大月書店「世界の共産党」

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   スペイン共産党

 スペイン共産党は、スペイン労働者階級の前衛部隊であり、ファシスト独裁に反対し、平和、
民主主義、民族の独立をめざすスペイン人民の闘争の鼓吹者であり組織者である。一九二〇年四
月に、スペインにおける一九一七―二〇年の革命的高揚の情勢のなかで創立された。大十日社会
主義革命の影響のもとに、スペインの労働運動では、当時支配的であった社会改良主義とアナル
コ・サンディカリズムと訣別し、革命的マルクス主義政党を創立するための左翼グループの闘争
が強化された。一九一九年十二月に社会主義青年同盟大会は、社会党からの脱退とコミンテルン
への加盟にかんする決定を採択した。一九二〇年四月十五日、社会主義青年同盟は、スペイン共
産党の結成とその綱領を宣言した檄文を発表した。この日がスペイン共産党結成の日とされてい
る。一九二一年四月に、スペイン社会労働党の左翼は、改良主義者と訣別して、共産労働党を結
成し、一九二一年十一月にスペイン共産党と合同した。一九二二年三月に、第一回共産党大会が
ひらかれた。
 年若い、まだ基礎のかたまっていない共産党は、すでに一九二三年に、プリモ・デ・リヴェラ
の軍事的・ファシスト的クーデターののち地下にもぐることを余儀なくされた。無政府主義の残
存物の存在、指導部に潜入したトロツキストのセクト主義と日和見主義的政策は、一九三一年の
ブルジョア民主主義革命の準備と遂行の時期における党の発展にブレーキをかけた。反トロツキ
スト闘争の先頭に立ったのはハ・ディアスとディ・イバルリである。一九三二年に、セヴィリア
におけるスペイン共産党第四回大会で、彼らは、当時の党指導部の日和見主義的・セクト的政策
に反対した。その年に、トロツキストは党から追放された。スペイン共産党書記長にはハ・ディ
アスが選出された。ハ・ディアスとディ・イバルリの指導のもとに、党はソ同盟共産党(ボ)の
経験をよりどころにして、マルクス=レーニン主義のイデオロギー的・戦術的基礎のうえにすべ
ての活動を再編成した。このことは、勤労者のなかでの党の勢力を拡大強化した。一九三四年の
はじめには、スペイン共産党の党員は二万をかぞえた。
 共産党は、反動の攻撃とファシズムの脅威に反対する闘争へと大衆を高めた。大衆は、一九三
四年十月の政治的ゼネストに積極的に参加した。ストライキは、国の若干の地方では武装蜂起へ
成長転化した。共産党員は、二週間以上にわたって政府軍隊の優勢な勢力の攻撃を撃退したアス
トゥリアの鉱山労働者の英雄的防衛の先頭に立った。
 労働者階級とスペイン国民のあらゆる進歩的勢力の統一をめざすスペイン共産党の闘争にとっ
てきわめて大きな意義をもっていたのは、コミンテルン第七回大会(一九三五年)の決定であっ
た。コミンテルン大会の決定に指導されながら、スペイン共産党は、労働者と国民の統一戦線を
まもり、反動的社会改良主義者とアナルコ・サンディカリストの指導者の分裂政策に反対する断
固たる闘争をおこなった。一九三五年十一月に、スペイン共産党は、社会主義者に指導される改
良主義的な勤労者総同盟と急進的労働組合を組合員一〇〇万以上をかぞえた統一勤労者総同盟に
合同させることに成功した。一九三六年に共産主義と社会主義青年の諸組織は統一社会主義青年
同盟に合同した。この年に、スペイン共産党の直接的援助のもとに、カタロニアの四つの労働者
党は、マルクス=レーニン主義綱領にもとづいてカタロニア統一社会党に合流した。カタロニア
統一社会党は、スペイン共産党と緊密に協力して党の活動を展開した。
 一九三六年一月に、広範な国民大衆の積極的支持をうけていた共産党のイニシアティヴによっ
て、人民戦線が結成された。人民戦線協定には共産主義者、社会主義者、勤労者総同盟、ブルジ
ョア共和主義者が署名した。一九三六年二月十六日の国会選挙では、人民戦線は、王制・ファシ
スト諸政党の連合に勝利した。スペイン共産党からは国会に七名の議員が選出された。勤労者の
なかで共産党の勢力は急速に増大した。一九三六年七月には、スペイン共産党員はすでに一〇万
をかぞえていた。スペイン共産党は、人民戦線綱領の実行をめざす大衆の闘争の先頭に立った。
それと同時に、党は反動によって準備されていた共和制に反対するファシストの陰謀を粉砕する
ための広範なカンパニアをおこなった。
 ファシストの反乱とイタリア=ドイツの干渉の初期に、スペイン共産党は、ファシスト反逆者
と干渉軍にたいする全国民的抵抗の鼓吹者となり、組織者となった。スペイン共産党は、自国の
自由、民族の独立、民主主義を擁護するための全国民の戦争としてのこの戦争の性格を国民にた
だしく理解させることをたすけた。イ・ヴェ・スターリンは、ハ・ディアスにあてたスペイン共
産党中央委員会への電報のなかで、スペイン国民の反ファシスト解放戦争の大きな国際的意義を
強調してつぎのように指示した。「ファシスト的反動者たちの抑圧からのスペインの解放は、ス
ペイン人の私的なことがらではなく、すべての先進的な進歩的な人類の共通のしごとである。」
〔『プラウダ』一九三六年十月十六日、第二八六号一ページ〕
 スペイン共産党は、大衆をよりどころとし、人民戦線内部の右翼理社会主義的・無政府主義的
トロツキスト的フランコの代弁者の反抗にうちかちながら、人民戦線政府による防衛組織上のも
っとも重要な諸方策の実行を主張することかできた。スペイン共産党は、正規の国民軍を創設し、
ファシストの所有していた軍需工業と企業を国家の統制下におくことに成功した。スペイン共産
党のイニシアティヴによって、五〇〇万ヘクタール以上の地主の土地を農民にあたえた農業改革
がおこなわれ、勤労者の状態を改善し、広範な国民大衆を共和国の擁護に立ちあがらせた民主的
改革がおこなわれた。すべてこれらのことが、三二ヵ月にわたって、優勢なファシスト侵略者の
勢力に抵抗させたのである。スペイン共産党のただしい政策、ファシストとの戦闘で共産党員に
よってしめされたヒロイズムは、大衆のなかで共産党の勢力をいちじるしく増大させた。一九三
八年末までに、スペイン共産党員は三〇万名以上をかそえた。
 共和制が崩壊し、国内にフランコ将軍のファシスト独裁が確立(一九三九年三月)したのち、
ファシストは、共産党にたいして太さな打雌をくわえた。何万という共産党員が監獄と強制収容
所にほうりこまれ、責めころされ、あるいは死刑に処せられた。党は地下にもぐって、フランコ
体制にたいする英雄的な闘争をおこなった。一九三九―四五年の第二次世界戦争の時期に、スペ
イン共産党は、ヒトラー侵略ブロックに援助をあたえるフランコの政策に反対してたたかうよう
国民によびかけた。一九三九年にフランスに亡命した多くのスペイン共産党員は、戦争の時期に
はその地で、抵抗運動の陣列のなかでたたかった。一九四二年三月二十日に、スペイン・プロレ
タリアートの指導者でありスペイン共産党書記長であるハ・ディアスが死んだ。ハ・ディアスの
死後、ディ・イバルリがスペイン共産党書記長になった。
 第二次世界戦争の終結後、共産党は、ファシスト独裁の打倒をめざす闘争の具体的綱領を提起
した。スペイン共産党は、フランコ体制を打倒し、スペインに民主主義共和国を復活させるため
の条件を準備する目的で、すべての反フランコ勢力の全民族戦線を結成することを主要な任務と
した。スペイン共産党は、自由と民主主義をめざすスペイン国民の闘争が、民族独立をめざす闘
争と、フランコに政権を維持させ、スペインを自国の植民地と、米・英帝国主義者によって準備
されている新世界戦争のための兵器庫に変えようとする米・英帝国主義者に反対する闘争とにわ
かちがたくむすびついていることをスペイン国民に説明している。スペイン共産党は、アメリカ
合衆国およびイギリス帝国主義者の手さきの役割をはたしながら、共産党を孤立化させようとし
ている右翼社会主義的・無政府主義的指導者の裏切政策に反対する闘争をおこなっている。「ユ
ーゴスラヴィア共産党の状態について」という共産党労働者党情報局の決定は、スペイン共産党
の革命的警戒心を高めるうえに大きな役割をはたした。
 スペイン共産党は、地下ふかくで中央機関紙『ムンド・オプレロ』〔労働者の世界〕、機関誌
『ヌエストラ・バンディエラ』〔われらの旗〕、その他フランコの反人民的政策をばくろし、国
民にファシスト独裁に反対する闘争をよびかけている機関出版物を発行している。共産党員は、
フランコ体制に反対する闘争(大衆的ストライキ、デモンストレーション、収穫物の徴発に反対
する農民の行動、その他)の活動形態の創始者である。共産党は、反動的・ファシスト的労働組
合の内部で活動をおこない、ファシスト党「ファランへ」の社会的デマゴーグを大衆のまえにば
くろしている。スペイン共産党の活動のおかげで、一九四七年の七万のバスコニア労働者の五月
ストライキ、数十万人が参加したカタロニアおよびその他の地方の勤労者の一九五一年春のスト
ライキとデモンストレーションのような大規模な国民大衆の反ファシスト行動が可能になった。
 スペイン共産党は、平和をめざすスペイン国民の闘争の鼓吹者であり組織者である。スペイン
共産党は、ソ同盟の平和愛好的志向を支持している。そのことはなによりもまず、平和保持をめ
ざす自国民の闘争を支持していることである。政治局の、さらにまた同志ドロレス・イバルリ、
ヴェ・ウリべ、その他のスペイン共産党の指導者の一連の声明のなかで、スペイン国民は、その
誠実で信頼すべき友であり同盟者であるソ同盟にたいしても、人民民主主義諸国にたいしても、
けっして武器をとらないであろうことが指示された。正義の大業の勝利にたいするスペイン国民
の確信をつよめながら、スペイン共産党は、この目的――すべての民主主義陣営の諸国民ととも
に、新戦争の帝国主義放火者に反対し、民族の独立、平和、民主主義をまもる闘争の道――を達
成するための正しい道をスペイン国民にしめしている。