返事を待っている間は他の事が何も手につかなかった。何度も問い合わせをし、
何度もユキから送られてきたメールを見返した。マナーモードのバイブを手に
感じると一瞬体がこわばった。早く読みたいはずなのに何故かそろそろと携帯を
開き、一息ついてからメールを読んだ。1度読み、もう1度ゆっくり読んだ。
やっぱり絵文字がたくさん使ってあった。僕の見たこともない絵文字もあった。『お昼はいつも買って食べるんですか??□もしそうなら明日ワタナベ君の分も
お弁当作ってきちゃっていいですか?□□迷惑ならいいんですけど□□□今日の
お昼は前よりいっぱいお話ができて楽しかったデス□□』言うまでもないけど、
僕は母親以外の誰かに弁当を作ってもらったことなんてなかった。ユキがなんと
言っているのか理解するまでに数秒かかった。いや、日本語としてはもちろん
ひとつひとつの言葉、文章の意味は理解できた。単にそれが信じられなかった。
ユキが僕に弁当を作ってくれる?
だんだんとまた喜びが膨らんできた。僕はユキの作った弁当を食べるところを
想像してみた。それがどんな事でどんな意味を持つのかよくわからなかったが、
とにかく素敵なことなんだろうということはすぐにわかった。彼女の持っていた
弁当は女の子らしいキャラクターの絵がついている小さなもので一応上下2段に
なってはいたものの、僕が高校の時に使っていた弁当箱と比べれば少なくとも
3倍は小さかった。ユキはそれぐらいの量を僕の分として作ってきてくれるかも
知れないな、と考えると到底腹いっぱいとはいかないように思えたが、不思議と
ま、それでもいいや、となった。それからいろいろとまた想像をしていたが、
メールを返していないことに気付くと慌てて返事を送った。そしてまたメールを
読み返し、保護をかけておいた。やれやれ、僕は全部のメールを保護するつもり
なのか?この調子じゃ受信ボックスはそのうちユキのメールでいっぱいになって
しまうじゃないか、と思って保護を外そうと思ったけどやっぱりそのままにして
おいた。まあ最初だからしかたないよ、と僕は自分に言い訳をした。
12時を過ぎてユキが寝ると言うまでそれから10回ほどメールをした。最後に
おやすみ、と送ると携帯をおいて僕もベッドに寝転んだ。気が張りつめていて
全く眠くなかった。ふと思い付いて目覚ましのスイッチを入れ、歯磨きをした後
部屋の電気を消してまたベッドに潜り込んだがやはり寝れなさそうだった。僕は
考えるともなくその日の事を朝から思い出していた。いろいろな事があった。
エレベーター待ちで偶然出会った。同じ自習室で隣に座って勉強をした。昼には
公園で一緒に食事をし、話をした。彼女の名前もそこで初めて聞いた。そして
帰る前には駅で携帯の番号も聞いた。帰ってからノボル君に電話をしている間に
ユキからメールがきていた。僕はユキの言葉や仕草、横顔、綺麗な長い髪が風に
揺れている光景なんかを鮮明に思い出すことができた。すべてが不自然なくらい
はっきりとしていて実際に起こったことのように思えなかった。寝て起きたら
全部夢でした、なんてことになってもおかしくないような気がした。
あまりにもうまくいきすぎている、と僕は思った。ユキが僕に好意を持っている
ことはその時にはもうかなり信じられたが、それが逆に不安を煽った。どうして
ユキは僕なんかに興味を持ったのかがわからなかった。どう見ても僕は冴えない
浪人生だったし、実際の中身も冴えない浪人生だった。少なくとも自分では人に
勝っている、または人に訴えかけるようなものを持っているとは思えなかった。
僕が女だったら僕なんて見向きもしないだろう。もっと輝いている、そう例えば
ノボル君のような、話していて楽しく魅力的な笑顔を持った男の人がいい。僕は
いつもおどおどして女の子とうまくしゃべれないし、ユキの前で笑顔を見せた
ことはほとんどないような気がした。彼女は僕に、また僕と一緒にいる時間に、
いったい何を求めているんだろうか。僕はしばらくそのことについて考えていた
けど結局わからなかった。考えても仕方がないと思い寝ることにすると、自分が
かなり疲れていることに気付いた。僕は深い眠りについた。
翌日目覚めると空はすっかり晴れ上がり、また蝉が猛烈に鳴き狂っていた。また
気温は思い直したように昇りつめ、じっとりと体にまとわりつくような熱気が
あたりを覆いつくしていた。まだ夏は終わりそうもないね、と僕はそこにいない
ユキに向かって言った。朝食を食べた後に歯を磨いていると、ユキからメールが
届いた。もう塾についたとあったので、僕はあと15分くらいで行く、と返すと
急いで支度を整えて塾へと急いだ。着いて携帯を開くと○○教室にいます、と
いうメールがきていた。僕がその教室のドアを開けるとユキは後ろの方の席で
もう勉強を始めていて、僕に気がつくと笑顔で手を振ってくれた。それからまた
二人は並んでひたすら勉強をした。昼になると彼女が指で肩をつつき、食事に
行こうと目で合図した。僕はうなずいてから立ち上がり、二人でまた公園へと
歩いていった。ユキが持ってきた弁当はちょうどいい大きさだったので僕は少し
ほっとした。お父さんが前使ってたやつなんです、とユキは説明してくれた。
僕が食べるのをユキは恥ずかしそうにちらちらと見ていた。他人に食べる所を
ちらちら見られるというのは変な気分だったが、僕は「すごくおいしいよ」と
言ってあげた。実際にそれはこれまで食べたどんな弁当よりもおいしかった。
ユキはさらに恥ずかしそうに顔を赤くしてうつむいてしまった。どうすればいい
のかわからなかったので「これ全部ユキちゃんが作ったの?」と聞いてみたが
彼女は小さくうなずいただけでもじもじと膝に置かれた自分の弁当を見つめて
いた。どうしようもないので僕はまた食事に戻ったが、恥ずかしがってる彼女は
とてもかわいかった。それから食べ終わるまではしばらく二人とも無言だった。
一気に食べ終えて「ごちそうさま、本当にありがとうね。」と僕が言うとユキは
「多すぎなかったですか?お父さん大食いだったから。最近はすこし減ってきて
それで弁当箱も小さいのに変えたんですけど」と言った。「多すぎじゃないよ、
全然。こんなにおいしい弁当ならこの倍は食べれる」と言うと「そんな・・・」
と言ったきりまたうつむいて黙ってしまった。
僕はこの時から彼女を恥ずかしがらせるのにやみつきになってしまい、ことある
ごとに照れさせるようなことを言った。おかげで怒らせてしまったこともある。
彼女は僕よりずっと時間をかけて小さな弁当を食べ終え、その間ずっと僕はお茶を飲みながらユキがこれまた小さな箸を使ってご飯を食べるのを眺めていた。
うだるような暑さと蝉の声がひっきりなしに鳴り響く中で、僕とユキの小さな
世界は穏やかな喜びと居心地のよい平和に満ちていた。僕は何も考えずに彼女の
手や口もとが動く様を見ていた。その白く透きとおったなめらかそうな肌は、
まるで何かの象徴のように微妙な陰影を変化させながらまぶしい夏の陽差しを
受けて輝いていた。昼食が済むとさすがに暑くて汗が出てきたので日陰を求めて
前と同じ屋根のあるベンチに座り、また話をした。ユキはやっぱり僕のことを
いろいろと知りたがったが、残念なことに自分自身のことについて僕はあまり
多くの語るべきことを持っていなかった。そこで二人は途切れがちにとりとめの
ない会話をした。僕は自分が自然と微笑んでいることに気付いた。
塾に戻るとまた僕らは勉強に集中した。7時を過ぎると彼女を駅まで見送り、
寮に帰って夕飯を食べながらメールを送った。今度は待っている間も勉強した。
(返事が気になってあまり集中できなかったけど)12時頃におやすみと送って
寝た。次の日も同じような感じだった。ユキはまた弁当を作ってきてくれて、
僕においしいと言われると恥ずかしそうにうつむいていた。自習室では並んで
座り、一言もしゃべらずに勉強をした。駅まで見送り、寮に帰ると寝るまでの間
10回くらいメールを交換した。そんな風にして1週間ほどが過ぎた。その間
毎日彼女は弁当を作ってきてくれた。食事の後と駅まで送る間は時々沈黙の入る
僕ら独特のリズムの会話を楽しんだ。会話とメールを積み重ねて僕らはお互いを
徐々に知っていき、それにつれて少しずつ二人の間の距離は短くなっていった。
いつまでもこんな日が続けばいいと思うほど幸せだった。しかしもちろんそんな
ことはない。時は僕らの気持ちを考慮せずに流れ、季節は移ろってゆく。夏は
その猛烈な暑さの記憶だけ残して終わろうとしていた。
706 :
ワタナベ ◆ak1txl.bKk :2006/02/26(日) 09:02:31 ID:vrIgIk4E0
ここまでです。やっと夏が終わりそうです。これであと半年以上・・・
改行ミスが2箇所ありますね。見てないフリをしておいて下さい。
お疲れさまっ!!すごいいい展開で、自分も恋がしたくなっちゃいましたww
続きも楽しみにしてますね!!
ユキタソ(;´Д`)ハァハァ・・・
709 :
大学への名無しさん:2006/02/26(日) 12:08:51 ID:ySJXvT+c0
ああ後期受かって俺もこんなキャンパスライフをおくりたいぜ
感動した!俺もこんな恋がしたいよ・・・;;
ってかノボル君かっこよすぎw
続き楽しみにまってま〜す!
わたなべええええええ
好きだ
オツカレーション
最高だw
713 :
大学への名無しさん:2006/02/27(月) 00:35:41 ID:MAHwimv/0
上げとくか
やっと読み終えた(*´Д`)=з
わたなべ最高!!つか文才すごいな
これが釣りだったとしても後悔はしない
明日も楽しみにしてる!!!
もう読んでるだけで、
ユキちゃんのかわいさが伝わってくるよね(;´Д`)ハァハァ
さっきとても重大なミスを犯しているのに気付きました。
24日と26日で友達の名前が変わっちゃっています。誰も気にしないかも
知れないけど、一応【24日のトオル君=26日のノボル君】です。
>>710さんのレスを見て気がつきました。あれ?と思った方がもしいたら
すみませんでした。間違いの原因を打ち明けると、実はノボル君というのは
本名なんです。本人にも一応言っておいたら全然気にしてませんでしたが。
ということでミスの多い物語は重大な局面を迎えます。夏の終わり。
8月31日、よく晴れた暑い日だった。その日ユキは朝からあまり元気がない
ようだった。会ったときに挨拶を交わしたきり食事中も一言もしゃべらなかった
し、いつものような豊かな表情はどこかへ隠れてしまったように寂しそうな顔で
ずっといた。遠くを見るような目でどこかをじっと見つめているようだったが、
彼女が何も見ていないことは僕にもわかっていた。あるいはそれまでの1週間の
僕ら二人をじっと見つめていたのかも知れない。その幸せな時間はこれ以上続く
ことはないということを彼女も僕もよく知っていた。翌日からユキはまた学校が
始まり、それまでのように毎日一緒に自習して昼を食べたりと1日を共に過ごす
ことはもうできなくなる。僕は朝からあることを心に決めていた。ユキにもう
1度ちゃんと好きだと言い、付き合ってくれと言うのだ。もちろんそんなことを
言ったからといってもう毎日ずっと一緒にいることはできなくなる、という事が
変わるわけじゃないのはわかっていた。しかし言わずにはいられなかった。
僕はいつものようにユキより早く食事を終え、なんと言って切り出そうか悩んで
いた。隣ではユキが膝の上に置かれた弁当に視線を落としたまま普段よりさらに
ゆっくりと食べていた。僕はあれこれと言葉を探しながら何気なく目の前にある
鉄棒を眺めていた。ふと気がつくとユキは弁当を脇にのけ、下を向いたまま手で
顔を覆ってかすかに肩を震わせていた。彼女が泣いているとわかるまでに時間が
かかった。僕はどうしたらいいのか全くわからなかった。適当な言葉は何ひとつ
思い浮かばなかった。とりあえず彼女の肩に優しく手を載せた。不規則に震える
彼女の肩はほとんど肉がついていないようで、手を触れると骨の存在を感じた。
不思議な感触だった。ユキはそのうちにだんだん落ち着いてきて、やがて小さな
声で「ごめんなさい」と言った。その一言は僕の胸をとても強く締めつけた。
目の奥すぐそこまで熱いものがこみあげてくるのを感じた。僕はそっと彼女を
抱き寄せた。
ユキは僕に体を預け、心臓の音を聞くような格好でまた少しの間泣いていた。
僕はどんな言葉をかけていいかわからずに、ただ頭を撫でていた。まっすぐで
綺麗な髪は僕の手の動きにあわせてさらさらと波うった。前にもこんなことが
あったな、と僕は思い出した。彼女は僕が遅れたことでひどく落ち込んでいた。
その時は何が彼女をそうさせたのかよくわからずに、ただ抱きしめていた。でも
今はわかる。彼女の不安が、悲しみが、孤独が、恐怖が、そして絶望がこうして
触れ合っているお互いの肌と肌を通して僕にも伝わってくる。彼女は僕に心を
開きそれらを伝えようとし、僕もまた心を開いてそれらをつかもうとしていた。
彼女は深い、とても深い海の底にいた。そこには光も届かず、空気もない。ただ
重く冷たい水が体を押しつぶそうとしていた。声を出して助けを呼ぼうとしても
水の中ではただ泡となって浮かんでいってしまうだけだし、周りには誰ひとり
としていない。深い海の底では何も見えず、何も言えず、呼吸すらできない。
そして彼女をそこへ突き落としたのは僕であり、彼女を見つけそこから助け出す
ことができるのも僕ひとりだった。僕はユキのほほを伝う涙を一粒指に取り、
その温度や感触を確かめるように親指とひとさし指をこすり合わせた。その涙は
温かく、同時に冷たかった。「君のことが好きなんだ」と僕はまた言った。前に
僕は自分のためにその言葉を言った。しかし今度は彼女のためにそれを言った。
ユキは僕の胸でうなずいた。何か言いたそうだったが、言葉は出てこなかった。
「ずっと一緒にいよう。離れていても、ずっと一緒に。」と僕は言った。それは
二人のための言葉だった。「僕と付き合ってくれる?」と僕が訊ねると、ユキは
大きく何度もうなずいた。「ありがとう」と僕は言って彼女の小さな頭に僕も
頭を預けた。しばらくして彼女も「ありがとう」と言った。かすかに震えている
その声を、僕はたまらない程いとおしく感じた。微妙な力の加減ですぐにでも
壊れてしまいそうなもろく美しいガラス細工のような彼女の心を、いつまでも
この手で守っていきたいと思った。
僕はさらに少しだけ強くユキの体を抱き寄せた。ユキも僕の胸に顔を押し付け、
腰の辺りに腕を回した。彼女はもう泣いていなかった。目を閉じたまま夢で見た
寝顔のように安らかで優しい微笑を顔に浮かべていた。しばらく僕らはそのまま
黙って抱き合っていた。僕はほほに触れる彼女の細い髪の感触と、そのほのかな
(恐らくシャンプーか何かの)香りを楽しみ、脇に感じる彼女の体重を楽しみ、
胸に感じる彼女の吐息の温もりを楽しんだ。すべては幸せに満ち、うるさい蝉の
声さえも僕らを祝福しているように思えた。「知ってましたか?」と少しして
ユキが言った。「何を?」と僕が聞くと、「私が、その、ワタナベ君のこと好き
なんだってこと」とゆっくり言った。だんだんと恥ずかしさからか声が小さく
なっていった。「不安ではあったけど」と僕は答えた。「知っていたというか、
そうであって欲しいってずっと思ってたよ」「迷惑じゃないですか?」とユキは
また聞いてきた。「迷惑って、え、何が?」と僕は驚いて聞き返した。
僕は少し驚きすぎたようで、彼女を慌てさせてしまった。「いや、その、なんて
言うかその・・・私と・・・本当に付き合ってもいいと思っているんですか?」
「付き合って」と言うときに声が一段と小さくなってしまうところがかわいいと
思った。「本当にって、そりゃ本当に付き合って欲しいと思ってるよ。とても」
「でも私なんかにかまってると勉強できなくなったりしないですか?」「そんな
ことないよ。というか、もう気にしないでいることなんてできないんだから例え
勉強できなくなったとしてもそれは付き合ってなくても変わらないんじゃない?
もしかしてユキちゃんは勉強できなくなったりして迷惑なの?」と言って僕は
少し不安になった。彼女は顔を上げて何度も首を振り、必死に否定してくれた。
「全然、全然そんなことないです。すごくうれしいです。本当に。ただ私のこと
迷惑だとか邪魔だとか思って嫌いになったりしないかなって思って・・・」と
最後は泣きそうな声になってきた。僕は笑って彼女の頭を撫でた。
「なんて言うのかな、そりゃユキちゃんのこと気になって勉強できなかった時も
あるよ。でもそれは迷惑とか邪魔とかじゃないんだ。僕もこんな気持ちになった
のは初めてだからよくわかんないんだけど、なんて言うか、うーん・・・なんか
うれしいんだ。変かも知れないけど、ユキちゃんのことで頭がいっぱいになって
いる自分がうれしいっていうか・・・わかるかな?うまく説明できなくて悪い
んだけど、ごめん」と僕が言うと、ユキはまた恥ずかしそうにもじもじしながら
「なんとなく・・・わかる気がします。私もそうだから」と答えた。そして照れ
隠しににっこりと笑った。僕も笑って「なんだか僕たちは似てるみたいだね」と
言った。ユキはうれしそうにうなずいて、「でもワタナベ君はちゃんと思ってる
こと言ってくれるけど、私は恥ずかしくて全然だめだから、全部ワタナベ君に
言ってもらってるような気がします。ごめんなさい。本当は心でずっと言ってた
んですよ」と言った。「何て?」と僕が聞くと、彼女はまたうつむいてしまった
けど、消え入るような小さな声で「その、好きですって」と言った。
それからちょっとして僕らはまた塾に戻り、夜まで勉強した。いつものように
ずっと何もしゃべらなかったけど、時々僕が顔をのぞき見ると彼女も僕の方を
見てにっこり笑ってくれた。僕もうれしくなって笑い返した。7時になって駅へ
向かう間に、僕は学校にいる間もメールを送っていいか訊ねた。授業中はあまり
すぐ返せないかも知れないけど、と言ってくれた。「実は私も今そう言おうかと
思ってたんですよ」とくすくす笑っていた。そして「あ、でもそっか。明日は
始業式だけだし、火曜日まではテストで午前中だけなんだ。だからお昼からまた
塾に来れますよ。」と言った。予備校の授業は5日の月曜からで、1日は朝から
ホームルームのようなものがあったものの、どうやら日曜まではそれまでどおり
一緒に昼ごはんを食べれるようだった。その事実はユキをとても喜ばせた。僕も
彼女の笑顔を見ているとすごくうれしく思えた。「それじゃ、明日は始業式が
終わったらダッシュで塾に来ますね。」と言って彼女は改札を通っていった。
725 :
ワタナベ ◆ak1txl.bKk :2006/02/27(月) 12:42:52 ID:70OzEZLq0
今日はここまでです。
この日のことは今でもすごく鮮明に記憶に残っていて、逆にそのせいで
書いていて全然正しく表現できてないんじゃないかと不安になりました。
でもおそらくこれが今の僕に書ける精一杯の文章です。
そのときの気持ちや様子が皆さんにうまく伝わるといいのですが。
はあああぁああああああああああああ´Д`;;あああああああああああああぁあぁあああん!!!!
urayamashi-------
mou shinitaidesu
728 :
大学への名無しさん:2006/02/27(月) 13:44:15 ID:a9Cyrm6fO
オレの妄想ストーリーが現実になっていく。。うらやましいなぁ。
729 :
大学への名無しさん:2006/02/27(月) 14:18:44 ID:ilRN5UwQ0
今日始めてこのスレみたけど、感動したよ(@_@。
いやぁ青春ですなぁ
漏れもそんな浪人生活を送りたかった(~_~)
730 :
大学への名無しさん:2006/02/27(月) 14:30:22 ID:7p9apbIy0
いいぞ。わたなべ!!
731 :
大学への名無しさん:2006/02/27(月) 18:51:43 ID:g7ssQCKE0
すごいです!!内容もだけど表現力が!!
732 :
大学への名無しさん:2006/02/27(月) 19:20:50 ID:k8dVJEjUO
ヒント 語り口調が小説風で細部が細かすぎるのは創作
具体的な行為に触れだしたら確実に空想
事実を報道するやつは淡々と語ってくよ
会話とか行為は一行がザラ
華麗にスルー
734 :
大学への名無しさん:2006/02/27(月) 19:24:35 ID:sTugVNuT0
でも文豪は気分乗るとどんどん書いちゃうよw
735 :
大学への名無しさん:2006/02/27(月) 20:00:42 ID:VrBb+ofBO
てか事実かどうかなんてどうでもいいんだが
釣って馬鹿にしようとかでもなさそうだし
おもしろい恋物語が読めればそれでいい
実話しか読む価値ないんなら小説家なんて
この世に必要なくなってしまうわけだしな
わざわざ創作だとか書き込むヤシは
うらやましいだけだろw
736 :
大学への名無しさん:2006/02/27(月) 20:27:03 ID:MbEcrd350
737 :
大学への名無しさん:2006/02/27(月) 20:43:54 ID:k8dVJEjUO
いや
体験系のスレ目通してると内容以前で妄想かどうかわかるのよ
k8dVJEjUOは色んなスレで釣られてきた苦い経験をお持ちのようです
739 :
大学への名無しさん:2006/02/27(月) 21:14:24 ID:VrBb+ofBO
>>737 スレ荒らしたくないし怒らせるつもりもないけど
そういう事を書き込む必要ないだろ
信じてる人も信じてない人も俺みたくどっちでもいいと思ってる人も
楽しめる人は読んで楽しめない人はスルーすりゃいい
もうこんな話はやめよう
俺たちはただユキタンハァハァしてテラウラヤマシスってしてたいだけなんだ
俺は超期待してるぞ
頑張れワタナベ
いやーおもしろかった
ってか浪人決定してからこれだけが楽しみになってる自分にorz
こなぁぁぁぁぁゆきぃぃぃぃぃ!!!!!
743 :
大学への名無しさん:2006/02/27(月) 23:04:28 ID:QmwHUQFK0
下手に大学下げてまで現役!って思ってたけど浪人しようかと思う自分にorz
746 :
大学への名無しさん:2006/02/28(火) 16:45:38 ID:Y8M8gMU/0
下がりすぎてるような…上げときます
これがたとえ作り話だったとしても
先が気になる(;´Д`)ハァハァ
748 :
大学への名無しさん:2006/02/28(火) 19:52:41 ID:pDMF+UPl0
今日のまだかなー
今日のねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
(´・ω・`)とゆーとり_| ̄|○だな
昨日は書き込めなくてすみませんでした。
遊びに行って帰ってきたら疲れてテレビ見ながらそのまま寝てしまいました。
夜に書き込むつもりで用意しておいたんですけど・・・
ってことで今日は朝から昨日の分を書き込みます。
現役の人は今日卒業式ですよね。ご卒業おめでとうございます。
僕はかなりラッキーだったにせよ、浪人生活も決して悪いことばかりじゃ
なかったと友達も皆言っています。だから浪人決定しちゃった人もあまり
悲観ばかりせず今日ぐらいお祝い気分に浸って過ごしてもいいんじゃない
でしょうか。まだ試験がある人はそれどころじゃないかも知れませんが。
そして僕らは付き合いだした。それまではどんなものなのか想像もつかなかった
けど、付き合っている女の子がいるということは決して悪いものではなかった。
いや、正直に言ってかなり素晴しいことだった。生活が一変するわけではない。
ただユキが僕の彼女だという事実に僕は満足し、安心し、喜んだ。試験が終ると
彼女は毎日6時間か7時間の授業の後そのまま塾に来て、塾の授業を受けたり
自習室で勉強したりした。僕も夕方に授業が終ると自習室で勉強し、ユキが来る
のを待った。彼女は塾の授業が夜遅くまである日もあったので毎日とはいかない
けど、可能な限り僕たちは会い、並んで勉強し、寮の門限が迫ってくると駅まで
一緒に歩いた。彼女が学校で、僕も予備校で授業を受けている間はメールを送り
あった。二人ともまじめに授業を受ける方だったのであまり回数は多くないけど
重要なのはそんなことじゃなかった。話題も別にこれといったものはなかった。
僕たちはメールをすることによって離れていてもお互いに「つながっている」と
感じていたかっただけなのだ、恐らく。
休日には朝から同じ自習室で勉強し、昼にはユキの作ってきた弁当を二人で食べ
ながら話をし、また夜まで勉強して駅まで送って別れる、という夏休み後半の
1週間と同じような過ごし方をした。夜はメールでおやすみを言って眠りにつき
朝はメールでおはようと言って目を覚ました。そんな具合に一緒にいない間は
常にメールをしていたので僕は9月に初めて1月分の無料通話を使い切った。
それまでは前月の繰り越し分がさらに翌月繰り越しに、といったようにどんどん
無料通話が増えていたのだ。それでも僕らは電話はほとんどしずにいつもメール
だったので無料通話を越えることはなかったのだけれど。とにかく毎日ユキと
メールをしていたおかげで僕はかなりメールを打つのが速くなったし、絵文字の
使い方も覚えていった。彼女はありとあらゆる絵文字を使った。僕にはなぜその
絵文字を使うのかわからない場合もあった。だいたいペンギンの絵文字なんて
メールに使わなきゃいけない人がいるんだろうか。でも彼女が使えば不思議と
違和感はなかったし、ペンギンも心なしか使われて喜んでいるように見えた。
9月の半ばにノボル君から電話がかかってきた。この前の子とはどうなった、と
彼が訊いてきたので僕は付き合ってくれと言った、と答えた。「おっマジで!?
でどうだった?オッケーだったろ?」「うん」「やーるねーワタナベ君、どう?
どんな感じなん?てか彼女の写メ送ってくれよ」写真なんてないよ、と言うと
彼は驚いて言葉も出ないようだった。やがて気を取り直したように「まあ、今度
撮ったら送ってくれ。てか明日にでも撮れ。あ、そうだそういえばゴム買った?
ゼロゼロスリーってやつがいいぞ、薄くて。ちょっと高いけどな」「まだそんな
こと気が早すぎるよ」「ははは、冗談だって。でも買っておいて損はないぞ。
いざって時になきゃ困るからな。それよりお前らいつから付き合い始めたの?」
「えっ?えっと今日でちょうど2週間くらいかな、8月31日に言ったんだよ」
「おっそりゃいーな、覚えやすくて」覚えやすいと何がいいのかと僕が訊くと、
彼はあきれたように「お前マジでそんなこと言ってんの?」と言った。
彼によると付き合い始めた日は毎月「○ヶ月記念日」といって何かするもんだ、
とのことだった。僕は何故毎月そんな風に記念しなきゃいけないのか、何かする
といっても何をすればいいのか、31日は毎月ないから30日や翌月の1日でも
いいのか、などを質問した。僕にはとにかくわからないことばかりの様だった。
「何でって、お前何でもだよ。女の子はそーゆーの覚えててもらうと喜ぶんだ。
逆に覚えてないと怒ったりするけどね。だからそれを覚えててお祝いしようって
お前が思ってると伝わるんなら何したっていいし、日にちなんかちょっとぐらい
ずれても別にいいんだよ」「なんかプレゼントしたり?」「それもありだな。
でも浪人生で毎月プレゼント用意すんのも大変だろ?だからまープレゼントは
クリスマスと誕生日とそこまでいけばだけど1年記念ぐらいでいいんじゃね?
あとは毎月記念日にどこか連れて行ったりしてやりゃいいと思うよ」僕はどこに
連れて行けばいいかも何をプレゼントすればいいかも全然わからなかった。
またその時になったらいろいろ訊くよ、と言って僕は電話を切った。最後に彼は
また「コンドーム買っとけよ、あとヤったら教えてくれよ」とだけ言った。僕は
ユキとそんなことをするなんて想像もできなかったし、その時に自分がちゃんと
していられるか自信がなかった。もちろんそういったことに興味がなかったとか
そういうことじゃない。僕だって他人と(たぶん)同じように興味があったし、
写真やビデオでそれなりの知識は持っていた。しかしストーリー性のあるビデオ
でもその筋書きなんてとても現実には起こりえない、あるいは僕には起こすのが
不可能そうな言動に満ちていたので参考になりそうもなかった。どんな状況で
何を言えばそんな状況にもっていくことができるのか、と電話の後しばらく僕は
考えていたが、ユキからメールがくるとなんだか悪いことをしたような気持ちに
なってやめた。なんとなくそんな想像をしていたなんてユキに知られたら嫌われ
てしまうような気がした。
勉強の方はユキと付き合い始めてからもかなり順調だった。むしろ夏までよりも
順調なくらいだった。時々あった全くやる気が起きないような日もなくなって、
何もすることがないと自然に机に向かうようになった。二人で勉強している間は
相変わらず一言もしゃべらずに集中していた。二人はいつも一緒にいたので当然
友達からもお前高校生と付き合ってるらしいじゃん、と言われ僕は認めた。もう
隠す必要も感じられなかったし、むしろそう言われるのはいい気分だった。でも
あまり詳しい話はしなかった。なんとなく二人の世界に他人を入れるような事は
したくなかった。その世界ではお互いがお互いだけで満足し、その内にも外にも
それ以上は何も望まなかった。しかしその時の僕には全くそんな気はしなかった
けど、おそらく僕らが望み夢見ていたことはこの世の中で手に入れることが最も
難しい種類のことのひとつだったのだ。僕らはそれに気付かずただ目の前の幸せ
だけを考えて身を寄せ合っていた。
9月が終わりに近づき、僕はノボル君が言っていたことを気にしていた。僕らは
1度もどこかへ出かけたりしなかったし、はたして彼女が勉強もせずに1日遊ぶ
なんてことを望んでいるのかどうかわからなかった。24日の土曜日に公園で
弁当を食べながら僕はそれとなくどこか行きたいところはないかと訊いてみた。
ちょうど1週間後の10月1日は二人とも模試や何やらが何もない日だったので
どこか行くならその日だろうと僕は見当をつけていたからだ。でもそのことには
触れずに、毎日塾で勉強しているけどたまにはどこか遊びに行ったりしたいって
思わないの?と言った。彼女はちょっと考えてから「うーん別に思わないかなぁ
・・・塾に来ればワタナベ君に会えるし」と言って恥ずかしそうに笑った。僕は
ちょっと出鼻をくじかれたような気がしたが、それでも気を取り直して「いや、
ふたりでどこか行きたくないかなって思って。ほら、その、デートとか・・・」
と言ってみた。言いながら僕も顔が赤くなってしまったようだった。
ユキはやっぱり恥ずかしそうにしながら「え、あの、それは・・・行きたいです
けど・・・でも、ワタナベ君はいいんですか?勉強できなくても?」「やっぱり
勉強したいよね。や、いいんだ。ちょっと思っただけだから」「やっ私は・・・
その、どこか行きたいなぁって思ってたんですよ、ずっと。でもワタナベ君に
うざいって思われるような気がして言えなかったんです」それだけ言うとユキは
うつむいて黙ってしまった。僕もちょっと黙っていた。どうやら僕らは同じ事を
考えていて同じ理由で言い出せなかったんだなと思うとなんだかおかしくなって
きた。ユキを見ると彼女も少し笑っていた。僕は声を出して笑った。「どこか
行こうよ、来週の土曜にでも。ちょうど付き合い始めてから1ヶ月になるし。」
と僕が言うと「覚えててくれたんですか?」と言ってユキは喜んだ。ノボル君に
感謝しなきゃな、と僕は思った。彼に言われなきゃ僕はたぶんそんなこと気にも
しなかっただろうし、それで彼女を喜ばせることもできなかっただろう。そして
つくづくノボル君のすごさに感心した。
「どこか行きたいところある?」と僕が訊くとユキはしばらくうーん、と言って
考えていた。ベンチに足を乗せ、ひざを折り曲げて両手で抱え、ひざのあいだに
あごを載せて考え込んでいるユキの姿を僕は眺めていた。ユキのちょっとした
仕草や声、しゃべり方なんかのひとつひとつが僕にはとても可愛く思えた。でも
僕はそれまで一度も彼女に「可愛い」と言った事はなかった。たぶんそう言うと
彼女はとても恥ずかしがってまたさらに可愛く見えるだろうと思ったが、そんな
ことを言ったら自分まで恥ずかしさでまいってしまいそうだった。僕はしばらく
ぼーっとそんな事を考えながら彼女のことを見つめていた。彼女はその視線に
気付いて恥ずかしそうに笑い、「ワタナベ君が行きたいところに行きたいです」
と言った。「まいったな」と言って僕は笑い、「じゃあ僕が行きたいところは
君の行きたいところだ」と返した。「ずるい」と言ってユキは口を尖らせながら
ほほをふくらませて僕をにらんだが、僕はそんな可愛らしいにらみを見たことが
ないと思った。「わかったよ。考えとく」と僕は降参した。
760 :
ワタナベ ◆ak1txl.bKk :2006/03/01(水) 08:19:33 ID:7yRkxsVS0
と今回はここまでです。
僕が書くとユキがすごい可愛い子の様にみんな思うでしょうけど、
実際に彼女を見て同じように可愛いと思うかどうかはわかりません。
僕も初め見たときは特に可愛いとかは思いませんでしたし、顔だけでいうと
ぱっとしない方に入るのかも知れません。でも僕にとってはとても可愛いし
好きになっちゃうともう客観的な判断なんかできなくなっちゃうし、それに
そんなことどうでもよく思えてくるもんですよね。
761 :
大学への名無しさん:2006/03/01(水) 18:42:21 ID:exGpJgF00
やったら教えてくれかw
ゆきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ(;´Д`)ハァハァ・・・
もうダメだ…ゆきとわたなべの輝きについていけないorz
764 :
大学への名無しさん:2006/03/02(木) 02:31:01 ID:GElA9pz/0
エロゲ並の硬派な実力派、ワタナベwwwwwwwwwwww
ワタナベコレイイ!
>>701 中身も冴えない浪人生だったってあるけどこんな文章書けんだし十分魅力的だったと思う
766 :
大学への名無しさん:2006/03/02(木) 17:30:58 ID:r9n/hNtc0
続きが楽しみです!!
何でサロンでやらないの?
768 :
大学への名無しさん:2006/03/02(木) 23:56:41 ID:lKq3Joui0
落ちたらやだからageとく
769 :
大学への名無しさん:2006/03/03(金) 00:52:31 ID:cmdi9IEaO
オレもいちぉ
770 :
大学への名無しさん:2006/03/03(金) 01:16:23 ID:Iv7Bi13s0
まだあったのかと思って見てみたらこんな良作が投下されてたのか
771 :
大学への名無しさん:2006/03/03(金) 01:20:15 ID:J9DQjx0oO
つづきは??
772 :
大学への名無しさん:2006/03/03(金) 02:15:47 ID:7Wk+/S3KO
本になってほしいな!!
かなりおもしろくて、どこか切なくて。俺は何をしていたんだ?恋に臆病になってたんじゃないか?と卒業してみて改めて後悔。。
続きマダー?
774 :
大学への名無しさん:2006/03/03(金) 15:50:14 ID:Iv7Bi13s0
保守
775 :
大学への名無しさん:2006/03/03(金) 19:24:36 ID:djITD+7Y0
ワタナベまだー
776 :
大学への名無しさん:2006/03/03(金) 23:26:51 ID:k0Cbaqg/0
hosyu
777 :
ドリルペニス ◆XXEkEHQKI2 :2006/03/04(土) 00:26:47 ID:R14ObAI70
上げ
778 :
大学への名無し:2006/03/04(土) 01:02:13 ID:B2128Zaf0
なになに、激面白すぎなんだけど
…わたなべ?どうした?
780 :
大学への名無しさん:2006/03/04(土) 09:06:39 ID:w1z/5plM0
age
続きの掲載が大変遅くなり申し訳ありませんでした。旅行に行っていて。
それを前の時に言い忘れてしまいました。いらないことばかり書いて
そういった肝心なことは書き忘れてしまいますね。
ということでちょっと短いですがまた書き込みます。
その日の夜に僕はノボル君に電話した。忙しいから明日にしてくれないかと彼が
言ったので次の日にまたかけた。ホストの真似ごとみたいなバイトしててな、と
彼は言って前日のことを謝った。今日は良かったのかと僕が訊くと「給料はいい
けどきつくってさ、そんな毎日はやってらんねーよ。朝まで酒飲んで女と話して
馬鹿みたいに騒いでるんだぜ?」と言った。でもまあ楽しいし俺にあってる気が
するんだこの仕事、と彼が言ったので僕も心から同意した。「で、なんだっけ?
どっか行くんだって?」「うん、どこ行けばいいかな」それから長い時間電話で
話し合った。彼はいろいろと遊ぶ所を教えてくれたが、そのどれも僕が行った
ことのない場所だった。「でもなんとなくお前らはそーゆー風な遊ぶとこよりも
いわゆる『デートスポット』って感じのとこのがいい気がするな」と少ししたら
彼は言った。僕にはそれらの違いがよくわからなかったが、なんとなく彼の言う
通りのような気がした。「車もないもんなー。電車で行ける所かぁ・・・うーん
難しいな」どうやらノボル君にとっては逆にそっちの方が悩ましいようだった。
結局3ヵ所候補を挙げ、その中からユキに選んでもらうことにした。ずいぶんと
考えたが3つしか(どれもノボル君が考えたのだけれど)出なかった。何度も
お礼を言い、本当に助かったと言うと、「いやそんなのはいいんだけどさ、お前
写メ送ってくれるっての忘れてねー?ずっと待ってたんだけど」僕は忘れたわけ
ではなかったのだが、ユキに写真撮っていいかと言うのに気が引けたのでずっと
言えずにいた。「じゃあ今度遊びに行ったらその時撮って送るよ」「けっこう先
じゃん。まーいいや、それじゃーな」ありがとう、と最後にもう1度言って僕は
電話を切った。そしてベッドに寝転んでユキへのメールを打った。ふと電池の
残量が残り少なくなっているのに気付き充電器につなげた。そういえば最近よく
充電するようになったな、と僕は思った。ユキと付き合うまではずっとほかって
いて1週間に1回くらい電池が切れているのに気付くと充電していたのだけど、
その頃には2日に1回は充電して常に電池が切れないようにしていた。
二人で話し合った結果、水族館へ行くことになった。僕は小学生の時に1度だけ
水族館へ行ったことがあったが、その時の記憶はほとんどなかった。ほとんど
人生初と言っていいようなもので、それがユキと行くのだから、僕はその日が
近づくに連れて緊張してきた。だいたいデートだなんて何を話してどんな風に
振舞えばいいのか全然わからなかった。着ていく服も問題だった。寮へは自分の
持っているほぼ全ての服を持ってきていたのだが、それでもスーツケース一杯に
ならないほどだった。塾へも毎日同じような服装で行っていた。そういえば僕の
服装についてユキはどんな風に思っているんだろう、とその時初めて思った。
正直なところ服の良し悪しなんて全くわからなかったけど、どう好意的に見ても
僕の服装はオシャレだとは言えなかった。大型スーパーで3000円くらいで
売ってそうなズボンを2本と、これまた1000円くらいで買えそうなTシャツ
7枚をローテーションして夏を過ごした。
結局1枚シャツを買うことにした。木曜日はユキが塾の授業で会えない日だった
ので夕方から繁華街へ買い物に行った。親から毎月仕送りとして2万円もらって
いたのだが、昼飯しか使い道がなかったし、夏からは昼飯もユキに作ってきて
もらっていたのでその頃には2月分以上貯まっていた。僕は1万円だけ下ろして
財布に入れ、デパートの紳士服売り場へ行った。まったくどんなものにするのか
考えてなかったけど、店員に進められるままにちょっと品の良さそうな半袖の
シャツを買った。9000円くらいしてびっくりした。でも寮に帰って鏡の前で
そのいかにも清潔そうな薄いグリーンのシャツを着てみるとなんだか育ちのいい
青年のように見えて気分が良かった。似合っているかはよくわからなかったけど
いつも着ている服よりは100倍見栄えがした。とにかく僕は9000円出して
ポール・スミスというなんとなく聞いたことがあるような気のするブランドの服
と共にこれを着れば恥ずかしくはないだろう、という自信を買ったのだ。
デートの日は朝から良く晴れて、10月にしては暑過ぎるくらいに天気のいい日
だった。僕らは予備校のある駅で待ち合わせ、そこから電車に揺られて水族館へ
向かった。待っている間は早く会いたくて仕方がなかったのに、いざ顔を見ると
なんだか照れて妙に居心地が悪かった。ユキはもちろん僕以上に照れていて、朝
おはようと言ったきりずっと口を閉ざしていた。そんなユキの様子を見ていると
次第に僕は落ち着きを取り戻してきて、それにつれて体の奥深くからこみ上げて
くるような高揚感が心を満たした。水族館へ入る前に港の公園で弁当を食べ、
ちょっと海を見ながら散歩をした。あまり話はしなかったけど、僕らは並んで
歩きながら目が合っては微笑みあった。磯の香りを含んだ海風が時折強く吹いて
ユキのやわらかい髪をなびかせ、その細い一筋ひとすじに初秋の暖かな陽射しが
あたって輝いていた。その光景ははっとするほど美しく、僕はそのまま時間を
止めてずっと眺めていたいと思った。本当に夢のような1日だった。
ユキは小さい頃水族館が好きでよく連れて来てもらったけど最近はずっと来て
いなかった、と言ってはしゃいでいた。ひとつの水槽を何分もかけてじっくりと
覗いては僕に何か気付いたことを報告し、それについてふたりで少し話し合って
から次の水槽へと小走りに移っていった。彼女は水族館にいる生物ならほとんど
全てに興味があるようだった。イルカや熱帯魚だけでなく、カニやクラゲ、亀、
深海魚やどんな種類のものかよくわからない生物までとにかく全てを漏らさずに
回って観察した。僕は魚を見るフリをしながらそんな彼女の姿をずっと眺めて
いた。薄暗い館内で水槽の中からこぼれる青白い光に染まったユキの横顔を見て
いると、なんだか幻想の世界にいるように感じられた。そしてそんな幻影の中で
きらきらとした無邪気な輝きを湛えた彼女の瞳がひときわ眩しく見え、まるで
深海魚が餌をおびき寄せるためにちょうちんを灯すように、その輝きに僕は強く
惹きつけられた。ユキはそんな僕にかまうことなく水槽の住人たちとの会話を
楽しんでいた。
788 :
ワタナベ ◆ak1txl.bKk :2006/03/04(土) 10:56:57 ID:Vxtfq/8b0
今日はここまでしかありません。
明日も書き込めるはずなのでもっと先まで進めるようにがんばってみます。
受験シーズンになってからの方が話すことたくさんある気がするので早く
進めないとスレが終わっちゃいそうです・・・
789 :
大学への名無しさん:2006/03/04(土) 12:56:41 ID:dr7HXMeA0
お前これ日記にでも書き残して置いたのか?
ワタナベ!
次スレはちゃんと立ててやるから、スレの事は心配するな!
お前の文才は凄い!!
だから、焦らずお前とユキちゃんの出来事を詳しく書いてくれ!
焦って話を進めて内容が薄くなると意味ないぞ!
791 :
大学への名無し:2006/03/04(土) 18:41:46 ID:6JuI05g30
ワタナベさん面白いです、頑張ってください
ていうかこのスレにレミオのコスモスがぴったりだと思ったのは私だけっすか
792 :
大学への名無しさん:2006/03/04(土) 19:27:48 ID:aIm1c0cI0
>>791 絶対誰か言い出すと思い、それはとてもウザいだろうなと思ってたがすまないが言わせてもらう。
我慢ができなかった。ごめんなさい。
俺の中でテーマソングは音速ラインのナツメだ。
793 :
大学への名無しさん:2006/03/04(土) 23:52:40 ID:tDvpc30uO
保守
794 :
大学への名無しさん:2006/03/05(日) 00:59:35 ID:qygBYN/NO
断固保守
795 :
大学への名無しさん:2006/03/05(日) 01:50:11 ID:4uGWII9yO
みーとぅ
796 :
大学への名無しさん:2006/03/05(日) 04:20:45 ID:FVRKd/Fm0
hossyu
797 :
大学への名無しさん:
今3時間ぐらいかけてこのスレの一番始めカラ全部読んじゃったwワタナベやばいィィわw共感できる部分とか懐かしい部分が多くてたまんないっすねw俺昨日記念日だったのに忘れててさっき慌ててメール送っちゃいましたwワタナベさんマジ頑張ってねw