(3) 陽極で生じた塩素と陰極で生じた水酸化ナトリウムが混合して反応するのを防ぐため。
陽極に炭素,陰極に鉄を用いて塩化ナトリウム水溶液を電気分解すると,
陽極: 2Cl- → Cl2 + 2e-
陰極: 2H2O + 2e- → H2 + 2OH-
全体: 2NaCl + 2H2O → 2NaOH + H2 + Cl2
のような変化が起こります。全体の反応式の右辺にある3物質が製品となるのですが,
NaOHは陰極の反応によって生じたOH-と最初からあるNa+を合わせたものです。ところが,
OH-は陰イオンですから陽極側へ移動していきやすく,陽極付近には塩素が溶け込んで
HClとHClOを生じています(Cl2 + H2O → HCl + HClO)から中和反応が起こってしまい,
製品である塩素と水酸化ナトリウムにロスが生じてしまいます。
Cl2 + 2NaOH → NaCl + NaClO + H2O
そこで両極の液が混合するのが,正確に言えばOH-が陽極の方へ行くからダメだということ
で,それを防ぐために隔膜を用いて,かつ陽極から陰極へ流れができるようにするのが
隔膜法です。現在ではより純度の高い水酸化ナトリウムを得るために陽イオン交換膜を
用いて,主にNa+の移動によって両極の電荷バランスをとるようにしてOH-の移動を防ぐ
イオン交換膜法が主流です。