天皇論 29

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417名無しかましてよかですか?
■「皇統男系説」「皇統双系説」を検証する(ここでは「皇族」を「皇親:皇位継承資格を有する皇族」に限定)。
              男系皇族:                          女系皇族:
〔定義A〕 皇位継承資格を男系の血筋で受け継いだ皇族  皇位継承資格を女系の血筋で受け継いだ皇族
〔定義B〕 男系血族に属している皇族                男系血族に属していない皇族
双系皇族:⇒{男系皇族または女系皇族}

T.実例検証
「双系皇族」は「男系皇族」を包含しており、「男系皇族」の条件を満たしている皇族は必ず「双系皇族」の条件も満
たしている。
従って「男系皇族の条件を満たしていて双系皇族の条件を満たしていない皇族」は論理的に存在せず、実例でもって
「皇統は双系継承ではなく男系継承である」と証明するのは不可能。
一方「双系皇族の条件を満たしていて男系皇族の条件を満たしていない皇族(=女系皇族)」の実例が有れば、
「皇統は男系継承ではなく双系継承である」と実証したことになる。

〔定義A〕―「双系皇族の条件を満たしていて男系皇族の条件を満たしていない皇族(=女系皇族)」の実例が有り、
「皇統は男系継承ではなく双系継承である」と実証。
 @和銅8年(715年)2月の詔[元明天皇]―吉備内親王の子の膳夫王、葛木王、鉤取王(3世王、父は長屋王)を
 2世王とする
 A天応元年(781年)2月の詔[光仁天皇]―能登内親王の子の五百井女王、五百枝王(のち春原朝臣五百枝)
 (5世王、父は市原王)を2世王とする
   ※@Aは選択的に父方の「男系王位」を破棄し、母方の「女系王位」を適用。
 上記以外で女系天皇・女系皇族の可能性があるのは、B孝徳天皇(=軽皇子、皇極天皇の弟、父は茅渟王)、
 C漢皇子(皇極天皇の子、父は高向王)、D有馬皇子(孝徳天皇の子)。
  ※「天皇」「皇子」「親王」などの称号は律令制のものだが、軽皇子や漢皇子が皇極天皇の即位時に「王」から
  「皇子」になったと認識されていたのなら、皇位継承資格はB姉から弟へ、C母から子へ女系の血筋で受け継が
  れたと言える。
「男系血族に属していない皇族」の実例は無く、「皇統は非男系血族を含む双系継承である」と断定できない。
(続く)
418名無しかましてよかですか?:2010/06/20(日) 19:57:20 ID:jvyAsfW4
>>417の続き)
〔定義B〕―「双系皇族の条件を満たしていて男系皇族の条件を満たしていない皇族(=女系皇族)」の実例が無く、
「皇統は男系継承ではなく双系継承である」と断定できない。

U.成文法[継嗣令]の論理解析
 [養老律令継嗣令皇兄弟条(第一条)]天平宝字元年(757年)―「凡皇兄弟皇子。皆為親王。{女帝子亦同。}以外
 並為諸王。自親王五世。雖得王名。不在皇親之限。」
 [養老律令継嗣令王娶親王条(第四条)]―「凡王娶親王。臣娶五世王者聴。唯五世王。不得娶親王」
      官制大観 付録:現代語訳「養老令」全三十編: 第十三 継嗣令 全04条
      ttp://www.sol.dti.ne.jp/~hiromi/kansei/yoro13.html

〔定義A〕―女帝の子は男帝の子と同じく親王なので([継嗣令第一条])、皇統は双系継承である。
 {女帝と氏族男子の間に生まれた子供に皇位継承資格は生じない}→{皇統は男系血族限定の双系継承である}
 {女帝と氏族男子の間に生まれた子供に皇位継承資格は生じる}→{皇統は非男系血族を含む双系継承である}

〔定義B〕
 {女帝と氏族男子の間に生まれた子供に皇位継承資格は生じない}→{皇統は双系継承ではなく男系継承である}
 {女帝と氏族男子の間に生まれた子供に皇位継承資格は生じる}→{皇統は男系継承ではなく双系継承である}

(1)「女帝と氏族男子の間に生まれた子供に皇位継承資格は生じない」と仮定する。
子供は「有姓の非皇位継承資格者」となる。
「有姓の非皇位継承資格者」は存在しても問題ないので、「皇族女子と氏族男子の婚姻」を制限しなくて良い。
[継嗣令第四条]に「皇親女子と氏族男子の婚姻禁止規定」が設けられており、推論と一致しない。
(2)「女帝と氏族男子の間に生まれた子供に皇位継承資格は生じる」と仮定する。
子供は「有姓の親王」となる。
「有姓の親王」が即位すると王朝交代になってしまうので、「皇族女子と氏族男子の婚姻」を制限しなくてはならない。
[継嗣令第四条]に「皇親女子と氏族男子の婚姻禁止規定」が設けられており、推論と一致する。
(続く)
419名無しかましてよかですか?:2010/06/20(日) 19:59:03 ID:jvyAsfW4
>>418の続き)
よって(1)の命題は偽、(2)の命題は真である。
〔定義A〕―「皇統は非男系血族を含む双系継承である」と推定。
〔定義B〕―「皇統は男系継承ではなく双系継承である」と推定。

V.結論 TとUの検証結果を総合
「T.実例検証」では皇統が完全な双系継承かどうか判定できず、「U.成文法[継嗣令]の論理解析」により、〔定義
A〕―「皇統は非男系血族を含む双系継承である」〔定義B〕―「皇統は男系継承ではなく双系継承である。」と結論。
どちらの定義でも、「皇統は完全な双系継承である」。

W.傍証 「男系概念」「双系概念」を記した歴史資料の有無
〔男系概念〕―「皇統の男系概念(男系血族にのみ継承される)」を記した文献は存在しない。
〔双系概念〕―『源氏物語』によると、「天皇の尊貴性・貴種性」は双系で天皇の兄弟・子供とその子孫に継承され(頭
の中将や葵上は母親が大宮なので、藤原氏の中でも格の高い血筋となっている)、世代が遠くなると薄れてしまうと
考えられていた。

「天皇の尊貴性・貴種性」の概念は、[継嗣令]の「双系継承」「親王位、王位の序列」と完全に一致している。
一方「皇統の男系概念」が存在した形跡はなく、Vの結論との間に矛盾がないことを確認。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【考察】
○[継嗣令]では皇位継承資格の「親王位」「王位(4世王まで、一時期5世王まで)」を、天皇の兄弟・子供からの世代
数を基準として規定している([継嗣令第一条])。
皇統は完全な双系継承であり、「男系血族に属していない皇族」が存在しなかったのは「皇親女子と氏族男子の婚姻
禁止規定」の影響に過ぎない。
従って「男系皇族」「女系皇族」の意味としては〔定義A〕が妥当。
〔定義B〕の名称は「男系血族皇族」「非男系血族皇族」とすべき。
(続く)
420名無しかましてよかですか?:2010/06/20(日) 20:01:57 ID:jvyAsfW4
>>419の続き)
○春日山田皇女が天皇に推挙されたことから、推古天皇以前に女子を皇位継承資格者と認識していたことは確か
であり、皇親女子と氏族男子が婚姻を避ける傾向も律令制定以前より見られる。
[継嗣令第四条]の「皇親女子と氏族男子の婚姻禁止規定」は、女帝の子に姓が生じないように調整していた律令
制定前の慣習を成文化したものと思われる。
 ※氏姓制度は明治4年(1871年)に廃止―[姓尸(せいし)不称令]

○「女帝の子」は「男帝の子」と同じく「親王」である([継嗣令第一条])。
また膳夫王や五百井女王らに対し、父方の皇位継承資格を破棄して母方の皇位継承資格を適用(同条に準拠)。
皇位継承資格の序列は、[継嗣令]―「女系親王位(内親王位)>男系王位(女王位)」、膳夫王―「女系2世王位>
男系3世王位」、五百井女王―「女系2世女王位>男系5世女王位」となり、「男系」の皇位継承資格と「女系」の皇位
継承資格は同格である。
 ※[継嗣令第一条]の「女帝子亦同」という部分は日本律令独自の規定で、唐制の「男系」継承とは異なり「女系」を
 皇統と認めていたことを示している。

○延暦12年(793年)9月の詔[桓武天皇]により、「内親王を除く皇親女子と氏族男子の婚姻」が認められた。
実際に即位した女帝は皇極天皇以外全て内親王であり、母方の「女系王位」の選択的適用も母親の身位が高い皇族
に限られていたので(二例とも母親は内親王)、実情に合わせた規制緩和が行なわれた。

○平安時代以降「仏教」や「儒教」など外来の男尊女卑思想の影響もあって、男性だけが即位するようになった。
その結果、「女系親王位」を適用する機会そのものが消滅。
また猶子・養子を擬制的に「天皇の子」と見なすようになったため、母方の「女系王位(実系)」を選択的に適用する
こともなくなった。

○女子・女系の皇位継承資格は[旧皇室典範]が施行されるまで停止されたことがなく、法律上は双系制度のまま。
「世襲親王」は猶子・養子制度を利用して世数をカバーしており、[継嗣令]の皇位継承資格の規定は基本的に守られ
ていたと言える。
(続く)
421名無しかましてよかですか?:2010/06/20(日) 20:23:44 ID:lGbxSDZR
>>420の続き)
○「皇親女子と氏族男子の婚姻禁止規定」は女帝の子(親王)に「姓」が生じないようにするための措置なので、子供
 に皇位継承資格を適用しないケースについては違法婚が容認されることもあった(法律を弾力的に運用)。
 奈良時代・・・藤原三岡の母・山縵女王(3世女王、夫は藤原久須麻呂)―身位が低く即位の可能性が乏しい
 平安時代・・・藤原為光の母・雅子内親王(夫は藤原師輔)―時代的に女性は皇位継承候補にならなくなっていた

○「皇親女子と氏族男子の婚姻禁止規定」が設けられていた理由を「氏姓制度」以外に想定した場合(「皇統の純血
性を担保」「女帝の子と男帝の子を皆同じ身分にするため」など)、論理矛盾や実際の運用との食い違いが生じる。
422名無しかましてよかですか?:2010/06/20(日) 20:54:23 ID:TiIm1NmF
>>417
〔定義A〕 皇位継承資格を男系の血筋で受け継いだ皇族  皇位継承資格を女系の血筋で受け継いだ皇族
〔定義B〕 男系血族に属している皇族            男系血族に属していない皇族

定義の段階から間違っているから後の論理は全て無意味ね。