http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2005091300127&genre=G1&area=K10 チベット仏教の原典を翻訳、出版 出身者の大谷大教授ら
チベット仏教最大の学者、行者とされるツォンカパ(1357―1419)の代表作「菩
提(ぼだい)道次第小論」を、チベット出身の白館戒雲(ツルティム・ケサン)大谷大教
授らが翻訳、「悟りへの階梯(かいてい)」と題して出版した。
チベット仏教の原典といえる本で、「日本で知られるような密教の神秘性だけでなく、
インドで生まれた仏教のありのままの姿が凝縮されている」としている。
■ブッダの教え凝縮
仏教は、中国経由で日本に伝来したが、日中両国の文化の影響を受け、独特な形
で発展した。一方、8世紀に国家としてインドから大乗仏教を受け入れたチベットへは
原典に忠実な形で伝わった。現在のチベット仏教の主流であるゲルク派の開祖ツォ
ンカパが14世紀に、複雑多岐な教理と実践を体系づけ、後にダライラマの系統にも
継承された。
白館教授は幼くして出家し、1959年のチベット動乱でインドに亡命した。学僧とし
て教学を修め、74年に来日。日本国籍を取得し、京都の大学でチベット学などを教
えるかたわら、チベット仏教を紹介する本を数多く出版してきた。
「悟りへの階梯」は、京都市在住の宗教学者、藤仲孝司氏と共同で翻訳した。特定
宗派に限定せずにブッダの言葉すべてを受容し、実践を試みる内容で、弟子の学び
方、修行のあり方などの基礎知識から、死と無常、解脱への道、止観(瞑想(めいそう))
といった教えが段階的に記されている。
白館教授は「一つ一つの教えは矛盾しているようでも、それぞれ目的があると明確
に説明されている。日本ではチベット仏教は断片的に紹介されているが、インド仏教
の集大成であることを知ってもらえれば」と話している。星雲社刊。2940円。