連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 4クール目

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314レッドホットチリペッパーズ1
「・・・というわけで、我が校ではこの粉を禁止します。皆さん、いいですね?」
保健の先生が手にしていた物を掲げて、生徒たちに返事を促しました。先生の話によ
ると、この赤い粉を食べると頭が悪くなってしまうそうです。
「はーい」
みんな元気良く返事をしましたが、その中で青くなっている生徒が三人・・・。
「おい、先生あんなこと言ってるぞ」
「まさか手を引くってんじゃないだろうな?オレたちゃ一蓮托生だぜ」
アメリー君とクーロイ君に両脇から小突かれて、カンコ君は答えるのがやっとでした。
「だ、だいじょうぶニダ・・・」

放課後、体育館の裏にカンコ君、アメリー君、クーロイ君の姿がありました。小分け
されたビニール袋のひとつを開け、小指の先につけた粉を口に含むと、二人はその品
質に思わずうめき声を上げました。
「・・・コイツは上モノだ」
「ああ、舌にピリリときやがる。混じりっけ無しの、ホンモノだ」
二人はあたりを見まわし、カンコ君に素早くお金を握らせると、そそくさとその場を
立ち去りました。

「兄さん、今日も完売ニダ!」
カンコ君が部屋に入ると、キッチョム君はゴリゴリと石臼をまわしていました。
「当たり前ニダ。何しろコイツはウリの特製だからな。お金持ちのお嬢さんたちも、
コイツの前には只の女・・・。コイツを欲しがって苦痛に歪む顔が目に浮かぶニダ!」
そう・・・風の噂によると、悲しむべき事に赤い粉の毒牙はEU班にまで及び、フラ
ンソワーズちゃん、エリザベスちゃんもこの赤い悪魔の虜とか・・・。
「兄さんも、相当のワルニダねえ・・・」
「売人のお前にはかなわないニダよ」
「ニダッハッハッハ!」
悪党どもの笑い声が部屋中に響き渡ります・・・。
「・・・ところでカンコよ、ニホンはまだ堕ちないのか?」
みんな次々とこの粉に夢中になり、支配されてしまうというのに、ニホンちゃんだけ
は絶対に手を出そうとはしないのです。
「むぅ・・・。カンコよ、行け!行ってニホンも粉漬けにするニダ!!」
315レッドホットチリペッパーズ2:2001/08/02(木) 23:44 ID:9pNspFX.
「苦いのをくれ」
カウンターに片肘をつくと、アーリアちゃんはいつもの注文をしました。すると、
ヒュン!薄暗い駄菓子屋店内の片隅から、何かが飛んでくる気配を感じました。
「そいつは、オレのおごりだ」
ゆっくりと姿を現したのは、アメリー君でした。
「慣れ合いはせん・・・」
コークの缶をアメリー君に投げ返すと、アーリアちゃんはおばちゃんから受け取った
ラムネをぐいと流し込みました。
「そんなおカタイことだと、男は寄りつきゃしないぜ」
アーリアちゃんはそれには答えず、更にラムネをあおります。
「・・・お前、例の赤い粉に手を出してると聞いたが?」
アメリー君は一瞬ひるんだ様子でしたが、アーリアちゃんに顔を近づけ、声をひそめ
て言いました。
「知ってるか?カンコのヤローがニホンに近づいてるってこと・・・。お前の大事な
ニホンも、そのうち堕ちちまうさ」
ビー玉がカランと音を立てました。
「貴様!」
胸ぐらをつかむと、アーリアちゃんはそのままアメリー君を壁に押しつけました。
「おっと・・・。オレに当たるのはお門違いだぜ。アジア町の・・・カンコの家にで
も行ってみるんだな!」
316レッドホットチリペッパーズ3:2001/08/02(木) 23:44 ID:9pNspFX.
キッチョム君の部屋では、いつものように作業が行われていました。即ちキッチョム
君が石臼をまわし、カンコ君が粉を小分けして・・・こうして末端価格500ウォン
の袋が次々と製造されていきます。

『ガシャーン!!』
ガラス窓を突き破って部屋に入ってきたのは、アーリアちゃんでした。
「貴様ら・・・」
現場の様子から、赤い粉の密造は明らかです。
「くそっ!」
腰のホルスターからナイフを引き抜くと、キッチョム君はアーリアちゃんに斬りつけ
ました。
『キィィィィィン!』
派手に火花が飛び散りました。ナイフが眼前に迫った刹那、アーリアちゃんもまたナ
イフを引き抜き、寸前で受け止めたのです。
「フフ・・・テポドンLoveか。このゾーリンゲンの敵ではないわ!」
今やキッチョム君の心は恐怖に支配されています。このナイフ・・・押すことも引く
こともできぬではないか!
「次はこちらの番だ!」
キッチョム君のナイフを払い落とし、二の太刀を浴びせようとした瞬間!
「くそっ、目が・・・」
アーリアちゃんは崩れ落ちてしまいました。
317レッドホットチリペッパーズ4:2001/08/02(木) 23:44 ID:9pNspFX.
「よくやった、カンコ!」
卑劣・・・カンコ君がアーリアちゃんに赤い粉を投げつけたのです!
「さて、この女・・・どうしてくれよう?」
「ウリに逆らうとどうなるか・・・身体で覚えてもらうしかないニダ!!」
「ほほう・・・よく見ると、かわいい顔をしてるニダねえ」
キッチョム君の汚らしい手が、アーリアちゃんの白い肌に迫ろうとしています。
そのとき!
『バターン!!』
押入の襖が倒れると、そこにはニホンちゃんが立っていました。
「ロープを解きやがったのか!!」
ニホンちゃんの目前にはアーリアちゃんが・・・
シースからナイフをスラリと抜くと、黒く、鈍い光を放つ刀身があらわれました。
「・・・鬼包丁・・・村正!?」
アーリアちゃんはかつて聞いたことがありました。ゾーリンゲンに勝る伝説のナイフ
のことを・・・。
「やっちまうニダ!」
カンコ君が投げつける赤い粉の煙幕を腰を落としてかわし、さらに腹に一撃を加える
と、ニホンちゃんはすでにキッチョム君との間合いを一間ほどにつめていました。
『は、はやい!』
ジリジリと後ずさりするキッチョム君は、もはや逃げ場を失っているようです。そう
して壁際にまで追いつめられたとき、キッチョム君の手に何かが触れました。
『しめた!暴れん棒ニダ!!』
318レッドホットチリペッパーズ5:2001/08/02(木) 23:45 ID:9pNspFX.
キッチョム君は暴れん棒をひっつかむと、狂ったように振り回しました。
「ニダァァァァァァァァァア!!」
暴れん棒は襖といわず壁といわず、あたりのものを粉砕しはじめました。もはや完璧
に我を失っています。
「アーリアちゃん!」
ニホンちゃんはアーリアちゃんの手を取り、窓から外へと逃げ出しました。そうして
しばらく走ると
「ズズーン!!」
大音響とともに、キッチョム君とカンコ君の家が崩れ落ち、その爆風で二人は2,3
メートル程吹き飛ばされてしまいました。
「終わった・・・何もかも」
明日には保健委員会の手入れが入り、キッチョム君、カンコ君たちの赤い粉シンジケ
ートは徹底的に壊滅に追い込まれるでしょう。
ところで・・・何やら二人はモジモジしています。
「あ、あの・・・アーリアちゃん」
「なんだ?」
「そ、その・・・何もされなかった・・・よね?」
「バ、バカ!当たり前だろ!そ、それより、お前のほうはどうなんだ?」
「うん・・・何もなかったよ」
「そ、そうか・・・よ、よかったよかった!」

End