曽我さん「1日も早く会わせて」と娘たちへの思い回答
「よほどショックで、落ち込んでいるんだ。行ってあげなきゃ」。曽我ひとみさん(43)の親友、上林芳子さん(43)は10月31日、新潟県・佐渡島の両津港から、朝一番で新潟行きの船に飛び乗った。
2日目の日朝交渉が行われた30日。曽我さんは人間ドックのために入院していた新潟市内の病院で、テレビで伝えられる交渉の行方を見続けていた。
その夜、曽我さんを励まそうと病院を訪ねた恩師、本間和城さん(57)の面会は「体調不良」を理由に断られた。それを聞いた上林さんは矢も盾もたまらず、病院に駆けつけた。
「私は大丈夫。昨日は体調が悪くて、先生に会えなかった。心配してくれたのに悪かった」。盛んに周囲を気遣いながらも、伏し目がちな表情は沈みきっていた。
曽我さんは当初、先月28日には北朝鮮に戻る心づもりでいた。娘におみやげを買ったり、周囲に「お父さんと妹をよろしく」とあいさつしたりするなど、言動の端々にその心情をにじませていた。
曽我さんの夫、チャールズ・ロバート・ジェンキンスさん(62)は、来日すれば、脱走兵として米国に身柄を拘束される恐れがある。31日、佐渡島の実家を訪れた本間さんに、曽我さんは「娘たちが『お母さんは私たちを見放した』と誤解するのでは」と心情を吐露した。
その夜、友人の男性が電話をすると、「お父ちゃんが寝ちゃったから、1人でテレビ見てた」。報道が気になっている様子を察し、「絶対、大丈夫だから。安心して待ってて」と励ますと、沈黙の後、受話器の向こうですすり泣きが漏れた。
今月2日からの3連休はニュースをかかさず見て、6日に来訪する安倍官房副長官らに伝えることを考えながら、過ごしたという。娘たちへの思いを尋ねた報道陣の質問に、
「心からとっても愛しています。1日も早く会わせて下さい」。回答をつづった文字には、母の思いがにじんでいる。(読売新聞)
[11月5日15時0分更新]