脱・ゴーマニズム宣言 著作権訴訟スレッド2

このエントリーをはてなブックマークに追加
473基礎のおさらい
 長いです。すいません。
 著作権法で引用に関して重要なのは、主に次の条文です。

(ア)第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。
この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、
かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれる
ものでなければならない。

(イ)第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、
その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
四 前三号(略)に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の
目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変

(ウ)第四十八条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の
出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、
明示しなければならない。
一 第三十二条、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、
第三十七条、第四十二条又は第四十七条の規定により著作物を複製する場合
474基礎のおさらい:2001/05/21(月) 02:27 ID:B.KgvQ7U
 三十二条に関する限り、「脱ゴー宣」地裁判決はもちろん、高裁判決でも、
上杉氏の行った引用は完全に法の範囲内だと認めています。(この点では、
むしろ高裁判決の方が、地裁以上に踏み込んで「合法」のお墨付きを
与えているように思えます。)

 ちなみに、上杉氏側が上告したのを受けて、小林氏も附帯上告したらしいので、
引用の適法性についても、高裁判決が確定したというわけではないようです。
ですが、引用の要件に関する判断は、上記のように、幾つもの裁判を経た上で
定まったものなので、「脱ゴー宣」裁判の最高裁判決で覆ることはちょっと
考えられませんね。
475基礎のおさらい:2001/05/21(月) 02:29 ID:B.KgvQ7U
 もちろん、三十二条の解釈は踏襲した上で、特定のコマについて
「主従関係にない」といった判断が下される可能性はゼロではありません。
ただ、地裁、高裁判決とも、この点については全くブレがなく、
しかも地裁判決では1コマ1コマについて詳細に引用の必要性を検証しているし、
高裁判決でも地裁判決を参照した上で、さらにいくつかのコマについて
踏み込んで再検証していることなどを見ると、最高裁で覆る可能性は
かなり低いと考えるのが妥当だと思います。

 高裁で小林氏が一部勝訴したのは、同一性保持権に関する部分です。
横に並んでいたコマを、上杉氏が引用する際に縦に並べ替えたのが、
著作権法二十条四号の「やむを得ない改変」には当たらず、同一性保持権を
侵害した、とされたためです。こちらの方は、原典からの改編をほとんど
一切認めない厳しい判例と、現著者の意図をねじ曲げていなければ改変を
認める緩やかな判例があるようで、過去の判例も分かれているみたいです。
上告審の判断が出れば、たぶんこれが初の最高裁判断になるのではないでしょうか。
476基礎のおさらい:2001/05/21(月) 02:32 ID:B.KgvQ7U
(ア−1)引用する側が主、される側が従であること。
(アー2)引用する側とされる側が、明瞭に区別できること。
(アー3)引用される側が、公開された著作物であること。
(イ)引用される側の同一性保持権を侵害しないこと。
(ウ)引用される側の出典を明示すること。

 となります。こうした要件を満たす限り、他人の著作物を自由に引用し、
利用することは、法律上認められています。原著作者の許諾は必要ないし、
原著作(引用される側)が絵であろうと文章であろうとその間に法的な
区別はありません。これは、小林よしのり氏自身も享受していることです。
(例えば「ゴー宣」の中で、白土三平氏の「カムイ伝」からコマごと引用を
していますし、その他にも同種の例があります)。
477基礎のおさらい:2001/05/21(月) 03:14 ID:Lh8phhB6
 すいません。476の書き込み、最初に

「改めて、引用に関する著作権法上の要件を簡単にまとめると、」

という一文が入ります。

 あと、蛇足です。「無断転載」と「引用」の違いは、特に法律上の用語として
定められてはいないはずですが、著作権の専門家の慣例として、「引用」は
以上のような要件を満たす合法的な転載であり、「無断転載」はそれ以外の
(つまり違法な)転載とされているようです。従って、「違法引用」という
表現は、著作権の専門家はまず絶対に使いません。また、「無断引用」というのも、
引用は普通無断でするものなので、「頭が頭痛だ」みたいな変な表現です。

 長くてすいません。まあ、ここにいる多くの人にとっては、
先刻ご承知のことだったと思うのですが。