連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 4クール目

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478ゴルァフ
ゴルァフ(1)

「アイゴー・・」
放課後の帰り道、独りトボトボと家路につく少年の姿がありました。その光景はチャー○ーブラ○ンを
想起させるような雰囲気を醸し出していましたが、縦書きで「消防車」とでかでかと、しかも今時、
バックプリントされたTシャツに、エラの張った厳めしい顔立ちの彼では、哀れみの情がイマイチ湧きません。

 しかし、彼・・そう、我らがカンコ君は本当に落ち込んでいました。それというのも、今日もいつもの如く
どうでもイイことの言葉尻を、カンコ君流解釈に基づいてニホンちゃんに謝罪と反省を、しようとしていた所、
最近そのはしゃぎっぷりが度を超したか、『ニホンちゃん周囲5メートル以内立入禁止条例』というものが
施行されてしまったのです。
 蛇足ですが、これを無理矢理宣言したのはアーリアちゃんとタイワンちゃんです。そういうことで勿論、クラスの
法的抑制力はありませんが、他人とは違うウリナラ基準値の持ち主カンコ君の予想を超越するように、他の
皆も賛同してしまい、結果かわすことの出来ない圧力が存在することとなってしまっているのです。

 ですが、カンコ君が落ち込んでいる原因は、疎外感からではありません。そういった事情で今日は殆ど、ニホン
ちゃんと会話(ウリナラ比)が出来なかった所為なのです。この空虚な感覚は、チューゴ君やアサヒちゃんらでは
残念ながら埋めるには役不足なようです。

 そんな哀愁の漂うカンコ君ですが、その落とした肩を、ふいに後ろから叩く手がありました。
「だ、誰ニダ?」
振り向いたカンコ君の目の前に、やたらと恰幅が良い、それに比例するかのようなデカ頭のおじさんが立って
いたのでした。ちょっと見、どことなく固太りなカンコ一族の人にも見えなくもありません。
479ゴルァフ:2001/08/05(日) 10:49 ID:39XJh5y6
ゴルァフ(2)

「不愉快な時、黙りこくってても、余り良い結果には繋がらんよ。よし、おじさんと一緒にゴルァフでもしよう、ゴルァフ」

 ヨシローおじさんです。つい最近まで、ニホン一族の有力者でしたが、シシローおじさんに今ではとって変わられ、
隠居の身分なのです。しかし、カンコ君は、この人を知りませんでした。いや、実際以前何度か逢ったことはありましたが、
そのような記憶力を彼に期待してはいけません。

「ゴ・・ゴルァフ?ウリはゴルァフなんて・・」
 ・・やったこと無いニダ、と言いかけたカンコ君ですが、そんな自らの無知を認めるような恥辱的発言を、他人よりも
相当に次元の違うボーダー設定と思われるカンコ脳が許諾する筈ありません。とっさに、
「・・し、しないニダ!そ、そんな敷地もウォンも無駄遣いするものなんか・・」
 ただの無知より印象の悪い発言を余計にしたことに気付いていないカンコ君ですが、ヨシローおじさんは、
「うん、なんだ、クラブなら貸してあげるし、昔貰った会員権が腐るほどあるから、タダで出来るぞ。安心しなさい」
などと、カンコ君より更に上手を行く余計な発言をしたのでした。ヨシローおじさんが隠居した、いや、させられた原因は、
この口の軽さ、加えて「IT革命」とか「インパク」などといった、その日のうちに死語となるようなお題目を量産したりと、
方々で問題を起こしたせいです。人間的には、別段悪い人でもないのですが、それはあくまで個人間程度にとどまります。
シシローおじさんと名前は1文字しか違わないのに、人気という点で桁外れの差があるのは、こうした要因によるものが
大きいのでした。

「アイゴー!ウ、ウリは物乞いじゃないニダ!即刻謝罪とばいしょ・・」
いかにカンコ君といえども、ヨシローおじさんの言葉に侮蔑を感じましたが、その時ふと、学校のことを思い出しました。
480ゴルァフ:2001/08/05(日) 10:51 ID:39XJh5y6
ゴルァフ(3)

(・・そうニダ!ゴルァフの話題はまだ誰もしていないニダ。それならウリが率先してやっていれば、間違いなくウリが主役に
 なれるニダね・・そしたら今度こそニホンの奴に・・)
そう思い至ったカンコ君、その瞬間、ヨシローおじさんの提言に乗ってしまいました。しかしカンコ君心の打算の独白は、
ニホンちゃんに一泡吹かせる!であったのか、それともニホンちゃんに振り向いて貰える!であったのか、それはカンコ君
だけが知っていることでしょう。恐らく。

 さて、実際ヨシローおじさんと回ったラウンドプレイの内容に関しては、残念ながらお話が長くなりすぎますので、ここでは
語れません。またそれは別の機会に・・そうそう、ただヨシローおじさんと別れる際に、こう言われたそうです。

「おとなしく寝ていなさい」

 その後、カンコ君は学校で早速、ゴルァフの話を皆に無意味に尊大な態度で話しました。確かに、クラスの皆は殆ど
ゴルァフの話題をしていませんでしたが、それはただでさえ時間がかかる上に、朝も早いゴルァフがただ単に流行って
いないだけで、ニホンちゃんはじめ、殆どの人はもう経験済みだったのです。

 それでも、ニホンちゃんはいつもの人の好さと、ちょっと例の5メートル以内立入禁止条例を気まずく思っているのか、
「カンコ君、ゴルァフ出来るなんて凄いね」
とか言ってしまったので、カンコ君いきなりテンションが迷惑なことに更にアップしちゃいました。
「ニダッ!やっぱりゴルフはウリが原初ニダ、何しろゴルフ半万年の歴史がウリナラにはあるニダ!」
ぷちっ。
「きっ・・聞き捨てなりませんわ!!言うにことかいてゴルフの歴史をあなた如きが語ろうとは・・半万どころか10万年ほど
 早いですわ!!チゲ汁で顔を洗って出直していらっしゃい!!」

 直後に、エリザベスちゃんがキレてしまいました。そして今日もまた、斜陽の帰り道を独り往く、カンコ君なのでした。
そうそうカンコ君、知らないおじさんにホイホイついていってはいけませんよ。きみの家は身代金の捻出も大変なんだから。