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名無しかましてよかですか?:
「上海戦と国際法」信夫淳平 丸善 1932年
便衣隊は間諜よりも性質が遙に悪い(勿論中には間牒兼業のもある)。間諜は戦時公
法の毫も禁ずるものではなく、その容認する所の適法行爲である。たゝ間牒は被探國の
作戦上に有害の影響を與ふるものであるから、作戦上の利益の防衛手段として戰時重罪
犯を以て之を諭ずる權を逮捕国に認めてあるといふに止まる。黙るに便衣隊は交戦者た
る資格なきものにして害敵手段を行ふのであるから、明かに交戦法規違反である。その
現行犯者は突如危害を我に加ふる賊に擬し、正當防衛として直ちに之を殺害し、叉は捕
へて之を戦時重罪犯に間ふこと固より妨げない。
たゝ然しながら、彼等は暗中狙撃を事とし、事終るや闇から闇を傳つて逃去る者である
から、その現行犯を捕ふることが甚だ六ケしく、會々捕へて見た者は犯人よりも嫌疑者
であるといふ場合が多い。嫌疑者でも現に銃器弾薬類を携帯して居れば、嫌疑濃厚とし
て之を引致拘禁するに理はあるが、漠然たる嫌疑位で之を行ひ、甚しきは確たる證據な
きに重刑に處するなどは、形勢危胎に直面し激情昂奮の際たるに於て多少は已むなしと
して斟酌すべきも、理に於ては穏當でないこと論を俟たない。
●便衣で攻撃してきたものは、正当防衛として殺害しても良い。
●便衣で攻撃してきたものは、捕らえて戦時重罪犯として裁いても良い。
●便衣で銃器弾薬を携帯していれば嫌疑者として引致拘引するのは理がある。
●漠然とした疑いで引致拘禁、確たる証拠無しで重刑に処す事などには、全く理が無い事は言うまでも無い。
これが当時の認識だよ。