連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 5クール目

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106polestar

辺りはすっかり暗くなっています。
ニホン家の姉弟は帰途についていました。
ウヨ君は思いつめた表情で大股に歩き、ニホンちゃんはロシアノビッチ君が別れ際に漏らした言葉を思い出して
いました。
「俺だってよ、ニホン家と仲良くしたいとは思ってるよ。だけど領土だけは譲れねえんだよ。大した利害の対立
もねえし、北方池さえ諦めてくれれば、俺たちはいい友達になれると思うんだがなあ」
社交辞令ではなく本当に残念がっているようでした。身勝手もいい所だわ、とニホンちゃんは思いましたが。
「姉さん、オレ決めたよ!」
不意にウヨ君が叫びました。え、と顔を上げるニホンちゃん。
「オレがニホン家の当主になった日には、もう誰にも我が家を侮らせない。チューゴもカンコもロシアノビッチ
も、その行動にふさわしい報いを受ける。犬や蛮人には相応の扱いをするべきなんだ!」
よほど腹に据えかねたのでしょう、柔らかそうな頬が上気しています。
来るべき復讐を熱く語るウヨ君を見つめながら、危ういな、とニホンちゃんは思いました。
ニホン家は、強いのです。
ウヨ君は忘れがちですが、今でも本気になればアジア町が束になっても敵わぬほどの強さです。
そして強者には責任がつきまといます。感情にまかせて喚き散らすカンコ君の真似をしてはいけないのです。ニ
ホンちゃんの見るところ、ウヨ君はその自覚が弱いような気がします。
世の不幸とは、強さの自覚のない強者が巻き起こすもの。
その事実をウヨ君が悟る日はくるのでしょうか。
道端の草むらから虫の声が聞こえてきました。どこかで蛙も鳴いています。
ニホン家の姉弟は未来に思いを馳せながら、夜道を歩きつづけるのでした。



※ウヨ君のイメージはイラスト倉庫10番の61さんの作品が元ネタです。