弥生さん@篠塚

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414弥生さん支援

弥生「藤井さん、おはようございます」
冬弥「・・・ん、あれ、なんで弥生さんが?」
弥生「あの情事の後、藤井さんは寝てしまわれました」
弥生「途中で安眠を妨げるのも由綺さんへの仕事に差し支えると思いまして、そのままにしておきました」
冬弥「そのままって、これシングルベットだよね。じゃあ・・・」
弥生「はい、僭越ながら藤井さんのかわいらしい寝顔を隣で拝見させていただきました」
ワイシャツの第二ボタンまで外し、窮屈そうな胸が半分はだけている弥生さんは温度のない笑みをこぼす。
冬弥「(う、うわ・・・弥生さん。ノ、ノーブラだ)」
弥生「藤井さん」
冬弥「は、はいぃ!」
弥生「朝食の時間です、藤井さんの分もございます、よろしければ召し上がってください」
冬弥「ふぇ?」
素っ頓狂な声を上げ弥生さんの部屋を見回すと、
広いテーブルにこれぞ日本朝食メニューだと言わんばかりの和食が載っていた。
てっきり、弥生さんはパンとコーヒのブレックファーストに違いないという先入観あっただけに少々驚いた。
テーブルには翡翠の釉薬がかかった味わいのある平皿に乗る鮭の切り身と厚焼き玉子。
そして、頭に鰹節を化粧されたほうれん草のおひたしにはその先端である赤い部分まで使われており、緑と赤の綺麗なコントラストを浮べ、
菊の花をあしらった青磁の小鉢には、鰹節の餡がかかった絹ごし豆腐。
また、花鳥の器には色とりどりの野菜が詰め込まれた煮しめがなんともいえない香りを放出し、
部屋一面に広がる、食欲を誘う味噌汁の香りと共に絶妙なハーモニーを奏でていた。
415弥生さん支援:01/12/09 10:31 ID:JEgh8Vcl

弥生「藤井さん、どうそ御飯です」
冬弥「は、はい」
炭水化物の甘い香り漂わす、ほかほかごはんが弥生さんの白い手から手渡される。
冬弥「じゃ、じゃあいただきます」
弥生「・・・・・・・・・」
そして、俺と弥生さんだけの奇妙な朝食がはじまった。
冬弥「あ、この味噌汁おいしい・・・豆腐も小さく切られてるし、それに三つ葉がいい食感と風味を出して・・・あと・・・」
冬弥「なんて、言ったらいいのかな、ダシが薄味なんだけとしっかり取れてるって言うか・・・」
弥生「それは引き出し昆布という手法を使っています」
弥生「また、大量の鰹節を沸騰した湯に入れひとたちした所で取り出すと、魚臭さが出ずしっかりとしたダシを取ることができます」
冬弥「へ、へぇ・・・弥生さん、すごいね」
弥生「いえ、それほどでも。学生時代とある料亭で修行しただけですから」
弥生「また、このほうれん草のおひたしですが、とある僧侶が・・・」
416弥生さん支援:01/12/09 10:32 ID:JEgh8Vcl

冬弥「ご、ご馳走様でした」
俺はぱんぱんに膨れたお腹をおさえテーブルに突っ伏した。
いや、お腹だけではなく、今の俺の頭は弥生さんの料理のうんちくで破裂しそうだった。
だって、弥生さんたら食事開始から終りまで料理を取るたび、あの顔で逐一解説するんだもん。
でも、意外な一面が見れて、ちょっと得した気分だ。
弥生「多少、長舌になってしまいましたわ。申し訳ございません」
冬弥「い、いえ。いろいろと堪能させていただきました」
弥生「はい、藤井さん。お茶です」
冬弥「あ、どうも」
ずずぅ・・・
弥生「・・・・・・・・・」
冬弥「・・・・・・・・・」
テーブルを挟んで、弥生さんと共にお茶をすする。
なんていうか、これだけで幸せな気分になってしまう。
そう、まるで・・・
弥生「藤井さん、こうしていますとまるで夫婦みたいですわね」
冬弥「そ、そうですか?」
弥生「冗談ですわ」
いつもと同じく空気で温度で弥生さんはお茶を口に含む。
冬弥「そ、そうですよね」
今、鏡を除いたら、俺はいったいどんな顔をしているんだろう?
417弥生さん支援:01/12/09 10:33 ID:JEgh8Vcl

弥生「藤井さん、私はこれからシャワーを浴びますけど。先に入りますか?」
冬弥「え゛・・・シャ、シャワーですか?」
弥生「はい、何か不都合でも?」
俺の心を見透かすように、弥生さんは口元を上げて小首を傾げる。
冬弥「い、いえ・・・じゃあ、先に入らしていただきます」
そして、少し前かがみにすこすこと風呂場に向かおうとすると
弥生「よろしければ、私も御一緒しましょうか?」
(ピキッ!)
弥生さんの思わぬ発言に、俺は中腰の姿勢で固まってしまった・・・
俺はブリキのおもちゃのようにギギギッっと首を軋ませ弥生さんの方を振り返ると、弥生さんはくすりと笑って
弥生「冗談ですわ」
そう、目を細めた。


そして、その日俺は風呂場から一時間以上出れなかった・・・


                                          (おわる)