弥生さん@篠塚

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424セルゲイ@D
そして、現在の弥生さんへ。(ゲーム本編画像)
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そして、差し出された弥生さんの白い両腕が俺を不意に包み込む。
髪の間から、かすかな香りがした。

冬弥「弥生さん…?」
まるで嫌がる素振りも見せずに俺は言った。
だけど弥生さんは何も答えない。
ただ切なげな、それでもやっぱり温度の感じられない吐息が俺の首筋を撫でる。
冬弥「弥生さん…」
それでも彼女は何も言わない。
ただただ必死に俺を抱きしめるだけだった。
冬弥「はは…。今日は…キスはしてくれないんですね…?」
不謹慎だとは思えたけど、だけど、何故だか今はこんな冗談を言うのがふさわしく思えた。
弥生「ええ…」
少しかすれた声で弥生さんは答える。
弥生「だって…私は、藤井さんを愛しておりませんもの…」
冬弥「そうですよね…」
判ってる。
痛いほどに、すごく。
弥生「…私が藤井さんを愛してしまったら…
由綺さんが、苦しみます…。ですから…」
冬弥「…………」
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425セルゲイ@D:01/12/09 10:43 ID:x9Bnjh4y
そう…。
全部判ってたよ…。
弥生「ですから、私は決して…藤井さんを愛しません…」
そして再び、弥生さんは俺をきつく抱きしめ、そして深く深く吐息した。
哀しいけど、その通りだから。
いや、哀しくなんかない。
弥生さんが俺を愛さないみたいに、俺もそのことを哀しくなんて思わない。
俺達は等しく、同じ罪から逃れなきゃいけないんだから…。
だから、だったら…。
冬弥「だったら…俺を離さなきゃ…」
哀しいけど、哀しくなんかないけど…。
だけど弥生さんは何も言わない。
ただ静かに吐息するだけだ。
静かに、とても静かに。
そして俺達、決して相手を愛してなんかいない俺達は静かに抱き合った。
最後の抱擁を、いつまでも味わった。
交わした言葉が、哀しい嘘になってしまう寸前までに。

                           (テキストも本編より)