連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 4クール目

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256読みウリ
「カンコ君の彼女(その1)」

 今から少し未来のお話。

 ニホンちゃん達は中学2年生になり、地球組のみんなも色気づいてきました。
 もちろん、我らがカンコ君も例外ではありません。

「ニッダ〜♪ ニッダ〜♪」
 今日は週末。放課後のカンコ君、いつにも増して機嫌が良さそうです。

 そのカンコ君が正面玄関から出たところで、クラスメートに声を掛けられました。

「あんた、なにニタニタしてんのよ? 気持ち悪いわねぇ。」
「ニホンにタイワンか。ウリはこれからデートニダよ♪」
「「デ、デートー?!」」
 ニホンちゃんとタイワンちゃんの声がハモりました。

「ひ、一つ聞きたいんだけど、相手は人間?」
「カンコ君、デートって一人じゃ出来ないんだよ?」
 二人とも動転してるのか、酷いことを言ってます。

「何を言うニカ! 傷ついたニダ! 謝罪と賠償を要求するニダ!」

「だって、あんたと付き合うような物好きな女の子なんて、居るわけ無いじゃん」
「タ、タイワンちゃん! ご、ごめんなさい、カンコ君。でも、相手はどんな人なの?」

 カンコ君はニダ〜と笑って言いました。
「今日のウリは機嫌が良いから、特別に教えてやるニダ。
 HAHAHOHO高校のシンジュ先輩という人ニダ。年上の女(ひと)ニダよ。」
257読みウリ:2001/08/02(木) 12:27 ID:ChYguBjE
「カンコ君の彼女(その2)」

「HAHAHOHO高校 ?!」
 ニホンちゃんとタイワンちゃんは、思わず顔を見合わせました。

「カンコ君、もしかして私達をからかってるの?」
「HAHAHOHO高校って、あんた正気なの?
 悪いことは言わないから、変な道に入るのは止めときなさい!」

「な、何を言ってるニダ?」
 思わぬ反応に少しうろたえるカンコ君でしたが、すぐに得心したように言いました。

「ははぁん。さてはお前達、実はウリの事が好きだったニダね?
 だから、ウリを別れさそうとしてるニダな。」

「え?」「はぁ?」
 思わず呆然とする二人に対し、カンコ君は続けます。
「気持ちは嬉しいニダが、ウリはお前達みたいな子供は好みじゃないニダよ。
 もっと胸が大きくなってから出直してくるニダ。」

「な、なに言ってんのよ、あんたはぁ〜!!!」
「タ、タイワンちゃん、落ち着いて! 落ち着いて、ね?」
 カンコ君に殴りかかろうとするタイワンちゃんを、後ろから抱きついて必死に止めるニホンちゃん。
258読みウリ:2001/08/02(木) 12:28 ID:ChYguBjE
「カンコ君の彼女(その3)」

「いや〜、もてる男はつらいニダ」
 空気を読めずに、更に油を注ぐカンコ君。

「放して! ニホンちゃん! お願い! このバカを殺させて〜!」
「ダメだってばぁ〜! 落ち着いて! タイワンちゃん!」

「カ、カンコ君、HAHAHOHO高校の事、知らないの? あそこはだんムグッ」
「そうかぁ、カンコ、お前、彼女が出来たのか。おめでとう。」
 いつの間にかアーリアちゃんが現れ、ニホンちゃんの口を塞いでしまいました。

「良かったな。我々も応援するぞ! な? タイワン?」
 少し意地の悪い笑みを浮かべながら、タイワンちゃんに目配せをしました。
 それに気付いたタイワンちゃん
「そ、そうだね。変なこと言って悪かったな。がんばれよ、カンコ!」
こちらは満面の笑み。

「言われるまでも無いニダ。今晩、ウリはお前達より一足先に大人になるニダよ。」

「カンコくぅ〜ん!」
 その時、校門の方からカンコ君を呼ぶ声がしました。
 校門を見ると、チマチョゴリに身を包んだ長身の女性が手を振っています。
 二重瞼が少し不自然な気がしましたが、一応、美人と言って良い顔立ちです。
259読みウリ:2001/08/02(木) 12:30 ID:ChYguBjE
「カンコ君の彼女(その4)」「シンジュ先輩ニダ!」
「それじゃウリは行くニダ。一足先に『大人の階段』を上るニダァ〜!」
 カンコ君はダッシュで駆けていきました。その姿はまるで、主人に呼ばれた犬の様です。

 そんなカンコ君達を見送る3人の女の子達。
「が〜んば〜れよ〜」(タイワンちゃん)
「健闘を祈るぞ」(アーリアちゃん)
「ん〜! ん〜!」(アーリアちゃんに口を塞がれたままのニホンちゃん)

「おっと、忘れてた。」ニホンちゃんの口から手を放すアーリアちゃん。
「ぷはっ、アーリアちゃん酷いよ。早くカンコ君を止めないと。」
「止める? 何故?」
 アーリアちゃんは、さも心外だという顔をして応えます。

「何故って・・・きっとカンコ君、HAHAHOHO高校が男子高だって知らないんだと思うよ?」
「それで?」
「それで、って・・・・・」

「なぁ、ニホン。奴の嬉しそうな顔を見ただろ?
 奴の幸福を邪魔する権利は、我々には無い。違うか?」
「そ、それは・・・」
260読みウリ:2001/08/02(木) 12:31 ID:ChYguBjE
「カンコ君の彼女(その5)」


「そうそう。あたし達に出来るのは、幼なじみの『新しい旅立ち』を見送る事だけだよ?」
「さぁ、ニホン。我々の知っているカンコを見るのは、多分、これが最後だろう。
 笑顔で見送ろうじゃないか。」
「い、いいのかなぁ・・・」

 気が付くと、既に校門にはカンコ君達の姿はありません。

「さ、ニホン、タイワン、我々も何処かで遊んでいこう。」
「そーだね。ニホンちゃん、行こっ!」
「う、うん。」
 3人の女の子達も、校門に向かって歩き出しました。

 彼女たちは彼女たちで、楽しい週末を過ごすようです。


 その夜、とあるラブホテルの一室に「アイゴー」の悲痛な悲鳴が響きました。

 週明けの月曜日、空席のままのカンコ君の席を見て、ニホンちゃんは、
「私の知ってるカンコ君は、きっと、もう何処にも居ないんだろうな・・・」
と、ちょっとだけ寂しく思いました。

おしまい。