町を二分する町長選の末、新町長が誕生した鹿児島県伊仙町
(徳之島)で9日、課長職18人のうち16人が入れ替わる大幅な
人事異動が発令された。町民の一部からは「町長選に絡んだ報復人事」
という批判も出ているが、大久保明・新町長は「適材適所を大前提
とした人事。報復ではない」と反論している。
伊仙町では先月21日、町長選があり、3選を目指した現職との
一騎打ちの結果、新人で元県議の大久保氏が55票差で初当選した。
今回の異動対象者は62人で、全職員167人の37%。しかも、
課長や参事、室長などの課長級は35人と、異動者の半数以上。
11人の課長が決裁権のない参事などに“降格”された一方、
新課長には参事・課長補佐級から7人、係長級からも4人が
課長補佐級を飛び越えて昇格した。課長職の残り七つのうち、
議会事務局長など5ポストも入れ替え。町三役に次ぐポストの
総務課長は既に1日付で町民生活課参事兼戸籍係長に異動しており、
選管書記長以外は総入れ替えとなった。
大久保町長は「今まで能力を発揮できなかった職員を含め、
全職員にチャンスを与えた」と話し、今回の人事は「町政のリーダーが
代わった段階で職員の気持ちも入れ替えるための人事」と強調した。
前町長派と目され“降格”したある職員は「予想していたし、
覚悟も決めていた。選挙に負けたのだから次(の選挙)まで辛抱する
しかない」と淡々と語った。しかし、町内の40代の男性会社員は
「報復人事は選挙の度に繰り返されており、いつかは断ち切って
もらわないと」と半ばあきらめ気味に話した。
総務省市町村課の井上源三課長は「あまりに違法な措置であれば
議論もある」とした上で、「地方公共団体の人事であり、基本的には
町の問題との認識だ。議会で議論をし、住民がどう判断するかに尽きる。
国は是正勧告をする立場にない」と話した。
過去の地方自治体の“報復人事”としては、92年5月、秋田県若美町で
再選された町長が職員14人に降格的な異動を発令した例がある。
職員30人に「対立候補を応援する選挙運動をしたかどうか」を
問いただし、心証の悪かった者を降格させたとみられる。
長選で、大久保町長を支援したある町議はこう言い切った。
「前町長時代に歯を食いしばってきた職員もいる。今回は
正常化しただけだ」と。
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20011111k0000m040067002c.html