連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 5クール目

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55100話作者
◆図書館の本(1)
「うんしょ、うんしょ。」
暑い日差しのもと、ニホンちゃんは大きな荷物を抱えて歩いています。荷物はよほど重いらしくて、ときどきよろよろしています。
ニホンちゃんが持っているのは「リナーストルマン図書館」から借りた本です。今日は本を返しに行くのですが、本が大好きなニホンちゃんは、借りすぎてしまって持ちきれなくなってしまったのです。

「ふぅー」館内は冷房が効いていて、ニホンちゃんはほっと息をつきました。
今度は何の本を借りようかなと思って本棚のほうをみると、後ろから肩をたたかれました。
「ひゃん!」ニホンちゃんがびっくりして振り向くと、タイワンちゃんが『しーっ』と言ってウインクしました。
『談話ラウンジの方にみんながいるの、ニホンちゃんもこない?』タイワンちゃんはひそひそ声でささやきます。なぜって、この図書館の司書のお姉さんはとってもこわいの有名なのです。
談話ラウンジの方を見ると、アメリー君やチューゴ君、それにカンコ君兄弟がいるのが見えました。
ニホンちゃんはこくんとうなずくと、黙ったままで(繰り返しますが、司書のお姉さんはとてもこわいのです)談話ラウンジにいきました。
56100話作者:2001/08/11(土) 20:15 ID:vLlhk/n2
◆図書館の本(2)
「やあ、ニホンちゃん」アメリー君が陽気に声をかけます。実はニホンちゃんが図書館に来るのを見つけたのはアメリー君です。「図書館に来るところから見てたよ、よろけるほど本を持ってるなんて、よっぽど本が好きなんだなぁ。」
「あ、だ、だって。読みたいもの借りたら持てなくなっちゃっただけだもん…」ニホンちゃんはちょっと赤くなりながら言い返しました。
「それより、きょうはどうしてみんなここに?」
「うん、それなんだけどね。」アメリー君はカンコ君を冷たい目で見て言いました。「カンコのところで、うちから貸している本に赤虫を大発生させたんだよ。」
「ええっ、赤虫?」
赤虫は、本に付く虫で、手入れが悪いと大発生する性質があります。それも、紙質に好き嫌いでもあるのか、アメリー君の家の本にしかつかず、図書館の本にはつかないのです。
57100話作者:2001/08/11(土) 20:16 ID:vLlhk/n2
◆図書館の本(3)
「カンコがうちのほんを勝手に持って行くから、『本を返してください』ってポスターを書いて持っていったら、ポスターの内容が気にいらんとか言って殴られるし、さんざんだったから呼び出したんだよ」
「ふぅん」本を返さない上、言いに来たアメリー君を殴るなんてひどい話です。
「ウ、ウリは悪くないニダ。あれは本を返さない奴は縛り首にすると言う脅迫文書ニダ。カンコパパになぐられて当然ニダ。」
「なに言ってるのよ、借りたものを返すのはあたりまえでしょう!」タイワンちゃんも怒っています。「うちなんか町内会に参加するから部屋中大掃除してきちっと返したのよ。それに本は大事にしないと。」
「まったくだ。本も返せないようでは町内会から出ていってもらうべきある。」
「そういえば、チューゴ君もたくさん本を読んでるけど、アメリー君からは借りてないの?」
「ああ、うちではアメリーの本ではなくて、このストルマン図書館を主に利用しているアル、利用料もタダだしね。」チューゴ君はニヤリと笑いました。「それに赤虫にも強いしな」
アメリー君はカッと頬を赤くしました。
「赤虫はきちんと本の管理をしていれば発生しないんだ。うちの本が悪いんじゃないぞ」
58100話作者:2001/08/11(土) 20:17 ID:vLlhk/n2
◆図書館の本(4)
「なんとでも言うアル、うちではアメリーの本は借りてないアル。」
だんだん険悪な雰囲気になってきました。ニホンちゃんはおろおろするばかりです。
「そ、そうだキッチョム君はどこの本を…」と言いかけたとたん、キッチョム君がこっそり抱えていた本がどさっと床に落ちました。見ると「ニホン家に」とはんこが押されたアメリー君の家からの贈呈本でした。
「あ、あんたら兄弟はぁあっ!」おもわず大きな声をだしかけたタイワンちゃんでしたが、みんなによってたかって止められました。くりかえしますが、司書のお姉さんはとってもこわいのです。
「しかし、カンコ本当にうちでは困っているんだ。本は返してくれないし、赤虫を大発生させてうちの評判を落とすし。」
アメリー君は怒りをこらえながらおだやかに言います。
「なんとかしてくれないと、うちとしてそれなりの対処をすることになるよ」
「そ、それはニッテイの陰謀ニダッ!」ついにカンコ君は伝家の宝刀を抜きました。「すべては、ニッテイ36年が悪いニダ。ウリは何も悪くないニダアァアアッ! ニッテイがウリの家の本を焼いたニダァアアッ!」
顔は真っ赤なキムチ色、つばきをとばしてわめき立てます。
「ニホンはウリにシャザイするニダ、ホショウするニダ、ヒデヨシもウリの先祖の本を…」
あまりにうるさいのでタイワンちゃんが実力で排除しようと立ち上がったとき。
カンコ君の襟首をだれかがつかみました。
59100話作者:2001/08/11(土) 20:17 ID:vLlhk/n2
◆図書館の本(5)
「だっ誰ニダッ! 今からウリはニホンにシャザイとホショウを…」
その人、図書館の司書さんは、眼鏡をきらりと光らせて言いました。
「図書館は騒ぐところではありません。談話ラウンジでも静かに会話することと書いてあります。」
そして、カンコ君はそこで初めて何が起こっているのかを理解しました。
「とりあえず、事務室でじっくり話を聞きます。後で父兄の方にも来ていただきます。」
カンコ君の家の折檻のきつさは町内でも有名です。カンコ君は必死で逃げる方法を考えました。
「ウ、ウリじゃないニダ、こ、これはニホンが悪いニダ」
「いいえ、私はあなた方をちゃんと見ていました。日の本さんも台湾さんも騒ぎを押さえようとしていました、すべてはあなたの責任です。」
言いながら、ほっそりとした見かけに似合わない強い力で軽々とカンコ君をつまみあげました。
「あなたの話はじっくり事務室で聞きます」
司書のおねえさんは、人一人を持ち上げているとはとても思えない優雅な足取りで談話ラウンジを横切っていきました。
60100話作者:2001/08/11(土) 20:22 ID:vLlhk/n2
◆図書館の本(6)
そして、ラウンジをでるとき、彼女はふとなにかを思いついたように足を止めました。
「日の本さん。」
「は、はいっ!」ニホンちゃんはとびあがりました。「な、なんでしょうか。」
「あの本は、まだ返却日にはもう少しあったから、一度に無理して持ってこなくていいのよ。」
「えっ?」
「それから、いつもたくさん借りてくれて、おねえさんはうれしくてね。ありがとう。」
おねえさんはにっこりと笑いました。
(あ、おねえさん、笑うとこんな素敵なひとなんだ…)


そして、おねえさんは、ぽかんとしているみんなをおいて事務室にカンコ君を連れていってしまいました。
事務室からは「ア〜イゴォオ〜〜」という声が聞こえた近きこえなかったとか……

#CodeRedと知的所有権関連のネタをまぜてあります。
アメリー君の本=MSのOS , 図書館 = LinuxやGNUプロジェクトと考えていただくと
わかるかと。
・中国では紅旗Linuxがメインだそうです。
・タイワンはOECD加盟に際して、不正ソフトの一層を実施。
・北朝鮮で移るPCの画像はなぜか日本語Windows
・MSの不正コピー防止のポスターを貼った社員が脅迫容疑で逮捕された
などです。

>>54さん、CodeRedネタかぶってスマソ。