またお客が来た。今度は夜に来た。
魔法の鏡でスキャンダルネタを探していたのに。
見たことも無い僧侶が来た。
見たことも無い衣装。どこの宗教ですか〜。「間に合ってます」と結界を閉じようとすると、「お助けください。物売りではありません」とゆった。
後ろから、ひょろひょろのもやしのようなコヒが出てきた。
僧侶はなんと戦場で悩みを聞いたり、水や食べ物を敵味方なく配ったりしている人だった。
え〜?この人にはどんな態度取れば得なんだろう?
バックに偉い人がいるのかいないのかわかんないから、どうしていいかわかんない。
わたしに構ってほしかったら有名人になってから来てよね!わかんないじゃん!
もやしコヒは、戦場でみんなからコヒだと言われてしかたなく逃げてきたという。
自分でコヒだって知らなかったなんて、わたしの格好の餌だわよね。
寝ていたニュータイプを携帯で呼び出して、わたしの小屋の隠し部屋に壺といっしょに入れた。
この壺は通販で買った『王様のロバ耳の壺』。
壺に吹き込んだ声は全部録音される。
片付いていない開かずの間なので、ニュータイプはギュウ!と物に体をつぶされていた。
ヤレw
いいか、わたしに忠誠だか友情だかなんか誓ったやつは、なんでもヤレよ!
そして二人を小屋の中に入れ、お茶を出して話をさせた。
もやしコヒは、子どものころは自分がもやしであることも知らなかった。
大人はだれももやしに言わなかったからw
もやしは友だちといっしょに毎日習い事をした。テニスや剣術、声楽、馬術、社交ダンス。
毎週のようにもやしはベッドから起きられなくなって、友だちと同じ上達をしなかった。
ビリではないが最後に近い、目立たない中間位置だった。
食事が食べられなくなって医者が呼ばれた。
大人がぐるりとまわりを取り囲んで医者が治してくれるのを待っていた。
もやしコヒは医者に「僕はどうなんですか?」と聞いた。
「疲れ過ぎ…」と医者が言うと「由緒ある家系のうちの息子が虚弱だと言うんですか!」
医者の脳天に雷が落ちた。
「先祖代々が身につけてきた教養の数々をかわいい息子がつけられないなんて侮辱だわ!決めつけるなんてかわいそう!」
「そうよかわいそうだわ!商売なんだから断定しないで治しなさい!」
「あり得ない!これからこの子をうちの後取りにふさわしい紳士に上手に鍛え上げてくれるところが絶対あるはず!」
「こんな医者に惑わされてはいけない!この子が哀れだわ!」
「うちが求めているお返事をしてくれない医者になんてうちの領地の領民は触らせません!」
と大人たちが矢のような攻撃をして医者を追い出した。
もやしコヒは大人に「ツカレってなぁに?」と聞いても答えはなかった。
次に呼ばれた医者は「ビタミンが足りないんです」と言ったので、もやしコヒは山のようなほうれん草とカボチャを食べさせられた。
それでも上達しなかった。すごいがんばってもビリではないが最後に近い、目立たない中間位置だった。
ベッドからなかなか起き上がれなかった。考え事で一日中目まいがした。
次の医者は「砂糖が良くない」と言ったので、家の中からクッキーやプリンがなくなった。
次の医者は「牛乳と卵」、次の医者は肉やめさせ、それでも上達しなくてすごいがんばってもビリではないが最後に近い、目立たない中間位置で
ベッドから起きられなくて髪が抜けてきて湿しんとか出たので、次の医者は週に一回断食をするようにゆった。
もやしコヒはテニスコートで倒れたw
外国の医者は「知りません。成績が上昇しないなら教育者を考え直せばいいんじゃないですか!?」と逆切れした。
習い事の師匠たちは口々に「知りませんよ!自分は技術を教えたらあとは出来を評価するだけですから!上達しない理由は知りません!関係ありませんから!」
嘘をついている人がいるかもしれないと疑い、占い師にも連れて行かれた。
「知りませんよ。技能が上達しないなら本人の努力不足じゃないんですか?」
呼ぶ人、呼ぶ人が口をそろえてゆった。「知らない!知らない!知らない!」
もやしコヒは親族会議にかけられ、軍隊に入ることになった。
もやしコヒも大人たちも、彼がもやしでコヒであることを知らなかったので、
今度こそ神話のヘラクレスのような勇者になるに違いないと信じていた。
もやしコヒの家は仲良くなかったので、待ちきれない大人たちには小競り合いがよく起こった。
友だちもゆった。
「他の家でも家族喧嘩はあるよ。うちの両親も客がいないと口きいてないよ。そういうことは他人に頼れないからどうしたらいいかは自分で考えるしかないよね。じゃ、僕デートあるからさよなら♪」
もやしコヒは平和な家になってほしかったので大人たちに「勲章をもらってくる」と約束した。
それしか思いつかなかった。
軍隊では、みんなが丁寧な言葉で話してきた。
しかし軍隊でも訓練中に立てなくなった。
海の訓練では泳げなかった。雪山の訓練では雪崩に埋まって熱を出した。
ナカーマは小さな声で「ハズい」「ハズい」と陰口をゆった。休憩時間ももやしコヒと目を合わさなかった。
出身がボンビーな地方の兵隊には口も利いてくれないものもいた。
そういう兵隊同士が仲よくして、全員でわざと命令がわからない振りをし、もやしコヒが上官から叱責をよくされた。
しかしもやしコヒの一族は軍隊で偉い仕事をしなければならなかったので、カツラの国との戦場に出された。
お城から来た偉い軍隊長に向かって「一族と王国のために恥ずかしくないように勇者として完璧な戦いをしてまいります」と宣言した。
どんな仕事をする?」と聞かれたので、「ナカーマを助け、完璧な作戦で敵の攻撃から守り、無事に帰還させます」と答えた。
一族から出た軍人は代々これを言っているので、もやしコヒも暗記して言わされた。
そして戦場へ出ると、もやしコヒは細いから攻撃が当たらなかったが、まわりのナカーマたちが全滅した。
最後にナカーマがゆった。「コヒがリーダーじゃなければ良かったのに」
そこで初めてコヒを知ったんだそうな。
宣言を守れなかったから帰れなくなっていたもやしコヒを僧侶が見つけ、
森の姫なら助けてくれるかもしれない、コヒとはなんなのかと、ツカレの意味を教えてもらって、一族と友だちの待っている家へ帰れるようになんとかしてもらおうとゆって、わたしの小屋まで連れてきたんだってさwww
わたしは床を足でダン!!と踏み鳴らした。
開かずの間に隠れていたニュータイプが、話に出てきた人人数分のミニ壺コピーを取って、もやしコヒの話を医者にも一族の大人にも軍隊にも友だちにも全部に届けてしまったw
もちろん裏切られた全員が激怒!