159 :
麦ジュース:
今日も暑い日。カンコ君は駄菓子屋で麦ジュースを飲んでいます。
「うまいニダ。この炭酸がいいニダよ」
カンコ君、至福の表情です。
ただし持っているジュース瓶にはしっかりと『キリン』とラベルが貼ってあ
ります。知らぬがカンコとはまったくこのことです。
「こんなところでなにをしているのかしら」
エリザベスちゃんはゲルマッハ君といっしょにやってきました。
「麦ジュースニダ。こんな暑いときにはこれなしではだめニダ」
「わたくしの家ではこんな下品な飲み方はしなくてよ」
エリザベスちゃんはどうやら不機嫌そうです。カンコ君、冷や汗たらたら。
まさに蛇に睨まれたカエル状態です。
「ど、ど、どう、するニダ?」
「わたくしの叔父様がおっしゃいましたわ。麦ジュースには炭酸など入れる
ものじゃない、ましてや冷やして飲むなどもってのほかだと」
「ニ、ニダ…」
「正しい麦ジュースの飲み方を教えてさしあげますわ」
エリザベスちゃん、妖しく微笑むと、残りのジュース瓶の栓をすべて空け、
程良く振って炭酸を抜き、温くなるまでお湯を加えました。
「ア、ア、ア、アイゴォーーーーー!!!!!」
カンコ君、滝のような涙です。せっかく苦労して作った変造500ウォン玉が
温い麦ジュースとなりはててしまいました。
「やはり麦ジュースはこれでないといけませんわ」
温い麦ジュースをおいしそうに飲むエリザベスちゃん。後ろで黙っていたゲ
ルマッハ君は少し残念そうに言いました。
「ぬるい麦ジュースとは悪趣味だな、エリザベス。だが炭酸の少ないジュー
スというところは全然同意する」
ゲルマッハ君、栓の開いたジュース瓶のなかから、すこしでも冷たいものを
選び出しておいしそうに飲んでいました。
一方、ニホンちゃんは…
「…いい」
顔を桜色に染めながら、麦ジュースの小瓶をちびちびとなめていました。
210話作者