無年金訴訟:説明誤り「責任なし」 窓口対応巡り国が主張
年金の受給資格を満たしているのに、社会保険事務所の説明ミスによって7年間無年金になった男性が国に損害賠償などを求めた訴訟で、国側が「窓口で説明を誤っても責任があるとはいえない」と主張している。
年金は請求しないともらえない申請主義で、誤った説明を信じて申請しなかった人は無年金になってしまう。男性は「同様の対応をされた人はほかにもいる。警鐘を鳴らしたい」と訴えている。【野倉恵】
原告は千葉県富里市の宮本守美さん(68)。受給手続きのため01年、千葉社会保険事務局佐原社会保険事務所を訪れた際、厚生年金の受給に必要な加入期間(宮本さんの場合は240カ月)を満たしていたのに、
職員が加入期間を217カ月と計算ミスしたうえ、「受給には300カ月必要で、期間が足りない」と言われた。生活苦のため昨年10月、同事務所に相談して発覚するまで無年金が続いた。同事務所はミスを認め、宮本さんにおわびの文書を渡した。
今年3月、支給遅延による損害賠償や慰謝料計約494万円を求め東京地裁に提訴。7月の口頭弁論で国側は
「窓口職員が(来訪者に)回答すべき法律上の義務はなく、回答は被保険者へのサービス」とし、「誤った説明は不適切と評価されることはあっても、ただちに国家賠償法上で違法と認められるわけでない」と主張した。
さらに、社保事務所で被保険者に渡す「記録照会回答票」を「適切に確認していれば(受給を)請求できた」として、「(年金制度では)被保険者は自分の責任で受給権を実現する」ことになっていると反論した。
宮本さんの回答票にあるのは「厚年217月(300月)83月不足」との誤った記載。代理人の東耕三弁護士は「複雑な年金の受給資格期間を一般の人は把握しにくい。
社保庁自身が『問い合わせは社保事務所へ』と広報してきた。窓口業務は基本的な社保庁の仕事で最低限の注意義務がある。老後の命綱の年金受給資格をあり得ない単純ミスで間違えても責任がないなら何のための窓口か」と指摘する。
千葉社保事務局と社保庁は「係争中でコメントできない」としている。
ttp://mainichi.jp/select/jiken/news/20090907k0000e040068000c.html >「窓口職員が(来訪者に)回答すべき法律上の義務はなく、回答は被保険者へのサービス」