連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 4クール目

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チエ姉さんの思い出:


ある日、ニホンちゃんが海岸を散歩していると、海を見つめながら
たたずむキューバちゃんの姿を見つけました。
「キューバちゃん、何してるの?」
「あ、ニホンちゃん、ちょとっと思い出してたんだ。昔のこと」
「昔のこと?」
「うん、チエ姉さんのこと」

キューバちゃんにはとても頼りになるお姉さんがいました。
それはチエ・ゲバラ(下原智恵)姉さんでした。
小さな頃から正義感が強く、弱い者を見るとほおっておけない
任侠気質の姉御肌、そんなチエ姉さんでした。

キューバちゃんが小さかった頃、近所に住むアメリー君は
アメリー家の権勢にものを言わせてやりたい放題やっていたのです。
当時、仮美杏地区のみんなは、悔しくてもアメリー君に逆らうことが
できませんでした。

そんな中、ただひとりアメリー君に果敢に立ち向かったのがチエ姉さんだったのです。
海水浴で海の家「プラヤ・ヒロン」に来ていたキューバちゃんをいじめていた
アメリー君を見つけたチエ姉さんは、アメリー君を徹底的に粉砕してやったのです。
そして、その武勇談は仮美杏地だけでなくアジア町やユーロ町にも広まり、
あちこちでチエ・ゲバリスタという熱狂的なファンを生み出しました。

ですが、一方で破天荒で強烈な個性のチエ姉さんは、カストロ義父さんと肌が合わず
とうとう家を飛び出してしまったのです。

「”わたしを必要としている人がいるの”そう言って姉さんは家を出ていったの」

間もなく、チエ姉さんはボリビアちゃんの喧嘩の助っ人に行ったまま行方不明と
なってしまいまったのです。そして、いつしか人々の記憶から、チエ姉さんは
消えていったのでした。

「激しい性格の姉さんだったけど、わたしにはやさいかったわ」

黒のベレー帽を小粋にかぶったチエ姉さん。
いつも不良のように葉巻をふかしていたチエ姉さん。

潮風は砂糖きび畑を吹きぬけ、キューバちゃんの頬をやさしく撫でます。
キューバちゃんはただ、海のかなたを静かに見つめ続けていました。