連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 5クール目

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193【番外編】お盆の日の回想
うだるような暑さのある日に、とぼとぼと道を歩いている二人組が
います。カナディアン君とイン堂くんです。
「暑いね…」
「うん…」
カナディアン君もイン堂君も、あまりの暑さに話をする気力も無
いようです。
「早く秋にならないかなぁ…」
「そうだね…カナディアン君は夏が苦手だからね」
「イン堂君がうらやましいよ」
イン堂君は少しだけ視線を落とすと、
「でも、僕達・・・」
「うん、わかってるよ…」
(皆まで言うな…)カナディアン君は心の中でそう呟きました。
夏の日差しは二人の影をくっきりと映し出しているのに、僕達は
どうして…。二人はお互いの影を見つめていました。
「でも!」
不意にイン堂君が声を上げます。
「ニホンちゃんが話してくれたご先祖様の様に、僕達も頑張ろう」
「うん! そうだね!」
ニホンちゃんが二人に話した事と言うのは、二人のご先祖様の話
です。カナディアン君の先祖は額にカエデの葉を付けることにより、
人間を超えた力を発揮して人々の役に立ったといいますし、イン堂
君の先祖もカレーを頭に乗せたままで戦うという一風変わった戦士
で、どんなに激しい戦いでもカレーをこぼす事は無かったそうです。
「でも…」
カナディアン君が思い出したように呟きます。
「ニホンちゃんはカンコ君のご先祖様の話はしなかったね」
「うん…そうだね…」
イン堂君がどうでもよさそうな返事をします。
「そんなことより、僕に家でカレーを食べていってよ」
「うん。イン堂君の家のカレー、すごく美味しいよね」
「えへへ…」
おやおや、カンコ君のご先祖の話は”そんなこと”ですか。
そんな事を気にする様子も無く、二人はかげろうの揺らめく道を
駆け出すのでした。