珍と虚を抗争状態にしているのは味噌ヲタ

…私の誕生日に藤守は私を旅行に連れてってくれた。
そのことは、私の誕生日祝いをこっそり用意してくれていたお兄ちゃんや七海先生に心配をかけた上に、
実行者の藤守が怒られるというおまけまでついてきた。

そして、私が旅行の最終日にもらったネックレス…。本当は違うものみたいなんだけど。
細身の細工が綺麗な王冠が二つ絡まっているような飾りが付いてるんだけど…あれ？
絡まってる…？もしかして、これ取れる？
私は自分の考えを確かめるようにリングを触る。
簡単な知恵の輪みたいな感じであっさり取れた。
よく見ると大きさが少し違う。
…サイズ的に指に入りそう…細い方で入る、かな？
人差し指はさすがにキツイな。右の薬指がちょっとキツイ。ってことは…
「左の薬指…ぴったりだわ」
その途端、藤守の考えがわかった気がした。

羽柴、こんなとこで何すんだよ？

静かにしてよ！せっかくクリスさんに頼んでこんな時間に教会に入れてもらったのに…
あ、もう時間。

オレ、藤守直は幼馴染で恋人の羽柴空に連れられてこんな夜遅くにクリスがお勧めする教会に連れてこられてしまいました。
しかも、要領を得ません。何なんですか？空ちゃん。

誕生日おめでとう、藤守。

え…あ、サンキュ。

でね…これ、わかったから。はい。

…なんでオレに渡すんだ？

だって…あ、あの…こういうことじゃないの？…え？違った？

えっと…指輪の交換しよっか。

ちょーっとまったー！

に、兄ちゃん？

私もいますよ〜

な、七海先生？

チビも！チビも！

私もいるわよ〜

ごめんなさい、羽柴さん。私がお呼びしてしまいました。

二人とも、勝手に結婚式挙げちゃうなんて水臭い…
っていうか、友達甲斐の無いっていうか…何より、そんなおいしいシャッターチャンスを
私に教えてくれないなんてー！！！酷い！！！

私たち、空ちゃんにお誕生日プレゼントあげてないでしょ？直くんが当日に拉致したから。

いつ渡そうかってタイミング計ってたんだぜー

そしたらねー、クリスが電話してくれたの。

クリスさんが空ちゃんから教会を貸してくださいってお願いされたんです。
じゃあみんなで様子を見に行こうってことになったんですよ。

そしたら二人だけで結婚式始めちまうもんな〜。兄ちゃんも混ぜろ！

空ちゃん、ちょっとこっち来てください。

に、兄ちゃん？

もうちょっとお膳立てさせろ。空の誕生日プレゼント兼ねてんだから。

オレの前にはクリス、後ろには七海ちゃんと祭が座ってる。
そして開いた扉からは…眩しすぎる純白のウエディングドレス姿の羽柴が兄ちゃんに腕を組まされ立っている。
本格的な結婚式の様相を呈してきた…しかも羽柴のヴェールを持ってるのはチビだ。
みんな、なんでそんなにやる気なんだ？
後で聞いた話では、この新婦の父役は兄ちゃんたっての希望だということだ。
…兄ちゃん。
牧師役にクリスを迎え、誓いの言葉…そして指輪の交換。

はい、交換してください。

はしば、きれーにゃ〜。チビもはしばおよめさんにするー

チビには見せちゃいけなかった気がする…

ダメだぞ。羽柴はオレのだから。

えー。じゃあ、チビななちゃでもいいよー

あらあら。どうする？真一朗。ライバル登場だよ。

あのな、チビ助。お嫁さんは一人だけ。一番好きな人じゃなきゃ意味ねーんだよ。
で、ななはオレのです。

むう〜。しんいちろーずる〜い！！

いいだろ〜。ふふ〜ん

真一朗のバカ！青くん、きっと青くんには青くんだけの素敵な人が見つかりますよ。

ななちゃはしんいちろーが好き？

そうですね…ふふふ

なあ、羽柴。このドレスがプレゼント？

…みたいね。

可愛い〜。空、すごく似合ってるよ。バカ直にはもったいない。

げ、乱？

そうだよ〜。あたしも一応お祝い。おめでと。

じゃあオレも。おめでと、直、空。

サンキュー、夜。乱もな。

直くん、空ちゃん。今日はもう遅いっていうか深夜なので、明日の夕方からパーティーしましょうね。
場所はこのスレじゃなくて…そうですね。「にわか阪神ファンがウザいんですけど」っていうスレ、ありますよね？そこでやりましょう。

パーティー？

お前らの誕生日＋結婚披露宴だろ？

はあ？

じゃあせっかくなんで、科学部の面々や広夢くんなんかも呼びましょうか。

よぼー。チビ、朝になったらきたむらとしーなに電話するね。

じゃあ、オレは奏司と綾野に連絡とるな。

梅谷先生…呼びます？

…七海ちゃん、それだけは勘弁。

そうですね。じゃあ…

…藤守、止めないの？

…お前、止められるか？

ううん、無理。

そう。主役だろうが何だろうが、こうなっちまったらオレたちに決定権や拒否権はないんだ。
いいさ、もう。存分に祝ってくれ。オレと羽柴のことを羨ましがれ〜！！！