!!!満州国 栄光の時代!!!

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62!!!満州国 栄光の時代!!!
高碕達之助(元満州重工業総裁)
 「(※赴任当初)重役には、副総裁に馮涵清氏、理事に金卓氏、監事に宋青濤氏の三人の満州人が
 いたが、彼等以外の重役は、すべて日本人で占められている。満業本社には五百名近くの従業員が
 いたが、その中心はほとんど日本人で、満州人はただの自動車の運転手とか門衛等にすぎない。
  本来、満業は日本人と満州人が手をたずさえて、開発事業に従事するというはずのものであつた。
 だが、事情は大分ちがうらしい」
 「一方、前記の満州人重役達は同僚が一緒にいる処では、決して本当のことを語らないので、夜自
 宅に呼んで話を聞くことにした。幸い彼等の妻君は日本語が上手であつたので、彼らを妻君同伴で、
 別々に呼んでは、話を聞く。こういう時に語る彼等の話は、昼のそれとは打つて変わつたものであ
 つた。
  妻君達は涙を流して訴えた。『日本が此処に来て以来、私達がいつも考えていたことは、どうす
 れば日本人に気に入るかということだけでした。もし日本人のやり方を悪く言つたりしようものな
 ら、すぐ職場は失われ、路頭に迷うだけのことです。こんな政治は、一体、世界の何処にあるでし
 よう』誰もが皆、一様にこう語るのだつた。これは大変なことである。
  私は爾来、夜は満州人だけを呼ぶことにし、日本語の出来る満州人の官吏を、一人或は二人づつ
 限つて、共に食事を食べながら、日本人に対する不平をきくことにした。
  そこには王道も、楽土もなかった。あつたのは、力を以てする支配、ただそれだけであつた。政
 府はまれに満州人を喜ばそうとして何かすることがあつても、それは単に表面の体裁を飾るにすぎ
 ず、娯楽施設の如きも、すべて日本人本位のもので、真底から満州人の大衆を喜ばそうとすること
 は、何事もなされていない。私は義憤を感じた。・・」

  (高碕達之助『満州の終焉』(実業之日本社 1953)より)