SS統合スレ#6

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386闇野神殿

九品仏、襲来

 「さようならっ!」
 「聴いて・・・・・・ください!」
 「みんな・・・・・・スキだったみんな、愛してるあの人、それに・・・・・・」

 「本当のあたし!」

 ・・・・・・あれから数ヶ月が過ぎた。俺の名は千堂和樹。
かつて同人作家をしていた元大学生だ。今では・・・・・・
「あ、あの、か、和樹さん、お昼、できましたよ。」
「ありがとう、あさひ。今行くよ。」
セーブ、セーブ・・・と、ほいっ。
『・・・それじゃ、次もこの時間に、マジーン・ゴー!』
ポチッとな。ゲーム機の電源をOFFにする。
 そう。俺はあれから、あさひとともに暮らしている。
 逃げるように離れたあの街だったが、人のうわさも何とやら。
次第にあの事件も忘れられ・・・まあ、あの直後に、いくつもの事件が続けて起こったせいもあるのだろうが・・・
(念のため言っておくが、俺達の一件とも、この話とも無関係だ。)
少しばかり離れたこの街で、アパート暮らしをしているのが、あの桜井あさひだなんて、誰も気づいていないようであった。
387闇野神殿:01/11/15 23:23 ID:7yNsfKr7
もちろん、俺達も無防備に暮らしているわけではないのだが。
 だが、もちろん、俺達のことが、まだ完全に忘れられてはいない世界もある。
言うまでも無く、アニメ界、そして、同人界だ。
とくに、アニメ界から、桜井あさひの名前が消え去ってしまうことなど無いだろう。
・・・それほどのものを、あさひは、アニメ界と、そのファンの心に残して、―それも劇的なかたちで―去ったのだ。
 それを思うと、やはり一抹の罪悪感が胸中をよぎるのも、仕方の無いことかもしれない。
あさひはあさひで、俺がマンガを描くのをやめた―やめざるをえなかった―のをやはり、気に病んでいるようだった。
もちろん、それはまず何よりも、生活のためなのだが・・・・・・
だが、やはり、あのような事件を引き起こして去った俺が、今更、こみパにもどることなど出来ないと思ったからだ。
 それに、仲間たち―世話になった人達―にほとんど何も告げずに去ったのだ。
今になって、彼ら、彼女らを頼るわけにも・・・もちろん、みんなは、俺達を再び暖かく迎え入れてくれるだろう・・・
しかし、だからこそ、そんなみんなを捨てていった俺が、みんなを都合良く頼るなんて事はできないのだ。
「ど、どしたんですか、和樹さん?」
 おっと、いけない、暗い顔をみせてしまったようだ。
388闇野神殿:01/11/15 23:26 ID:7yNsfKr7
「何でもないよ、いや〜、今やってるマップのボスが手ごわくてね。」
「くすくす・・・和樹さんったら・・・」
 それでも、何とか生活できているのは・・・恥ずかしながら、そう、編集長のおかげだった。
あの後、いくつかのバイトを転々とし
―1年間の同人活動で貯めた貯金はあったが、いつまでもそれでは持つわけがないし、それに―
幾つ目かのバイト先で、編集長に偶然出会ってしまったのだ。
そして編集長は、何も聞かず―事情は知っているようだったが―俺に、仕事を依頼してくれたのだ。
もちろん、マンガではなく、編集の手伝いや、カット描き
―もちろん、絵柄もペンネームも変えて―
など、あまり表に出過ぎないようなかたちで。
 おかげで、たまの・・・本当にたまの、だが。休日には、こうしてゲームなどしてもいられるようにもなったのだ。
もちろん、あさひのことを放っておくなんてことはしないが・・・だって・・・
389闇野神殿:01/11/15 23:27 ID:7yNsfKr7
 ピンポ〜ン
「あ・・・誰かきましたよ。」
「・・・俺がでるよ。」
そう、まだ油断は出来ない。
「千堂和樹さんですか?」
「はい、そうですが・・・」
やってきたのは、実直そうな男性だった。もちろん、知らない顔だ。
「失礼ですが・・・桜井あさひさんは、ご在宅でしょうか?」
「!!」
 ついにやって来たのか!?
「あ、そんなに硬くならなくても結構ですよ、私、こういう者です・・・」
 思わずこっちもつられてしまいそうな笑顔で名刺を差し出す。
「あ、ど、どうも・・・」
 つられるように名刺を受け取る。
 名刺には、ゲーム会社の―おいおい、こりゃ、今やってるゲームの―名前が入っていた。
それに、男の名前。
「あ・・・し、白河さん・・・?」
後ろから顔を出してきたあさひが、男の名を呼んでいた。
「どうも、お久しぶりです、あさひさん。」
「し・・・知ってるのか?あさひ。」
「え、えと・・・ま、前にげーむのお仕事で・・・で、でも、ど、どして、ここが?」
 そうだ。一体、なぜ・・・編集長が漏らしたとは思えないし・・・
390闇野神殿:01/11/15 23:30 ID:7yNsfKr7
「ふはははははっ、久しいな、同志、和樹っ!!」
 だああああああああああああああっ!!
き、貴様かっ、九品仏大志っっっ!!
「と、とにかく、中へ入れっ!近所迷惑だっ!」
 あわてて思わず大志と白河さんを中へ招き入れる。
「ふ・・・近所迷惑とは、心外だな、まいぶらざー。」
 等と抜かしよるが、貴様は存在自体が近所迷惑じゃい。しかし・・・
(・・・思わず中に入れてしまった・・・)
「ふ・・・相変わらずのお美しさ、あさひちゃんにはご機嫌麗しゅう・・・」
「あ・・・え、えとぉ・・・そ、その・・・」
「くぉらぁっ、そこ!おれのあさひに何ぬかしとるんじゃっ!!」
「か・・・和樹さん・・・・・・(ぽっ)」
「・・・・・・すみません、お話、宜しいでしょうか?」
 ・・・・・・白河さんは、困っていた・・・・・・
391闇野神殿:01/11/15 23:32 ID:7yNsfKr7
「ふはははははっ、久しいな、同志、和樹っ!!」
 だああああああああああああああっ!!
き、貴様かっ、九品仏大志っっっ!!
「と、とにかく、中へ入れっ!近所迷惑だっ!」
 あわてて思わず大志と白河さんを中へ招き入れる。
「ふ・・・近所迷惑とは、心外だな、まいぶらざー。」
 等と抜かしよるが、貴様は存在自体が近所迷惑じゃい。しかし・・・
(・・・思わず中に入れてしまった・・・)
「ふ・・・相変わらずのお美しさ、あさひちゃんにはご機嫌麗しゅう・・・」
「あ・・・え、えとぉ・・・そ、その・・・」
「くぉらぁっ、そこ!おれのあさひに何ぬかしとるんじゃっ!!」
「か・・・和樹さん・・・・・・(ぽっ)」
「・・・・・・すみません、お話、宜しいでしょうか?」
 ・・・・・・白河さんは、困っていた・・・・・・
392闇野神殿:01/11/15 23:37 ID:7yNsfKr7
鋼の同人魂!!マスターオタク西より来る!!

 ・・・・・・こほん・・・・・・
 軽く咳払いをして、白河さんは、話し始めた。
「スーパーロボット大戦というゲームは、ご存知・・・ですよね。」
 ゲーム機のそばには、当のゲームのケースが置いてあった。それをちらと見て言う。
「ええ、そりゃ、まあ。」
 控え目に言う。実際は・・・
「くすくす・・・和樹さん、暇さえあれば、やってますよね・・・」
 ・・・あさひが、思いっきりバラしてくれる・・・
「むぅ?同志和樹よ、貴様、あさひちゃんを放っておいてゲーム三昧とは言語道断!
やはりあのとき、成敗しておくべきだったか・・・!?」
「こらこら、勝手なこと言ってるんじゃねえ!俺はあさひを放っておいたことなんかねえぞ!」
「そ、そです・・・あたしも、一緒に楽しんでますから・・・だ、だいじょぶです・・・」
 本当だ。元々アニメ好きのあさひは、暇なときは俺と一緒にスパロボを楽しんでいるのだ。
・・・腕前は・・・まあ、なんだ。
393闇野神殿:01/11/15 23:40 ID:7yNsfKr7
「そ、それでは、゛秘神黙示ネクロノーム"という作品は、ご存知でしょうか?」
 俺と大志のノリに戸惑いながら(当然か・・・)白河さんが言う。
「・・・あ・・・そ、それ・・・」
 あさひが反応する。ひょっとして?
「もしかして、それが・・・?」
「そうです。今度の新作で、この作品が新規参入作品の候補になっています。
そして・・・」
「それに、あさひを出演させたい・・・と、おっしゃるんですね?」
「その通りなのだよ。まいふれんどっ!
この作品こそ、あさひちゃんが多くのアニメファンにその名を知らしめた、いわば出世作!
そして、ロボットアニメ史上不滅の金字塔でもある傑作!!それがスパロボに参戦するとなれば、
ヒロインたるあさひちゃん無くして、なにが・・・・・・・・・・」
「おっしゃることは、判りました。暫く、考えさせていただけますか・・・・・・?」
 遠くの世界へ逝ってしまった馬鹿はとりあえず前向きに無視することにして、白河さんに答える。
「・・・私、なにも話していないような気もしますが・・・
ま、まあ、話は通じているようですのでいいでしょう。
はい、もちろん結構です。元々今日はお話だけのつもりでしたから。
・・・事情も、承知しておりますし。」
「・・・ありがとうございます。」
394闇野神殿:01/11/15 23:44 ID:7yNsfKr7
 返事は後日、ということで白河さんが引き上げた後のこと。
 当然のように、大志の奴は部屋に残っていた。
「・・・・・・で、やっぱりお前が教えたんだな、ここの場所を・・・・・・しかし、どうやって調べたんだ?」
 そうだ。大志にも、この場所は教えてはいないはず。
「ふ・・・簡単なことだよ、まいだーりん。お前が以前寄越した手紙。
消印からどの辺りから出したかくらいは見当がつく。そこから先は・・・まあ、ちと苦労させられたがな。」
 ・・・・・・この男は・・・まあ、今更この位では驚くまい・・・・・
「しかぁし!だ、まいはにーよ!」
 ・・・だから、だーりんとか、はにーとかはよせ、そーゆーのは・・・
「・・・・・・・・・・・・(じーっ)」
 あ、あさひの視線が・・・・・・
「だーかーら、そーゆー呼び方はよせ、っつーとろーが!」
 すぱーん!と虚空より取り出した張り扇で大志の頭をしばき倒す。
かつての相棒より伝授された技だ。
「ふ・・・そう照れるものではない、まい兄弟よ。
そもそも我輩がここまでやって来た目的はもう一つあるのだ。
それは・・・」
 うう、猛烈に悪い予感がするのう・・・・・・
395闇野神殿:01/11/15 23:45 ID:7yNsfKr7
「同志、和樹よ、お前は、再び起つのだっ!いや、起たねばならんっっっ!!」
 やっぱり、そう来たか。しかし、俺は・・・・・・
「・・・・・・でもな、俺は、もうマンガは・・・・・・」
 そう言いかけたときだ。
 「何いうてんねん!!このボケがああっ!!」
 こ、この声はっっっ!
 ぐわっしゃあああああああああんっっっ
「なんてトコから来やがんだ、馬鹿野郎オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ・・・・・・・・・!!」
 ・・・・・・窓ガラスを蹴破って入って来やがったのは、例の、『かつての相棒』であった・・・・・・
396闇野神殿:01/11/15 23:47 ID:7yNsfKr7
デスマッチ!!甦れ我等の千堂和樹!!(嘘)

「あああああ・・・・・大家さんに何て言えとゆーのだ・・・・・」
 思わず頭を抱える俺・・・
「か、和樹さん、し、しっかりして・・・」
「ふ・・・そのような事、我らの野望の前には、ほんの些細な事にすぎん、気にするなまい同志・・・」
「せやせや、こんくらいの事でガタガタ言うようなら、こっちからおん出てやりぃ」
「・・・・・・お、お前等なぁ・・・・・・」
 相も変わらず妙に歯車の噛み合った奴等だ
・・・こいつらが揃うと性質の悪さが自乗するような気がするんだが
・・・そうそう、思えばあさひと初めて会った前の日、こいつらに『遊ばれて』えらい目にあったっけ・・・
 などと現実から目をそらしつつそんな事を考えてみたりしていたのだったが、そのような事を許している二人ではなかった。
「それより和樹、あんた、さっき、『マンガは、もう』とか言いよったな、『もう』なんやねん、言うてみい!」
 由宇―猪名川由宇、以前、俺とユニットを組んでいた神戸の同人作家だ―が詰め寄ってくる。
「そおおおおおおおおおおだっ!!同志、和樹よっ!!貴様、あの燃える魂をどこに置き忘れて来たッ!!」
 大志もいつになく激昂している。
「お前は、あのとき約束したではないか、必ず、また戻ってくると!!
今こそが、そのときなのだ、今をおいて他にはないのだ、同志よっ!!」
397闇野神殿:01/11/15 23:48 ID:7yNsfKr7
「・・・でもな、あさひのこともあるし・・・」
「ふ・・・それなら心配無用だ、まいぶらざー」
「・・・・・・え?なんだって?」
「なんだ、知らなかったのか?あさひちゃんの所属していたプロダクションな、つぶれたそうだ」
「そ、そんな、も、もしかして、あ、あたしの・・・せいで?」
 あさひが泣きそうな声で言った。
「いやいや、あさひちゃんのせいではありませんよ。
・・・まあ、きっかけにはなったのかもしれませんが、どうやら、時間の問題だったようです」
「・・・どういうことなんだ、大志?」
 大志によると、こういうことらしい。
398闇野神殿:01/11/15 23:50 ID:7yNsfKr7
 つまり、あさひの一連の事件に対して、所属する声優、タレント達から一斉に非難が挙がったそうなのだ。
以前から、プロダクションがこのような圧力をかけていることに対して反感を覚える人は多かったらしい。
その中には、やはり似たような圧力をかけられて好きな人と別れさせられた人もいたとのことだ。
 そんな不満が高まっていた上に、あさひが春こみであのような形で引退したことで、一気に爆発したらしい。
所属声優がごっそりと抜け、自分達でプロダクションを立ち上げたのだ。
必然的に、責任を取らされて社長は退陣、プロダクション自体、経営が立ち行かず倒産・・・
わずか数ヶ月の間の出来事だったという。
「結局、あまりにワンマンで強引なやり方に反感が高まっていたのだな。あさひちゃんのことがなくとも、いずれこうなっていたであろう」
399闇野神殿:01/11/15 23:51 ID:7yNsfKr7
「そ、そんなことが・・・」
 あさひも驚いたようだ。無理も無い。俺だって驚いている。
しかし、こういったことでの大志の情報網や分析は的確だ。信用してもいいだろう。
「新しいプロダクションでは、あさひちゃんに対しては同情的です。
もし連絡がついたら応援したい、もし復帰するならぜひうちで力になりたい、というのが所属声優さんたちの総意になっているようです。
ですから―あさひちゃんのことは心配ご無用ですぞ」
 大志があさひを落ち着かせるように語り掛ける。
「ちゅうこっちゃ。あとは・・・あんた次第・・・やな。」
 由宇が俺に言った。まっすぐな目だ。責めるというより、訴えかけるような眼差し・・・
「由宇・・・でも、俺は・・・」
「あんたのことや、大方、みんなに申し訳無い、とか考えてるんやろ、でもな・・・そう思うてくれてるんやったら・・・だからこそ、描いてくれへんか、マンガをな・・・」
「あ、あの・・・」
 とてとてとて・・・とあさひが引出しから数冊のノートを取り出して持ってきた。
「!! そ、それは・・・・・・」
「ご、ごめんなさい、か、和樹さん、で、でも、あ、あたし・・・や、やっぱり、あなたにマンガ、描いてほしいから・・・」
 そ、そのノートは・・・
400闇野神殿:01/11/15 23:54 ID:7yNsfKr7
「で、でも、なかは、見てないから・・・いつか、あなたがみせてくれるまでって思って・・・
ゆ、由宇さん、大志さん、こ、これ・・・和樹さんが、描き溜めてたマンガの・・・こ、コンテ、ってゆのかな・・・です」
 そうだ。やはり、俺はマンガを描くことから完全に逃げることなどできなかった。
だから、発表するあても、つもりもないコンテを、ずっと描き続けていたのだ。
しかし、これはあさひにも内緒にしていたつもりだったのに・・・気づいてたんだな・・・。
 だが・・・俺は、本当に発表するつもりはなかったのか?俺は・・・
 こうして考えているうちにも、由宇と大志はノートのページを捲ってゆく。
二人の表情が俄かに真剣味を帯びてゆくのが判る。
「同志、和樹よ・・・」
 ノートを読み終えた大志がこちらに向き直り言った。
「このマンガを・・・描いてくれまいか?」
「せや・・・うちも読みたいで、完成した・・・このマンガをな・・・」
「由宇・・・大志・・・」
「他に気兼ねなどいらん。何より、我輩が、お前のマンガのファンとしてこのマンガを読みたいのだ。
同志由宇も同じであろう。それに、素晴らしいマンガさえ描けば、周りの雑音など、すぐに、静まる」
「お前が俺のファンだったとは、初耳だな」
「そうであったか?当然、知っているものと思っていたが」
 にっ、と互いの顔に笑みが浮かぶ。
「わかった、描くよ。俺」
「そうか、描いてくれるか」
「あ、あああの、あ、あたし・・・」
 あさひが、何か決意したような表情で声をあげる。
401闇野神殿:01/11/15 23:55 ID:7yNsfKr7
「あの、あ、あたしも、さ、さっきのお仕事のおはなし・・・受けたい・・・です!」
「いいのか、あさひ?」
「は、はい。あ、あたしも、もう、逃げてちゃ、だめだって・・・そ、それに・・・あの、約束・・・守りたいから・・・」
「あの約束?」
「え、えへへ・・・な、何でもないです・・・」
「き、気になるな・・・」
「じゃ、じゃあ、和樹さんの、マンガが出来たら、教えてあげます・・・」
「お・・・それじゃ、がんばらないとね!」
「は、はい・・・(ぽっ)」
「ぅあー、暑い暑いでー」
「ふっ、最早照れもないかね、まい同志よ」
「わぁっ!」
「きゃ・・・・・・(ぽぽぽぽぽっ)」

 余談だが、その後、俺達は、ものの見事にアパートを叩き出されたのであった・・・・・・(とほほ)
402闇野神殿:01/11/15 23:56 ID:7yNsfKr7
スーパーあさひ大戦Ω(オメガ)(大嘘)

「こ、ここって・・・」
 そうだ、ここは、以前俺が住んでいたマンションじゃないか。
 アパートをおん出された後、大志に案内されて新しい住家に来てみれば・・・妙に用意がいいとは思ったが。
「やーっとかえって来たわね、バカかずき☆」
「み、瑞希・・・」
「ほら、部屋の鍵!全部、あのときのまんまだよ・・・」
「あ、ああ・・・・・・」
 鍵を受け取った俺達は部屋に向かった。そう、数ヶ月前まで、俺が住んでいたあの部屋に・・・・・・。
「あれ?開いてるぞ、鍵」
「え?そんなはず・・・あ!ひょっとして・・・」
 瑞希がドアを開けると・・・
「お帰りー、和樹☆」
 だああああああっ!!
「ゆ、由宇・・・な、何で、ここに?」
「なに言うてんねん、明日、こみパやないか。せやから、この部屋泊まらせてもろてん。いつものことやろー☆」
「い、いつものってなー、俺が住んでた頃ならともかく、どーして今いるんだよ」
「す、住んで・・・・・・と、泊まる・・・・・・?」
 し、しまった、あさひが・・・
403闇野神殿:01/11/15 23:58 ID:7yNsfKr7
「わあああああああっ、ち、違うんだ、あ、あれは、由宇が、宿泊代浮かせるために来ただけで、な、何にも無かったって!!」
「せやなー・・・なにしろ、お風呂上りのうちが、バスタオル一枚でいたって手ぇださへんかったもんなー☆」
「ば・・・・・・ばすたおる・・・・・・」
「だあああああああっ、んなことまで言わんでいい!!」
「へー・・・そぉんなことがあったワケね」
 い、いかん、このままでは、お、俺の人格が・・・
「そ、それよりだな、なんで、由宇がここにいるんだ?」
 何とか話を戻さねば。
「せやから、言うたやろ、明日、こみパやって。この部屋の家賃、一部肩代わりしとる代わりにな、こみパの前はここ使わせてもろとるんや。
ホテル代よりは安くあがっとるしな、重宝しとるで〜♪」
 なんだって?
「家賃、肩代わりだって?それって・・・」
「うむ、お前がいつ戻ってもいいようにな、我輩と、同志瑞希、同志由宇とで共同でこの部屋をそのままお前名義で借りつづけていたのだ。
家賃については心配するな、三分割したうえ、お前の残して行った在庫の同人誌を同人ショップで委託してその売上げもあわせればひとり頭の負担はかなり安く済む」
「そうだったのか・・・すまないな、みんな・・・」
「まあ、ショップの委託分もそろそろ底をつく頃ゆえ、そろそろお前に戻ってもらいたいところではあったがな」
 がく。
404闇野神殿:01/11/15 23:59 ID:7yNsfKr7
「おいおい、俺に戻って来いっていったのはこれが理由か?」
「ま、それも理由の一つではあるがな、しかし、無論、まいぶらざーとあさひちゃんの復活こそ最大の理由に決まっている。
今のおたく界にはお前とあさひちゃんがどうしても必要なのだよまい同志」
「なんか釈然としないものがあるが・・・まあ、とにかく、みんな、本当にありがとう・・・今すぐは無理だけど、肩代わりしてもらった分は、なるたけ早く返すから」
「あー、うちの分は気にせんでええで、言うたやろ、ホテル代より安くあがっとるって。それにな・・・」
 由宇が俺の耳元でささやく。
「もうすぐあさPの事で金、かかるやろ、そっちに使い」
「!」
 ま、まいったな・・・判ってたか・・・。
「あ、ああ、ありがとうな、由宇・・・」
「ちなみに、大学の方も、半年間の休学届けを出してある。もうすぐ期限だからな、復学するなら早目に準備しておくことだ」
「そ、そこまで・・・ありがたいが、よく受理してもらえたな」
 ・・・どっかの某ゲームみたいだねぇ、全く・・・。
「な、なんか、なにもかも、元通りになっちゃったみたい・・・ゆ、夢みたい・・・」
「・・・いや、なにもかも、なんてことはありえないさ・・・けど、少しづつ、取り戻していこうな、二人で・・・な」
「は、はい、和樹さん・・・」
「それにさ、新しく手に入れたものだって・・・あるだろ?」
「あ・・・・・・は、はい・・・・・・(ぽっ・・・)」
 幸せそうに、あさひが微笑む。この微笑みを守るためなら・・・なんだって出来る。今、改めて、そう思った。
405闇野神殿:01/11/16 00:02 ID:rG2pC+6q
まだ続くの!?ちゃん様さん現る

 ・・・・・・それにしても、この章タイトルの一連のネタは、一体どのくらいの人に理解してもらえるのであろうか・・・・・・
などと、どうでもいいことを考えつつ、原稿用紙に下書きのシャーペンを走らせる。
と共に、昨日のこみパでのことを思い出すと、自然に表情が和らいでいくのがわかる。そう・・・・・・

「で、明日のこみパはどないすんねん?」
 由宇が聞く。
「そうだなあ・・・一般だからなあ、午後からのんびり行くのもいいんじゃないかな?」
「あのな、良ければ・・・なんやけど、うちのサークルの売り子、ちゅうことで一緒に来いへんか?
もち、あさPも一緒にな」
「邪魔じゃないか?」
「かまへんよ、ま、新妻をこき使ったりせぇへんし、うちが席外したりするときちょこちょこっと手伝うてくれればええんや。
どや?」
「に・・・・・・新妻・・・・・・(ぽーっ・・・)」
「由宇が迷惑じゃないんなら、有難くそうさせてもらうよ」
「そっか、じゃ、決まりやな☆」
 ・・・その晩は、結局、みんなで騒いで明けてしまった。二人の邪魔はしない、という由宇だったが、
いまさらホテルもなんだし、追い出すわけにもいかないだろう、と言って引き止め、
大志や瑞希まで一緒に部屋に残って話して、騒いで、時々由宇の張り扇が閃いて・・・
もう二度と、こんな時間が過ごせるなんて思っていなかったのに・・・俺は・・・。
406闇野神殿:01/11/16 00:03 ID:rG2pC+6q
 そして、数ヶ月ぶりのこみパ当日の朝。
 あさひは、こみパに行くときは恒例の、オーバーオールに伊達眼鏡のいつものスタイルだ。
しかし、このカッコも久しぶり・・・
「ど、どしたんですか、和樹さん?」
 ・・・・・・どうやら、顔がにやけていたようだ。
「いや〜、あさひのこのカッコも久しぶりだな〜ってね」
「で、でも、このカッコ、あ、あんまり女のコらしくないから・・・」
「いや、可愛いよ。初めて会ったときも、初めてあさひの事知ったときも、初めてデートしたときもこのカッコだったろ?俺は、好きだよ、このカッコ」
「そ、そですか?な、なんか、意識したら、ちょ、ちょっと、照れちゃいます・・・」
「朝からラヴラヴとは、妬けるなあ、お・ふ・た・り・さ・ん♪」
「わああっ」
「きゃ・・・(ぽぽぽっ)」
407闇野神殿:01/11/16 00:04 ID:rG2pC+6q
「いらはいいらはい〜♪安うしとくで〜♪」
 いつもの由宇の威勢のいい啖呵が気持ちいい。
「まあ、和樹さんじゃないですか、久しぶりです・・・本当に・・・」
「あ・・・南さん・・・こちらこそ、ご心配、おかけしました・・・」
「いえ、いいんですよ、こうして、また、こみパに来て下さったんですから・・・」
 いつもの南さんの優しい笑顔だ・・・俺は、このこみパに帰ってきたんだな・・・と改めて実感する。
いや、いつも以上に優しく見えるのは気のせいかな?
「今日はサークルじゃないんですよね?」
「ええ、今日は由宇の手伝いです」
「あ、あのぉ、お、お久しぶり・・・です、み、南さん・・・」
「え?あ・・・あさひちゃん?」
 南さんが周囲を気づかい声を低くして応える。
「南さんとは知り合いだったの?」
「は、はい、ミニコンサートのときとか、お世話になったから・・・」
「そっか、なるほどな」
「でも、和樹さん・・・あさひちゃんも、あんな事になる前に一言私に相談してほしかったです・・・
そりゃ、大したことは出来なかったかもしれませんけど・・・ふたりとも、私の大切なお友達なんですから、ね・・・」
「す、すみません、南さん・・・本当に、心配かけまして・・・」
 本当だ。あの時、俺達は、あまりに自分達だけで解決しようとしていたのかも知れない。今になって、改めてそう思う。
408闇野神殿:01/11/16 00:06 ID:rG2pC+6q
「ふふっ、でも、こうして帰ってきてくれたんですから・・・許してあげますっ☆」
 あ・・・南さんの目に光るものが一滴・・・俺達は、本当にみんなを心配させていたんだな・・・・・・
「むかつくむかつく、ちょおむかつく〜〜〜〜〜っ!!」
 どわわっ!!こ、この声は・・・
「あんたぁっ、一体誰のゆるしをえてこの詠美ちゃん様の前からいなくなってたのよっ!!あんたが勉強見てくれないから、卒業試験、できなかったじゃない〜!!」
 い、いや、そげなこと申されましてもな・・・
「アホくさ、勉強サボって原稿ばっかしとったからやない、自業自得やな」
 ・・・・・・由宇が、的確で冷静で非情なツッコミを入れる。
「ふみゅうっ!!」
 どうやら、詠美は卒業できなかった・・・要するに、ダブり、ってやつだな・・・らしい。いとあはれなり・・・
「ぱ、パンダああっ!!な、な、な、なんてことゆーのよっ!!べ、べんきょーなんかより、げんこーのほーがよっぽどだいじなんだからぁっ!!
しょーがないじゃないっっっ!!」
「・・・あんた、台詞から漢字も無くなってるで・・・」
「ふみゅみゅうううううっ!!」
「あ、あ、あの、お、大庭、せ、センセイ・・・ですよね、あ、あ、あたし・・・」
「ふみゅ?」
 ・・・あさひ?
409闇野神殿:01/11/16 00:08 ID:rG2pC+6q
「あ、あたし、せ、センセイの、だ、大ファンです・・・あ、あの・・・」
「ほーっほっほっ!やーっぱ詠美ちゃん様は偉大よね〜♪パンダのとこの売り子まであたしのファンだなんて〜♪
・・・って、あ、あれ?あんた、どっかで・・・ポチきと一緒で・・・え?え?え?」
 や、ヤバイっ!!
「ま、まさかぁ、さ、さく・・・・・・・(むぎゅうっ!!)」
 間一髪、俺と由宇で詠美の口を押さえる。
「(むぅ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!)」
「じゃ、じゃっ、後、頼むっ!」
「おう、まかしとき〜♪」
「はい、いってらっしゃ〜い、和樹さん、詠美ちゃん、あさひちゃん☆」
「(むぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!!)」

「・・・・・・ったく、不用意だぞ、あさひ」
 こつん、と、かるく触れる程度にあさひの頭に拳固を当ててたしなめる。
「ご、ごめんなさい・・・ま、まいあがっちゃって・・・」
 しゅん、としてうなだれるあさひ。まあ、そんなとこが可愛いんだが。
 とりあえず、会場の外まで詠美を連れ出し、何とか事情を説明し落ち着かせることは出来たのだが・・・。
「ほーっほっほっ!!やっぱり詠美ちゃん様は偉大よね、ぐれーとだわっ!いだいなゆうしゃはまじんがーだわっ!!」
「は、はいぃ、え、詠美さん、とっても、その、あの、あの・・・」
「ふむ、よろしい!特別に、あたしのこと、詠美ちゃん様と呼ぶことを許可するわっ!!」
「は、はいぃ、詠美ちゃん様さん・・・」
「ふみゅう!さんはいらないのよぉ・・・」(ちゃん、ちゃん♪)
410闇野神殿:01/11/16 00:10 ID:rG2pC+6q
約束、そして・・・

 ・・・・・・そして、俺は次のこみパに向け、新刊の原稿に取り組んでいる。あさひも手伝うと言ってくれたが、あえて断った。
残念そうな様子だったが、完成したものを一番に読んでもらいたいからだよ、と言ってあげると、はにかんだ表情で微笑んでくれる。
 時々、由宇や、実に、いやもう、本っっっ当に珍しい事に大志までもが手伝ってくれる。
 数ヶ月間に描き溜めたコンテはマンガにして数本分、いくつかのネタがあるが、俺はその中から最初はこれしかない、と『この一本』を選んだ。
由宇や大志も納得してくれた。

 そして、あさひの久々の収録の日がやってきた。
「俺も行っていいのかな?」
「は、はい、心細いからじゃなくて・・・あ、あたしの、お仕事、見ててほしいから、あなたに・・・」
 精一杯の決意を秘めた表情であさひが言った。
「それじゃ、行こうか」
411闇野神殿:01/11/16 00:11 ID:rG2pC+6q
「あ、あさひちゃん!?ホントに、あさひちゃんだよね!?」
「あ・・・し、心配かけちゃって・・・ほ、ほんとに、ごめんなさい、み、みねちゃん・・・」
 あ・・・この人は、たしか、あさひと同じ声優の・・・
「あ、か、和樹さん、あの、こ、こちら、あたしの先輩の、ぷ、プロダクションは違ったんですけど、
すごくお世話になった、み、みねちゃん、じゃなくて、か、辛島美音子さん・・・」
「千堂和樹です。よろしくお願いします」
「あ、辛島美音子ですっ、よろしくね☆・・・ふ〜ん、そっかあ〜あなたがね〜☆」
「な、なにか?」
「『あの』あさひちゃんが、あ〜んな思いきったことするなんて、どんな人なのかな〜って思ってたんだよ☆
・・・ふふっ、思ってた以上に素敵な人みたいだねっ☆」
「は、はいぃ・・・そ、そです、ほ、ほんとにぃ・・・(ぽ〜っ)」
 彼女は、あさひの性格のことは知っているみたいだな、って、声優仲間なら知ってても不思議じゃないかな?
「あ、あの、それで、みねちゃんも、収録なんですか?」
「ううん、あたしはこのゲームには出ないけどね、あさひちゃんが来るっていうから、ね。会いたかったから・・・」
「あ・・・ありがと・・・み、みねちゃん・・・」
「ほらほら、泣かない、泣かない。涙もろいのは変わってないね・・・あさひちゃん」
 俺は、ちょっと安心していた。こんな友達がいてくれるなら、これからもあさひの支えになってくれそうだ、と思ったからだ。
そして、とても暖かな気持ちを感じていた。
412闇野神殿:01/11/16 00:15 ID:rG2pC+6q
 収録は、無事に終了した。あさひの演技力は以前にも増して冴えているようにさえ思われた。
事前に渡されていた台本を何度も練習していたのは知っているが・・・
そもそも、このゲームの台本は、戦闘シーンのデモ画面の台詞の応酬、それに、イベントデモの部分的な台詞だけなのだが、それでも、あさひは少しも手を抜かない。
生真面目なくらい、すべての台詞を一生懸命考えて演技しているのだ。
俺は、あさひの実力の一端を垣間見た気がした。あさひは、自分は、台本通りの演技しか出来ないと言っていた。
でも、そう思っているからこそ、台本から出来る限りの演技を引き出そうと努力しているのだ。

 収録が終わった後、白河さんがやって来た。
「あさひさん、素晴らしい演技でしたよ。苦労してあなたを探し出した甲斐がありました!」
「そ、そんな・・・で、でも、あ、ありがとうございます・・・
あ、あたしも、や、やっぱり声優のお仕事、選んで良かったって、今、思えます」
「そうですか・・・そう言って頂けると、私もプロデューサー冥利に尽きるというものです」
「あ、あたし、声優のお仕事、続けたいです。
アイドルには、もうなれないけど、一人前の声優になって・・・やりたい役が・・・あるんです」
「やりたい役・・・ですか?」
「は、はい、で、でも、ま、まだ内緒・・・なんですけど・・・えへへ・・・」
「ふふっ、それじゃ、いつかその役をやるときに、お力になれることを願っていますよ、あさひさん」
413闇野神殿:01/11/16 00:17 ID:rG2pC+6q
 そして、運命の入稿日がやって来た。
「っしゃあああああああああああああっ!上がったぜぇええええええええいっ!!」
 へばっていた、バテバテだった。それでも、久々の充実感に全身が満たされていた。
「お、お疲れ様です、和樹さん、は、はい、こ、これ、コーヒー・・・」
「ありがとう、あさひ。それじゃ、このマンガ、一番に読んでくれるかな?」
「は、はい・・・あ・・・こ、これって・・・」
 そうだ。俺が復帰一番目に選んだ題材は、外でもない、俺とあさひの、出会いからあの旅立ちまでを描いたものだった。
・・・もちろん、あまりにプライベェト☆な部分は除いてあるが・・・(わははっ)
 読み進むうち、あさひの表情が刻一刻変わっていくのが判る、微笑み、悲しみ、幸せ、涙・・・
俺のマンガを読みながら、あの日々を追体験しているようだった。
「和樹さん、あ、あたし・・・」
 頬を涙で濡らしながら、幸せそうに微笑んであさひは言った。
「あ、あたし、あたし、あなたに出会えて、良かった・・・あたし、幸せ・・・です・・・」
「俺も・・・幸せだよ。あさひに出会えたから、あさひが、ここにいてくれるから・・・」
 今まで言えなかったこと、逃げていたころの俺には言えなかった言葉・・・
「結婚・・・しよう、あさひ・・・」
「う、うれしい・・・です、か、和樹さん・・・あ、あたし・・・」
 俺は、あさひの肩をそっと抱き寄せ、あさひも俺に寄り添って来る。
 そして、ふたりの唇が近づいて・・・
「おーおー、これから入稿やっちゅうのにいきなり濡れ場突入かぁー?あーあ、独り者には目の毒やな〜」
「くくく、これから復帰第一回目のこみパを控えていながらこの余裕、
さすがはまい同志・・・といったところかな?」
「どわわぁあっ!」
「きゃ・・・っ!(ぼぼぼっ!!)」
 俺達は落ち着いてラブシーンもできないのであろうか・・・(とほほ)
414闇野神殿:01/11/16 00:18 ID:rG2pC+6q
「にゃあああああっ、お兄さん・・・帰って来たんですね、千紗、千紗ぁ・・・」
「ありがとう、心配かけてごめんね、千紗ちゃん」
「また、またお兄さんのご本印刷できるんですね?」
「そうだよ、これから、またよろしくね」
「はいです・・・千紗・・・がんばってお兄さんのご本刷るですよ・・・(ぐしゅ)」

 俺は・・・俺達は・・・沢山の人達に支えられて、今、ここにいる。
そう、俺達の出会った、こみっくパーティーに。
「そうだ、あさひ、この前言ったよな、俺の本が出来たら教えてくれるって、あれって、何だったんだ?」
「ふふ・・・和樹さん、マンガの中でも描いてたじゃないですか・・・」
「え?って、もしかして?」
「そ、そです、あのときの約束・・・いつか、和樹さんのマンガがアニメになったら、
あ、あたしが、ヒロインの役・・・やりたいって・・・」
「そうか、白河さんに言ってたのも・・・」
「いつか・・・いつになったとしても・・・あたし、その日目指して、がんばれるから・・・」
「ふふっ、それにはまず、和樹くんがプロとしてデビューしなくてはね」
「あ、へ、編集長、ど、どうも、ご無沙汰してました」
「いいのよ、ふぅん、これが、あなたの新作ね・・・読ませてもらうわよ?」
「は、はい、お願いします!」
 や、やっぱり、緊張するぜ・・・
「ふぅん・・・やっぱり、ブランクのせいかしら、絵が硬いところがあるわね、それと・・・」
 や、やっぱり厳しいぜ、でも、本当だし、ここを直せば確実に良くなるポイントを指摘してくれている・・・真剣に聞かなきゃな。
415闇野神殿:01/11/16 00:19 ID:rG2pC+6q
「3ヶ月ね」
「え?」
「あと3ヶ月で、昔のあなたを越えられるかしら?」
「え?え?」
「3ヶ月後にうちの雑誌の主力の連載マンガが一本、完結するの。
もし、あなたが、それまでにそれに見合うだけの実力をつけられたなら・・・」
「そ、それって、ま、まさか・・・」
「あなたって、本当に、不思議なコよね・・・ブランクの間に、以前は持っていなかったものを身につけているわ。
深み・・・とでもいうのかしら。ふふ・・・ひょっとしたら、あなたのおかげかもしれないわね、あさひさん」
「え、え?そ、そんな、あ、あたし・・・」
「いや、きっと、あさひのおかげだよ。あさひがいたから・・・ここまで来れたんだ」
「あ、あたしも・・・あなたがいたから・・・」
「約束するよ。俺は、プロになる。そして、いつか、もし俺のマンガがアニメになったなら、必ず、あさひにヒロインをやってもらうって」
「ふふ・・・楽しみね、あたしも、いつかそんなときが本当に来るんじゃないかって気がするわ」

 数年後、その約束は果たされることになる。
 けれどもこれはまた別の話、また、別のときに・・・・・・。

                                              Fin