連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 5クール目

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100polestar
「北方池を返せ」――ウヨ君VSロシアノビッチ――


「頼もうッ!」
ウヨ君がロシアノビッチ家のドアを叩いたのは、蒸し暑い夏の夕暮れのことでした。
学ランに愛刀・関ノ孫六。隣にニホンちゃんがいます。
ドアの開くまでの間――ウヨ君は刀の柄を地面に立てて手を休め、そしてニホンちゃんの小さな胸は緊張ではち
きれそうになっていました。
(うぅ……ドキドキするよう……)
じつは今回の訪問はニホンちゃんだけの予定だったのですが、ウヨ君が強引についてきたのです。
「姉さんは頼りないからね」
とのことですが、ニホンちゃんは不安を隠しきれません。議題といい両者の性格といい、荒れることは間違いな
いからです。
ニホンちゃんはそっと弟の横顔をのぞき見ました。
透き通るような白い肌に、大きな目。まだ稚さが多分に残る顔立ちは、どこか仔犬のように愛くるしいのです。
さらさらの黒髪に鉢巻きを締め、その瞳は迫る対決に燃えています。
一見すると可憐な美少年ですが、実はニホン家きっての強硬派とは、なかなか信じてもらえないかもしれません。
しかし彼はニホン家の嫡男をもって任じているのです。ニホン家の現状に対する不満もあり、何かと過激な言動
が目立ってしまうのでした。