連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 5クール目

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42ある日の笑い(1)
新参者です。
 ひとつ話が浮かんだので、書き込んでみました。 

 ある日、木陰で本を読んでるニホンちゃんに、タイワンちゃんが
声をかけてきました。
「ニホンちゃん、なんの本読んでるの。」
 本の表紙を見せるニホンちゃん。
「なになに・・・・、『銀河チョン雄伝説』?」
「うん、ウヨ君が貸してくれたの。」
「へぇ、どんな話なの。」
「ウヨ君が言うにはね、『才能はあるのに三年寝太郎なことをするのが好きな
主人公が、自分の偏った思想を成就させるために、敵も味方も皆殺しに
する』はなしだって。」
「・・・・・なんか、・・・・・・悪意全開な紹介ね。」
「でもね、『面白いから読んでみて』って、ウヨ君私にすすめるの。
おかしいでしょ。」
 そういって、本当に可笑しそうに微笑むニホンちゃん。
 タイワンちゃんはニホンちゃんのこういった笑顔が大好きです。
「ちょっとその本読んでいい?」
「うん、いいよ」
 と、本を手渡すニホンちゃん。
「ありがとー。」
 タイワンちゃんは本を手に取ると、その場で読み始めました。


 (続)
43ある日の笑い(2) 〜銀河チョン雄伝説1〜:2001/08/11(土) 14:45 ID:eAKzUvT.
「この世で何がもっとも卑劣で、恥知らずな行為か。それは、他人の悪事を捏造し、
そしてその捏造に乗っかかり、その人の全てを奪い取ろうとする事です。
 ウリナラマンセーなど唱える前に、まずはこの種の悪辣な寄生虫どもを
駆除する事からはじめたらいかがですか。」
 会場にいる査問会の面々は声も無かった。彼らは、チョパーがこれほど
辛辣な言葉を吐くとは、思ってもいなかったのだ。
「寄生虫とは我々のことかね。」
 震える声で、チョソは聞いた。
「それ以外のものに聞こえましたか」
 思い切り無礼にチョパーは答えた。
 ガン!ガン!
 チョソは思い切り木槌で机を叩いた。
「謂れ無き無礼、想像の限度を超える非礼だ。我々は君の性格そのものを、
疑わざるを得ない。査問会は更に延期されるだろう。」
「意義を申し立てます。」
 チョソは更に激しく木槌を叩いた。
「被査問人の発言を禁ずる!」
「どういう根拠で!」
「宗主国の権限で。・・・いや、倭奴の発言など認めない。礼に従いたまえ。」
 チョパーは思い切り無礼な態度で足を組んだ。
 彼は暴発することを初めから決めていたが、今がその時だと思えた。
「どうせなら退場を命令してくれませんかね。いっときますけどね、見るに
堪えませんし、聞くに堪えませんよ。忍耐心にも限度ってモノが・・・・・・」
 チョパーは最後まで言うことは出来なかった。血相を変えた伝令員が駆け込んで
来たからだった。
 伝令員はチョソに近づくと、小声で何かを耳打ちした。
 みるみるうちに顔色が変わっていくチョソ。
「緊急事態が起こった。査問会の方々は別室に来てもらいたい。被査問人は
そこで待っているように。」
 ただならぬ事が起こったことはあきらかだった。
(何が起こったんだろう。北チョソがウラやシエナと組んで、カンに攻め込んできた
んなら面白いんだけどなぁ。)
 ひとりそう考えているチョパーの顔は、お世辞にも聖人君子とは言えなかった。


(続)
44ある日の笑い(3) 〜銀河チョン雄伝説2〜:2001/08/11(土) 14:46 ID:eAKzUvT.
 しばらくして査問会の面々が戻ってきた。
「緊急事態が起こった。」
 着席するなり、チョソは言った。
「ウリナラの経済が崩壊した。これは全てチョパーに責任がある。
チョパーよ、宗主国として汝に命ずる。汝の持つ財力、技術、
信用の全てを無償でウリナラに捧げ、ウリナラの復興に尽力せよ。」
 チョパーは呆れた。
 しかし、チョソはそれに気付かず、さらに続けた。
「尚、これ以後、ウリナラに対する苦情の全てはチョパーが全責任
をもって対応せよ。そして賠償等が発生した場合、すべてをチョパーが
負担せよ。」
 チョパーは何も言わなかった。否、言えなかった。
 これほどの要求を受けたものは、今まで存在しただろうか。
 チョパーは笑い始めた。
 おかしいな、とチョパーは思った。
 全然可笑しくないのに、何故こうも自分は笑ってるのだろう。
 笑いが消えることなくこみ上げてくる。
「大いなる怒りは、大いなる笑いに通づる」と故人は言ったが、これが
そういうものなのかもしれなかった。

(あの言葉を言った人にあってみたい)
 絶え間ない笑いの中、ふと彼はそう思った。


(続)
45ある日の笑い(4):2001/08/11(土) 14:48 ID:eAKzUvT.
「・・・・・・なんか、言える言葉がないわね。」
 その本の一節を読んだタイワンちゃんが、そう呟きました。
「うん。でもね、私その時のチョパーの気持ちが、少しわか・・・・
はうっ!」
 ニホンちゃんは、全てを言うことは出来ませんでした。
いきなり何かに後ろから突き飛ばされたのです。
 驚いて、ニホンちゃんとタイワンちゃん後ろを見ると、カンコ君が
怒りの形相で立っていました。
「なんてことすんのよ、カンコ!」
 タイワンちゃんが怒るも、カンコ君全く無視。
「おいニホン。お前が掃除をサボるから、ウリが変わりに先生に
怒られたニダ!謝罪と賠償を要求しる!」
 あっけにとられるニホンちゃん。
 タイワンちゃん呆れて、
「何いってんのよ!私とニホンちゃんは、割り当てられたとこは
ちゃんと掃除したわよ。どうせ自分のとこを掃除しなくて、怒られたんでしょうが!
自業自得って言葉、あんた知ってる?」
 と反論するも、
「うるさいニダ!こういうことで、ウリがやらなければいけないとは、ニホンが
変わりにやると決まっているニダ!
 おいニホン、今後こういうことがあったら、苦情は全てニホンに振るニダ!
そして謝罪と賠償は全てニホンがするニダ!」
 と、言いたいことだけいってカンコ君、さっさと立ち去っていきました。
 呆然とする二人。
 突然笑い出すニホンちゃん。
 その笑顔は、タイワンちゃんの知ってるものではありませんでした。
 ただ、機械人形のように、高らかに笑い続けるニホンちゃんが、そこにいました。
 泣きそうな顔で、首をふるタイワンちゃん。
(おかしいな)
 ニホンちゃんは思いました。
 全然可笑しくないのに、何故こうも私は笑ってるのだろう。
 笑いが消えることなくこみ上げてくる。
「大いなる悲しみもまた、大いなる笑いに通じる。」と故人は言ったが、
これもそういうものなのかもしれなかった。

 (あの本を書いたひとにあってみたい)
絶え間ない笑いの中、ふとニホンちゃんはそう思いました。


(了)