詠美「ふっ、ふみゅぅ・・・ふみゅぅぅぅ・・・」
今日、12月7日は由宇の誕生日。由宇に「お誕生日おめでとう」と
言ってあげたい詠美だが、由宇と話す時にはいつも素直になれず、
ついつい憎まれ口ばかり叩いてしまい、結局毎年後悔しながらこの日を終える。
今年も、すでに誕生日が終わりつつある中、
神戸の由宇に電話をしようと、電話機の前でもじもじしながら
ふみゅふみゅ鳴いている詠美。
いざ電話をかけたとしても、普段あんなことばっかり言っている手前、
どんなふうにおめでとうと言えばいいのかわからないのだ。
「ふ、ふぇぇぇん・・・もうすぐ7日がおわっちゃうよぉ〜(涙目)」
そうこうしてるうちに、今年もまた12月7日が過ぎてしまった。
詠美「はっ!はわわわわ!」
どうしていいのかわからず、衝動的に受話器を手に取り、
慌てて由宇の携帯の番号を押してしまう。
少しの間の後、受話器から由宇の声が聞こえる。
由宇「は〜いもしもし。猪名川ですけど〜」
詠美「ひゃっ!ぁぅ・・・ぇぅ・・・ぅみゅぅぅぅ」
由宇「もしもし?も〜しもし〜?」
詠美「・・・・・・・・・・・」
由宇「もしもし?!いたずらかいな?切るで?」
詠美「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふみゅ〜ん・・・・・」
由宇「詠美?ひょっとして詠美なん?そうなんやろ?!」
詠美「あ・・・う・・・えと・・・その・・・」
由宇「やっぱ詠美なんやな?いっや〜、待っとったんやで〜。
今日はうちの誕生日なんや、あんたも知っとるやろ?
やっぱあんたがおめでとう、ていうてくれんとなんや
おちつかんわぁ〜」
詠美「えっ!・・・うっ・・・ち、違うんだからぁ!
あ、あたしちょっと電話番号間違えただけだもん!!
勘違いしないでよぉ!!」
由宇のほうから誕生日の事を話題に出され、気が動転してしまい、
あわてて電話を叩き切る詠美。
詠美「・・・・うっ・・・うぇぇぇぇぇん!!
また・・・またやっちゃたよぉぉぉ!!なんでいつもこうなの!!
こんな・・・こんなつもりじゃなかったのにぃ〜、ふぇぇぇん!!」
去年までよりももっと大きな後悔の念が押し寄せ、泣き出してしまう。
〜神戸〜
由宇「あっちゃ〜・・・やってしもた・・・
あの子にあんなこと言うたらどうなるかわかりきったことやろに・・・
うちはほんまアホやぁ・・・」
詠美と知り合ってからというもの、毎年誕生日に詠美から電話が
来ないか、心待ちにしていた由宇。今年ついに詠美が電話を
かけてきてくれたもので、舞い上がってしまい、ついつい軽口を
叩いてしまった由宇。詠美同様とても大きな後悔をしてしまう。
由宇「これであの子、もう絶対に誕生日なんか知らんふりしてしまうやろなぁ・・・
さびしいわぁ・・・ホンマさびしいわぁ・・・」
と、そこへ由宇の携帯が着信する。携帯の画面には詠美の電話番号が。
由宇「あっもしもし、詠美か?かんにんな!うちつい調子に乗ってしもて・・・
ホンマかんにんな?な?」
詠美「ふぇ・・・ひっく・・・ぐす・・・由宇・・・ごめんね・・・
あたし・・・毎年・・・いつもこうやって誕生日には由宇に
電話かけたかったの・・・でも何話したらいいのかわからなくて・・・
さっきも・・・またわけわかんなくなっちゃって・・・」
由宇「詠美があやまることあらへん!うちがからかってしもて、それで
詠美を困らせてしもたんやから・・・詠美・・・うち、詠美の
電話待っとったんや・・・電話かけてきてくれておおきにな・・・
・・・・さ、もう夜遅いんや、もう寝よ?な?」
詠美「ふっ、ふぇぇぇぇぇんん!!あ、あた・・・あたし・・・ぐすっ!
由宇のこと好きだから!お誕生日おめでとお!!
ほんとに・・・ほんとにおめでとお!!
これだけは・・・どうしても言いたかったの!!
ふぇぇぇぇぇぇん!!ゆう〜!だいすきだよぉ〜!!(涙)」
由宇「あっ、・・・アホやな・・・えいみ・・・
あんたが泣いて・・・どないするんや・・・ホンマ・・・ホンマ・・・
手間のかかる子やわぁ・・・あんた・・・(涙目)」
まるで愛の告白をするような激しい詠美のお祝いの言葉に、
目をうるませながら、嬉し涙がこぼれそうになるのを必死にこらえ、
震える声で受け答えする由宇。必死に我慢し、電話を切る。
由宇「(うぅぅ〜!詠美ぃ〜!あんたはなんて可愛いんや!
あんたが嫁にいけへんかったら、うちがもろたる!
いやっ!!むしろ嫁になんか行かんとき!ホンマ和樹なんかに
渡したくあらへんわ。詠美!」