「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…よいしょ、っと…。ふふふ、焼きいも買っちゃった…!
ひとつオマケしてくださいましたけど…まあ、これじゃあわたしひとりで三つも
買ったみたい…。こんなに大きいの、誰かに見られたら恥ずかしいわ…」
「あ〜っ、夕香だ〜!やほほ〜い!」
「あう…玲子って、本当に神出鬼没ですね…ああ、もう隠してる時間がない…」
「こんちゃ〜!どしたのよ夕香、こーんなに寒いのに、わざわざ公園のベンチなんかに
座っちゃって!おしりから風邪ひいちゃうよ?」
「え、ええ…その、あの…」
「ん?なにそれ…にゃはっ☆焼きいもじゃ〜ん!ねえ、夕香ぁ…悦びは分け合って
こそ、幸せの糧になるんだよぉ…?今のあたし達もいっしょ…幸せを育もうよぉ…」
「れ、玲子のよろこびは意味が違って聞こえますっ…だ、だめ、外でキスなんて…」
「にゃははっ!冗談だってば!わ、こんなに大きいの三つも食べるつもりだったの!?」
「い、いつの間に…か、返してくださいっ!わ、わたしは二つ頼んで、ひとつはオマケで…」
「ちょ、ちょっと夕香、落ち着いて…!ほ、ほら、あそこの自販機のお茶おごったげる
からさぁ、ひとつ分けてよ〜!ねえ、ねえっ!」
「ぐすん…わ、わかりました…。でしたら、一緒に食べましょう?」
「ありがと〜!ジムの帰りでおなか減ってたんだぁ。じゃあさっそく買ってくるね〜!」
「ううう…せっかく憩いの時間がとれると思ったのに…」
「あつ、あつ…わあ、指でなぞるだけで皮が剥けますね。柔らかぁい…!」
「ホントだ…う〜ん、美味しそう!いっただっきま〜す…はふ、ほふ…ふほ、(゚д゚)ウマー」
「じゃあわたしも、いただきまぁす…はく…ほく、ほく…ん…はぁ…おいしい…」
「もう最高〜☆今日はちょっと薄曇りだけど、これぐらい肌寒いとよけい美味しく
感じるよね〜。夕香、もしかして狙ってたぁ?」
「はく、はく、はく…むぐ、むぐ…かぷっ、まく、まく…もぐ、もぐ、もぐ…」
「夕香…」
「ふぇ…?あ、や、やらっ、ごえんなはいっ…んぐ、わたし…意地汚く頬張って…」
「ううん、焼きいもはガツガツ食べてこそだと思うな〜。いつもの夕香みたいに
ちょっぴりずつ食べてたら、せっかく熱々なのも冷めちゃうじゃん。」
「…そ、それもそうですけど…でも…品がないです…」
「…さっきの夕香、すっごいかわいい顔してたよ?子どもみたいにニコニコして、ホントに
美味しそうにしてた。あたしこういう表情って、上品も下品もないと思うけどなぁ。」
「玲子…」
「ほらほら、試しにもっといっぱい皮剥いて…そうそう、それで大きく口を開けて
ガブッといってみなよ。見てて、こうやって…あぐっ…!」
「あ、あ〜ん…はぐっ…もぐ、もぐ…んふ、んふふっ…んふふふっ!」
「んふふふ〜☆ほら、美味しい時の顔できてる!女の子の、とびきりの表情だよ〜!
あたしが男の子だったら告白しちゃうな。焼きいも食べながら…だけどね?」
「ふふふっ…なんだか照れくさいです…。でも玲子…ありがとう…。」
「そ、そんな、他人行儀が過ぎるよ〜!でも…にゅっふっふ!そう思うんなら身体で
感謝の気持ちを示してみろ〜っ…なんちゃって!」
「も、もう…今夜は玲子のために空けようかなって思ったんですけど、やっぱり取り消しっ!」
「ああん、ウソウソ!ウソです〜!夜までガマンします〜っ!!」