白山氏への冤罪報道事件
スピード狂の坊主が起こした交通事故の「被害者」を『週刊新潮』が「殺人犯」呼ぶばわり。最後は最高裁が新潮を断罪
【どんな事件?】
北海道・大滝村の国道で、スピード狂の男がハンドル操作を誤って対抗車のトラックに突っ込み死した。被害者の男性も傷を負った。
ところが『週刊新潮』は、被害者の男性が創価学会員、加害者のが日蓮正宗の坊主であったことから、悪辣なデマをねつ造。
なんと、被害者の白山信之氏を「殺人犯」に仕立て上げるデマ記事を掲載した。
この「えん罪事件」を使って一部の政治家や売文屋達が騒ぎ立て、無実の一市民が弾圧されるという前代未文の人権侵害事件に発展した。
【デマ騒動の経緯】
1994年・7月21日・事故発生
8月22日・午後5〜6時
『週刊新潮』タイトル決定
午後8時〜9時・記者が被害者の白山信之氏に取材
「大変なことになりますよ」と脅す
新潮記者は最初から白山氏を犯人扱いし、脅し同然の取材態度だった。
8月25日・『週刊新潮』(9月1日号)発売
10月5日・『週刊新潮』を提訴
10月11日・国会議員がデマ記事を使って国会質問
1996年・12月20日
札幌地裁が『週刊新潮』を断罪
1997年・9月25日
札幌地裁が『週刊新潮』を断罪
1998年・3月26日
最高裁が『週刊新潮』の上告を棄却
『週刊新潮』の敗訴が確定
『週刊新潮』の記事の名誉毀損を認定し損害賠償110万円の支払いを命じた。
【判決のポイント】
1・記事は名誉毀損にあたる
2・あらかじめ決められた方向に沿って取材が行われた
新潮社に110万円の賠償命令
ポイント1
事故は「スピード狂」坊主の過失だった
警察も保険会社も「100%大橋の過失」
事故の加害者、大橋信明は当時、日蓮正宗・深妙寺(北海道・室蘭市)の住職で、「スピード狂」として知られていた。
問題の事故でも、制限速度四十キロの国道を、なんと推定時速百キロで走行。カーブを曲がりきれずにセンターラインをオーバーし、対向車の白山氏のトラックに突っ込んだ。
当然のことだが現場検証を行った警察は「事故は大橋の過失によって起きたもの」と結論。保険会社も大橋と白山氏の過失割合を「100対0」と認定した。
問題の『週刊新潮』の記事で最も悪質だったのが「衝突死させた」というタイトル。
あたかも白山氏が、故意に大橋を死亡させたかのように騒いだ。このタイトルを広告にも大々的に出したが、判決は「(広告も)名誉を毀損する行為に当たる」と明確に認定した。
担当の門脇記者は「『衝突死させた』は受け身の言い方だ」と強弁したが、判決は「『させ』は使役の助動詞。白山氏が加害者との印象を抱かせる表現」と断罪。
門脇記者の日本語文法の知識が未熟であることも暴露された。
さらに法廷では、記者が白山氏に取材する前から、タイトルが決まっていた事実も判明。判決は「取材は予め決められた方向に沿ってされた」と断罪した。
『週刊新潮』の門脇記者らは、取材の過程で筋書きに合わない事実が出てくると完全に無視。白山氏本人のコメントまでねつ造した。
裁判で明らかになった『週刊新潮』の悪らつな取材手法
「ねつ造コメント」をつないで記事を作る
取材した人間のコメントまで、ねつ造する
取材する前から見出しが決まっている
脅し同然の取材態度
気に入らない「事実」は一切、無視
法廷でも平然と開き直る
ポイント3
事件で騒いだ者たち
スピード狂の男が無謀運転で死亡した━━━事故は、もともと単純明快なものだった。
それを『週刊新潮』が「殺人事件」に仕立て、利害を同じくする人間が便乗することで騒動を大きくした。
◎創価学会をねたむ坊主
事故が起きた直後には日蓮正宗の阿部日顕一派が大騒ぎ。札幌・仏見寺の坊主・藤原広行らが各所にデマをまき散らし、白山氏の人権を侵害した。
◎ペテン師・山崎正友
「国会を使って騒ぐ」。このシナリオを書いたのが、恐喝事件で懲役三年の刑を受けたペテン師の山崎正友。
山崎は日顕にあてた手紙で「国会質問のための資料を山崎、段、乙骨の三人で作った」「十月十一〜十三日のテレビ中継の入る時間帯に騒ぐ」等と書いている。
◎選挙狙いの一部政治家
山崎のシナリオ通り、一九九四年十一月に、政治家が『週刊新潮』のデマ記事を振りかざして国会で質問。
事実無根のデマがテレビで全国に流され、白山氏の人権を著しく侵害した。
国会質問の直前に白川勝彦元代議士、山崎正友、段勲、乙骨正生が密談していた動かぬ証拠写真もマスコミで大きく取りざたされた。
あれから9年……
今でも私は『週刊新潮』を許せない
冤罪報道の被害者・白山氏が語る
『週刊新潮』の記者が初めて私に取材に来たのは、事故から一ヶ月後のことでした。
最初から「ぶつけた件だけど」と無礼千万の態度で、私を加害者のように扱いました。もちろん「私は被害者だ」と主張しましたが、いくら言っても、決めつけの言葉を執拗に吐き続ける。
その異様な姿に恐怖さえ感じました。
◎法廷でも不誠実な態度
裁判でも新潮記者の態度は同じ。傲慢さ。不誠実さ。どれ一つ思い出しても、いまだに怒りがこみ上げます。
何度「ふざけるな!」と法廷で叫びそうになったことか。新潮社の人間にとっては裁判も仕事の一部。
時間も費用も心配ない。一方、私たちは普通の市民。仕事を休んで時間をつくり、苦しい家計から訴訟費用を捻出して三年八ヶ月を戦い抜きました。
幸い最高裁判所の判断で私達の勝訴が確定しましたが、受け取った賠償金は百十万円。とても十分とはいえません。
しかも今日にいたるまで、新潮社からは、謝罪もなければ、あいさつ一つもありません。結局、何の反省もしていないのです。
◎今も増える新潮の被害者
新潮社は本年だけで十件の敗訴。毎週のように人権を傷つけられ、苦しむ人が生み出されているのかと思うと胸が痛みます。
「『週刊新潮』だけは絶対に許すな」「新潮社は猛省せよ。デマの被害者に謝罪せよ」と言いたい。
1989年・5月26日
フォーカス
参院選で落選した元代議士を“金権候補”等と中傷
大阪地裁/100万円、謝罪広告
1990年・5月22日
フォーカス
大手企業会長の入院中の姿を無断で写真撮影し掲載
東京地裁/200万円・謝罪広告