもその笑みは消えない。
「俺が――永遠だ。しかも、お前らに俺は傷つけることはできねーよ」
「……絶望させるわよ?」
 秋子さんの宣言に私たちはそれぞれ構えを取った。
 だが、彼はなおも余裕を崩さない。
「絶望するのはお前らだって話をしてるんだよ。みちるは俺の所有物だ。その為に死ぬこともじさない」
 いや、壊れただけだった、と彼は訂正した。何よりもそのことに私は怒りを覚える。
「みちるが言ってただろう? 切り札だって? じゃあ、そういうことなんだよ」
「……今の私たちに、勝てると思ってるのですか?」
 槍を彼に突きつけて言う。攻撃衝動。否応無く殺意が沸いて来る。
「…………?」
 どんどん殺意が湧いてきて……。
247名無しさんだよもん:01/11/06 13:08 ID:VjXjCeXz
回し。
248名無しさんだよもん:01/11/06 13:12 ID:VjXjCeXz
もう一度だよもん。
249折原浩平@月が満ちる(1/2):01/11/06 19:24 ID:VjXjCeXz
「ほら、そろそろ始まっただろう? 反転衝動がよ」
 俺は今にも笑い出したい気分だった。すこぶる気分がいい。
 役立たずのみちるだったが、狙いがそこにあったことを知った瞬間、俺は必死で笑いを堪えた。
「みちるにとっての『永遠』は『破壊』だった。ああ、そうだ。破壊だよ」
「……破壊?」
「すべてを破壊すること。みちるはその為だけに生まれた」
 無能な奴らだ。俺は聞かせてやることにした。
「みちるの能力の中で封じられていないのがひとつだけあっただろう?」
「伏龍の知識と知性……」
 秋子が今更ながら思い出したかのように言う。
 いや分かっていながら、みちるの死に安心してしまったのだろう。
 そこまで、みちるは狡猾だったってことだ。
「みちるの望みと、みちるの力を、効率よく紡ぎ出す方法……分かるか?」
「…………」
 秋子は苦しそうに息を吐き出していたが、それだけでも大したものだ。
 他の奴らは、そろそろルナティックに侵食されるころだろう。
「みちるを倒したはずなのに、この紅い霧は散らない。みちるは、最後にパンドラの箱を壊した」
 ヒントを出してやる。この空間では、人の思考能力は衰えてしまう。
 この『永遠』が幕となっていなかったら俺でさえ侵されるほどの強い負≠ェ充満している。
「……そんなっ……」
 秋子が絶望の声を上げる。気づいたようだ。が、もう遅い。
「自分の死を、自分の中で蓄えた負を、この世に満たすために……わざと死んだ?」
「パンドラの箱を壊したのは、この負を回収できなくする為だ。さすがは伏龍≠セ。えげつないことを考えやがる」
「みちるの望みは、言葉通り『破壊』。ああ、自分を含めたすべての破滅だ」
「ふざけるなぁ!」
 俺に向けて怒声を上げたのは、藤田だった。
 こいつもよくやる。力の弱い奴らはもう地に伏したというのに。
 俺は思った。こいつにも絶望をくれてやる。
250折原浩平@月が満ちる(2/2):01/11/06 19:26 ID:VjXjCeXz
「次元修正能力で直してみるか? この空間を」
「――ぐっ! ああ、やってやるぞ!」
 予想通りの返答をしてくれたので俺は満足だった。
「そりゃあ、嘘だ。出来ねーよ」
「この命に代えても!」
 よく吼える。邪術士もそうだがこいつもうるさい奴だ。
「ほら、見てみろよ。九尾の小娘や天野なんかは、すぐにでも負が馴染んでいくぞ?」
 今まで負に侵されてきた二人。しかも今ある負は以前のものの比ではないのだ。
 その浸透度は他のものより遥かに強い。
「翼人だって、力を失ってしまったあいつなんかでは、負に対抗できない」
 今は倒れているだけだが、眼が覚めれば、親も子も無い。勝者なしのバトルロワイヤルの始まりだ。
 そして増大した負は、この街だけなんてケチ臭いことはなく、世界を包み込む。
「――させません!」
『そんなことさせないの!』
 槍を支えにしながらどうにか立ち上がったのは里村と、負に高い抵抗力をもった上月だった。
「ほう、この負を受けて、まだ四人も立ち上がってくるか?」
 邪術士。次元矯正能力者。槍の後継者。偽りの超越者。これだけ揃えば大したものだ。
 折原浩平を倒すのに、充分な力がある。特に秋子は今度こそ躊躇い無く邪眼の力を使うだろう。
 例えその身が砕け散ろうとも、名雪のために、子供たちのために、力を使う。
 しかし、俺には『永遠』と『次元修正能力』がある。
「……じゃあ、絶望させてやる」
 俺は今、使う。
「みちるを壊せば俺が絶望すると思ったんだろう? 当てが外れたな」
「――――!」
 一斉に、命を懸けて、力を、奴らは、開放しようとする。
 どれも、俺を滅ぼすに足る力だったが――
「何度も言わせるな、俺が――永遠≠フ折原浩平だ!」
 俺の方が早い。何よりみちるの飼い主である俺の方が、弱いと思っているのが許せなかった。
「エターナルワールド、時よ止まれ!」
 そして、時間が凍りついた。
251名無しさんだよもん:01/11/06 19:26 ID:VjXjCeXz
回しだよもん。
252名無しさんだよもん:01/11/06 19:27 ID:VjXjCeXz
回し回しだよもん。
253天沢郁未@悠久の回廊(1/5):01/11/06 19:41 ID:VjXjCeXz
「きゃあー!」
 地面と激しく擦れるブレーキ音を立てながら車は強引に停止した。
 彼女の性格からいって荒い運転はするだろうなとは思っていたので驚くこともないのだろうが。
 とりあえず頭を打ちはした。
(せっかく体が回復に向かっていたのに……)
 他のみんなも慣性の法則にしたがって、前のめりに倒れ込んでいる。
「うぐぅ、いたい……」
「……腰を打った」」
「つーか、リムジンでこんなところ走る方が無謀なのよっ」
「うるせえ! 優雅でいいだろうが!」
 どうも杜若さんが調達してきた黒塗りのリムジンは評判が悪いようだった。
 まあ、私はそうでもないけど。角度とか。
「皆さんが乗れるようにと思って用意いたしましたのに……」
 ちょっと俯いている。いじけているのだろう。
「それに今のは俺のせいじゃね―よ」
 何を荒立っているのか彼女らしくもない言い方だった。
 まだここは見渡す限りの雪景色だ。こんなところで立ち止まる理由もないだろうに。
 しかし彼女は車から降りて、どこか遠へ怒鳴っていた。
「こら、隠れてないで、出てこんかい!」
 霧の掛かった道に声は消えて、そこから無性に殴りたくなるへらへらした優男が現れた。
「やれやれ、旧友に向かって、それはないんじゃないかい?」
「馬鹿かてめー? こんなところに永遠なんて創ってんじゃねえ!」
「……永遠?」
 瑞希さんが眼をぱちくりとした。
「ああ、この馬鹿は、こんなところに永遠を張ってやがるんだよ」
「やあー、シュンって呼んでくれないかい? 馬鹿はあんまりじゃないかな?」
「けっ、お前にはそれで充分だ」
「そうかい? 随分と嫌われたものだね」
 のんきに笑う彼を見て、私たちは取り残されてるなーとか思っていた。
254清水なつき@悠久の回廊(2/5):01/11/06 19:44 ID:R5QZeiGY
「で、何のようだい?」
 煙草に火を点けてなつきは訊いた。
(……スフィーのところへ急がないといけないのに……)
 連絡が途絶えているので気になってアクセスしてみたら、結界が暴走しようとしていた。
 スフィーもかなり消耗しているらしいので、どう贔屓目に見ても苦しい状況だった。
「焦らないで聞いてくれるかい?」
「馬鹿やろう!」
 声を大にして怒鳴ってやる。
「と、言うと思って、抜け穴を作っておいたんだよ」
「……は?」
 白い霧の中には二つの巨大なトンネルがあった。
「空間を歪めたのか? 無茶をしやがる」
 まったく舐めたやつだった。初めからそう言やいいのにと思う。
「なつき君の永遠についての見解、聞かせてもらったよ」
「相変わらず盗み聞きだけは得意なんだな」
「きついね、それ」
 ただ、屈託なくシュンは笑った。
「で、なんで二つもワームホールがあるんだ?」
「ひとつはスフィーのところ。もうひとつはものみの丘に繋がってる」
「……どうしてだ?」
「選択だよ。言っておくけど、二人を同時に救えるなんて、思わないほうがいい」
「そこまで時間がなかったのか……」
 二兎追うものは一兎も得られないということだろう。
 信じたくはないがシュンの分析は的確だ。駆け引きで嘘を付くわけもない。
「だったら、お前の話をさっさと言いな。急いでるんだよ」
「病死した……何てこと、僕は言った覚えはないよ」
 なつきの手から煙草が地面に落ちて、呆然としながら靴底で火を消していた。
「俺はお前から聞いたよ。これに間違いはないからな!」
 記憶の崩壊なんて洒落にならない。こいつ、何を言ってやがるんだ?
255氷上シュン@悠久の回廊(3/5):01/11/06 19:45 ID:R5QZeiGY
「そうか……君がそう言うんなら間違いはないんだろうね」
「……どうしたの、シュン君?」
 どういうわけか僕にはだけは見せない通常モードのなつき君になっていた。
「その変わり身は尊敬に値するよ……」
「これでも、心配してるんだよ?」
「……今の僕はそんなにも弱く見えるのかい?」
 冗談めいた問い掛けをしたのに彼女は「うん」と頷いていた。
 途端に僕は俯いてしまった。呼吸を整える。
「聞きたかったのはそれだけだよ。で、どうする? 君はどちらの道に行く?」
「馬鹿ね、そんなの決まってるでしょう?」
 なつき君はくすっと笑う。
「お兄ちゃんの方、は任せるよ。この子にね」
「え? ボク?」
 すたすたすたと歩いてあゆ君の肩をポンと叩いていた。
「相沢君のこと好きなんでしょう?」
「……うん」
「じゃあ、頑張ってきなさい」
「……なつきさん」
 少女はぎゅっと柄の悪い彼女の袖を掴んでいた。
「行ってらっしゃい」
「うんっ。ボク、頑張るよ!」
 別れは済んだのかあゆ君はひとりだけ車から降車していた。
「清水さん、あたしも丘に」
「やめときなさい。瑞希さんにはペンタグラムを立て直す力になって欲しいのよ」
 僅かな否定の言葉をユンナ君が紡ぎ出す。向こうも込み入った事情、というところだ。
「それじゃあ、あゆちゃんのこと任せたからね、シュン君」
「ああ、承ったよ」
「えーと、それからシュン君……ちゃんと生きなさいよ」
「ああ、分かってるよ」
 走り去っていく車を見つめて、僕は「さようなら」とひとりごちていた。
256スフィー@悠久の回廊(4/5):01/11/06 19:46 ID:R5QZeiGY
 結界がくすぶっているのが分かった。
 地面に引かれた魔方陣はまだ効力を完全に失ったわけではない。
 いやここからが本当の始まりだった。邪法と呼ばれる由縁がここにある。
 魔方陣に描かれた星は反転して『逆五芒星』となって術者の命を呑み込もうとする。
「――まだ終わってない!」
 魔法は完全に失敗したわけじゃない。俺は己に言い聞かせた。
(……俺一人でも立ち直してみせる……)
 本来この魔道のレベルは最高ランクの『10』だった。
 私の魔法力は多く見積もっても『4』しかない。そもそも無謀だったのだ。 
 グエンディーナでもこの魔法の使い手は皆無だった。
「ちくしょう!」
 どうして頭は絶望に向かって回るのか。
 ここで俺が踏ん張れないと他の奴らは闇に呑み込まれてしまうというのに。
「リ・シャーテ・エルス・マーダ」
 俺は必死になってマジックワーズを並べ立てていく。
 切り札は自己崩壊の魔法。これで一時的にでも魔法容量が増えるはずだ。
「やーね、みっともないわよ、スフィー」
「……あ」
「ほら、術者の権限を譲渡してくれない?」
「なつき!?」
 いやなつきだけしゃない。他の奴らもそれぞれの想い人のところにいた。
「岡田ー!」
「蝉丸さんー!」
「私たちもあーいう風に振舞いたいわね」
「郁未じゃあ無理よ」
「無駄口叩いてないで結界に力を注ぐわよ!」
 俺は思わず口を開けていた。これは後でなつきに罵られるだろう。
「じゃあ、行くわよ。高野の鬼才と言われた清水なつきの実力、見せてあげる!」
 すごい速さでなつきは印を組み上げていく。
 これはひとつ借りが出来たな、と俺は苦笑を漏らしていた。 
257月宮あゆ@悠久の回廊(5/5):01/11/06 19:47 ID:R5QZeiGY
 ボクはもやもやする空間の中を走っていた。
 シュンさんはもう居ない。ボクの方からお願いしたんだ。
 ここから先は一人で行かないと駄目なような気がした。
 決意を固める為の時間でもあった。
 空間が捻じれていく。光はまだ先のほうにあった。
 祐一君のことをボクは考える。
 みんなはボクなら祐一君を助けられると思ってるけどそうじゃない。
 本当は違っている。正しくない。過去の記憶を思い出したのは偶然だった。
 本当は千年も前に、世界は終わる予定だったから。
 ずっと探していたから。
 月の巫女。月宮あゆ。天使。翼人。人間。星の記憶。ボクには宇宙の記憶。破滅――
 イレギュラーはボクのことを指していた。
 ボクが訪れた星はすぐに終わりを迎えていた。
 そんな記憶をボクは銀河に届けていた。
 夢を紡ぐもの。ボクはいつから探していたんだろう。
「……祐一君」
 祐一君との約束をボクは守れない。
 この星が終わりを迎えようとしてるのはボクのせいだったから。
 月の正体も今ではよく分かった。
「……お母さん」
 ボクは求めていたのは何でもない面影だった。
 偶然の出会い。秋子さん。ボクのお母さんになってくれた人。
 ボクの翼に幸せはどうやったら宿るのだろう。
 秋子さんはボクといたせいで永遠の干渉を強く受けてしまった。
 祐一君だってそうだ。今の祐一君は夢に捉われている。
 だから、もしボクにお母さんが言ってくれたような力≠ェあるなら、そのために使ってみたい。
 目の前の光が眩しくボクを照らし出していた。
「エターナルワールド、時よ止まれ!」
 凍りつく時間は、ボクをも取り込んでいった。
258名無しさんだよもん:01/11/06 19:48 ID:R5QZeiGY
回し。
259名無しさんだよもん:01/11/06 19:50 ID:urQ5lIzi
回すだよもん。
260ONE@輝く季節へ(1/8):01/11/06 19:54 ID:urQ5lIzi
「こんにちは」
 少女は戸惑いを隠せないながらもみずか≠ノ向かって笑い掛けていた。
 青い空。咲き乱れた一面の花。春の日差し。天には鳳凰。森には一角獣。海には竜王。
 ここは楽園だった。望んだ世界は幻想と言うことだろうか。
「えーと、初めまして、かな……みずかさん」
 始まりには挨拶を。少女は内心どきどきしていた。
「……ううん、ずっと待っていたから」
みずか≠ヘ軽く首を横に振る。懐かしそうに視線を細める。
「お帰りなさい。永遠の世界へ」
 少女は笑う。お帰りなさい≠ニはよく言ったものだ。
 この世界は永遠だったから。腕を擦ってみる。そこには烙印があった。
 痛みは無い。単なる証。言い換えるなら聖痕≠ナもいい。
「ただいま……とは言えませんけど、歓迎されるのは嬉しく思いますよ」
 少女は苦笑を漏らす。みずか≠ヘ良く分からない、と言うように首をかしげた。
「ただ、私の我侭ですよ。ほんと、それだけなんです」
 また少女は苦笑した。ここまで上手くいくとは、実は思っていなかったのだ。
「どうしたの?」
みずか≠ヘ慌てて少女に言い繕うとした。が、どうしていいのやら分からない。
 訊くことだけが出来ること。どうして、泣いているんだろう。
「この世界は何でもあるんだよ?」
「いえ、違うんですよ。ここには何も無いんです。悲しみすらないんです」
 少女は笑う。無理矢理にではなく無邪気に。
「みずかさんはずっとここでひとりきりだったんですから」
「…………?」
みずか≠ヘ戸惑う。少女を泣かしているのが自分のせいであると思ったからだ。
 どうしたらいいのか、これまた良く分からない。
「永遠はあるよ?」
みずか≠ェ言うのを少女は寂びしそうに首を振って、
「永遠は無くなってしまったんです」
 と、答えた。
261ONE@輝く季節へ(2/8):01/11/06 19:55 ID:urQ5lIzi
「ここには誰も来れないんです」
 少女が言うことは矛盾だとみずか≠ヘ思った。それくらいなら分かる。
 だってそれなら、少女はここには居ない、ということになるから。
みずか≠ヘ首を横に振った。ひどく悲しい顔だった。
「みずかさんは誰ひとりとして、この世界には連れて来れなかった」
 更に激しくみずか≠ヘ首をぶんぶんと振った。
「知っているんです。由衣さん、美凪さん、氷上さん、誰ひとりとして永遠には来れなかった」
 本当の永遠に、と少女は付け加える。
「たどり着けない世界なんです。永遠は立ち入ることが出来ない」
「……あの人は、約束してくれた」
「浩平さんでさえここには来れなかったんです」
 永遠の盟約なんて守れない。それは無いものねだりだったから。
「それを望んだのはみずかさん自身だから」
「わからないよ」
「分からないですよ。ずっと子供のままでいようとしてたんですから」
「わたしは、わたしだよ?」
「永遠の少女は、もう居なくなったんです」
「わたしが、いないの?」
「少女はいつか大人になります。そうでしょう、長森さん?」
「そういうのって、よくわからない……」
「お姉ちゃん……」
 少女の瞳からは止め処なく滴が溢れていた。
「記憶から人のことを忘れさせることが可能なら、反対に本当は居ない人の記憶をも捏造できる」
「…………?」
「長森さんはそうやって生まれたんです」
「……泣いてるの?」
「泣いてないです。辛いのは私のほうじゃない」
「…………うそだよ」
みずか≠ヘ、よしよしと少女の頭を撫でていた。
262ONE@輝く季節へ(3/8):01/11/06 19:56 ID:urQ5lIzi
「浩平さんは幸せだったんです」
みずか≠フ温もりを感じながら少女は言う。
「貴女と出会えて幸せだったんですよ」
 笑うのもみっともないほどの涙を浮かべて強く言う。
「貴女が側に居てくれたから浩平さんは日常を過ごすことができたんです」
「……しあわせってなに?」
「お姉ちゃんがあの時に感じていた想いのことですよ」
「わたし、知らないよ?」
「忘れるのは救いにはなりませんから」
「…………?」
「盟約の始まりはみさおさんが亡くなってから。盟約の発動はみさおさんの思い出が消えたから」
 一言一言を丁寧に語って聞かせる。思い出してほしい一心だった。
「みずかさんは永遠を形作った。浩平さんの願い通りあるべき世界を創った」
 本当に永遠が始まっていたのは、水鏡湖の事件よりもずっと前の出来事がきっかけだった。
 浩平が『裁きの門』を開けたときから、終わりに向かって始まっていた。
 終わらない夢、とは現実での夢想のことを意味する。
 誰もみさおさんが亡くなったことを気づかないまま時は流れていた。
 しかし幸せな日常がそこにはあった。みずか≠ヘずっとこの世界からそれを眺めていた。
 ……思い出したのは何故だろう。
 傷つくことを分かっていながら辛い現実に眼を向けたのはどうしてだろうか。
「お姉ちゃんも側に居たかった」
「……しらない」
「浩平さんの側に居たかったんですよ」
「……そんなのしらない」
「現出してしまった永遠は無限の存在ではなくなった」
「……しらないよっ」
「お姉ちゃんは可哀相です」
「いやっ。言わないで」
「だって寂しいって言葉も知らなかったんですから」
みずか≠ヘ泣くことも知らない。ただ、出来ない。
263ONE@輝く季節へ(4/8):01/11/06 19:57 ID:urQ5lIzi
「この世界は何でもあるけど、自分で手にすることの出来るものは何一つないんですよ」
みずか≠ヘ今にも泣き出しそうになりながら少女を見ていた。
「……分かってくださいますか?」
 そんなこと言われてもみずか≠ノ分からないものは分からない。
 困ってしまう。みずか≠ヘ怒ることも知らない。
「この世界は確かに美しいです。本当に美しいけど、それだけなんですよ」
「……きれいだと、ダメなの?」
「そんなことありません。ただ人は弱いから、汚いを知らないと、本当に綺麗なものを見失ってしまう」
「……ほんとうに、きれいなもの?」
「ええ、流れる時間……どうしようもないほど、掛け替えのない瞬間です」
「…………?」
「みずかさんも、知っていたんですよ」
「……わすれてるだけ?」
「そうですよ。触れ合った瞬間、過ぎていく季節、記憶はいつか思い出に変わっていく」
 少しだけ分かるような気がする。ただ、実感できない。忘れているとは、そのことだろうか。
 この世界に、時間という概念は存在していない。それが、悲しい?
「……よくわからない」
みずか≠ヘ首をかしげた。本当に理解できないというように。
「どうして、まゆちゃんは……この世界に来たの?」
 少女にはきっと永遠は必要ない。それなのにこの世界に存在している。
 誰も来ることが出来ないと言われた、永遠の世界に。
「色々あったんですよ」
 少女は嘆息した。永遠は望まれた世界。少女には願いがあった。
 世界を構築する永遠にしか出来ないことなんて、一体どういった望みなのか。
「ただ、言っておきたいことがあったんです」
 少女は、くすっと笑った。
「私は幸せでした」
 本当に今まで楽しいかったというように少女、椎名繭は無邪気に微笑んでいた。
264ONE@輝く季節へ(5/8):01/11/06 19:58 ID:urQ5lIzi
 永遠の世界にたどり着くのに必要だったものは心の痛み≠セった。
 それも、今まで誰も訪れることのできなかった永遠なのだ。
 どれほどの痛みが必要になるかなんて知る由もない。
 少女は永遠を訪れるのに相応しい条件を探した。
 今の現世を永遠に近づかせる。第一条件はそれだった。
 少女は『月の嫉妬』と『千年の戦い』を利用することにした。
 折原浩平は『MOON.』に縁がある。何と言っても『裁きの門』を開けたのだから。
 これは危険な賭けになる。浩平は『MOON.』に支配されるだろう。
 だが、浩平を呼び出すのに、これ以外の方法はない。
『MOON.』が折原浩平を支配するのは、本来依代となるはずの『月の霊法』を持つ者が離反したからだ。
 そのために急遽『FARGO』を創立させたのだ。由起子にとってこれは予想外の出来事だった。
 次に、少女は痛み≠ノついて考えた。
 心に痛みを負う。言葉だけなら簡単だが上手くいくようにどうしたらいいのか?
 少女は裏切りを決意した。大切な人たちから、軽蔑の眼をもって見られる。
 これだけでは、まだ足りないかも知れないと少女は思った。
 後は済し崩しだった。好きな人に裏切られて殺される。それまでに永遠を現世に近づけておく。
 少女の計画はそれだった。
 これなら、どうにか永遠に逝くことが出来るかもしれない。
 長森瑞佳を連れ戻す為に。
 少女はこの舞台において道化の役割を甘んじて受け入れた。
 友達を欺いて、自分が傷付くことを、選んでいた。
『S−01』の刻印が腕に出た時は、正直、複雑な気持ちだった。
 それでも少女は言うのだ。
「みんなと居られて私は幸せでした」
 笑顔。この世界において笑うことが出来るもの。
 永遠は望んでいた。遥か昔のことだ。エデン≠ニ呼ばれていた人の住まう場所。
 誰も居なくなった永遠。ひとりの少女だけが人の帰還を待っていた。
 しかし、永遠は理解した。この世界は、楽園ではなく悲しい世界だった。
 永遠は、今、終わりを告げる。
 こんな世界でも、どんな悲しみを心に負ったとしても、無邪気に笑える少女が居ることに。
265ONE@輝く季節へ(6/8):01/11/06 19:59 ID:urQ5lIzi
「――以上が『オペレーション・パンドラ』についての概容です」
 椎名繭が言う。ここはどこにでもある高原だった。
「繭ちゃん先生、質問です」
「はい、川名さん。何でしょうか?」
 川名みさきが挙手して少女は鷹揚に頷いていた。
「わたしたちの記憶がなくなるってことだけど、どういうことかな?」
「そうそう、あたしもそう思った」
「……記憶がなくなるのは嫌です」
『いやなの』
 七瀬留美、里村茜、上月澪もみさきの同じ質問を持っているようだった。
 繭は頬に指を当てて、どうしようもないと言った表情で、皆を厳しい眼で見やった。
「確かに、記憶がなくなるのは、私たちにとって大きな障害となります」
 厳しさはこれから為すことへの覚悟の現れだった。それを皆も読み取った。
「ただ、本当に忘れるわけではありません。思い出すために、忘れる。タイムカプセルみたなものですよ」
「タイムカプセルって、思い出の詰まったものを木の根元なんかに埋めて、大人になってから掘り出す、あれ?」
「そうです。似たようなものですよ、これも」
 繭はここでようやく表情を崩した。
「いつか思い出しましょう、きっと。皆さんなら出来るはずです。たくさんの思い出を詰め込んで、未来に運びましょう」
「未来にか……いいかも知れないな、それって」
『絶対に思い出すの』
「……分かりました。で、これからの行動は?」
「今、説明した通り、私と澪はパンドラの箱を探します。他の皆さんは日常を過ごしてください」
「わたしは、高野を出ようと思ってるんだけど?」
「日常を過ごすということは、自分の思った通り生きていくということです。構いませんよ」
「うん、そうだね。いつかまた、みんなとこうして会える日を楽しみにしてるよ」
「……私もです。また、一緒に会える日を待っています」
「あたしって妖狐側だからな、思い出さなかったら、どうしよう?」
『大丈夫なの。七瀬さんは単細胞だけど、誰よりもしっかりしてるの』
「フォローになってないですよ、澪。でもまあ、そういうことならひとつだけ約束しましょうか?」
 繭はいつになく真剣な表情をしていた。
266ONE@輝く季節へ(7/8):01/11/06 20:00 ID:urQ5lIzi
「……懐かしい夢ですね」
 夢を見ていた。まるで昨日のことのように思い出せる。
「永遠の世界ですか……確かに、心に傷を負った人のための救済処置ですね、面白いものです」
 繭は眼を開けた。真っ直ぐに前を見据える。
「永遠が、ありがとう、って言ってたよ」
みずか≠ヘ今は少女ではなく、大きな手で繭を抱きしめていた。
「身に余る光栄です。私の方こそ、ありがとうございました」
「繭……」
 意識が遠くなっていくのを感じていた。
 永遠は終わる。いや初めから永遠は無かったのだということになる。
 終わってしまうなら、それは永遠の夢≠ナはない。
「もう、行ってください」
「ごめんね、わたしには何も出来なかった……」
「さすがに怒りますよ」
 繭はこつんと額を瑞佳の胸もとに当てていた。
「これからやるんですよ、長森さんは」
「…………」
「折原さんのことが好きなんでしょう?」
「……好きだよ」
「じゃあ、私のやったことは無駄にはなりません」
 大切な人と好きな人。両方の為になることをしたんだと繭は信じていたから。
「早く行かないと、手遅れになりますよ?」
「……うん」
「では、さようなら、長森さん」
 繭はポンと瑞佳の肩を押していた。瑞佳の姿は永遠から消えていく。
『また、会えるよね?』
 その問い掛けに、繭は答えることが出来なかった。
「バチが当たったんでしょう。心の中で、あわよくば、なんて一度も思わなかったわけ無いですから」
 消えていく世界の中で、少女はくすりと笑った。
「まったく、あれだけの仕掛けを施さないと永遠に来れないなんて、私の神経って図太すぎますよ」
267ONE@輝く季節へ(8/8):01/11/06 20:01 ID:urQ5lIzi
「約束って何?」

 妖狐の少女が何気なく問い掛ける。

「簡単なことですよ。また皆で会いましょう」

 私はそう答えた。続ける。

「だから絶対に生き残ってください。死んだりしたら承知しませんよ」

 嘘をつく。ただ、今は笑って言えた。

「……賛成です。私はまだ死にたくありません。でも皆さんが死ぬのはもっと嫌です」

 心に響く。心に痛い。

「自己犠牲は無しってことだね? 分かったよ。約束破ったら針千本だよ」

 この計画には、盲点がある。  

『みんなでクリスマスパーティーするの』

 これも、また約束。

「瑞佳ちゃんも、一緒にね」

 私は、ここで命を終わらせる。
 ただ、そういう先の約束って、すっごく胸がドキドキした。

 ――はい、もちろんですよ。
268名無しさんだよもん:01/11/06 20:02 ID:urQ5lIzi
回し。
269名無しさんだよもん:01/11/06 20:03 ID:urQ5lIzi
ぐるぐるだよもん。
270氷上シュン@夢の跡:01/11/06 20:17 ID:urQ5lIzi
「さあ、行こうか」
 崩壊の音を聞きながら僕はみさお君の手を取った。
 少女は不思議そうに僕を見ていた。
「…………」
 もしかしたら少女は気づいてるのかも知れない。
 すべては『仮初』だったということに。僕もなつき君から聞くまで忘れていた。
 始まりは質素な病室からだった。
 そこには僕の他にとても仲の良い兄妹がいた。
 でも、僕は知っていた。ここは不治の病を持つものの隔離の病室だった。
 404号室なんていう洒落も利いている。 
「みさお君がいたなら、浩平君も来てくれると思っていたんだけど……」
 僕は失笑した。二人の兄妹は僕にとって心の救いだった。
 氷上家は僕を厄介者扱いにしてたんだろう。誰も見舞いには来なかった。
 そこに彼らが居てくれた。僕にはそれだけで充分だったんだ。
 でも、みさお君の容体が悪くなり、亡くなった。
「僕の作り上げた仮初では無理だったか……」
 三ヶ月も掛かった。それから僕が死ぬのに。
 地獄のような日々だった。弱り果てていく体はどうしようもなかった。
 腐っていく。誰も来てくれない病室。兄妹の声もしない。
 ……孤独だった。
 そして気が付いたら僕は永遠を望んでいた。
「その結果が嫉妬なんてね……」
 浩平君がどうして来てくれないのか。僕が居るのにどうしてもうあの扉を開けてくれないのか。
 裏切られた、そんな気持ちが膨れ上がっていた。
「永遠は死んだから来れるんじゃない。心に負荷が掛からないように望むんだよ」
 寂しいと認めることが怖い。彼が来るように今隣にいるみさお君を望んだのは僕だった。
 水鏡湖で浩平君に声を掛けたのも僕だった。でも、ようやく終わる。
「永遠は……」
 みさお君は僕の手を握り返してくれた。歩いていくことにする。
 やっと僕らは死ぬことが出来るのだから。例えこの先、奇跡が起きたとしても。
271名無しさんだよもん:01/11/06 20:17 ID:urQ5lIzi
回すだよもん。
272名無しさんだよもん:01/11/06 20:18 ID:urQ5lIzi
てやーだよもん。
 色は失われていた。風も吹かなくなっていた。
 時が止まるというのは、改めて生きていることの意味が無くなることだと実感させた。
 ただ、紅い霧は浸食を増していった。世界を霧が覆うまで、時間を胎動させる必要はなかった。
 瞳を凝らす。ここは白い世界。何もない世界だ。永遠ではない。
 秋子も、浩之も、茜も、澪も、動かない。ここでは誰も動くことは出来ない。
 世界の終焉。もうすぐそれが訪れる。月の意思のままに。
「……やっと、終わるのか……」
 雪のように白い世界。ここから先は何も無い真っ白な世界だ。
「……もう、キャラメルのおまけなんかいらない……いらなかったんだ、そんなもの……」
 すべてが終わる。この紅い月の下で。大きな満月の下で。
「……すべては仮初だったんだ……」
 永遠の罰だ。俺はこの罪を償う方法なんて知らなかった。
 だから、こうすることしか出来ない。
 すべてを無に還してしまおう。彼女が悲しまなくて済むように。
 ありったけの思い出を小さなポケットに詰め込もう。
 もうすぐ楽になれる。永遠が手に入る。
「……本当は、そのように笑うのですね」
 凍った時の中でどうしてか彼女だけが動いていた。
 いや彼女だからこそ動けたのだ。居ないはずの存在なのにそこにいる。
「長森……」
 一瞬だけ頭の中のヒューズが飛びそうになる。俺は頭を振った。
瑞佳の姿をしている彼女ならこの世界を自分のものに出来るかもしれない
 そう自分に言い聞かせる。それならば長森も排除対象でしかない。
「人の体を借りての転生術か……あまり良い趣味とは言えないぜ?」
「はい、存じております」
 何が可笑しいのか裏葉は笑っている。それが気に障った。
「勘違いするなよ、それは長森の力だ。俺と対等であろうとするだけ無駄なんだ」
「そうですね……では、この体は返すことといたします」
「……なに?」
 怪訝に眼を細めてしまった。どうしてこいつは余裕でいられる?
「返すことといたします、そう申したのですよ」
「…………」
 俺は無言で奴を睨み据えた。冗談が過ぎている。そんなことは在り得ない。
『……永遠はあるよ』
 懐かしい声が聞こえたような気がした。
『……ここにあるよ』
 終わりの始まりを示した言葉だった。
 俺はそれを受け入れた。長森じゃなくて俺はみずかを選んでしまった。
 悲劇の始まりはそれからだった。
「わたくしの望みはすでに叶えられました」
 神奈のことを言っているのか。千年の呪縛から確かに解き放たれはしたが。
「永遠は、在り得ない事象こそが望まれてもの、なのでしょう?」
「……お前は何も分かっていない」
「そうでしょうか? わたくしが思うに浩平様の方が勘違いを為されているのでは?」
 頭をガンガンと鈍器で殴られているような感覚しかしない。
「疲れた。もう消えろ」
 俺は次元修正能力で裏葉を斬りつけた。
「いえ、消えません」
 裏葉は懐から扇子を取り出してそれを受け流す。
 そんなこと常人に出来るわけもない。
鬼菩薩≠フ裏葉。すっかり忘れていた二つ名が脳裏を横切った。
 俺は嘆息した。
「長森の姿のままで力が揮えるとは思わなかったよ」
「あら? そうですか?」
「察するに九尾や翼人相手では力を思う存分使えなかったか」
 情、だろう。愚かしい。
「……と言われましても、アレが全力ですよ」
「分かった。次はもっと強く行くぞ」
「いいえ。次はありません」
 裏葉の言葉も気にせず俺は力を迸らせていた。
「……どうやって防いだ?」
 時空間の断絶に逆らえる力など『邪眼』や『無限の尾』レベルだ。
 九尾の娘といえども、裏葉にそれほど強力な力が扱えるとは思っていない。
 しかし現実には俺の力のすべてを防がれている。
「あら? 気づいていないのですか?」
 面白そうに裏葉が笑う。いや哀れみなのかも知れない。
 俺を見通すように裏葉は言った。
「……わたくしの力では在りませんよ、浩平さま……いえ、お月さま、でしたか」
「そういうじらし方は嫌いだよ」
 もう一度、俺は力を奮った。今度は全力だった。
 そして、見た。永遠の少女≠。
「みずか……?」
 裏葉を守るようにみずかは体を大の字にしている。
 俺は心臓が止まる想いだった。
 彼女と会うのはこれで三度目だった。
 あれから何年経ったかは正確に思い出せなかったが、少女の姿はいつまでも変わらない。
「どうやら、わたくしの出番はここまでのようですね……」
「……うらはさん」
 永遠の少女は目に涙をためていた。
 構いません、と言うように裏葉は優しく頷いて、
「お世話になりました。瑞佳さまに、お借りしていたものを今、返します」
 裏葉が目を閉じた。淡い粒子のようなものが空間を満たす。
永遠の少女≠ヘ今、瑞佳に変わる。彼女は身をもって示してしまった。
 もう永遠はどこにも存在しなくなったのだ、と。
みずか≠ゥら瑞佳≠ノ変わった俺のよく知っている少女は悲しそうに、
「終わらない夢は、もう生まれない」
 と、告げた。だったら悲しみはどうする? この世界に満ちた悲しみはどうする?
 俺の罪はどうなる? 世界はどうなる? 悪夢はどうなる?
「ラストペリオド、そして時は、動き出すんだもん」
 世界が色を取り戻し始めた。
『MOON.』は早急に決断しなければならなかった。
 折原浩平の動揺はピークだ。これ以上、使い物にはならないだろう。
 補佐体としていた相沢祐一は、問題外だった。
 しかし……ここまで来たのなら、後は何が残っていると言うのか?
『MOON.』は滅ぼすことが救いだと思っていた。
 悲しい記憶を終わらすには、それしかない。
 気の遠くなるような歳月を『MOON.』はいつだってそうして来たのだ。
 地球だけではない。いくつものを惑星をそうして滅ぼした。
『MOON.』にできることは何もない。
 ただ、星に住まうものは、狂気に抗う術も持たないはずだった。
 翼人がいた。星を想う存在。これは稀なことだった。
 この星のものに尤も近い存在、エルクゥという人種が住まう星にさえそれは居なかった。
『EARTH』は神に愛されている。
 この果てしない無限の銀河の中でそんな星はここ以外どこにも無かった。
 人は愚かでしかない。星の記憶を喰い潰す。月という存在はそれを知っている。
『MOON.』はそこではっとした。朧ろながら心に引っ掛かりを感じた。
 遠い昔、自分も『翼人』と呼ばれていたような気がする。
 いや、それならどうして記憶がないのか?
 翼人が『星の記憶を司るもの』ならば記憶が欠如することなどあってはならない。
「その記憶が悲しいものでない限りは……」
 月は嘆くのか。永遠を夢見ることも許されないのか。
 この星には永遠がある。望みはそれだ。時間を凍りつかせる。
 尤も、美しい時に、その鼓動を止める。
「二度と、悲しみが生まれないように……」
 月は母の意を持つアニマ。最愛の娘のためにそれを為すだろう。
 終わらない夢を、月の巫女に見せる。
 愚かだったのは誰だったのか『MOON.』はもう思い出せない。
 思考が途切れる。
 狂気は神に近づく唯一の方法。ルナティックは止まらない。
 パンドラの名のもとに。
「つかまえた」
 わたしは背中からぎゅっと浩平を抱きしめていた。
「やっとつかまえたよ、浩平」
 まだ、顔を見るのがちょっと怖いけど、今はこうしていたい。
 あの時と同じように抱きしめていたい。
「……瑞佳」
「うん、私だよ」
「本当に、瑞佳なのか?」
「うん、本当に本当の私だよ」
「……じゃあ、みずかは、みずかはどうしたんだ?」
「みずかも私だよ」
「……嘘だ。じゃあ、俺は何のために……何をしてたんだ?」
「……悪夢は終わったんだよ」
 浩平と出会った日、浩平が泣いていた日。
 ずっと、探していた。
 永遠に還って来てくれる人のことを。
 でも、浩平は永遠の世界を望んではくれなかった。
 私は痛みを忘れさせただけだった。
 そんなの意味がない。
 私は居もしない浩平の幼馴染になっていた。
 側にいたら、分かるかも知れない。
 みずかはその日から、瑞佳になっていた。
 知りたかった。
 悲しみばかりの世界で生きていくのに足る幸せというのものを。
 私はみずかとしての記憶を永遠に置いて、瑞佳と言う架空の人物を演じていた。
 それは悲しいことだったと思う。本当に。
「嫌だ……嫌だっ! 離してくれ瑞佳! 俺は――」
「いや! 絶対に離さないもん!」
 あの時の、永遠の世界を望んでしまった頃の私は居ないから。
 浩平もそんな世界を好きになってはくれないから。
「馬鹿だったのは私の方だもん」
「……瑞佳」
 浩平を永遠に連れて行きたかったみずか≠ニ現世で浩平と一緒に居たかった瑞佳≠ヘどちらも本当の私≠フ想いだった。
 そのせいでみずか≠ニ瑞佳≠ヘ浩平を引っ張りあってしまった。
 高野の水鏡湖での出来事だった。
 本当はみさおちゃんが居ないってことを、浩平は思い出してしまった。
 日常での生活に生じた違和感。創られた記憶はいつか色を取り戻すものだから。
 痛みが無くなって、幸せだったからこそ、浩平はそれを望んだ。
 今、この瞬間の幸せを浩平は信じられなかったのだ。
 永遠は形作る。浩平の望んだ結末を。
「悪いのは私のほうだもん」
 永遠は浩平を捕らえてしまった。
みずか≠フ想いと瑞佳≠フ想いは半分ずつ叶えられていた。
 浩平の心は永遠に。浩平の記憶は現在に残された。
 どちらか片一方の存在でも人は体を維持し続けることは出来ない。
 私だけがそのことを考慮して裏葉さんに体を預けた。
 永遠に行って浩平の心を連れ戻す為に。
 でも駄目だった。永遠は私を閉じ込めてしまった。
 永遠は寂しい≠知らない。
永遠の少女≠ヘ不変を望んでいたから。
「……瑞佳は知らなかっただけなんだろう?」
「……え?」
「瑞佳と過ごした瞬間は、本当の思い出なんだろう?」
「……浩平」
「そうか。永遠はそんなところにあったんだな」
 浩平は、私の手に触れて、
「……すべては遅すぎたんだ。悪いのは俺だけで充分だよ」
 僅かな温かさだけを残して、離れていった。
「……駄目だよ」
 だけど、私はその手をもう一度、掴んだ。
 私は寂しい≠知ってしまった。
 ――離したくない。
 私は知ったから。人の優しさ≠。
 すべては変わりいくから美しい瞬間の連続だってことを教えてくれたから。
「ほら、はあーってしよう」
 吐き出した息は、白く霞んで消えていく。
「こんなにも、遠くまで飛んだよ。浩平はどう?」
「頼む、離してくれ……」
「どうしたの、浩平?」
「もう、俺はこの世界には居られないんだ。たくさんの血が俺の手にこびり付いている」
「……ほら、はあーっ、って」
「『MOON.』なんて関係ないんだ。狂気は俺の中から生まれたんだ」
「随分と白くなるよ。もうすぐ永遠は色を取り戻すから」
「……俺は繭を殺したんだよっ!」
 浩平は乱暴に私の手を払ってしまう。
「何が許される? 罪は罪だ。俺が最初に手をかけたのは母さんなんだよ!」
 月はそれを浩平の足枷にしてたんだと思う。それは幻に過ぎない。
「……私はね、浩平の側に居たいよ」」
「…………」
「でも、浩平がどこかに行きたいならそれでもいいと思うよ」
「ああ……」
「でもまた、私は浩平のこと追いかけるよ」
「……瑞佳、お前」
 ゆっくりと色付く世界の中で浩平はそっと息を吐き出した。
「本当だ。随分、遠くまで飛ぶもんだな」
「うん。永遠では、そんなことも出来ないから……この世界は綺麗なんだよ」
 浩平が私の方を初めて向いてくれる。私は背筋をまっすぐに伸ばした。
 ちゃんと向き合えるように。
「瑞佳……」
 眼を閉じて、私は浩平のことを待った。
「繭ちゃん、笑ってくれてたよ」
 私がそう言うと浩平は驚いたように目を丸くした。
 戸惑っているのは分かるけど、繭ちゃんはそんなの望んでいなかった
「……俺は繭のことを」
「うん、私も一緒に謝ってあげるよ」
 何かを言いかけた浩平に私は言った。
 少女の願いそのままに。
 だから浩平も繭ちゃんみたいに笑ってくれる。
 辛いことがあっても二人なら笑い合える。
「ずっと、側に居てくれるか?」
「うん、ずっと」
 想いは人の持てる永遠だって信じられるから。
「私は浩平の側に居るよ」
「ありがとう、瑞佳」
 盟約? ううん、約束だよ。
「そして、みずかにも」
「うん」
 今、永遠は幕を閉じた。
 どんなに世界が凍りついたとしても、人の温もりはそれを溶かしてくれるから。
「…………」
 見たのは負に染まった世界だったけど、霧だっていつか晴れるから。
「……光よ」
 私は浄化≠キる。すべての負は正へと転じる。
 この力は、もう使えなくなるけど、たったひとつの奇跡でもあるなら、人にはそれで充分過ぎるから。
「…………」
 月が光を放っている。照らし出す丘には、みんなの姿。
 もう一度、みんなと一緒に笑い合える。
 これも、また奇跡。
「……ずっと、言いそびれてたけど、瑞佳のこと好きだ。俺と、もう一度、付き合ってくれ!」
 それが遅すぎた告白だったとしても私は、「うん、いいよ」と頷くのだ。
281名無しさんだよもん:01/11/06 20:39 ID:urQ5lIzi
回し。
282名無しさんだよもん:01/11/06 20:40 ID:urQ5lIzi
だよもん。
283里村茜@月影(1/4):01/11/06 20:45 ID:urQ5lIzi
「まったく、やってられません」
「以下同文」
『やってられないの』
「まあ、おめでとう、と一応言っておくよ」
 眼が覚めてすぐにいちゃいちゃしてるところを見せ付けられる。
 こんなの目覚めが悪すぎます。
『得意げな顔して何が、もう一度付き合ってくれ、なの』
「瑞佳さんも、うん、いいよ、とか言ってるし、もう見てられません」
「そこでね、留美ちゃんがブチ切れたんですよ」
「折原の馬鹿!」
 バシンと留美さんの平手が浩平にヒットする。
「おまえらなー」
「あははっ、みんなお久し振りだよ」
 恥ずかしそうに瑞佳さんが手を振っていた。
 本当に幸せそうに。こんな顔を見せ付けられたら何も言えなくなってしまいます。
(……失恋ですね)
 分かっていたことですけど、やっぱり悔しいです。
「浩平……」
「うん? どうした茜」
「この貸しはあのぬいぐるみで許してあげます」
「げっ!」
 浩平がぞっとしたように顔を引きつらせる。
「あたしはドレス」
「満干全席って一度食べてみたかったんだ」
『寿司を食わせろ、なの』
「あははっ、大変だねー浩平。私、知ーらないっと」
「お、俺を永遠に連れて行ってくれ……」
 浩平が脱力して、がくんと膝を付く。皆で笑う。今、この瞬間を。
「……これでいんですよね、繭さん」
 誰も聞き取れないような声で、私は風に語りかけていた。
284天野美汐@月影(2/4):01/11/06 20:47 ID:urQ5lIzi
「……終わったの?」
 真琴が目を瞬いて彼女らのことを見ていた。
 私はくすっと真琴の頭を撫でる。
「そのようですね」
「あぅーっ、美汐、会いたかったよ」
 こちらに体を寄せてくる真琴を、私は優しく抱きとめていた。
 ずっと待っていた瞬間、今、ここに。
「……あれ、俺、何してたんだ?」
 声を上げたのは、柳也さん……ではなく宮下さんなのだろう。
 よく見ると、真琴の尾も九本になっていた。
「……寝てたんですよ」
「うん? まあ、そうかもな……」
 何か納得してくれたらしい。
 長森さんも居ることだし、そういうことでいいのかも知れない。
 裏葉さんも柳也さんも本来在るべきところに。
 九尾も今ごろは神奈さんと失恋≠ノついて語り合っているころだろう。
(それに付いては、私もだけどね……)
 相沢さんのことを思って私はちょっとだけ苦笑した。
「若いっていいわね」
 はあ、と何故か私と同じように溜息を付く秋子さん。
「いいわね、みんなに祝ってもらえて」
「ああ、そうだな……って、なんでジト目で俺を見てるんだ?」
「ヒロが甲斐性なしなんて言ってないわよ」
「今、言ってるじゃないか」
 ……と、口に出すところが藤田さんらしいのか、長岡さんは笑顔で彼の頬を抓っていた。
 本当に幸せな時が戻っていた。
 夢の終わりに待っていたのは現在という時の流れ。
 辛いこと。悲しいこと。いくらでもあるけど、楽しいこと、嬉しいことも一杯ある。
「そうですよね、真琴」
 うん? と首をかしげる少女を、私は生涯を掛けても護り抜いていく誓いを立てた。
285相沢祐一@月影(3/4):01/11/06 20:50 ID:urQ5lIzi
 ……約束。
 ……気が付いたら夢を見ていた。
 ……あゆと一緒に学校に行く夢だった。
 ……幻想だと分かっていた。
 ……それでも、俺は夢の中にいることにした。
 ……優しい夢に捉われる。
 ……あゆが笑っているからそれでもよかった。
 ……少女の願いそのものだったから。
 ……夢は夢でしかない。
 ……気づくことは惨酷でしかない。
 ……俺の枷だ。
 ……守りたい約束があった。
 ……守れなかった弱い子供がいた。
 ……俺だった。
 ……あゆとの約束。
 ……ボクのこと忘れないでください。
 ……泡のように消えた約束。
 ……『忘れてください』なんて言って欲しくなかった。
 ……すべてが終わりいく。
 ……少女の願いそのままに消えていく。
 ……探し物があった。
 ……それは過去の記憶。
 ……思い出せた。
 ……すべてを思い出せた。
 ……あゆの奇跡。
 ……俺を救ってくれたあゆ。
 ……俺は約束した。
 ……あゆのお母さんをきっと探し出してやる。
 ……約束したんだ。
 ……俺はその約束を守りたい。
286相沢祐一@月影(4/4):01/11/06 20:51 ID:urQ5lIzi
「相沢さん……」
 混濁する意識の中で天野の声が聞こえる。
「よう」
 俺は力なく言った。
「こんにちは」
 と、天野は返してくれる。
「このネボスケ!」
 真琴が怒鳴る。
「お前には言われたくない」
 俺は軽く頭を叩く。
「馬鹿! せっかく心配してあげたのに」
「……ありがとう」
「え?」
 今度は、ぽかんとする。
「あぅーっ」
 と、真琴は唸ってしまった。
 どうも落ち着かない。
「……どうしてだ?」
 何かを忘れているような気がする。
「……祐一さん」
 働かない頭に聞こえてきたのは秋子さんの声だった。
「おはようございます」
 なんて、いつものポーズで言ってくる。
「おはようございます」
 何でもない日常のように振る舞う。
 温かい世界。
 陽が光っていた。
 もう何日も見たことのなかった青空だった。
「……あれ?」
 そして、夕焼けのように紅い月が世界を照らし出していた。
287名無しさんだよもん:01/11/06 20:52 ID:urQ5lIzi
回し。
288名無しさんだよもん:01/11/06 20:53 ID:urQ5lIzi
踊ろうだよもん。
289少年@思い出を忘れない(1/5):01/11/06 21:13 ID:urQ5lIzi
「夕焼けじゃないですよね……」
 里村君が言う。
「……月が大きく見えてたのは伊達じゃなかってことか」
「そうなの折原?」
「月の切り札は……何てこと無い自分自身だってことかよ」
 折原君が言うのを聞いて頷く。
「……ようやく見つけた」
「え? 茜?」
「ぼくが探していたもの」
「どうしちゃったの、茜ちゃん」
 皆がぼくに向かって言う。
「……口が勝手に」
「はい?」
「もしかして『物の怪の槍』か?」
 気づいたものが居るらしい。
「月はこの星を呑み込もうとしている」
「…………」
 皆が黙り込んでしまう。だが、絶望と言うこともない。
 ぼくのことを気にかけてくれていた。
「……里村君のことなら大丈夫だよ」
 にこりと笑う。実際には、里村君が笑っただけだけど。
 ぼくのよりかは魅力的だろう。
「えーと、分かったわ。で、あんた誰なの?」
 張り詰めていた糸が切れるように、折原君や他の皆は笑い出した。
(……信用してくれるらしい。これは破格の笑顔だったかな?)
 愚にも付かないことを思ってしまう。
「『MOON.』はぼくの星を滅ぼしたんだ。これは仇討ちだよ」
 釣られて本音を言ってしまった。
(いや、七瀬君だからこそか……)
 こうも人を惹き付けるのは。
 降り注ぐ紅い月光。
 頭上には月。巨大な月がこの丘に落ちようとしていた。
「せやー!」
 里村さんが力を込めて『物の怪の槍』を月に目掛けて飛ばしていた。
 皆の想いをすべて詰め込んで。
 月はなお紅い。槍は大気圏を抜けて月に衝突した。
 やや分が悪いのか槍は月に押し戻されてしまう。
 それでも槍は月を貫こうとした。
「……切り札は先に見せるな」
 まったく厄介なことになったと私は頬に手を当てていた。
「見せるなら更に奥の手を持ちましょう」
「…………?」
 みんながきょとんと私の方を見ていた。
「月を討てるの?」
「はい、どうにかなりますよ」
 七瀬さんが心配そうに言うので私はそっと頷く。
「切り札は最後まで取っておくものですよ」
 もちろん皆さんの力も必要ですけど、と付け加えておく。
「高野の禁術が其の弐、連鎖結界『煉獄』です」
 禁術に携わる知識と持っている天野さんと川名さんは、まともに顔色を変えた。
 確かに傷ついた私たちだけではどうにも出来ない。力は不足している。
「心配いりませんよ。どうやら下地も出来ているようですし、ぱっぱとやってしまいましょうか?」
「……え?」
 私はにこっと皆に微笑みかけた。
「……惨酷ですよ、私は。子供の為にならどんなことでも出来る女です」
「秋子さん、それって?」
「七瀬さんにだっていつか分かってくれると思いますよ」
 母親なら誰もが思うこと。慈愛。私は最期の術『邪眼』を放った。
 私の生はここで尽きるけど、名雪のためになるのならそれも嬉しいことなんです。
「悪くない、人生でした……」 
 丘の頂上を目指して走っていた。
 悪い予感。虫の知らせ。夢の欠片が教えてくれている。
「はあ、はあ……」
 赤い光が世界を覆っていた。
 とても不気味に、それに眼がちかちかして痛い。
「はあ、はあ……」
 息を切らせて、今、視界が開ける。
「――え?」
 そこには大きな満月があった。
 紅い光の正体。
 私は月に魅入られていた。
(……なんて悲しい光なんだろう……)
 月は形にとらわれない。
 日によって様々な形を作ったりする。
 月には何もない。
 月面にあるのは冷たい重力だけだった。
 月は太陽がないと輝けない。
 反射するのは何のために。
(……分からない。そんなの分からないけど……)
 悲しい。それだけが心に伝わってくる。  
「やめて!」
 私は思わず叫んでいた。
 あまりにも悲しい月の光に。
「もうやめて!」
 そして、わたしよりも感極まった声が、
「お母さん、もうやめてよ!」
 この空に響いた。
「……あゆちゃん?」
 翼を羽ばたかせてあゆちゃんは月に昇っていく。
 月の紅い色が薄らいだ。
「――くっ!」
 結界が崩れそうになっていた。
「ここまでなの?」
 負荷の掛かり過ぎた結界は形を無で為そうとしていた。
 どうにか立て直せると思ったのに、月の光に影響されるのか術が暴走してしまうのだ。
 なつきの組んでいた印は『高野の禁術が其の弐、連鎖結界<煉獄>』だったけど、
 魔法と方術の違いのせいか上手くいってくれない。
「悪いな、なつき、こんなことにつき合わせちまって……」
「……馬鹿、そういうのは終わってから言うものよ!」
「そうだったな、あともうひと頑張りするか?」
「当然よ。先に倒れた方が夕食おごるのよ、いいわね?」
「こりゃあ、負けられねーな。お前は大喰らいだから」
「言ってくれるわね、あんたこそ主食にホットケーキは止めときなさい」
「俺はあーいうのが好きなんだ。ほっといてくれ」
 お互いにぷっと吹き出してしまう。どうしてこんなにも楽しいのだろう。
 みんなを見回してみる。ユンナもコリンも郁未も晴香も傷ついた体のくせに頑張ってる。
(術者代行のなつきがこんなことでどうするの!)
 自らの不甲斐なさを叱責する。しかし限界はすでに越えていた。
 立ってるのが不思議なほど、どうして頑張れるんだろう。
「それは、きっと、この星のことが好きなのよ」
「――え?」
 目の前にいたのは邪術士≠フ水瀬秋子だった。
「今から術者を代わってくれる?」
「無理よ!」
 この無理≠ヘ別に意地でもなんでもなかった。結界は反転しようとしている。
 邪術士と言えども立て直すのは不可能に近いのだ。でも――
「もちろん、手助けは私だけじゃないわ」
 邪術士の促した視線の先には、失われたはずの彼女たちがいた。
「……なるほど、先に結界を仕掛けていたのは、アンタってことかよ」
 スフィーはそう言って、脱力した。
293みんなの思い出を忘れない(5/5):01/11/06 21:21 ID:urQ5lIzi
「同志・瑞希よ、この程度でへこたれるとは不甲斐ないぞ!」
「ぐわー! 殺しても死なないとは思っていたけど、幽霊なって現れるとは予想外だったわ!」
先導°纒i仏大志を前に瑞希は頭を抱えていた。
「葉子さん、由依、やっぱり無事だったんだ!」
「晴香さんってだらしないんですね」
「うるさい。この程度でバテないわよ!」
不可視の使い手%oタ葉子。名倉由依。郁未は嬉しそうに笑う。
「お兄ちゃん、しっかり力を入れてくださいよ!」
「ああ、分かっている」
怪物@ァ川雄蔵。四十九尾@ァ川郁美。
「ちょっと、ちょっと、どうしてこの詠美ちゃん様がこんなことしないといけないわけ? ちょーむかつく!」
「……て、意外としぶといんですね」
邪教崇拝者¢蜥詠美。力を使い果たしながら彩は苦笑した。
「ほんと、あたしが居ないと駄目よねー」
「そうでもないわよ、馬鹿」
異界の光の戦士<eィリア。サラも悪態が尽きない。
「お姉ちゃん!」
「初音、うそ、どうして?」
反転#趨リ初音。……と今では反転はなさそうだった。
「どういうことなの?」
 なつきは気が動転して何が何やら分からない。
「……九尾と川澄舞の戦いの時の結界をそのまま流用しているのか?」
「聖さんの言うとおりです。あとはこの邪眼で現世に記憶を投影させるという寸法ですよ」
「じゃあ、これは……」
「そうです、最後の別れですよ。あとは私たちに任せてください」
「なつきたちの代わりに贄≠ノなるっていうの?」
「悲観的過ぎますよ、それは。私たちはもう終わった存在なんです。未来はあなたたちのもの……頑張ってください」
邪術士≠ヘ開く。人には持てない第三の瞳を。
「『高野の禁術が其の弐、連鎖結界<煉獄>』!!」
 そして、光が満ちた。 
294名無しさんだよもん:01/11/06 21:23 ID:urQ5lIzi
回し。
295名無しさんだよもん:01/11/06 21:24 ID:urQ5lIzi
メリーゴーランドだよもん。
296相沢祐一@君がいる奇跡(1/5):01/11/06 21:26 ID:urQ5lIzi
『物の怪の槍』が『MOON.』を貫いた。
 紅い光は止んでいく。頭上にあった満月は夜の空に消えていく。
「…………」
 空から白い羽が落ちてきた。
 俺は羽を掴まえようとするが風に邪魔されてどこかに飛んでいってしまった。
 見上げた空はどこまでも青い色をしていた。
 そこには何もない。天使はいない。
「ゆういち! ゆういち!」
 丘を駆け上がってくるのは名雪のやつだった。
 俺の胸に飛び込んでくる。
「お母さんが! お母さんが!」
「……名雪」
 すべては終わった。戦いは終わったのだ。
 ただ、失ったものも大きかった。俺に出来たのは名雪を抱きしめることだけだった。
「…………」
 誰も一言も喋らなかった。
 折原浩平、藤田浩之、相沢祐一、大の男が三人も揃って何も出来なかった。
「どうして、負なんか生まれたんだろう……?」
 青いツインテールの子が寂しそうに言う。
 誰も何も言えない。人の生きてる限り負は無くならない。
「…………」
 でも正の力もまたともに在るものだから。人は滅びない。
 結局、『MOON.』は、星を見つめるものだった。
 月とはそういうことだ。ただ、『MOON.』は悲しい記憶に嘆いてしまった。
 星が涙することを良しとしなかったんだろう。
 翼人としては当然かも知れない。
 俺は折原浩平……いや月に操られている時に夢を見ていた。
 どんな夢だったのか思い出せないけど、多分、俺はその夢の中で幸せだった。
 そう。俺は何も見ない振りをしていたんだ。
297相沢祐一@君がいる奇跡(2/5):01/11/06 21:27 ID:urQ5lIzi
 月はどうして紅く光るのを止めたんだろう。
 槍が星を貫く前のことだった。月は何かに満たされるようにわざと討たれたような気がしていた。
 もちろん今となってはすべてが憶測だった。
「…………約束か」
 じゃあ、俺はどうしてこんなにも空虚なんだろう。
 誰かがいない。隣にいて当たり前のやつがどこにもいなかった。
「……ゆういちっ!」
 あの時のように名雪が泣いている。
 ずっとずっと俺のことを想っていてくれた名雪。
 でも、それでも、俺はあいつのことを。
「……あゆ」
 口から出た名前を聞いて名雪はびっくりしたように眼を大きく見開いたが、
「……うん、行ってあげて……祐一。ふぁいと、だよ……!」
 と、涙を零しながら言ってくれた。
「ありがとう、名雪」
 俺は羽が消えた風の方に向かって駆け出していた。
「ちょっと、どうしたの祐一? 真琴も一緒に行くよ!」
 しかし、ばたん、と真琴は転んでしまっていた。
 真琴の服の袖を引っ張っていたのは天野だった。
「行かせて上げましょう。私たちはもう過去の人間なんですから」
「あぅーっ、それって忘れられたってこと?」
「そうじゃなくて、想いはもう伝えてあるから、大切な人なんです」
「……うん・あははっ……しょうがないよね、祐一って」
「悪態をついても……涙を零したりしたら……意味ないんですよ?」
「じゃあ、美汐はどうして……泣いてるの?」
「私は……嬉しいからです」
「……真琴だって……そうだよ」
「じゃあ、泣いたって良いですよね、今は……」
 後ろには悲しい別れ。目の前には約束の出会い。謝ることはしない。
 皆の気持ちを俺は受け取ったから。
298月宮あゆ@君がいる奇跡(3/5):01/11/06 21:29 ID:urQ5lIzi
 夢。

 夢が終わる日。

 雪が、春の日溜まりの中で溶けてなくなるように……。

 面影が、成長と共に影を潜めるように……。

 思い出が、永遠の時間の中で霞んで消えるように……。

 今……。

 永かった夢が終わりを告げる……。

 最後に……。

 ひとつだけの願いを叶えて……。

 たったひとつの願い……。

 ボクの、願いは……。
299相沢祐一@君がいる奇跡(4/5):01/11/06 21:32 ID:urQ5lIzi
「馬鹿、俺はお前のこと忘れないぞ!」
 羽を掴まえようと、俺は思い切り手を伸ばしていた。
「……祐一君?」
 届かない。あゆは翼を羽ばたかせているから。
「うそ、どうして、ボクのことなんかを……覚えてるの?」
「忘れるわけないだろう!」
 俺は一生懸命に走った。もう二度とあゆを忘れないように。
「約束しただろう」
 俺には奇跡は起こせないけど、あゆの側に居ることはできる。
 悲しい時は、俺がなぐさめてやるし、楽しい時は一緒に笑ってやれる。
 約束する。俺はずっとあゆのそばにいる。だって――
「俺は、本当にあゆのことが好きなんだからなっ!」
 あゆが俺に奇跡を分けてくれた日。あゆは俺の前から姿を消した。
 秋子さんの時もそうだったらしい。
「あゆはどうなんだ!」
「ボクは……この星を悲しくさせたのは、ボクだから……」
「俺はあゆと一緒にいたい!」
 人に奇跡を示すごとにあゆはその思い出を消していく。
『ボクのこと忘れてください』
 秋子さんとの千年の再会。俺との七年の再会。周期は短くなっていく。
 奇跡は何度も起こらない。三度目の願いを叶えたならあゆは本当に消えてしまう。
 思い出の中にも存在しなくなる。
「お前がしようとすることなら俺は命を懸けて手伝ってやる」
「……駄目だよ。そんなの駄目だよ……!」
 あゆは泣いてしまう。でも俺はあゆを失いたくない。
「大丈夫だ。俺の中にある奇跡の欠片も一緒だ。あゆに返すよ」
「祐一君……ボク、本当は、本当は……」
 答えなんて分かってた。だから俺はあゆを抱きしめる。
「ボクはずっと……祐一君と、一緒にいたい」
 そこに、優しい奇跡……。
300月宮あゆ@君がいる奇跡(5/5):01/11/06 21:34 ID:urQ5lIzi
      ボクの、お願いは…。

 ―― この水の星に幸せな記憶を…… ――
301名無しさんだよもん:01/11/06 21:34 ID:urQ5lIzi
だよもん。
302名無しさんだよもん:01/11/06 21:35 ID:urQ5lIzi
だよもんだよもん。
303EPILOGUE@AIR(1/7):01/11/06 21:40 ID:urQ5lIzi
 わたしは普通に生きていた。
 もちろん色んなところで無理は生じてしまうけど、それでも日常を過ごすことに努めた。
「今日、いいことがありました、と……」
 わたしはあの日から日記を付けることにした。
 祐一に見せるためだ。あゆちゃんにも。
『今日は、こんなことがあったんだよ』
 二人にそう言うために忘れないように付けておく。
「商店街を歩いていたときのことでした……」
 でも、ふと悲しくなるのはどうしてなんだろう。
 気が付けば、あれから三ヶ月。雪の季節はもう終わろうとしている。
 春になったら見ている風景も変わってしまう。
 そうなったらわたしの想いも消えてしまうかもしれない。
 そう思ってしまうことが何より怖かった。
『では、次のリクエスト曲です。冬と言えばこれですね』
『あさひも大好きです。森川由綺さんで、ドラマ「ホワイトアルバム」のED、「パウダースノー」聴いてください』
 ラジオから切ないメロディが流れ出していた。
 そんな日は、ふと、あの日のことを思い出してしまう。
奇跡≠セった。
 陳腐な言葉だったけど本当に奇跡が起きた。
 みんな生きていた。
 そういうことになっていた。
 聖戦があったことが忘れられていて、普通にみんなが過ごしていた。
 どうしてこうなったのかお母さんに訊いたことがあった。
『そうね……本来在るべきだった星の姿に戻った、そういうことじゃないかしら?』
『人を殺す為の力があるなら、人を生かす為の力もあるってことよ』
『少し都合のいい話だけど、奇跡ってそういうものでしょう?』
 誤魔化した言い方のお母さんに、わたしは更に訊いた。
『じゃあ、なんで祐一とあゆちゃんは戻ってこないの?』
『…………』
 お母さんは困ったように笑ったままだった。 
304EPILOGUE@AIR(2/7):01/11/06 21:42 ID:urQ5lIzi
 本当は分かっていた。
 奇跡には代償が要るなんてことをお母さんが言うわけもなかった。
 真琴はいつもテーブルに余分であるはずの食器を並べている。
 初めは止めようとしたが、すぐに真琴の好きにさせた。
 真琴の気持ちがよく分かったから。
 もうすぐ春。
 雪は溶けようとしている。
「そうか……」
 もうあの冬は一年も続いていたんだ。
「あ……」
 わたしは望郷の念を打ち消して日記を書くことにした。
 今も夜更かしは苦手だった。
「わたしはぼーっとしていたせいか子供にぶつかりました……」
 こんなの書くと祐一は笑うかも知れない。
 でも、嘘を書くのは嫌だった。
「名雪ー!」
 筆を進めていたところでお母さんの声がした。
「なに?」
「お風呂、開いたわよ」
「分かった。もうちょっとしてから入る」
「そう? じゃあ、真琴に先に入ってもらうわね」
「うん、そうしてもらって」
 本当に、これはわたしの日常だった。
 パラパラと前の日記を見てみる。
 七瀬さんが転校してきた日のところで手が止まった。
「あの時はびっくりしたな……」
 折原さんと一緒の学校にしようか迷ったらしいけど、この街を気に入ってくれたらしい。
(でも、本当のところは聞かなかったけどね……)
 わたしは更に手を勧めていた。
305EPILOGUE@AIR(3/7):01/11/06 21:46 ID:urQ5lIzi
 繭ちゃんのことが書かれてあった。
 澪ちゃんがわたしの髪の毛を見てお母さんとお揃いにしてくれたけど、
 編んだ三つ編みを繭ちゃんが引っ張ってしまって、とても困ったことが書いてある。
「繭ちゃんか……」
 聡明と聞いていた繭ちゃんだったけど、今はそうじゃないらしい。
 どうも自分から心を閉じているとのことだった。
「あの子、結構、律儀なのよ」
「……え?」
「気にしてるみたい……馬鹿よね、ほんと」
 何のことを言っているのか分からなかったけど、聞かないことにした。
 多分、辛いことがあったんだと思う。
「でもさ、こうしてる方が、子供らしくていいんじゃない?」
「ほら、繭。フェレットのぬいぐるみだよ」
「みゅー♪」
「ふふっ。幼い頃から大人だっただから、今くらいでいいんですよ、きっと」
 そう言った里村さんの横顔が印象的だった。
「……懐かしいな」
 長岡さんは連日と言っていいほど来栖川さんと彼の取り合いをしているらしい。
 すごい日には八人の女の子がそれに加わるって言ってたけど、わたしにはちょっと想像できなかった。
 スフィーさんは清水さんと組んでとんでもないことを企んでいるみたい。
 この間、お母さんに商売の相談に来ていた。
 サークルチケットを貰って、せっかくだからと言うことで初めての即売会にも行ってみた。
 その日の日記は、よっぽど疲れていたのか、もう行かない、としか書かれてない。
「なにがあったのかな?」
 記憶まで飛んでいるらしかった。
「一緒に行った香里に訊いても何も教えてくれなかったし……」
 また、日記を読んでみる。余所の学校との合同練習のことが書かれてあった。
 インターハイ優勝の人がいる学校だったので、どきどきしていたら郁未さんのことだった。
 どうやら郁未さんもなんとかやっているらしい。
 居候が三人も出来たと苦笑していた。
306EPILOGUE@AIR(4/7):01/11/06 21:48 ID:urQ5lIzi
 温泉旅行に招待してくれた千鶴さん。
 どうしてかその旅館で人形劇をしていた国埼さん。
「ここでも俺は通じないのか」
「にははっ、そんなことないそんなことない楽しかったよ」
「パチパチパチ……」
「むむむっ。相変わらずオチが分からないよぉ」
「ぴこぴこ」
「にゃはは、不思議だけど、全然面白くない」
 がつん。
「にょわー、なんでみちるだけ殴るんだ!」
「じゃかましい!」
 なんか帰る時にはお米券が十枚ほど貯まっていた。
 わたしにはそちらの方が不思議だった。
「たくさんあったね、ほんと……」
 日記が思い出を綴ってくれる。
 どうしてか日記をつけるという行為は懐かしい。
 前にも付けていたのかも知れない。
「名雪、いる?」
 ドアを叩く音の後に真琴の声が聞こえてきた。
「うん、いるよ」
「お風呂、開いたから」
「分かった」
 それだけ言って真琴はそそくさと立ち去った。
 天野さんには懐いているけど、わたしのことは苦手なのかも知れない
(ちょっと寂しいな……)
 わたしは着替えを持ってお風呂場に行くことにした。
『それじゃあ、最後のリクエスト曲です』
 ラジオを消そうと手を伸ばしてみるが何となく、そのままにしておく。
 日記の続きは後でいい。耳を澄まして聞くことにした。
307EPILOGUE@AIR(5/7):01/11/06 21:54 ID:urQ5lIzi
『この曲はですね、別れを唄っているんだけど、すっごく前向きなんですよ』
『わたしもそういうところが大好きなんです』
『リクエストの葉書にもたくさんのメッセージを頂いちゃってまーす!』
『ペンネーム、観鈴ちんさん』
『この曲大好きです。観鈴ちんは頭良くないからこんな言葉しか言えないけど』
『懐かしくてときどき涙が出ちゃいます。これってヘンな子かな?』
『いえいえ、そんなことないですよ。あさひもよく唄で泣いちゃいますから』
『レコーディングの時とかよく怒られて――って、それは違いますね』
『気を取り直して、次のお手紙です』
『ペンネーム、はちみつくまさんさん』
『わー、さんが二つも続いてしまいましたね、でもこれで合ってるんですよ』
『えーと……え? ……嫌いじゃない』
『ひ、一言だけですね。はーい、あさひには分かりますよ! 大好きなんですね、この曲が』
『次はペンネーム、雫さん』
『……電波、届いた? ってこれコーナー違いますよ』
『鷲見プロデューサーの仕業なんですか? もう仕方ないですねー』
『ラジオの前のみんなは真似しちゃダメですよ、プンプン!』
『それじゃあ、他にもリクエスト、名無しだよもんさん、名無しだってばよさん、名無しだもんよさん』
『書き手だよもんさん、某一書き手さん、このスレの書き手のひとりさん、名無しさん…だよね?さん』
『それに、書き手さんだよもんさん、 美汐たん書いてますさん、なんとなく匿名さん、真琴とか書いてた人さん』
『前スレ1さん、書き手@既に退場済みさん、昔書き手さんだったんだよもんさん、ロムラーだよもんさん』
『本当に、本当に、たくさんのリクエストありがとうございました』
『それでは、名も泣き戦士さんたちに送る、この一曲、聴いてください』
『この夏、感動を与えてくれたドラマ「AIR」のエンディングテーマ曲です』
『歌姫´iaさんで、「Farewell Song」!!』
308EPILOGUE@AIR(6/7):01/11/06 21:55 ID:urQ5lIzi

 白く途切れた夢の切れ端をつかまえて 少年は走る
 手を離したらどこまでも遠く風の音に消えてゆく

 ひとつだけの思いを飛ばして

 まぶたの裏に描きはじめた絵は霞んで 手のひらでこすっても
 いつか見えた優しさはもうない
 ひとり踏み出す足だけ見てる

 朝には消えたあの歌声をいつまでも聞いてた

 野道の先で赤く生るほおずきせがんで 子供がはしゃいでる
 いつか知った優しさの中にも
 同じ風景 あるならいいね

 朝には消えたあの歌声をいつまでも聞いてた
 僕らが残したあの足跡をいつまでも追ってた

 朝には消えたあの歌声をいつまでもいつまでも
 僕らが残したあの足跡をどこまでも追ってた
 そう終わりは別れとあるものだからすべて置いてゆく
 朝には日差しの中 新しい歌、口ずさんでる
309EPILOGUE@AIR(7/7):01/11/06 22:00 ID:urQ5lIzi
 2月28日(雪) 水瀬名雪


 今日とても良いことがありました。

 商店街を歩いていたときのことでした。

 わたしはぼーっとしていたせいか子供にぶつかりました。

 そのときわたしは思わず泣いてしまいました。

 男の子と女の子のふたり。すっごく仲良さそうに見えたからです。

 まるで幼い頃の祐一とあゆちゃんのようで、幸せ一杯に……。

 そう思ったから、わたしは泣いてしまったのです。

「幸せかな?」と問い掛けたら、笑顔で「幸せだよ」と答えてくれました。

 たった、それだけのことだったけど、わたしはその子たちに幸せを分けてもらったような気がしました。

 もし、夢の終わりに、勇気をもって現実へと旅立つものがいるなら、きっと、それは無垢な少女で……。

 辛かったり、楽しかったり、苦しかったり、嬉しかったり、と忙しい毎日を過ごすんだと思う。

 でも、それは新しい旅の始まりだから、わたしは応援したい。

 ずっと、いつまでも……。

 ふぁいと、だよ!
310名無しさんだよもん:01/11/06 22:01 ID:urQ5lIzi
だよもん。
311名無しさんだよもん:01/11/06 22:02 ID:urQ5lIzi
だよもんだよもん。
312名無しさんだよもん:01/11/06 22:03 ID:urQ5lIzi
だよもんだよもんだよもん。
313名無しさんだよもん:01/11/06 22:04 ID:urQ5lIzi
だよもんだよもんだよもんだよもん。
314名無しさんだよもん:01/11/06 22:05 ID:urQ5lIzi
だよもんだよもんだよもんだよもんだよもん。
315名無しさんだよもん:01/11/06 22:06 ID:urQ5lIzi
だよもんだよもんだよもんだよもんだよもんだよもん。
316名無しさんだよもん:01/11/06 22:06 ID:urQ5lIzi
だよもんだよもんだよもんだよもんだよもんだよもんだよもん。
317名無しさんだよもん:01/11/06 22:08 ID:urQ5lIzi
葉鍵聖戦終了ageなんだよもんだよもんだよもんだよもんだよもんだよもんだよもんだよもん!!
318名無しさんだよもん:01/11/06 22:10 ID:rrqAMWLr
うんこ
319名無しさんだよもん:01/11/06 22:27 ID:urQ5lIzi
うーん、不用意にageるものじゃないですね。
320名無しさんだよもん:01/11/06 22:27 ID:urQ5lIzi
もうちょっと回しときましょう。
321名無しさんだよもん:01/11/06 22:28 ID:urQ5lIzi
よいしょ。
322名無しさんだよもん:01/11/06 22:29 ID:UALPW6qf
よいしょ。
323名無しさんだよもん:01/11/06 22:30 ID:UALPW6qf
「ageれないスレに意味は在るのでしょうか?」
324名無しさんだよもん:01/11/06 22:31 ID:UALPW6qf
「厨房って言われたことないかなぁ?」
325名無しさんだよもん:01/11/06 22:32 ID:UALPW6qf
「このレスの向こうに、もうひとりの名無しさんがいる…そんな気がして」
326名無しさんだよもん:01/11/06 22:33 ID:UALPW6qf
んしょ。
327名無しさんだよもん:01/11/06 22:33 ID:UALPW6qf
どっこいしょ。
328名無しさんだよもん:01/11/06 22:34 ID:UALPW6qf
「わたしのカキコ、まだ覚えてる?」
329名無しさんだよもん:01/11/06 22:35 ID:UALPW6qf
「反省しないから、厨房って言うんですよ」
330名無しさんだよもん:01/11/06 22:36 ID:UALPW6qf
「スレsageて……ずっと、マターリ出来たらいいのに」
331名無しさんだよもん:01/11/06 22:37 ID:UALPW6qf
「わたしは駄スレを狩るものだから」
332名無しさんだよもん:01/11/06 22:38 ID:UALPW6qf
「…荒らし、だよ」
333名無しさんだよもん:01/11/06 22:44 ID:BIcXLtXF
よし。
334名無しさんだよもん:01/11/06 22:45 ID:BIcXLtXF
この辺で良いだよもん。
335名無しさんで逝こう:01/11/06 22:46 ID:BIcXLtXF
 本当に長い間、ご愛読ありがとうございました。
 葉鍵聖戦はそういうわけ終了です(一応ということですが)。
 振り返れば一年前です。不用意に書き込んでここまでずるずると来てしまいました。
「美坂香里は生きている」の発言がここまで尾を引くとは正直、当時は思っていませんでした。
 うーん、どこかで言ったような科白なんですが、本当にそうです。
 その節は、過去ログを見直すたびに、ロムラーだよもんさんに偉そうに言う自分が痛かったです。
 この場を借りて、貴重なご意見、本当にありがとうございました。
 もう、あまり見てないかも知れませんが、初代からの書き手さんもありがとうございました。
 それに、最後まで書き続けてくれた、読んでくれた皆さんに、書き手(無理矢理ですが)代表として感謝いたします。
 本当にありがとうございました。私だけの聖戦ではないので、もうこれ以上は言うことはありません。
 ……とまあ、自分語り(酔い)も痛いのでこの辺で失礼します。
 それでは、また。どこかのスレで。草々。
 
336名無しさんだよもん:01/11/06 23:06 ID:YhPHBQUB
聖戦ご〜る

よく頑張った!面白かったぞ!!
337名無しさんだよもん:01/11/06 23:07 ID:gneZ4b5L
葉鍵聖戦完結おめでとうございます。
ずっとROM専でいましたが、感動的なラストに思わず涙。

………ええ話やったぁ!
338名無しさんだよもん:01/11/06 23:51 ID:dpqo4jKA
ハカロワに続いて聖戦も終わりかぁ。
何か寂しくなるなぁ
339名無しさんだよもん:01/11/07 00:05 ID:oqcp2BWH
ずっとROMばっかで
氷上最後どうするのかなとか、余計なことばっかり心配たけど……。
涙。同意です。

完成までつながれた作家の方々、お疲れ様です。
おめでとうございます。
340名無しさんだよもん:01/11/07 04:49 ID:yTI7xZkz
正直、DNML化したいほどに、いい話だ。

昔一生懸命やって、このスレが毎日で、だけどいつしか玩具のように放り出してしまった物語を。
完結させてくれて有り難う。
クロスオーバーものとして、一級品の読み物をどうもありがとう。

……そういえば、清水なつきは、こっちの設定のが300倍存在感のあるいい女だったよ(笑
341名無しさんだよもん:01/11/07 04:49 ID:yTI7xZkz
まったくもって、とにかく、ありがとう。
お疲れ様でした。
342名無しさんだよもん:01/11/07 12:36 ID:WfZAtzSJ
2000年、11月7日……23:27
邪悪な葉鍵キャラの日記がスタートした………
あれから一年。色々な事があった。
dat落ちしたことは数知れず、葉鍵板そのものの存続の危機すらあった。
しかし、ここに丸々一年が過ぎ、ようやくひとつの物語が終わりを告げた……

ありがとう!! おめでとう!!
343名無しさんだよもん:01/11/08 19:09 ID:a2bZnenz
ああ、このままsageがっていくのか。寂しいね……。
344名無しさんだよもん:01/11/09 00:05 ID:zSZ+3yr8
回しとか、不要な部分を全て除いて
○○編とかで再編集してくれる人がいたら神だな。

始動 ゴッドハンド 高野 ものみの丘

みたいに
345名無しさんだよもん:01/11/09 14:40 ID:arKojg49
葉鍵聖戦の新スレ立てたら、どのくらいの人が参加してくれる?
正直、このまま忘れ去られていくには、あまりにも惜しいくらいに、世界が広がったと思う…
煽り文句はこちらで
http://green.jbbs.net/sports/bbs/read.cgi?BBS=310&KEY=975774998&START=112&END=112&NOFIRST=TRUE

……どうかな?
346名無しさんだよもん:01/11/09 19:23 ID:IzJQxwMc
どうだろう?正直「葉鍵聖戦」としてはこのまま終わらせた方がいいような気がする。
どうせやるなら続きとかじゃなくて設定等を1から作り直してやった方が面白いんじゃないかな?
347名無しさんだよもん:01/11/09 20:45 ID:T30FW+nJ
>>345
どういう風にやっていくかで形は違ってくると思うだよもん。
どんなものでも面白ければいいと思うだよもん。
たとえこの聖戦のことを知らないほうでも楽しめるような手法を凝らすとかだよもん。
正直、このスレを見てくれてる人は少ないと思うだよもん。
だからこそ予備知識なしに新スレを読んだ人の中から『聖戦』に興味をもってもらえるしたらきっと面白いだよもん。
『聖戦』の設定を使っていながら『聖戦』ではない新しい物語とかだったらどうかなだよもん。
きっと『聖戦』を知ってる人は深く楽しめて『聖戦』を知らない人も楽しめて、
『聖戦』を知るきっかけになるような新スレだったら、素敵だよもん。
上の煽り文句を見るに物語で例を上げるとしたら『真琴』が『祐一』を探す旅に出てる、とかも想像できるだよもん。
345氏のやりたいことをやってみて欲しいだよもん。
自分はもう手伝えないかも知れないだよもんが。楽しませて読ませてもらうだよもん。
今回の聖戦ではメモ帳で500kbを優に超える文章を書いたのでほぼ完全燃焼だっただよもん。
でも自分もいつか約束したとおり外伝を書いてみたいだよもん。
……いつの間にか自分のこと言ってるだよもん。
『クラナド』や『謳われるもの』が出たらまた面白いかもしれないだよもんね。
他の書き手さんの意見も訊いてあると思うだよもん。
このスレを浪費してもう少しこうやろうとか話してみたらどうだろうだよもんか?
それでは失礼するだよもん。

>>344
過去ログ保管サイトが>>2にあるだよもん。
それとも、意味合い的にもう一度、書き纏めだろうだよもんか?
348名無しさんだよもん:01/11/09 21:25 ID:zSZ+3yr8
>>347
ごめんなしゃい。
掲示板の方しか知らなかったよ。
鬱だ詩嚢
349長瀬なんだよもん:01/11/10 15:10 ID:hPz2uR6u
>>347
アドバイスありがとうだよもん。
じゃあ、このスレ使って、後日談+外伝ぽいものを書いてみるだよもん。
よかったら、色々と参加してほしいだよもん。
……国崎サイコー
350邪悪な葉鍵キャラの日記スレの1:01/11/10 15:27 ID:oKeYaf+m
うわ、いつの間にか完結してるし。
ほぼ1年がかりでの完結ですね、本当にお疲れさまでした。
私が書いてたのは聖戦スレの1の真ん中くらいまでなのでアレですが、
大昔に言ってた完結記念座談会をやるなら、是非混ぜて欲しかったり。
いろいろと謝罪しなきゃならない事もあるので。東鳩キャラ大虐殺とか(w
当時はもっと殺伐とした短期決戦になると思ってたんだけどなあ。
いずれにせよ紆余曲折を経ての大団円、書き手諸氏に感服しきりです。ぱちぱちぱち。
351名無しさんだよもん:01/11/10 16:11 ID:hPz2uR6u
>>350
完結記念座談会は考えてなかった……(w
やるなら葉鍵聖戦な提示板ですかね?
352名無しさんだよもん:01/11/10 19:46 ID:rmHmFYee
とても楽しく読ませて頂きました。
個人的にこういう話は大好きです。
参加したかったけど、ネタと力量が無くてそのままROMでした。
また、いずれこういうリレー小説をやるならば次はぜひ参加したいものです。
353名無しさんだよもん:01/11/12 15:58 ID:nzmi2avN
めんてしてみる
354星の記憶にて:01/11/13 15:57 ID:YPFW8dRM
かつて
世界の存亡をかけた戦いがあった
力持つものたちは導かれるようにしてかの地に集い
血と肉と魂を賭し死闘を繰り広げた
雪降る冬の街に満ちる負の波動
狂気に染まり、己を失うものたち
千年の時を経た絆を手繰り
九つの尾をもち地を駆ける獣たちの主と
光り輝く翼にて天を疾るものが合間見える
幼き日の思い出を闇に鎮め
輪廻の絆を断ち切ることを望んで
互いに背負うものがあるゆえに

母は娘を想うがゆえに自らを血に染め
憎悪の海にその身を浸す
永遠とともに
永遠を求めるものとともに
ただ紅く輝く月の導きとともに
永遠に触れた痕をその額に宿して

少年は愛するものを求めるがゆえに
少女は愛するものに応えるがゆえに
永遠の少女は人を狂気に導いていく

すれ違う想いは
一人の羽を持つ乙女の祈りにより重なる

せめて最後は幸せな記憶を
355水瀬名雪@日常:01/11/13 16:17 ID:YPFW8dRM
あの聖戦から半年が過ぎた。
私達はいつものように、その日を過ごしていた。
退屈な日々ではあったけれど、それはかけがえの無い大切なものだということは、身に染みてわかっていた。

ジリリリリリリリ……

いつものように、たくさんの目覚し時計が私の目を覚ます。
私は、いつのまにか抱きしめていたけろぴーを離すと、一つ一つ目覚し時計を止めていった。
その中に、あの目覚し時計は無い。
(…名雪、目覚し時計無いか?)
(たくさんあるから、好きなのあげるよ)
祐一が手にした、私のお気に入りの目覚まし。
それは今も、祐一の部屋の、ベッドの上にある。
「あぅ…眠い……」
廊下から、真琴の寝ぼけたような声が聞こえてきた。
真琴は今、学校に通っている。私と同じ高校の、今は一年生だ。
その頭の上には、相変わらず猫さんが乗っていた。
猫アレルギーも、遠くから少し触るくらいなら、大丈夫だ。
私は真琴が出て行ってしまう前に、急いで制服に着替えはじめた。

「おはよう、名雪」
「おはよう、お母さん」
下ではお母さんが、私の分のパンを焼いてくれていたところだった。
真琴はすでに席に座って、トーストに噛り付いていた。
「ねこー……ねこー……」
私はその頭の上にいるぴろに、恐る恐る手を伸ばした。
356水瀬名雪@日常:01/11/13 16:40 ID:YPFW8dRM

「…おまえも懲りぬ奴だな」
毛を吸い込み、盛大なくしゃみをした私に、ぴろが呆れたように声をかけた。
「うう、ねこー…」
私は赤くなった目元をぬぐいながら、恨めしそうに、そ知らぬ顔でいる真琴の頭の上のぴろを見た。
ただの猫に見えるけど、実は、数千年を生きた九尾の狐が憑依してる。
元々真琴の体にいたんだけど、真琴に身体を譲ってからは、こうやってぴろで行動してるみたい。
「ほら名雪、いつまでもそうしてないで」
「うう、わかったよ…」
私はしぶしぶ席につくと、イチゴジャムをたっぷりとトーストに塗りつけた。
その時、チャイムが鳴った。すぐさま真琴が立ち上がると、鞄を手に、玄関に走り出す。
「いってきまーす!」
どたどたと足音が遠ざかり、玄関を開ける音がする。
「おはよーっ、みしおーっ!」
「…おはよう、真琴」
天野さんは真琴のひとつ上の学年だけど、こうして毎日真琴を迎えにきている。
真琴も天野さんにだけは、心を開いているみたいだった。
我知らずついたため息を聞きとがめ、お母さんがやってくる。
「……あの子も本当は、まだ気持ちが整理しきれてないんでしょうね…」
「うん……」
真琴が一度として、私の横の席を見なかったことに、私もお母さんも気付いていた。
お母さんが、その席に並べられたお皿を…何も乗っていないお皿をかたずける。
そのお皿を並べたのは、他ならない真琴なのに。
「……いってきます」
食べかけのトーストをお皿において、私は鞄を手に、席を立った。
357清水なつき@日常/電話:01/11/13 17:05 ID:YPFW8dRM
ぷるるるる………かちゃ

…おっ、もしもし、なつきか?俺だ、スフィーだよ。
そっちはうまくやってやがるかよ?…あ、俺か?俺はまぁ、ぼちぼちだな。
まあ元気そうで何よりだよ。でかい術を使ったあとは、反作用がこえぇからな。
ああ、そうだ。前とかわらねぇよ。いつもみてぇに…って、誰がアコギな商売だってぇ?
ったく、こちとら森川と澤倉を生き返らせ損ねて、34億8千万円がぱぁだってのに。
奇跡とやらでどいつもこいつも生き返りやがって……こちとら大損だよ。
…何笑ってやがんだよ…あ? ば、馬鹿いうな! 誰が照れてるんだよ!

…ちっ、お前はいいよな、相変わらずプノンペンでよろしくやってんだろ。
……ところでよ、話は変わるんだが、リアンの奴見なかったか?
あいつ、一週間ほど連絡よこさねぇで、どこで油売ってんだか……
お前のところにもいねぇとなると……ま、あいつだってガキじゃねーんだしな。
……悪かったな、俺だって妹の心配ぐらいするんだよ。そんなに笑うな。

おい、いつまで笑ってるんだ、なつき。失礼な奴だな。
……リアンを見かけたら、連絡よこすように言っといてくれ。
源之助のじいさんも不安がってやがったからな。
じゃ、またな。

……かちゃん
358名無しさんだよもん:01/11/13 17:08 ID:YPFW8dRM
……回し。ってな感じで進めていこうかな、と。
359名無しさんだよもん:01/11/13 17:12 ID:YPFW8dRM
それとも、これは葉鍵的SSトレに書くべきなんでしょうか?
聖戦は終わった、もうここには書くな、という意見がありましたら、もうやめますが。
それでは回線切って(以下略)
360名無しさんだよもん:01/11/13 19:35 ID:ueU6BtwA
ん?続きやるの?
書き手で話し合ったの?上の方でも色々案が出てたけどまとまったの?
それとも個人の暴走?
361名無しさんだよもん:01/11/13 21:10 ID:XJOMSWso
>>359
葉鍵のSSスレはよく分からないのですが、聖戦を元としたら聖戦を知らない人も多いと思うので、どうしたら聖戦を知らない人にも楽しませることが出来るか、だと私的には思います。
もし、続けていく構想があるならこのスレにでも良いと思うし、新しいスレを立てるのも悪くはないと思っています。
そのときは>>2にあるようなリンクもすべてはいらないと思うし、煽り文も聖戦読者に限定しないようなものがいいとも感じられます。
新規の書き手さん、それに読み手さん、みんなでマターリできるようなスレになればいいな、ですね。
こういうことはやはり他の人の意見も訊いてみたいです。もちろん書き手さん限定になる必要もないですよね。
皆さんでやってきた聖戦です。ときどきレスしてくれる『頑張って』の言葉に励まされてきたのですから。
自分が言えた筋合いではないかも知れませんが、ああ、偉そうなこと言ってるな、と思いケーブルで逝ってきます。

>>360
そこはかとなく、おちけつだよもん。
362名無しさんだよもん:01/11/13 21:13 ID:XJOMSWso
改行無茶苦茶ですまん。あとageた方がいいのだろうけどsageてしまう。
これもクセですなぁ。
363360:01/11/13 21:31 ID:ueU6BtwA
>361
うむ、あまりのことに混乱していたようであり
すまないである、と語り部っぽく言ってみる。
364名無しさんだよもん:01/11/14 10:14 ID:9qgGOi0g
>>363
混乱させてしまって申し訳ないです。
いや、設定がいいものだから、このまま終わりは一寸もったいないかな、と思って……暴走スマソ
>>361
SSスレもそうですけど、自分が考えたのはSSトレーニングルームの方です。
ややこしい略し方してゴメソ↓

http://hakagi.net/ss/

ああ、なんか謝る事ばっかり…逝ってくる
365名無しさんだよもん:01/11/14 17:32 ID:RsjXxJqB
>>364
わっ。SSトレーニングルームなんて知らなかったよ。
ここならdat落ちもないし、いいかも。
366長瀬なんだよもん…:01/11/14 18:55 ID:9qgGOi0g
よかったら、続きのお話どうするかで、意見キボーン
お願い…
367名無しさんだよもん:01/11/15 01:12 ID:jADdJ+61
>長瀬なんだよもんさん
やってもいいんじゃないんですかねぇ。
ていうか、その続きのお話の掲載キボーン。
368名無しさんだよもん:01/11/15 16:08 ID:fs7cHVfb
>>366
新スレを立てるかSSトレの方でいいんじゃないでしょうか?

スレのメリットは他の参加者が募れるところ。
デメリットはdat落ちするかも。
トレのメリットはゆっくりと自分のペースで書けるところ。dat落ちも無い。
デメリットは書き手がひとりであること。

聖戦の続きを書くことに異論は無いようだし後は長瀬なんだよもんさん次第だと思う。
369名無しさんだよもん:01/11/15 16:36 ID:Y+IXgqHV
メンテ
370長瀬なんだよもん:01/11/16 15:37 ID:OJh6h+Xa
>>368
ご意見ありがとうございます。
実際方向性があいまいで参加しづらいスレになりそうなので、SSトレーニングルームかどこかに
逝ってこようと思います。
自分も書きたいからスレにせいや!という人、ありましたら(たぶんいないと思うが)
言ってくださいませ。
371名無しさんだよもん:01/11/18 13:26 ID:81B+IWxL
メンテ。
372名無しさんだよもん:01/11/19 19:09 ID:cQScF2At
メンテしてみる…
トレーニングルームだと小出しで書けないんですよね…シマッタ…
373名無しさんだよもん:01/11/20 23:22 ID:YVPUU4G+
おっ。dat落ちしていない。これも奇跡か。
374名無しさんだよもん:01/11/21 10:47 ID:cFuIyudu
ううむ、このままメンテし続けるべきか…?
残しておきたい気もする。
375名無しさんだよもん:01/11/23 21:50 ID:mhZ3GQ4/
メンテしておくか。
376名無しさんだよもん:01/11/25 14:55 ID:PUdsRwjV
更にメンテ
377名無しさんだよもん:01/11/26 15:53 ID:9wxZgTwB
まぁ、メンテだな。
378名無しさんだよもん:01/11/28 11:32 ID:A+Miq6/C
メンテ
379名無しさんだよもん:01/11/29 10:49 ID:n9vns7sa
メンテし続けることに意味はあるんでしょうか。
380名無しさんだよもん:01/11/30 17:25 ID:gwYOu+0G
葉鍵聖戦あふたー、ようやく最初の方だけ、書き終えました。
場所は、SSトレーニングルーム、企画用の方です。

待っていた方(居るのか…?)遅れてすいません。
381名無しさんだよもん:01/11/30 23:12 ID:EKjNYug2
>>380
うい。ここに約一名ほど居ます。
そんな私も言うは易しということで、『どうしたら聖戦を知らない人にも楽しませることが出来るか』
をモットーに『外伝』を最萌で出してみたのですが、どうも芳しくなかったみたいです(笑。
まあ、マターリしていたからこそ書いてみたんですけど、聖戦の評判を落としたかな、とちょっと心配ですね。
そんな訳もありまして、是非とも>>380さんにはがんばって頂きたいですよ。
掲載されたら読ませて頂きます。
382名無しさんだよもん:01/12/02 06:32 ID:SOU+xibG
メンテ
最初から読むとどれくらいかかるんだろ。
383名無しさんだよもん:01/12/03 17:51 ID:YGkDc9RO
聖戦の最初から?
2時間以上かかるかもね……
途中経過とか時々入るから、そこから読み進めるのもいいかもね。
384名無しさんだよもん:01/12/03 19:20 ID:CUVZMGer
読むの早い人でも、丸一日は掛かりそう……。
いや俺が遅いのか……。
385名無しさんだよもん:01/12/04 13:37 ID:Q7XIxMMW
実際、自分は最初は、2ndの頭から読み始めたよ。
それで、途中でいないキャラとか、気になるキャラだけ、戻って足跡をたどったり(w
まぁ、ハカロワもこれも、かなり長い話だからね…
386長瀬なんだよもん:01/12/05 10:50 ID:g+X3KS5g
密かにメンテ
387名無しさんだよもん:01/12/06 01:00 ID:jKo0E0mw
なにこれ?ハカロワ以外にもこんなのやってたんかい
388名無しさんだよもん:01/12/06 23:22 ID:wXIJkTCA
>>387
読んで貰えたら嬉しいです。きっと楽しいと思いますよ。
389名無しさんだよもん:01/12/06 23:45 ID:cJJt1EqF
今日も今日とて最下層チェック。

葉鍵聖戦ねえ……存在だけは知ってたけど。
ま、これも何かの縁だと思って読んでみるべきなんだろうか、むぅ。
390名無しさんだよもん:01/12/07 00:44 ID:ZVYKk/wF
>388
どういうものか教えてクレイ
391名無しさんだよもん:01/12/07 01:22 ID:QVwyrn7l
うんこなげまくり
392名無しさんだよもん:01/12/07 01:27 ID:ZVYKk/wF
>391
なるほど、うんこなげまくりなストーリーですか。
393長瀬なんだよもん:01/12/07 01:39 ID:IYMllrU+
なんでアゲ荒らしが……
>>390
葉鍵聖戦は、葉鍵キャラがオリジナル設定で暴れまくる伝奇風リレーSSです。
ダイジェスト↓

雪の降る街に、多くの力ある者達が集まってくる。
聖戦と呼ばれる戦いの幕は、高野山の術士、天野美汐が、妖狐・沢渡真琴を見つけた所から始まる。
美汐は、ハンターとして真琴を倒すことを目論むが、邪術士・水瀬秋子の家に住んでいた真琴は、今までの妖狐ではなく、九尾と呼ばれる最強の妖怪であることに気付く。
美汐は、真琴を倒すべく、力ある者達に連絡を取り、彼らを呼び寄せる。
時を同じくして、浩之と駆け落ちした綾香、彼女らを追う芹香にあかり達、要請を受けた柏木家やFARGO連、事態を収拾しようとする長瀬一派が、何かに導かれるように集まってくる。
真琴VS美汐を核として、いくつもの戦いが繰り広げられる。
強大な妖狐・九尾真琴に対抗するべく、美汐は高野山の最大の禁忌、翼人『神奈』をその身に宿す。
その反逆行為に、一時期高野山は美汐の殺害を企て、親友の茜を監視役に送り出すが、その後高野山は何者かによって壊滅する。
この頃から、いわゆる“三強”が事態の中心に浮き彫りになってくる。
最強の邪術士で、事態を傍観する水瀬秋子、美汐との決着を望む、九尾真琴、そして『神奈』の力を手に入れた天野美汐である。
全ての符号がそろい、美汐と真琴の戦いが始まった。
初め、真琴が戦いを優位に進めていたが、美汐が、もう一つの人格にその身体を明け渡すと、戦闘は互角になる。
一方で、真琴と美汐の戦いを止めるべく、留美、繭、みさきは独自に動き出していた。
次元修正能力者として覚醒した浩之、負を収めるパンドラの箱の力でもって、真琴と美汐の力を封じ、戦いは終りを告げたかに見えた。
だが、悲劇は終わらなかった。“彼女”の真意。それは、秋子、雪見によって予言されていた、裏切り者の符号だった。
パンドラの箱は再び開かれ、相沢祐一に憑依した折原浩平の意志の元、“彼女”はその命を捧げる。
折原浩平の望み。それは、月……MOONの意志により、永遠を降臨させ、世界を終わらせる事だった。
翼人の翼、妖狐の尾、人間の負を取りこんだ『翼神獣』“みちる”の圧倒的な力に、
誰もが希望を失いかけたその時……

…こんな話です。
394名無しさんだよもん:01/12/07 02:00 ID:ZVYKk/wF
なるほど、白面の者と妖・人連合軍の戦いですか。サンクスです。
395名無しさんだよもん:01/12/07 02:52 ID:rKv8eECG
終盤メインが鍵キャラ主導の話になって葉キャラは完全に脇にされていたよな。
耕一とか最後まで気失ってるし。
>>393のダイジェストでも葉で個人名出てるの四人だけだーよ(w
にもかかわらず志保が最後まで頑張ってたのは凄かった、感動した。
ま、次の機会があったら鍵キャラだけで殺し合いさせてなさいってこった。
396名無しさんだよもん:01/12/07 11:14 ID:kCIzzJDY
それに聖戦にはスレッドレイプの前科もあったなぁ
397名無しさんだよもん:01/12/07 14:16 ID:gDT8ydD6
>>395
始めの方で葉のキャラは潰しあいしてたからね。

>>396
初代スレのこと? そうじゃなかったら詳細キボーン。
398名無しさんだよもん:01/12/07 15:08 ID:rZCzSZRd
>>395
鍵のメインキャラは、確固たる目的があったからね。
元々、舞台がKanonだったし、葉キャラは後から付いてきた感じだったから。

……そういえば、ゴッドハンドなんてのもいたなぁ(w
399名無しさんだよもん:01/12/07 16:02 ID:UUssMVLO
>>397
初代スレのことだね。
まぁ、あれはスレッドレイプというか一部の住人追い出しというか・・・。
400名無しさんだよもん:01/12/07 19:57 ID:V76HCjOh
>>400
『なげやりな葉鍵キャラの日記』として引き継がれたみたいだけど、
やはり聖戦の方が引っ越すべきだったよな。今更だが。
401名無しさんだよもん:01/12/07 20:35 ID:V76HCjOh
自分に言ってる……鬱だ。399の間違いです。
402長瀬なんだよもん:01/12/07 23:39 ID:ArlQOjF2
なげやりな葉鍵キャラの一日は、今も何とかやってるみたいだ(w
403名無しさんだよもん:01/12/09 04:25 ID:OSbeCv9G
そういや何で聖戦なわけ?
404名無しさんだよもん:01/12/09 06:23 ID:xcu9GPmw
で、郁未は結局どうなったんだっけ?
あと彩とか柳川とか貴之とかも。

しかしこのシリーズの凄いところは、清水夏来のキャラを見事に立たせたことと思われ。
設定を織り込みつつ、萎えキャラから燃え的参謀キャラに変換させたのは驚愕。
というか萌えた。あと、俺口調のスフィーも新たな魅力って感じで萌え。
405名無しさんだよもん:01/12/09 23:28 ID:ezuhWfEH
                                    
406名無しさんだよもん:01/12/10 02:35 ID:OTVPCTj6
メンテまんありがとう!
407名無しさんだよもん:01/12/10 02:43 ID:rSJwvjqB
でも何かdat落ちしたスレの住人のこと考えると
終わった企画のこのスレが残ってることに少々罪悪感が・・・。
408名無しさんだよもん:01/12/10 10:51 ID:X3cJtc5r
うわ、残ってるよこのスレ(苦笑
まあいいや、聖戦をマターリ語り続けて、1000まで逝こうか。

俺もスフィーの俺言葉には、ちょっと萌え。
ていうか、まじあんしたことなかったから、あれがゲームでも本性だと思ってた(w
409名無しさんだよもん:01/12/12 10:40 ID:7QK8FDAx
めんてしておくか
410名無しさんだよもん:01/12/14 11:50 ID:WIZRuZk8
もう少しだけ免停。
411名無しさんだよもん:01/12/15 19:44 ID:6qsfcU8Y
今更ながら>>303-309を読んでから>>6-7を読み返すと良いかもしれないと言ってみるテスト。
412名無しさんだよもん:01/12/15 23:10 ID:xw9SA/ho
>>411
気付いてなかった……鬱。
そうか、そういうことだったのか!
413名無しさんだよもん:01/12/17 17:32 ID:5kZjqM36
こっそりメンテ。
414名無しさんだよもん:01/12/18 17:59 ID:DiRJskdY
まだメンテ。
415名無しさんだよもん:01/12/19 18:18 ID:Ge8ViwD+
告知age〜
葉鍵聖戦SECOND GENERATIONの#2を書きました。
遅くなったけど、どうか見てやってください。
次はもう少し早く書きます。うぐぅ。
416名無しさんだよもん:01/12/19 18:57 ID:IARx7/0Q
葉鍵住人のキチガイっぷりが分かった。
417名無しさんだよもん:01/12/20 06:45 ID:1KrmpkZI
>>415
あ〜ちみちみ、その2ndってのは何処で見れるのかね?
素人の私にもわかるよう教えてくれんかね、つーか教えてくだちい。
418名無しさんだよもん:01/12/20 14:31 ID:2qJANzIm
>417
ここだね。↓
http://hakagi.net/ss/event/index.cgi?action=html2&key=20011222041415
つーかこの話って誰が主人公だったの?
途中までは美汐タンだと思ってたけど、
何時の間にか単なる脇役女子校生になってたもんなぁ。
419名無しさんだよもん:01/12/21 01:19 ID:nMNU1fYg
>>418
ハカロワと同じで、書き手さんが複数居たために、それぞれヒイキのキャラがメインになってました(w
だから、事実上、主人公不在みたいなもんです。
あえて言うなら、全員が主人公でした。
420名無しさんだよもん:01/12/21 15:15 ID:QCZTC78L
もう聖戦が終わって一ヶ月以上も経ったのか。
昨年の今ごろは夢中になって書きまくっていたよな。
いやはや、懐かしい。

>>403
初代スレで次スレのタイトル案を訊いた時、いくつか上がった中で『これでいいんじゃない?』
との住人の声で『葉鍵聖戦』と相成りました。

>>404
郁未は舞との戦いに敗れて戦線離脱です。二代目スレの247を参考のこと。
それからコリンやリアンと一緒に北の街の外にいた。彩もリアンと一緒に最後まで活躍してました。
柳川と貴之は残念ながら死亡です。参照は三代目スレの『悲しい結末』より以下です。
死亡確定は四代目スレの176です。でも、これってすっごく分かりにくいですよね。
あの頃は、『書き手ってもしかして二人くらいしかいないんじゃないのか?』との恐怖もあって、
早めに重要人物以外は、ささっと出番を減らしたかったんですよ。すみません。
スフィーについては同意です。惚れました。書き手さんすごいです。

>>407
同意ですね。せめてあと、500スレは続くようなネタでもあったらいいんですけど……。
スレの趣旨に合わせると、聖戦についての雑談くらい? >>408さんも同意してくれるかな?

>>411
全然らしくないですねー。リレー小説でこの伏線は反則だよなー。
ちなみに『私の名前のような浜辺』とは、やはり『ナギサ』になるのかな。
外伝で御影すばるも出したことだし、これで一応主要キャラは一通り出せたかな?
421名無しさんだよもん:01/12/21 15:17 ID:QCZTC78L
あ、1レス越えちゃったよ……。

>>415
拝見致しております。感想はそちらに。
ちょっと言葉不足だったかも知れないけど……。

>>416
煽りかどうかようわからんなー。
まあ、書いてる時は、思考の低下できちっぽくなったことは否定しないけど。

>>418
ひとり、ワンシーンの見せ場があったら、誰でも主役になれるかと。
影の主役だったら、『清水なつき』と『スフィー』、あと『椎名繭』を推薦したいです。
でも『美汐』は主役級のキャラクターだったと思いますよ。
美汐が脇役だったら、他の脇役は……。
九尾との戦いで終わりだったら、間違いなく主役を張れてたんですけど、
もしかして、功罪かな……。

>>419
激しく同意です。


ああ、聖戦か……終わってみると、やっぱり寂しい……。
恥さらしだろうけど、もう少しだけ、この世界に浸っていたいみたいです。
422名無しさんだよもん:01/12/22 00:00 ID:vObhfKDR
>>420
ハカロワにも感想スレがあるし、スレの再利用だから雑談してもいいんじゃないでしょうかね?
って、自分だけが決める事じゃないんで(w
<<雑談OK>>に一票(w

聖戦で印象に残っている場面は、やっぱり真琴vs美汐でしょうかね……

>>418
最後に気絶した後、美汐を途中で復活させなかったので、そのまま影が薄くなって…(w
あれ、精神世界で、美汐を神奈が過去の世界(永遠)を案内し、その中で誤解をといて、
心の成長を遂げる、ってストーリーを考えてたんですけど、その前に現実が
ややこしくなってて、結局入れる隙間がなくて没に(w

あれは少し残念でしたね…きっと書き手さんの皆さんも、そういった没ストーリーを
沢山抱えていらっしゃるのでしょう………(w
423名無しさんだよもん:01/12/22 18:34 ID:hV7l1Y2Y
そんな貴方たちに・・・
美汐たん@葉鍵聖戦バージョン
http://www.chuchan.com/pony/cgi-bin/img-box/img20011222181945.jpg

(;´Д`)ハァハァしてしまった俺をそのお札で楽にしておくれ。
424名無しさんだよもん:01/12/22 23:02 ID:x06YZ/+X
>>423
おお……こんなのがあるとは。
ハカロワは結構イメージ画像あるのに、聖戦は知名度低いせいか無かったんだよね。
名シーンとかかなりあったのに。
>423(゚∀゚)イイ!
425名無しさんだよもん:01/12/23 12:00 ID:0/2r9Adm
>>423
マジで聖戦の描き下ろし? だったらすごい。

>>424
ほんと、聖戦ってマイナーなんだよね。
まあ、始めのスレはあれだし、人を選ぶんだろうけど。

誰か初代スレだけ、リニューアルしてくれないかな……。
426名無しさんだよもん:01/12/23 20:49 ID:XJXTnf+2
>>425
オレは過去ログの途中から見始めて遡っていった。
たしかに、初代はリニューアルして欲しいな。でも、そしたら違う話になるんじゃない?
427名無しさんだよもん:01/12/24 01:53 ID:70nagHrI
>>426
初代って、邪悪な葉鍵キャラの日記?
でもあれって、なげやりな葉鍵キャラの一日もあるしねぇ……
428名無しさんだよもん:01/12/24 02:02 ID:8CqopQTw
>>427
多分そうだろうね。<初代スレ

こういう事を言うのも何だが、このスレを初代スレリニュアル用に使ってみては?
429名無しさんだよもん:01/12/24 12:20 ID:ifuok+60
>>427
その混じってるところを何とか上手く纏められたら、と思う。
はっきり言って、初代スレで読み手の大半は選別されてると思うから。
そこがマイナーな理由でもある。ロワイヤルの方はちゃんとやるべくしてやってたしね。
いや問題として単に面白くない、との感想もあるのだろうけど……。

>>428
やや同意。
このスレで方向性は示したい。いける、と判断したら新スレ立てるのも悪くないかと思う。

ただ、肝心なのが職人さんの問題だねー。誰かやってくれないかな。
本当は人任せって駄目なんだろうけど、これっばっかしはどうにもならん。
430駄スレ管財人:01/12/26 21:03 ID:oELU8Km/
最下層に潜入
431名無しさんだよもん:01/12/26 21:13 ID:ee6U83ST
さくら!コソーリ最下層にカキコなんかしないもォォォォン!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄          パンチラゲットですわ〜
                            ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ,   _ ノ)                        ---
  γ∞γ~  \    ホエー                  γ====  ヽ   ハニャーソ♪
  |  / 从从) ) ヘノ)                 |_|||_||_||_| |  \ヘ
  ヽ | | l  l |〃  \          (´´     __||ー. ー |) ゞ / \          (´´
  `从ハ~_ーノ)  ヾ /      (´⌒(´      |0.ハ ワ ~ノ| ヽ ___ /      (´⌒(´
   ⊂ >< /⊂ __/つ≡≡≡(´⌒;;;;≡≡≡  └⊂ >< /⊂ _」__/つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
              (´⌒(´⌒;;                    (´⌒(´⌒;;
      ズザーーーーーッ                    ズザザーーーーーッ
  , -、  , -、
  じ, '⌒ヽソ
   ! ゚д゚ノ      
  ΣU  ⊃ 
432名無しさんだよもん:01/12/26 21:27 ID:Ad5iVYkv
最下層やもん
433名無しさんだよもん:01/12/26 22:07 ID:1lFVl3Sm
最下層。。来たよ。。ここに。。
434名無しさんだよもん
最下層に来たとたんにカキコ連打かよオイ!
悔しいから上げてやる。