連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 5クール目

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218キョリアン
その1

ニホンちゃん、今日はニホンママのおつかいです。
と、そこに
「ニホン、いっしょに来るニダ!」
突然、カンコ君が現れました。あぁ、今日も・・・
「でも、あたしお使いの途中だから・・・」
無駄かなぁ、と思いながらも一応小声で言ってみます。
もちろんカンコ君が聞いてくれるはずもなく、
「来るニダね?来ないなら謝罪ニダ!それじゃすぐ行くニダ!マンセー!」
ニホンちゃんの手を引いて、走り出しました。

「みんなぁ、元気かな〜?」
ステージの上から、やけにエラの張ったお姉さんが呼びかけます。
(え〜と、何であたしは・・・)
「元気ニダ〜〜〜!」
戸惑うニホンちゃんをよそに、カンコ君は夢中になって叫んでいます。
そう、ニホンちゃんが連れてこられたのはデパートの屋上で催される、
その名も「電波刑事キョリアンショー」の会場でした。
半分閉じちゃったまぶたで会場を見渡すニホンちゃん。
そこには、一人で盛り上がるカンコ君を除いてお客は誰もいません。
「みんなぁ、今日はぁ、来てくれてぇ、どうもありがとう〜〜」
「キョリアン!キョリアン!キョリアン!キョリアン!マンセー!」
お姉さんに手を振られて、カンコ君大喜びです。一生懸命手を振り返しています。
お姉さんの細い目にちらりと睨まれて、ニホンちゃんも愛想笑いなんか浮かべつつ、
あわてて小さく手を振り返しました。
その時です。ステージのそでからスーツ姿の男の人が現れました。
「遺憾の意を表明します!」
男の人はステージの中央に立つと、原稿を見ながら叫びました。
「あ、あなたはっ!」
お姉さんは驚いています。
誰でもいいよ、少しすてばち気味にニホンちゃんが思ったときです。
カンコ君が真っ赤な顔で叫びました。
「お前カンリョーニダね!悪の秘密結社イルボンのカンリョーニダ!!」
「・・・・・」
ニホンちゃんは少し悲しくなりました
219キョリアン:2001/08/17(金) 10:07 ID:EbfPSVSw
その2

「我々は、貴国に対し・・・」
カンリョーさんは、興奮しているカンコ君を無視して原稿を読み上げます。
「お姉さん!早くキョリアンを呼ぶニダ!謝罪と反省以外聞く耳持たないニダ!」
顔を真っ赤にして興奮しているカンコ君を頼もしそうに見つめて、
お姉さんは大きくうなずきました。
「そうね!こんなこと許してたら、過去の責任を忘れて歴史を捏造しかねないわ!」
お姉さんは、つかつかとカンリョーさんの歩み寄ると、乱暴に原稿を取り上げてしまいました。
「さぁみんな!大きな声で、お姉さんと一緒にキョリアンをよんでね!それじゃ、せ〜の!」
「キョ〜リア〜〜〜ン!」
両手を口の周りに当てて、カンコ君が叫びます。
ニホンちゃんも少し控えめに叫びます。お姉さんの目が怖かったからです。
呼び声にあわせて、妙に気の抜けるアリランが聞こえてきます。そして、
「そこまでニダ!!!」
スカジャンにジーンズ、大きく張り出したエラが特徴的なお兄さんが、ステージに現れたのです。
ステージの上で格好良くポーズをつけるお兄さんに、カンコ君が声援を送っています。
「キョリアン、いくニダ!ウリナラ半万年の伝統でイルボンなんかやっつけるニダ!マンセー!」
両手を振り回して盛り上がるカンコ君を、お兄さんも頼もしそうに見ています。
お兄さんは優しげに微笑み、カンコ君に大きくうなずくと、カンリョーさんをびしっと指差しました。
「カンリョー、ウリが相手ニダ!」
カンリョーさんは動きません。お姉さんに原稿を取り上げられた状態のまま止まっています。
お兄さんはまったく気にせず、右腕をまっすぐ上に突き上げます。
「漢江河口に垂れ流し!」
台詞と共に左腕を前に突き出します。
「流れ漂う東シナ!」
左足を上げ、ぐぐっと胸元に引き付けます。なかなかのバランス感覚です。
「ついに上陸イルボン島!」
勢い良く左足を振り下ろしながら、今度は両腕を胸の前で交差させました。
「ヒョーチャク!」
掛け声と共にお兄さんがジャンプ!同時に煙でステージが埋め尽くされました。
煙が晴れるとそこには、上半身が赤、下半身が青、白いマントをたなびかせた、コンバットスーツ?が
立っていました。
220キョリアン:2001/08/17(金) 10:08 ID:EbfPSVSw
その3

「キョリアンニダ!格好いいニダ!イルボンやっつけるニダ!マンセー!」
カンコ君の声援に後押しされて、キョリアンさんはカンリョーさんに向かっていきます。
「いくニダカンリョー!国策、ペットボトル流しキック!」
ぐはぁっ、と血を流してカンリョーさんが吹っ飛びます。
「まだまだニダ!国策、生活不要品流しパンチ!」
「い、遺憾の、意を・・・」
ケイレンしながらも、カンリョーさんがつぶやいています。
「食らうニダ!国策、使用済み注射器流しボンバー!」
どがばぎぐじゃと濁音ばかりの効果音が聞こえてきます。良く見るとお姉さんが口で効果音をつけてます。
(あのお姉さん、って・・・)
ニホンちゃんは不思議に思いながらも、深く考えないことにしました。
「げ、厳重なる・・、こ、抗議・・・」
カンリョーさんの声もキョリアンさんとカンコ君には聞こえていないようです。
「キョリアンとどめニダ!謝罪ニダ!賠償ニダ!マンセー!」
キョリアンさんは右手を大きく上げて、カンコ君に答えます。
「これでとどめニダ!ウリナラの恨、産業廃棄物流しクラッシュ!」
とうとう、カンリョーさんは動かなくなってしまいました。
「キョリアンマンセー!ウリナラマンセー!半万年の伝統の力ニダ〜〜〜!」
キョリアンさんはステージの上で腕を組んでいます。
表情は見えないはずなのに、なぜか満足そうだ、とニホンちゃんは思いました。
「この世にキョリアンある限り、謝罪と賠償は終わらせないニダ!」
「マンセーーー!謝罪ニダ!賠償ニダ!反省ニダ!(以下略)」

「・・・はぁ」
静かにたたずむキョリアンさん。そのキョリアンさんをうっとりと見つめるお姉さんと、
熱い声援を送りつづけるカンコ君を見て、ニホンちゃんはため息をつきました。
なんとなく、分かってしまったような気がしたのです。
(カンコ君と仲良くしようなんて・・・)
無駄なのかもしれません。不可能かもしれません。
でも・・・。
違うと思いたい、そう考えるニホンちゃんでした。