学園物語★KOVA17歳15〜ぱらのけ王子〜

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21アイツ登場
図書館内、自習室
静かな自習室内で、ブツブツブツブツ独り言の声が聞こえる。その声は妙に大きく、しかも内容が
「実定法の世の中なら・・・」とか「アメリカの陰謀が・・・」とか「周りは政財官の愚民政策によって・・・」など
デムパ120%なので彼の周りには誰もいない。
それが法元実定のここ五年ぐらいの「日課」であった。
その独り言のセカイには誰も入ってこない。そう、誰も・・・。しかし、今日は違った。

ヨシダ「何か凄く大きな声で独り言をしゃべっていて、周りに誰もいないヒトがいるんですが」
ヨシダは耳元の小さなインカムで免下にそう言った。
免下『そうか、それが法元だ。早速接近してくれ。もちろん、インカムははずしてな」

ヨシダ「あのぅ・・・隣よろしいですか?」
法元の目に、大人しそうな赤毛の美女の姿が目に映る。眼鏡に、野暮ったいロングスカートが素敵だ。彼にとって、
実の親とコンビニ店員を除いて十数年ぶりに声をかけてきた異性。
法元「ぼぼぼぼぼ、よろよろよろよろしいですがぐがぐがぐが」
ヨシダ「じゃあ、隣座りますね(はぁと」
微笑むヨシダ。完全に法元の心は彼女に奪われた。この間数十秒。・・・ヨシダキリコが、研究志向の強い精神科医で
あることはこの世において恐らく幸運なことなのであろう。個人向け営業や詐欺師ではなくて
法元「あふあふあふあふ」
ヨシダはおもむろに免下に渡されたテキストを法元に見せつける。
ヨシダ「あのね私、この間まで銀行の窓口で働いていたんですけどね。契約切られちゃって、それでクビにならない
お仕事ってないかなと思って、法律の資格の勉強を始めたんですよ」
もちろん口から出任せだが、これで法元の心はわしづかみにされてしまった。
法元「あのですね」
ヨシダ「はい」
法元「世の中すべて法律が間違っているんですよ!世の中が実定法の世の中になれば、政財官の愚民政策である
奴隷システムは消えて、真の愛国者達が報われるすばらしい社会になり、帝国主義は消え、経済的には公平な
仕組みに変わり、私もあなたもすべてが幸せに・・・」
それは突然だった。いきなりスイッチが入ったかのようにまくし立てる法元。でも、ヨシダは顔色一つ変えず
微笑みながらうなずき続ける。・・・勿論手元の携帯メールで状況の変化は逐一報告されているんだけれども。
22アイツ登場:2008/08/01(金) 00:00:07 ID:i/6mOXL3
ヨシダ「そうなのですか、それは素晴らしいですね」
これは賭だった。ここで法元のリビドーに火をつければ自分が危うくなる。しかし、外出する可能性も高まる。
ヨシダは賭けていた。
法元はすっかり舞い上がっていた。誰も理解してくれず、誰も認めてくれない自分の考え方に賛同してくれる
『女性』がいた。これは『彼ら』にとって一番嬉しいことである。それが正に現実に・・・。
法元「ああああ、あのですね。これから実定法を否定したヤツのところに行きましょう!そう、あの反日勢力の
売国奴法律家の「鳴海孝之」のやってる鳴海塾へ・・・」
いきなり法元は立ち上がり、グイとヨシダの手を引っ張った。そしてそのまま図書館の外へと。

二人が図書館から出てきたのを確認する月宮
月宮「出てきたで」
免下「そうか」
免下は二人の方へ車を動かす。

法元「あのねあのね、その鳴海ってヤツは・・・」
プオン
法元の目の前に黄色いハイエース救急車が。
免下「やあ、法元実定君。私は、都立松沢軍団の軍団長、免下だ」
法元「誰だ!分かったぞ!真に正しい私を捕らえに来た政財官の使者だろ!」
免下はにやりと笑った。
免下「そうだ」
次の瞬間、四方八方から待ち構えていた松沢軍団が法元に飛びかかり、確保された。

法元「うおおおおおおおおおおおおおおお〜〜〜〜不当逮捕だー、不当拘束だー」
法元は軍団員に鎮静剤などを投与されている。
彼の様子を見ながらハンドルを握る免下がつぶやく。
免下「・・・現行法は無効だとか言っておきながら、自分が危なくなったら非合法を主張か。これだから
法律家ってヤツはうんざりだね」