「姫!ネズミ捕りに引っかかりましたよ」
小間使いニュータイプが代わりにドアを開けた。
荷車に縛り上げられて乗っているのは、あの『森の王子株式上場記念パーティ』で舞台にいた若者の連中。
一応小間使いニュータイプは聞いていた。いいよもう。
「どうやって捕まえたの?」
意気揚々と答えるニュータイプ。「コヒなら食いつきそうなネタで罠をしかけました!」
「財宝発掘と金脈発見とコヒアイドル発掘してオーディションしてデビューさせてもうけてウハウハになる話をコソーリ耳打ちしたら、こんだけが食いついてきました」
「こんなベタくさい話に食いつくのはコヒしかいない」「姫!ひーめっ!どうやってヤキ入れましょうか!?」
魔法の鏡で見る。私は席を立たない。
嬉しそう。汗びっしょり、瞳孔開いてるし。
この任務で自己催眠かかっちゃったな。飲まず食わず意識は宇宙だな。
「姫、公開おしおきの準備しました!広場に“スレタテ炎上”してあります!」
広場のほうを見ると、うすら明るい。赤々と炎が燃え上がっているような匂いもしてくる。
小間使いニュータイプが二人とも私のそばへお伺いを立てに来た。
わたしはシカトした。
ニュータイプはそれでわかった。わたしの執事気取りなら当然だ。
「………かしこまりました。姫」二人はドアまで行って、コヒを捕えてきたニュータイプたちに一喝した。
「散れや!姫はいらねえってゆってんだよゴルァ!」
「どうしてそんなもの捕まえてきたんだよ!そんなことしてどうすんだよ!」
ドアの向こうから叫び声。
「姫!」「ひめー!」「ひーめー!」「返事してください姫どうしてですか!」
「姫に頼まれたんです!」「姫聞こえてますか、姫、ひめー!」
ピシャリ!ニュータイプはドアしめちゃったw
理由なんて優しいものなんてわざわざ口に出してゆってあげない。
わたしの機嫌を損ねたニュータイプはこの森でもう生きていけない。
カスの烙印を押され、ニュータイプナカーマの信用を失う。これからずっと。
わたしはじぶんの気まぐれに正直なわたしが好きw
あとで魔法の鏡で残骸だけ見物しようか。うふふ、まあなんでもいいや。
わたしは王子の役にたつのよ!わたしは王子のパートナーなんだから!
ヤバいwwミラクルうれしい!わたし期待されてる?
王子はわたしに期待してるの!王子はわたしを頼ってる!
王子はわたしに萌えもえ〜♪
はいはーいwはいはいはーいww
お安いご用でぇ〜す!
ニュータイプから、主犯になりそうなのを適当にピックアップ、顔写真とプロフィール付きでメール返信送信♪
わたしは良く思われるの。わたしは誰からも良く思われる!
わたしは今すぐ良く思ってくれる人の言うとおりにしているんだもん。
だからいつもいつもわたしの周りはわたしを良く思っている人ばっかり!
運命が思い通りにならないときにもがんばってるもの。なにしたかは三分したら忘れちゃうけどw
だってわたしは前向きだからwそれはステキなことだから!
じぶんを大切にしてどんなときもだれの前に立ってもなにをした後でも、理想のじぶんをイメージングしてリセットすることは、ステキな輝くキャリアウーマンになることだから!
わたしの気持をわたしが一番大切にすることはだれから見てもステキなことなのよ!
そんな努力屋さんなわたしだから王子にもセレブにも街の人にもみ〜んなに良く思われる!
高みに駆け上がるの!
だから結果オーライ躁ハッピィ♪躁ハッピィ♪
毎日じぶんを好きになる!
昨日よりも今日のわたしがもっと好き!
今日も椅子から立たないわたしの前には、ほかほかのステーキと炊き込み飯にラーメン、デザートの生クリームたっぷりロールケーキとワインが並ぶの。
わたしは笑顔で文句を言う。
「太ってきてるっていうのに、コヒたちもうちょっと気の効いた食材用意してないわけぇ!?
収穫は自分達とわたしも食べるって薄々わかってんでしょ。どうしたらわたしが怒らないか考えないもんかしらね!」
コヒを好きなだけ利用するわたしの頭が気持ち良くハイになる。
人工のものに頼らないことにわたしはこだわるの。
ナチュラリストなのですw
そう、コヒを見下すことは、自然素材を使った自然作用なのです。
全身の神経が健康的な活性化をしていく。
免疫も働くよ♪長生きするよ♪美容効果もあるよ♪
これ以上若返ったらどうしようw
王子に愛情表現するためのバッチメークする手間がいらなくなっちゃうわどうしようw
じぶんを愛してあげられる値打ちがあるビップの特権、コヒの分際には手の届かない相乗効果よね♪
お金とおトモダチに困らなくて悩みが無い免疫セレブ階級。
人生快適♪
あら、でもわたしの考えることいつもお金とコヒ遊びの刺激ばっかりだわね!?
とにかく、わたしはわたしの大事な健康のためには薬も魔法も使いません。
いいでしょ〜!w
王子のためだもん♪
セレブは我慢しなくていいので、細かいことが気になっても我慢しないで骨の髄までかじり尽くす。
わたしの過去に“やり残し”なんて醜い物はございませんがなにかw
わたしの辞書に我慢の字はありません。わたしって偉いわぁw
最高の勝ち組現代人ww
ニュータイプがゴマを磨る。現実に返るww
「全くです。わかりますわかります姫!コヒたちは姫に横取りさせてあげるために日々あの畑で働かさせてもらってんですよね!姫は妥協して取ってあげてるんですよね魔法でね!
そろそろ食物繊維貯めとくとか、ミネラルものを差し込むとか…ありますよね!気を利かすことがね!」
「それも嫌」でもわたしは笑顔で食べる。
ステーキ三口で食べる。ガツガツw
「それじゃあなにがお望みですか!?」
「はあ!?」
「いやいやいやいや失礼いたしました。姫に結論なんて面倒な物出させません!食べ物は直接貢ぎに来させます」
お食事はほんとは嬉しくてたまらないw
でも嬉しいときほど口動かして意地悪言ってないと嫌っw
「でも姫、これからあのしょぼい畑、耕すコヒ減らしていくんですね」
ん〜わかっちゃいないな。
「あのさ、コヒを生き物だと見るの、やめていいから」「は、はい?」
「銅線をぐるぐる巻いて筒にしていくと磁力出るよね」「……理科ですか」
「コヒは鉱物でいいんだわ。コヒからもエネルギーが取れるの。
そのエネルギーで食糧作っていいわよって、これからあなたたちがわたしにゆわれる。さあ王子とセレブも見に来る見せ処。さあなにできる?」
「ふ〜ん…はい?」「鈍い!なんも浮かばないの!?エネルギーがあるんだよ!?」
「どうしたらいいんでしょう!?」ニュータイプ、混乱して黒目くるくる。
二人目のニュータイプが出勤してきた。わたしの小間使い仕事の出勤w
話聞いてるしw
「おはよーございますっ!ビニールハウスで水栽培、24時間光当てて光栽培、一年中収穫可能、森に必要な生産分以上の収穫は商売して収益にする。
地下施設を掘りながらうまいこと温泉も出てきたら、農業にも観光にも二次利用」
一人目のニュータイプが歓声を上げた。「素晴らしい!」
じゃ、後はあなたたちで適当にやってちょうだい。
王子とセレブたちの賞賛と注目と援助をわたしだけがもらう。
それまでめんどくさい仕事ちゃーんとやっといて。
お肉ガツガツ!「わたしいいやつ!」
刺身ガツガツ!「わたしすっごい!」
スィーツガツガツ!「わたしヤバい忙しい!」
飯、野菜、酒ガツガツ!「わたしハイパーブラック労働者!かわいそう!」
食後の運動のおたけびwはい窓開けて!深呼吸!さけぶ!w
「王子ぃ〜!王子、王子、王子、王子、王子、王子、王子王子王子王子王子
王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子
王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子
王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子
王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子
王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子
王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子
王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子
王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子
王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子王子、王子ぃ〜!
王子の期待にわたしが応えるからねぇ〜!王子はわたしが役に立つのを待っていてねぇ〜!
わたしだけ待ってるよねぇ当然だよねぇ〜!わたし王子と暮らしてなくても王子のこと疑ったことないからねぇ〜!
わたしは王子のことばっかり考えてるからねぇ〜!王子が有名になるようにわたし最高のお手伝いするからねぇ〜!
王子はわたしの本気がすごいことをこれからわかるようになるからねぇ〜!
わたしのチカラがわかったら誉めてねぇ〜!絶対誉めてねぇ〜!
わたしはすごいから王子に喜びを運ぶからねぇ〜!わたしすごいんだからねぇ〜!
ヤーッ ホーォォォォォォォォォォオ!!」
窓の外はウサギもリスも小鳥さんの群れも全部いなくなっちゃってシーンとした。
わたしの頭も雑念なくなってすっきりぃ〜。
このくらいハイじゃないと調子でないから。
じぶんだい好きじゃないと他人のことをきれーに忘れられないでしょ。
わたしが期待して欲しい時にみんな期待するの。
つぎつぎに他のことがしたくなったら他人のことは忘れていかないと。
人の気持ちなんてどうでもよくなっちゃう。コヒなんて生き物じゃないしw
約束なんてしたことない。らすぃことはゆっても、したつもりじゃないもん。
そうしててもほんと毎日おもしろいことが待っている!ほんとなんか得することが待っている!
だれか誉めてくれる人が待っている!ほんとにそうなるんだもん!
コヒなんてなにしていじめても『そんなつもりじゃなかったのになあ』とゆえばついてくる。
なにされても忘れるんだってば。てことはなにしてもいいじゃない。
わたし損しないんだよw
そしてほんとにこうしちゃうじぶんがわたしはだい好きだから!
りんごで眠って目が覚めてから始まった王子との、永遠の人間関係!
王子がわたしの才能とカリスマ性と賢さと聡明さと行動力とちょっとした大食いとちょっとだけドジっ娘なところと濃い個性と優しい性格と
熱い情念と無邪気と無垢と神秘性と素直さと好奇心とチャームポイントのカワゆい自己愛と人類愛を喜んで、宇宙一愛しているの!
わたししか見えないかも!困っちゃーう!
「さっそく魔法の鏡で一斉に命じて『貢物持ってこないとナカーマ外れ』注意報を出します!姫にはプロジェクトがあるので体を健やかにしてもらわないと!」
気の効く二人目のコヒが注意報を思い付く。
思い付いたのあんただよw
わたし知らないw
やってやって勝手にw
一人目が空いた皿を片づけ始める。「かーぜーのーなーかーのーすーばるー♪」歌うな音痴。
上で君臨してやってるのはわたしだよ。プロジェクトして悦に浸るのはわたしだけなのよ。
わたしはもっと満たされる!王族よりも満足するの!
さあわたしの文句には勝手に怯えてれば?怯えてても的確に指揮取ってよね。
逃げられなくなって頭を恐怖で一杯にしてもいいよ。働きさえすれば。
それならわたしの気まぐれを勝手に先読みしちゃえばw
わたしのご機嫌を取るために走るんでしょ。失敗して罰されるのにね。
いいよそれならわたし以外を憎めばぁ?気をつかってるねwわたしに気を使いながら憎まれとけばぁ?
それならわたし以外には信用を失っちゃうしぃ。陰で大げさに狂った噂を膨らまされちゃうしぃ。
友だちを無くすしぃ。人とのつながりを無くして損するんだよね。
無関係な人にも恐れられるけど文字通り関係ないしぃ。善い人からの信用もただの噂でぶち壊されるけどね、知らな〜い。
人から人へ廻されながらだれも救ってくれないことを確かめることになるんじゃないの、わざわざ口に出してわたしはゆわないけど。
そうしたら自滅するね。孤独に自己評価を落とすんだねぇ。
自己評価が高い振りするニュータイプで遠巻きに囲んであげるから孤立を噛みしめてね。
わたしの適当と行き当たりばったりと無邪気の、無限の受け皿にしちゃうから。
自滅のドラマを楽しく見とくからね。
それしか能ないんだよね?
わたしは毎日たらふく食べる。
砂糖よりも甘い、脂と塩よりもなによりも旨い、優 越 感 とゆうご馳走を。
E N D