弥生さん@篠塚

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408篠塚弥生@入場
…コン、コン…
「…はい?」
「由綺です!森川です!森川由綺です!」
「…ゆ〜きぃ〜、なんで由綺が緊張しなくちゃいけないの?」
「だ、だって、今日弥生さんの試合なんだよ!今日なんだよ!」
「…だから」
思わず俺は苦笑した。由綺は相当パニックに陥っているみたいだ。
「…ふふふ、藤井さんも御一緒ですか?どうぞ」
…ガチャッ
「弥生さぁ〜ん!今日なんだよね!!」
由綺の顔が突然歪み、弥生さんに向かって走り出す。
「…とうとうきてしまいましたわね。この日が…」
弥生さんはク−ルに微笑み、そしてパニックに陥っている由綺を柔らかく抱き止める。
「…どっちが試合に出るんだか…」
つい、ひとり事が出て苦笑してしまう。
「…………」
弥生さんは、由綺を抱きしめたまま微笑んでいた。
「…………」
弥生さんは微笑んでいた。由綺から緊張で歪んだ顔が、笑顔に変わっていく。
そして、ひまわりのような満面な笑み。
「…弥生さん、頑張って!」
「…はい」
…2人で微笑んでいた。時間が止まったかのように…
本当に強い信頼関係ができてるんだよな。
きっと俺が…踏み込むことが許されないない…領域…なのかもしれない。
<続>
409篠塚弥生@入場:01/12/09 10:24 ID:x9Bnjh4y
<続>
「ほら、由綺、これ」
「あっ、そうだ、忘れてた。弥生さんにプレゼントがあるの」
「…えっ、私に…ですか?」
「うん!開けてみて♪」
由綺は、大きな包みを弥生さんに渡す。
「…さて、何でしょうか…」
…ガサガサ、ガサガサ……ガサッ…
「……千羽鶴、ですね…」
弥生さんの笑顔が固まった。
「…うんっ!弥生さんの健闘を祈って、私と冬弥君で作ったの」
「………」
「…あはは、私も冬弥君も折り紙が下手だから…でも…一生懸命作ったの」
俺は、黙って頷いた。
「………」
「…私はもう、試合に負けちゃったから。…で、でも」
…自嘲ぎみに由綺が笑った。
「………」
「…でも、弥生さんには…」
…由綺は、下唇を噛み後の言葉が繋がらない…。
…………。
「……ありがとう…ございます」

…弥生さんは笑顔を取り戻し…
弥生さんから一滴の宝石が流れ落ちた…
<続>
410篠塚弥生@入場:01/12/09 10:25 ID:x9Bnjh4y
<続>
「…では藤井さん、由綺さんをお願いします」
俺は大きく頷き
「はい!健闘を祈ります!」

「…では、いきます」
手には、俺と由綺の作った千羽鶴を…
心には、由綺と培った信頼を…

…そして彼女は会場に姿を消していった…

篠塚弥生入場!