連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 4クール目

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632SdKfz
セキホー仮面登場(1):

「アサヒちゃん、やめて!」
ニホンちゃんは必死な表情で、原稿を抱えて走り去るアサヒちゃんの後ろを
追いかけてゆきます。
「フフフッ、久しぶりのスクープね。楽しみだわ。」
逃げ足の速いアサヒちゃんを懸命に追いかけるニホンちゃん。

「あっ!」
思わず足がもつれて「ビタンッ!」と転ぶニホンちゃん。
「あいかわらずトロいわね、ニホンちゃんは。」
地面に倒れ込んだまま、ニホンちゃんはアサヒちゃんの後ろ姿に向かって叫びます。
「アサヒちゃん!もうウソばっかり書くのはやめてよぉ!」
ふっと、足を止めたアサヒちゃんは、やおらニホンちゃんの方を振り返ります。

「ウソも方便。世間は退屈な真実よりも物語性のあるウソを求めてるのよ」
「そんな!アサヒちゃん、ウソを伝えることが問題だと思わないの!?」
「オホホホッ!全くわかってないのネ。問題はね、どちらが真実かじゃなくて、
どちらを世論が信じるかって事なのよ。アナタの拙い弁明と、このワタシの書く
読者から”天声人語”と評される程の説得力を持った記事とね。」
まったく聞き入れる様子のないアサヒちゃんに、ニホンちゃんはただ
悔し涙をうかべて、恨めしげに見上げることしかできません。

「さてと、これをチューゴ君とカンコ君に知らせたらどうなるかしらねぇ?」
勝ち誇ったように手にした原稿を高々とかざして見せるアサヒちゃん。
633SdKfz:2001/08/07(火) 22:22 ID:ZjE3Hdo6
セキホー仮面登場(2):

と、その時です!

「ヒュン!」

アサヒちゃんの耳元を鋭い風切音が掠めました。

「あっ!」
次の瞬間、アサヒちゃんが手にしてした原稿は弾かれ、そしてその
耳元を掠めた物体は原稿の真ん中を貫いて地面に突き刺さります。

「き、菊の花?」
地面に突き刺さった物体、それは一輪の菊の花でした。

「アサヒよ、弱いものイジメはもうそのくらいでよかろう。」
声は塀の上の方から聞こえてきました。見上げる2人、そこには、
全身黒ずくめに黒いマスクで顔を覆った謎の人物が立っていました。
「私の名はセキホー仮面、ニホンに仇成すものに天誅を与えに参上した!」
一瞬ひるんだ様子を見せるアサヒちゃん。
「小癪な!コレでも食らえ!」
首から下げたカメラをつかむと、セキホー仮面に向かって投げつけるアサヒちゃん。
セキホー仮面はそれをヒラリとかわすと、ニホンちゃんとアサヒちゃんの
間に割って降り立ちます。

「さあ、早く原稿を!」
「はいっ!」
原稿が串刺しのまま地面に刺さった菊の花を抜き取ろうとするニホンちゃん。
「あっ!何をするっ!」
アサヒちゃんはニホンちゃんの方に走り寄り、原稿を奪い返そうとします。

「そうはさせるか!天誅っ!」
セキホー仮面は流れるようなサイド・スローで、手にしたショット(小包)を
アサヒちゃんに投げ付けます。
「きゃあっ!」
ショットはアサヒちゃんの顔面を直撃すると、破裂して中に詰め込まれていた
無数のパチンコ玉が榴散しました。
634SdKfz:2001/08/07(火) 22:23 ID:ZjE3Hdo6
セキホー仮面登場(3):

「さあ、行きなさい!」
「ありがとう、セキホー仮面!」
ニホンちゃんは原稿をつかむと、急いでその場から走り去ります。
アサヒちゃんは後を追おうとしますが、散らばったパチンコ玉のせいで
滑ったり転んだりでなかなか上手く起上がれません。
「チキショウ!覚えてらっしゃい!」

ニホンちゃんの姿が小さくなってゆくのを見届けながら、ポツリと
つぶやくセキホー仮面。

「国思ふ 乙女心に 咎ありや     アデュー!!」

そしてセキホー仮面は幻のように消えてゆきました。

憎きセキホー仮面の正体をなんとかつきとめてやろうと、  
アサヒちゃんは連日学校新聞に特集を組んで情報収集にやっきに
なりましたが、依然として手掛かりはつかめませんでした。



後日、その記事を自宅でひとり読んでいたウヨ君。
「ふうっ、やれやれ。ホントに世話の焼ける姉貴だぜ。」
そうつぶやくウヨ君の手には、一輪に菊花が握られていました。