連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 4クール目

このエントリーをはてなブックマークに追加
666地球町エイリアンアイズ1
「ふぅ〜、すっかり遅くなったな」

サヨックおじさんは帰路を急いでいました。組合の会議が長引いて、あたりはもう真っ暗。
ふと見上げると、空にキラキラお星様。お月様もぽっかりこんばんは・・・ん!?
なんと!?お月様がふたつあるではありませんか!!サヨックおじさんがあっけにとられ
て見ていると、片方のお月様から何やら音がきこえてきました。
♪KISSから始まる夜は熱く Because I love you 犯した罪さえ愛したい WOW
どうやら音楽でサヨックおじさんとコミュニケーションをとろうとしているようです。
♪勝っちゃった リコール会議は 勝っちゃった
サヨックおじさんは恐る恐る『勝っちゃったマーチ』を口ずさんでみました。すると、お
月様はぐんぐん大きくなり、強烈な光を放ちはじめました。
『宇宙船!?』
サヨックおじさんの目の前には、直径20メートル程のお皿のような物体が着陸していま
した。そして、搭乗口のドアがゆっくりと開くと眩しい光の中に、つり上がった目をした
ヒューマノイドが現れました。
「ワタシハ リトル・グレイ。チキューチョー ニ イジュウ シタイ」
667地球町エイリアンアイズ2:2001/08/09(木) 05:13 ID:Pdf0hJpw
「・・・よ、ようこそ、我が地球町へ!!」
サヨックおじさんは今、全地球町住民を代表して異星人と相対している感動に打ち震えて
います。これがグローバルで進歩的と言わずして何でありましょうか!!
「カンゲイ ニ カンシャ スル」
リトル・グレイはサヨックおじさんを宇宙船に招き入れ、その夜は二人だけで熱く語り明
かしました。

さて、この地球町に腰を落ち着けるならば、いかにリトル・グレイといえど宇宙船で暮ら
すわけにはいきません。翌日、二人は不動産屋さんでアパートを探すことにしました。幸
い、家賃も手ごろ、駅から徒歩10分のアパートが見つかりました。
「はい、これが契約書です。保証人は地球町の住人でないとダメですよ」
契約書を見せられてサヨックおじさんは愕然としました。保証人って何?・・・そう、サ
ヨックおじさんは世間知らずだったのです。
「オイ サヨック、ダイジョーブ ナノカ?」
「わ、わはははは!ダイジョーブ!!」
サヨックおじさんはロクな収入が無かったのですが、適当にごまかして契約書にハンコを
押してしまいました。
668地球町エイリアンアイズ3:2001/08/09(木) 05:13 ID:Pdf0hJpw
リトル・グレイが地球町に住み始めて一週間が過ぎようとした頃・・・町ではピッキング
の嵐が吹き荒れていました。設置されている自動販売機は全て壊され、お金が抜き取られ
ました。いったい誰がこんなことを・・・。目撃者の証言によると、犯人は異星人風の男
で「カネ、カネ、ハンバイキ、ハンバイキ」と片言のニホン語を繰り返しつぶやいていた
そうです。これはもう、リトル・グレイしか該当しません。
批判はサヨックおじさんに集まりました。おじさんは『地球町エイリアンアイズ(TAE)』と
いう団体をつくってリトル・グレイを支援するばかりか、他のエイリアンをも呼び込もう
としていたからです。おじさんの家の近所の壁という壁、電柱という電柱に批判のビラが
貼り付けられました。
「不愉快だ。あー、不愉快だ、不愉快だ」
無数のビラは夜のうちに貼られ、それを削除してまわるのがおじさんの毎朝の日課となっ
てしまいました。まったくキリがありません。それというのも、地球町住民の異星人への
無理解のせいで、リトル・グレイを不当に差別しているから・・・ビラをはがすおじさん
の手が止まりました。
669地球町エイリアンアイズ4:2001/08/09(木) 05:14 ID:Pdf0hJpw
「これだ!!」
おじさんが目にしたのは、地球町町議会議員選挙のポスターでした。選挙に出て、異星人
への差別を禁止する法案をつくるということを訴えれば・・・勝算あり!!議会で発言す
る自分の姿を想像して、おじさんはうっとりとなってしまいました。

さあ、選挙戦がスタートしました。お金のないおじさんは、駅前でハンドスピーカーを使
って演説をすることにしました。
「異星人に永住権を!異星人差別禁止立法を!!あらゆる情報の公開を!!!」
このくそ忙しいのに、足を止める人など誰もいるはずがありません。おじさんの必死の演
説は、ラッシュアワーの騒音にかき消されていきます。
「どうして、ぼくの言う言葉をだれも聞いてくれないのか? どうして、正しいことだと
みな知っているくせに、無視しているのか?」
人目もはばからず、おじさんはとうとう泣き出してしまいました。すると・・・奇跡!!
駅前通りを行く人々の多くが足を止め、おじさんの方を見つめています。
『・・・て、手応えがあった!!』
おじさんが感動で言葉にならず、さらに涙を流し続けていると、遠巻きにしていた聴衆の
中から一人の紳士が歩み出て、声をかけました。
「キミ、何があったか知らないが、頑張りなさい。強く生きるんだよ」
紳士は白衣を着ていました。
670地球町エイリアンアイズ5:2001/08/09(木) 05:14 ID:Pdf0hJpw
サヨックおじさんが病院から戻ると、選挙戦の熱気はどこへやら、町はすっかり平静を取
り戻していました。おじさんには60万円の借金だけが残されました。
町は平静とはいうものの、ピッキングの被害は相変わらずで、今朝もおじさんは壁に貼ら
れたビラを削除しています。
『・・・!!!』
・・・おじさんが目にしたのは、無記名でしたが★印のついたビラでした。
♪勝っちゃった 町議会議員選挙は 勝っちゃった
ビラの内容がよほどショックだったらしく、おじさんは壊れてしまいました。
♪なぜそう言えるか あえて言っちゃう、というのは ただの○○というしかない
奇声を上げて通りを走り回るおじさん・・・近所の人たちが、何事かと出てきました。

しばらくすると白衣を着た紳士が現れました。そうして近所のみなさんを前にして、こう
言いました。
「サヨックの主治医です(以下略)」

――――――――――――――――――――――――――
元ネタスレッド
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi?bbs=news&key=995359693
http://teri.2ch.net/test/read.cgi?bbs=korea&key=983697631