【社会】改良農地、1年で「工業用」 愛知・刈谷市「農業振興」で転用図る
2009年3月8日 朝刊
愛知県刈谷市が、優良農地(農振農用地)の土地改良事業完了から1年以内に工業団地化の構想を
まとめ、転用の事前相談を受けた東海農政局が完了から3年後、許可する見込みを伝えていたことが、
分かった。同市は、市町村が「農業振興策」として進める場合は、規制の8年を待たずに転用が認めら
れる農振法の例外規定を使い、工業団地計画を「農業振興策」と主張。計画地内の地主の農家と対立
している。 (「農は国の本なり」取材班)
計画地は刈谷市野田町新田の6・2ヘクタール。隣接する同県安城市にまたがる約120ヘクタールの
広大な農地と地続きで「日本のデンマーク」と呼ばれる農業地帯の一角を占める。
一帯では明治用水から引いた用水路をパイプラインで地中化する約5億円の土地改良事業が行われ、
2004年3月に完了した。事業費の9割に税金が投入された。
農振法施行令は、農業のために投じた税金がむだにならないよう8年以内での転用を禁じているが、
市町村が「地域の農業の振興に関する地方公共団体の計画」(通称・27号計画)を策定すれば、8年
以内でも転用できる。
刈谷市は「工場で働く零細農家が耕作をやめ、大規模農家に農地が集まる」として27号計画により、
改良事業完了から1年後の05年3月、県に転用に必要な農振除外の事前相談を開始。07年1月、
東海農政局から地主の同意を条件に、転用許可の内諾を得た。
刈谷市は「トヨタの急激な増産で市内の工業用地が不足し、関連工場が市外に流出するのを防ぐため」
と工業団地化の狙いを公表。08年度内の造成を目指したが、計画地内の地主16人のうち農家3人が
「農業振興策には程遠い」などと反対、2人が保留しており、正式な転用手続きは始まっていない。
同市は、昨年末からの不況にも「2年ほどたてばまた用地不足になる」として、反対農家の農地を残し
たまま開発を進めることも検討している。
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2009030802000132.html