連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 4クール目

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325ポキ蔵
 まい ふぇあ れでぃ 1

「ニホンおね〜ちゃ〜ん」
放課後、ニホンちゃんが廊下を歩いていると、ニホンちゃんを呼ぶ声が聞こえました。
「あっ、ラスカちゃ〜ん、どうしたの?」
ラスカちゃんは手に包みを抱え、タタターと走ってきました。
そしてニホンちゃんの前まで来ると、包みを差し出し言いました。
「これあげる。」
「えっなあに?開けていい?」
「うん!」
ニホンちゃんが包みを開けるとそこには、魚やカニの形をしたクッキーがいくつも入っていました。
「うわぁ、これラスカちゃんが作ったの?」
「うん!!さっき、家庭科の授業で作ったの。」
「ありがとう。おいしそうにできてるね。」
「もちろん!!私が作ったんだから!」
と胸を張るラスカちゃん。
「・・・・ん〜〜〜〜かわいい〜〜〜〜。」
どうやらツボにはまったらしく、ラスカちゃんを抱きしめ頬ずりをするニホンちゃん。
ニホンちゃんは小さなものが大好きです。小動物も大好きです。
「食べていい?」
「うん」
ニホンちゃんがクッキーを一つ取り出し、口に入れようとした瞬間。
「姉さま、廊下は飲食禁止です。」
と聞きなれた声が聞こえました。
326ポキ蔵:2001/08/03(金) 04:18 ID:5NIku4xQ
まい ふぇあ れでぃ 2

「「うよ君!!」」
二人の声が重なりました。
「 ? ? ラスカちゃん、うよ君のこと知ってるの?」
「うん、同じクラスだから・・・。」
「へ〜そうなんだぁ。」
再びうよ君の声が聞こえてきました。
「姉さま・・・重ねて言いますが、廊下は飲食禁止です。」
ニホンちゃんの手の中には、まだ魚をかたどったクッキーがありました。
「・・・・ちょっとぐらい、いいじゃない。見逃してよ〜。」
「規則は守ってこそ意味があるものです。」
「うよ君のけ〜ち、ラスカちゃん行きましょ。」
「・・・ときに姉さま、カンコの奴を見ませんでしたか?」
「カンコ君?見てないけど・・・」
「そうですか・・・・それではまた・・」
「・・・どうしたの?」
「いえ・・最近、またカンコが調子に乗って姉さまに危害を加えているようなので、身の程をわきまえてもらおうと思いましてね・・。」
ニヤリと笑ううよ君。ニホンちゃんにはうよ君の手に持った木刀がギラリと鈍い光を放ったよう見えました。
「・・・そう・・・・・・・気をつけてね・・・」
「でわ・・・。」
ゆら〜りという効果音を付けて、去っていくうよ君。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・ラスカちゃん・・中庭にでも行こうか。」
「・・うん」
327ポキ蔵:2001/08/03(金) 04:18 ID:5NIku4xQ
 まい ふぇあ れでぃ 3

「おいし〜い、ラスカちゃん料理上手ね♪」
「ホント?」
「うん!!ホントおいしいよ。」
「よかった。」
二人は中庭のベンチに座ってクッキーを食べてました。
「・・・あ〜あ、うよ君いいなぁ。こんなやさしいお姉さんがいて・・・。」
「ラスカちゃんには、アメリー君ってお兄ちゃんがいるじゃない。」
「・・・・お兄ちゃんと私・・・・血が繋がってないから・・・。私・・・もらわれっ子だから・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・」
ニホンちゃんにはかける言葉がありませんでした。
その重い空気に気づき、ラスカちゃんは慌てて言いました。
「あっでも私、お兄ちゃんのこと大好きよ!!だって・・・・・・」

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 ラスカちゃんがアメリー君家に買われて来た頃、ラスカちゃんはぼろぼろの服を着ていました。
栄養失調で、顔色が悪く身体もやせこけていました。髪なんかぼさぼさの伸ばし放題です。
そしていつも怯えたような顔で人の顔色を窺っていました。
 そんなラスカちゃんにアメリー君は言いました。
「今日からボクがお兄ちゃんだよ。」
そして二人の生活が始まりました。
 アメリー君はラスカちゃんをお風呂に入れてあげ、ご飯を食べさせてあげました。
綺麗な洋服を着せてあげ。香水をつけ、簡単なアクセサリーもつけてあげました。
のび放題だった髪を切り、綺麗に整えました。
何より、惜しみない愛を注ぎました。
その仲のよさに、始めは反対していた両親もとうとう折れ、ラスカちゃんを正式な養女にしました。
そしてラスカちゃんは新しい家族と幸せに暮らしているのです。

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「だから私は幸せだから・・・そんな顔しないで。」
「・・・そうね。・・・そろそろ日も落ちてきたし一緒に帰ろっか。」
ニホンちゃんは笑顔で言いました。
「うんっ」
ラスカちゃんも笑顔でうなずきました。
328ポキ蔵:2001/08/03(金) 04:20 ID:5NIku4xQ
 まい ふぇあ れでぃ 4

 二人が手を繋いで校門を出ようとしたとき、
「お〜い、ラスカ〜、ニホンちゃ〜ん。」
とアメリー君が叫びながら走ってきました。
アメリー君、放課後、グラウンドでみんなと遊んでいたのです。
「今から・・帰るのか?」
アメリー君は肩で息をしながら聞いてきました。
「うん」
「そうか・・・ちょっと待ってろ」
アメリー君は再び走って戻りました。そしてしばらくして鞄を持って帰ってきました。
「じゃあ、帰ろっか。」
「うん!お兄ちゃん!!」
三人は手を繋いで帰りました。真ん中はラスカちゃんです。
三人の後ろには長い、長い影が伸びていました。


「・・・観念しろカンコ、おとなしく刀の錆になれ!!」
「嫌ニダ、絶対嫌ニダ・・・・・絶対・・嫌・・・・・・・・ア〜イ〜ゴ〜」

fin